Mission56.思考対策プラスワン
またスランプですよーやだー!!
「うぅ…飲み過ぎた…」
「二日酔いだなんてまだ若いなぁ」
「隊長はいつも通りだからでしょ」
酒盛りから一夜明け。ラウンジでは二日酔いの千聖がソファに寝転がっていた。その傍らには寝息を立てて寝ている大斧、亜矢都がいる。その隣ではパタパタと任務内容が書かれたファイルで彼を扇ぐ国彦がいる。国彦の頭上には灯茉が心配そうにそれを眺めている。
千聖の向かい側のソファにはいつも通り少々酔った様子の西珠が座っている。その隣には仮面を押さえている管狐が座っている。その手には西珠から奪ったのか酒瓶がある。螢と弥厳はその近くに立っている。
〈朝陽から薬貰って来ようか?〉
弥厳が千聖を心配そうに見て言うと彼は軽く手を挙げて大丈夫と言う。……大丈夫そうには見えないが。管狐が西珠に立つよう促すと言った。
「俺と西珠で貰って来よう。ついでに狐幸の点検もしてきたいしな」
「オレは強制か?」
「強制だ」
西珠は呆れる様子もなく「しょうがないな」と膝を叩いて立ち上がると国彦から任務内容が書かれたファイルを貰う。
「んじゃ、ちょっくら行って来るか。国彦ー千聖の事頼んだぞ」
「はーい」
そして西珠と管狐がラウンジから出て行った。他の部隊が出て行ったり入って来たりしている。螢と弥厳がソファに座り、千聖を心配する。国彦は軍服の上着を脱いで今度はそれで彼を扇ぐ。
〈やり過ぎも気を付けよ、国彦〉
「分かってるよ灯茉……大丈夫?千聖」
国彦がそう聞くと千聖は軽く唸ったような声で返事をした。
「〈あ〉」
と、突然、螢と弥厳が同時に声をあげた。それになんだと国彦と灯茉が顔を向けるとそこにはラウンジに入って来る2人の青年がいた。何故、2人が声をあげたのか気になった国彦は首を傾げる事で問った。するとそれに螢が微妙な顔をしながら小声で言った。
「あの2人、仲が悪い双子の兄弟なんだよ……他から見たら仲が良く見えるんだけどねー」
〈……不思議と云うか、変と云うか…〉
「ちょっ灯茉!」
クスリと弥厳が国彦と灯茉のやり取りに笑う。そして、世間話的な事を言い合い出す。その2人がこちらに近づいているのに誰も気づかなかった。
「そういえば螢。この前の戦闘で教官の事、心配してたけど…」
「嗚呼……あんまり飛鳥個人の事をボクがペチャクチャ言っちゃダメだと思うんだ」
「あ、そっか。ごめんね」
「良いんだよ国彦。気になる事は訊くのが良いんだから」
〈なー〉
螢と弥厳が顔を見合わせて笑う。国彦も笑い、「あ!」と思い出したかのように叫んだ。
〈どうした?〉
〈……また菓子作りの事じゃろう?〉
弥厳が聞くと灯茉が当たり前のように、つまらなそうに言った。それに国彦が頬を膨らませた。
「灯茉の言う通りだけどさー今度のお茶会でみっちゃんにマカロン頼まれたの思い出しただけだもん。千聖はマフィンだよね」
「おー………」
「本当、仲良いよねキミ達。今度、ボク達にも紹介して」
「はい!きっとみんな喜ぶと思うよ!」
キャッキャと何処ぞの女子会のように国彦と螢が笑い合いながら言い合う。それを見ていた灯茉と弥厳が顔を遠いが見合わせるとクスッと笑った。千聖も二日酔いながらもクスリと小さく笑った。
と
〈ねぇ〉
その声に全員(千聖除く)が振り返ると先ほどまでラウンジの入り口にいた螢と弥厳曰く“仲が悪い双子の兄弟”が立っていた。国彦は双子…と言っても似ても似つかない顔立ちだが、綺麗だなと久しぶりに思った。神は基本、美形が多いのでなんら不思議はないのだがたまに神秘的なものを纏っている神がいる。多分、国彦が感じのはそう云う事だろう。
一人の青年が続きを言う。
〈緋暮と竜胆華丸って此処の部隊だよね?何処にいるか知らない?〉
〈いや…知らないけど〉
〈今朝方から見ておらん〉
青年の問いに臣下組が答えると質問をしていない方の青年がそれ見ろと言った感じで彼を覗き込んだ。
〈だからオレはオペレーター部隊に聞こって言ったじゃん。なんでそんな時間食ってまで第十部隊に聞く訳?〉
〈はぁ?何、忘れたの?最初に第十部隊に聞いてからって言われたじゃん。アンタの方が何言ってんの?〉
〈わっ!忘れてた訳じゃないし!非効率的だって言ってんの!〉
〈だったらあの時に言えば良かったじゃんか!今になってワガママ言うなよ!〉
そして始まる些細な事での言い争い。螢と弥厳は苦笑い、国彦は止めた方が良いのかとオロオロして、灯茉は可笑しそうに眺めている。千聖はうるさいらしく耳を塞いでいる。
「…………これ?」
「そうだよ…」
国彦が螢に問うと彼女は苦笑で答え、止めなくて良いよと国彦に促す。国彦は目の前の言い争いに目を向けた。まだどっちの言い分が正しいかどうかで揉めている。
〈そんなに頭がバカだとは思わなかったなぁ~?〉
〈あ"?やるか?〉
〈上等〉
言い争いは白熱し、何故、言い争いが始まったのかすら分からなくなっていた。そしてただの言い争いは戦いにまで発展しようとしていた。双子の手に閉じられた扇が現れる。それにいち早く気づいた灯茉が声を荒げた。
〈お主ら!何をやる気じゃ!〉
灯茉の声に国彦は険しい顔付きで立ち上がった。螢や弥厳は此処までの喧嘩は見たことがなかったのでどう静めれば良いものかとてんやわんやしている。一方、双子は扇を手に睨み合ったままの状態だったが灯茉の声に彼を振り返った。灯茉は双子の前に降り立つと睨み返した。
〈は?何アンタ〉
〈お主ら、此処に何をしに来たかは知らぬがこんな所で武器を持ち出すでない。理解出来るじゃろ?出来ぬ訳はないであろう?〉
挑発気味に灯茉が言うと双子はうっと推し止まった。自覚はあるらしい。双子は扇を握り締めて相手を睨み合う。自覚はあるらしいが、決着はつけたいらしい。どうしたものか。
と、国彦が何かに気づき、声を上げかけた。それに灯茉が気づいた時には双子の頭に拳が振り下ろされていた。
〈やめへんか〉
〈〈いっ?!〉〉
双子が頭を抑え、しゃがみ込んだ向こう側から現れたのは
〈狐幸!白鉄!〉
「隊長達はどうしたの?」
西珠の臣下、白鉄と管狐の臣下、狐幸だった。もう一言加えれば狐幸の体が透明である。白鉄はニコニコと笑いながら頭を痛そうに抑える双子を見下ろしている。螢と弥厳の問いに狐幸が答えた。
〈我が君は今だ、私の点検中でございます。私は白鉄殿に頼まれて本体から抜けて来ましたので詳しくは彼に〉
「抜けて来た?!え、抜けれるの?!」
〈国彦、それは後で聞こうか〉
興味が湧いた事に興奮気味の国彦を灯茉が宥める。狐幸がその光景にクスリと笑った。すると白鉄がこちらに視線を移し、説明を始めた。
〈あー西珠がな、“酒飲み過ぎだ”って朝陽に捕まってもうて任務出来んのや。これから健康診断やと。せやから、任務内容届けに来たっちゅう訳や〉
白鉄がにっこりと笑いながら任務内容が書かれたファイルとともに二日酔いの薬を螢に手渡した。つまりは、“手が離せないから行ってくれ”という事だ。しかしながら千聖がダウンしている以上、誰かが残らなければならない。本体から抜けて来たと云う狐幸はすぐに戻らないといけないだろうし、白鉄も西珠の元へ一応戻らなければならない。
螢が数秒の間に思考したが誰を置いて行けば良いかと迷った。
弥厳を置いて行くとすれば必然的に螢も居残り組になる。最低でも任務に行けるのは2人。任務内容を見れば2人ではかなり厳しい。他の部隊はほぼ出払っているし誰を………
〈ええやつおるやん〉
「え?」
〈ほれ〉
白鉄が悪戯っ子のように笑って彼らに示したのは今だ白鉄に文句を垂れながら頭を抑えている“仲が悪い双子の兄弟”だった。
突然の双子




