Mission73.『大戦』開戦
元お社の上、こちらに迫り来る人間と神の群れに口元を歪ませると片手を上げて合図をした。その途端、『忌鬼』と『アラーヴァ』が群れに突進する。辺り一面に血の匂いが充満する。
〈〈*****様〉〉
その名に振り返りながらその戦場を後にする。後ろから付き従うは世界が犯した『禁忌』共。
さあ
〈〈この罪深き世界に『罰』を〉〉
喰らい尽くせ
*
ドカン、ドカンッと大砲が『忌鬼』の群れに撃ち込まれ、敵は木っ端微塵になっていく。そこに遊撃部隊が狩り損ねた『忌鬼』の急所に銃弾を撃ち込んでいく。その間を、滑るように戦闘支部は移動する。
元、お社の入り口は大きく口を開けて彼らを出迎えた。その口からまたもや大量の『忌鬼』達が溢れ出る。
「てめぇら、戦闘支部のお通りだぞ!道を開けろ!」
第一部隊の隊長の声と共に突入班を行かせるために残りの部隊が突っ込む。その場は両者が入れ混じって大混乱だ。その混乱の隙に突入班がお社に突入した。
中は薄暗く、常に悪寒が体中に痙攣するかのように走る。元お社とは言えないほどに中は変化していた。大木の太い枝らしきものと太い蛇の体のようなもの2つが捻りあい、洞窟のような空間を幾つも作っている。突入班は警戒態勢のまま、緋暮が指差した真ん中の道を黙々と進んだ。
「っっ」
【敵の生体反応を確認】
暫くして、前方が突然、開けた。その途端に感じる殺気と凄まじい悪寒。オペレーター部隊が確認した生体反応とは誰を差すのか。
〈!あそこ!〉
一緒に来ていた本部直轄部隊の近が叫んだ。そしてある一点を指差した。そこにはなにもない。が、全員が何かの気配とオペレーター部隊の警告に警戒を強めた。その途端、グニャリと空間が歪み、その歪みがなくなるとそこにいたのは唐傘を持った浴衣ワンピース姿の女性だった。明らかに可笑しい登場の仕方で誰が『禁忌』だと警戒せずにいられるだろうか。
女性の周りに大型から小型まで様々な『忌鬼』も現れる。
戦闘支部防衛部隊・『玄武』と『青龍』が前に武器を持って躍り出た。つまりは。言葉を交わさなくても容易に分かる。防衛部隊・副隊長が
「此処はあたい達に任せて!行くよー!」
と笑顔で言って駆け出す。それに続くように他の防衛部隊員も武器片手に駆けていく。長谷部が大盾を構えながら、前髪をかきあげ、苛立ちを隠さずに呟く。
〈あんの大将…!兄上、そして貴様等、先に進め!〉
次の瞬間には二ィと口角を上げて長谷部は『禁忌』であろう女性と『忌鬼』に突撃して行った防衛部隊員に後方支援を始める。
ドンッと国彦が背後に衝撃を感じてばっと振り返ると光希が剣片手に彼に抱きついていた。そして、にっこりと笑った。怖いのか、その笑みはぎこちない。国彦達の代では最年少の光希。まだ、この業界では子供だと言っても言い訳が効く。けれど、此処は戦場。国彦は光希の恐怖を拭い去るように頭を優しく撫でた。光希はびっくりしたようで目を見開いた後、彼からゆっくりと離れ、剣の柄を握り締めた。
「アイリス!!あたし達も行くよ!」
〈…………しょうがないなぁ、みっちゃんのため、だかんね〉
俯き加減の光希から発せられたのは恐怖を感じさせない強い意志。そして、いつも寝ているという彼の臣下は面倒くさそうに、それでいて嬉しそうに声を上げ、彼らは『神譜』を発動して駆け出した。光希は駆ける直前、一瞬、国彦を振り返って、笑った。
〈お先にお進みください〉
千聖はその声に隣を振り返った。強い意志を瞳に秘めた壱華が短剣を握り締めて立っていた。千聖は勇気付けるつもりで壱華の肩を強く叩いた。それに壱華はあの優しい笑みを浮かべる。その隣に彼の妹の弐薙もやって来た。
「頑張りなさいよー?可愛い後輩くん達♪」
そう言って笑顔で手を振って突撃して行った。壱華は千聖の励ましに嬉しそうに頷くと
「………………」
「!」
そう口の動きで、「ありがとう」と言って『神譜』を発動させながら妹に続くように突撃して行った。千聖は驚いていたが、にっ、と笑う。
防衛部隊以外の部隊は左に空いた別の空間、道に向かって走った。自分達を行かせるために自ら残った防衛部隊の雄叫びを背に、意志を背に。
戦闘支部防衛部隊・『玄武』&『青龍』、『禁忌』1名と『忌鬼』数体との交戦により離脱
その後、進んだ一行。再び、開けた空間が前方に広がった。此処でも殺気と悪寒が彼らを襲う。そして先程と同じように現れたのは、着物を着た男性、『禁忌』と無数の『忌鬼』。
此処で彼らと闘うと前に出たのは戦闘支部第二部隊『千國』と戦闘支部第八部隊『戒刀藍麻』だった。
戦闘支部第二部隊『千國』&戦闘支部第八部隊『戒刀藍麻』、『禁忌』1名と『忌鬼』数体との交戦により離脱
次々と仲間達が闘いに身を投げて行く。この『大戦』に勝つために全員が最善策を取る。これは簡単に言えば、サバイバルゲームだ。仲間を置いて先へと進む全員の思いは「絶対に倒す」と「無事で、勝ってくれ」と云う2つだった。
「!」
道を駆けているとその時、誰かが前方を見て息を飲んだ。つまりは。ゆっくりと、歩を進めていく。すると、ブワッと風が彼らを襲った。風から顔を庇った腕をどけて見るとそこは開けた空間ではあるものの少し違っていた。壁の至るところから鋭く、大きな針が出ていた。針山のようである、壁が。
〈〈…………ちっ〉〉
〈皆様、来ます!〉
緋暮の苛立った舌打ちに竜胆華丸はすぐさま、全員に警告を発する。緋暮が不機嫌、と言う事は
〈〈ふふ、やっぱり来たんだね。また会えてうれしいなぁ〉〉
不機嫌な緋暮とは正反対に、嬉しそうに笑う梅丸が突如として現れた。その隣には彼女の兄、烏丸が無表情のまま立っている。そして兄妹を守るように『忌鬼』が数体、配置されている。
〈〈緋暮が相手してくれるの?〉〉
梅丸が心底嬉しそうに笑いかけると緋暮は明らかに嫌そうに顔を歪めた。誰もが此処で第十部隊が足止めをするものだと思っていた。いや、正確には“第十部隊”は。
〈はぁ?オレらじゃ相手にならないって言う訳?どう思う、近〉
〈政が思った通りなんじゃない?じゃあ、そんな自信過剰の『禁忌』はお仕置きするに限るね〉
政と近の双子が扇を片手に構え、前に出る。それに呆れたように苦笑して残りの本部直轄部隊も前に出る。行くつもりをしていた緋暮も国彦も灯茉も第十部隊も唖然とした。
だが、本部直轄部隊数名と云えど、『禁忌』2人に『忌鬼』数体(きっと増える)は骨が折れるほどの重労働だ。そう思ってか今度は戦闘支部第四部隊『六花銭』が前に武器を持って歩み出た。
「本部直轄部隊の皆様だけに苦労させるのはしょうに合いませんので」
戦闘支部第四部隊『六花銭』・隊長がにっこりと優しい笑みを浮かべて言う。
「それでは国彦様、千聖様。後はお願いいたしますわ!」
「「鶴姫?」」
国彦と千聖に向けて笑みを鶴姫は浮かべると扇で口元を隠した。その片手をツルギが当たり前のように取ると驚いている灯茉に向かっていたずらっ子のように笑う。
〈そっちは任せたぜ?〉
〈ツルギ?〉
どうやら戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』も足止めとして残るらしい。相手が緋暮ではない事に梅丸は少し不機嫌そうに頬を膨らませたがそれでも闘えるのが嬉しいのか笑っている。
「ボクらが残った方がいいんじゃないの?」
「僕も螢に同意」
螢が疑問を口にするとそうだと第十部隊全員が頷いた。それに答えたのは戦闘支部第五部隊『黄金帝龍』・隊長だった。
「最強が、常に最強とは限らない。お前達だから残すんだ」
その言葉の意味を彼らはゆっくりと噛み砕いた。つまり、信頼しているからこその行動だったのだ。
それを今もって実感した第十部隊は口角を上げ、誇らしげに笑った。それならば、暴れてやろう。期待に答えて!
「行くぞおめぇら!」
西珠の雄叫びに近い叫び声に残りの2つの部隊が次の道へと駆けて行く。その背後では『禁忌』達との対戦が始まったらしく、刃物が交差する音が走るこちらにも聞こえてくる。
光希、壱華さん、弐薙さん、鶴姫、シルク、ツルギ、長谷部、政、近。
君達がどうか、無事で、勝ちますように。
国彦は走りながら、胸元に握り拳を当て友人達の武運を祈った。
戦闘支部第四部隊『六花銭』&戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』&本部直轄部隊数名が『禁忌』2名と『忌鬼』数体との交戦により離脱
書こう書こうと思って忘れていたんですけど、この世界では『禁忌』の影響で法律が一切通用しなくなってます。生まれた場所にもよりますがこの世界での成人は18歳からです!やっと書けた……
あ、でも現実は二十歳からですからね!二十歳ですよ二十歳!
・『禁忌』
緋暮(通称ひー )
国彦の過去を知る男が国彦に対する憎悪のために引き寄せられ、男を利用した『禁忌』の一人。両手を手錠で繋がれている。『大罪』
男の望み(欲望)に答えたは答えたけどあんまり面白くないからポイした。その代わり、一応敵である国彦と灯茉に興味を示し簡単に仲間と手を切る。
主である竜胆華丸の呼び名は大将様
→戦闘支部第十部隊『神樂』所属
推定12歳、137cm
第一人称:僕 第二人称:貴方、貴様
・神
竜胆華丸(通称リィ)
第十部隊が闘い、持ち帰った脇差に宿る神様。少しのみ脇差に残っていたため、ギリギリで生き残った。
簡単に仲間と手を切った緋暮の監視役として『禁忌』と契約を結ぶ。異例の事態を可能にした神様。救ってもらった恩を返したいと云う思いからの行動。みんなの癒し。心配症で怖がりな性格を隠すため敬語。兄がいるらしい。
→戦闘支部第十部隊『神樂』所属
推定18歳、170cm
第一人称:俺、私(偉い人が前にいる時など) 第二人称:貴殿




