Mission55. 神様討論会
なんていうか題名の通り
酒盛り兼話し合いしてるのは臣下組
ーダンッ!!ー
ラウンジのテーブルに叩きつけられたのはビールが並々と注がれたコップだった。叩きつけた張本人、西珠は酔っていると誰もが分かる、赤くなった顔で言う。
「だからよぉ!オレは選んだんだよ!!」
「その心は!!」
こちらもビールが注がれたコップを掲げて酔った千聖が西珠に乗る。それに西珠はビールを一気に仰ぐと叫んだ。
「強かったからだ!!」
「うるさいよ!!」
「螢もだよ…」
螢もまたビールを飲んで叫ぶ。こちらも酔っているのか顔がほのかに赤い。その隣では困惑気味の国彦がお茶を口に含んでいた。何故、国彦が困惑気味かと言うとほぼ全員の主組が酔っている事と国彦の左肩に寄りかかって管狐が寝ているからである。まさか、管狐は酒に弱かったらしく一口で撃沈した。秒殺と言っても良いくらいでした、うん。
今は任務終わりの夜なので他の部隊や仕事を終えた者達が休んだり同じく酒盛りをしていたりとラウンジは人で溢れかえっている。
国彦はふと、辺りを見回した。酔いに酔った主組と分かれて酒盛りをしているはずの臣下組を探していたのだ。人で溢れかえっているので別の場所で飲んでいるのだろうが何故、西珠の臣下や管狐の臣下まで連れて行ったのか謎だった。まぁ、見た事がなかった2人の臣下に会えたので結果オーライとしておこう。
国彦は考える事を放棄して手元のお茶を飲むと盛り上がる話に参加した。
**
今夜は美しい満月だ。遮るものが何もないため満月がよく見える。此処は医療支部の病院の屋上にあるヘリポートである。万が一のためという事でヘリポートが2箇所あるのだ。
灯茉は屋上の端っこから足を投げ出し、ブラブラとさせながら盃に注がれた酒を月を見ながら飲んでいた。近くにはツマミだろう、お稲荷さんが3つ置かれた皿がある。
〈お隣、失礼致しまする〉
〈嗚呼、良い〉
すると背後から声をかけられた。灯茉が顔だけで振り返るとそこには青年が盃と酒瓶を手に立っていた。その奥には白衣を脱いだ朝陽、弥厳、亜矢都、そしてもう一人、男性が何やら盛り上がっていた。
青年が灯茉の隣に腰を下ろす。
青年は管狐に似た容姿をしている。正確には赤茶の長髪で狐のお面をしていない。瞳は茶色をしており、服も同じ紺色の軍服である。
〈まさか気分屋と聞いていたお主が出てくるとは思わんかったのぉ〉
〈まぁ我が君が珍しく乗り気でしたので乗ってみた次第でございます〉
〈そうか〉
青年が灯茉の盃に酒を注いだ。それに灯茉はお礼にとツマミのお稲荷さんを差し出したが青年はそれに露骨に嫌そうに顔を歪めた。
〈すみませぬが稲荷は嫌いです〉
〈おや、名前に狐とついているからと言って好きという訳ではないのか〉
〈我が君はとても好んでおりますが………私は嫌いです〉
〈ふぅん。美味しいのにのぉ……すまない事をしたの、狐幸〉
〈いえ、とんでもございませぬ……ですが、名前に狐がついているからと言って全員が全員、稲荷を好んでいると云う事はございませんのでご理解をお願い申しまする〉
〈心得よう〉
青年、狐幸の言い分に灯茉は皿を置きながら袖口で口元を隠してカラカラと笑った。そう、この青年、狐幸は管狐の臣下である。
狐幸は自らの盃にも酒を注ぐと酒瓶を傍らに置き、灯茉と盃同士をカツンと合わせた後、酒を飲んだ。
〈それで本日の酒盛りはこれだけではないのでございましょう?〉
ピタリと酒を飲んだ灯茉が固まった。狐幸は次の灯茉の言葉を待っている。灯茉はフワリと空中に体を浮かせると何故浮いたのか理解出来ていない狐幸に向かって手を差し伸べた。
〈座ったところで悪いが移動するぞ〉
〈……そう云うこと、ですか…〉
理解出来た狐幸が灯茉の手を借りて立ち上がった。酒瓶と皿を取り、2人は他の臣下組がいるところへ行った。
〈おい、お主ら。“あの話”、するぞ〉
〈あら、もう?早いわねぇ……お稲荷さん食べてないならワタシに頂戴〉
〈ええ、どうぞ〉
灯茉が声をかけて朝陽の隣に座る。亜矢都が隣に座りつつある狐幸が持つ皿の上からお稲荷さんを貰いながら言う。狐幸は皿ごと亜矢都に押しやった。
〈“あの話”っつたってリィのことだろ〉
〈半分はなー〉
朝陽が酒を飲みながら言うとそれに付け足すように弥厳が苦笑しつつ言う。すると弥厳の隣に座っていた男性が亜矢都が食べているお稲荷さんに手を伸ばしながら愉快そうに笑った。
〈何を笑っておられるのです?〉
〈思い出し笑いか〉
〈ちゃうちゃう!!こんな風に臣下組で集まれんのが嬉しいなーって思っただけや〉
狐幸と灯茉にからかうように言われ、男性はお稲荷さんを取りながら言った。
〈隊長みたいにそういうフラグ立てんのやめてよ白鉄〉
〈一級フラグ建築士〉
〈んな称号いらへんわ!〉
大袈裟に笑って男性がお稲荷さんを頬張りながら弥厳の肩を叩く。弥厳がそれをやめろと笑いながら止める。
この男性は白鉄、西珠の臣下である。白鉄はスノーホワイト色のセミロングで右のこめかみのみ長く、三つ編みにしている。瞳には勾玉が浮いており、黄色と赤の珍しい配色をしている。左手首に金のブレスレットをしている。服は袖が盛大に余る白のダウンコートに雷のような模様が入ったジーパンを履いている。靴は茶色のブーツ。
彼もまた狐幸のように気分屋だったりする。
〈ところで、話さないの?〉
ハッと亜矢都の一声で全員は今話し合うべき話題を思い出した。白鉄を盃に並々と注がれた酒を勢いよく仰ぐと言った。
〈えーと、竜胆華丸…リィの事やろ?まぁまだ他にもあんねんけどぉー〉
話の最後を少々濁しつつ白鉄は灯茉をチラ見した。それに気づいているのか否や、灯茉は酒を飲んでいた。
〈おれはええと思うよ。それと確か……お兄はんがおるんやっけ?そこんとこどーなん?〉
〈俺もリィから兄がいるって聞いただけだから詳しくはなんとも…〉
白鉄の問いに朝陽がそう答え、酒を飲む。ここにいる臣下組は全員酒に強いらしく一向に酔う気配がない。
〈そういえば千聖が気になる的な事を言っておったのぉ〉
〈それに関してはワタシ、ノーコメントで。ちーちゃんとワタシがまだ出会ってない時に知り合ったんじゃないかしら〉
思い出したかのように灯茉が言ったことを亜矢都が〈ごめんなさい〉と否定する。つまり、千聖は竜胆華丸(兄の方かもしれないが)に亜矢都と出会っていない時に出会った可能性があるという事だ。だから悩んでいたのだろう。解決したかどうかは彼次第だが。
〈狐幸は?〉
〈うむ。あまり接した事がございませんのでなんとも言えませんな。緋暮…でしたっけ、彼からは『禁忌』と言う感じがいたしませんが〉
〈『禁忌』なんやて。なーんか違和感ある子やけどなぁ。味方って感じがすんねん〉
狐幸と白鉄が酒を飲みながらそう言う。此処で一旦、竜胆華丸の話題は終了のようで弥厳が少し言いずらそうに灯茉に訊いた。
〈なぁ灯茉〉
〈ん?なんじゃ?〉
〈国彦ってさぁ、もしかして“忌みg〈聞くな〉〉
悪寒が全員の背筋を走った。灯茉は不機嫌そうであったが彼らには分かった。触れてはいけない話だ、と。
あの戦争で主犯はあの男と云うことで決着はついた。が“忌み子”と云う単語を何人かは聞いてしまっていた。しかし、その彼ないし彼女も“忌み子”などど云う名で呼ばれた被害者だ。組織内ではそんな同情心からか誰もその“忌み子”を探そうとはしなかった。
しかし、戦闘支部第十部隊『神樂』は話の内容を事細く近くで聞いていた事もあって察しがついていた。おそらく、国彦が“忌み子”である事を。だが彼はそれを知らない。いや、忘れていると表現した方が良いだろう。なんとなくそれが不幸中の幸いに思えていた。
だからこそ臣下組は主組とはまた違った目線と神が持つ力で別の仮説が出来たのだ。
“国彦の記憶を消したのは灯茉”だと云う仮説が。
灯茉は全員の視線を受けながら、悲しそうなそれでいて不安そうな表情をする。それに彼らは訊く事を諦めた。何か訳があるのだろう。
話題を変えるように白鉄が自分の盃に酒を注ぎながら言った。
〈そぉ言えば、国彦と灯茉の『神譜』、凄いのぉ。今時“憑依”なんてやるやつらおったんなぁ〉
〈別名は“鬼眼”だよな、確か。鬼みたいに攻撃することから“鬼眼”〉
〈鬼神がいるから遠慮したのかしらネェ。ところで、この間ちーちゃんったらねぇ!〉
亜矢都の千聖自慢から自らの主自慢に話題が転がったのは言わずもなが、だった。
灯茉は彼らの気遣いに有り難く乗ることにし、自らも国彦自慢に参戦した。
名前に狐ってついてるキャラって大抵、お稲荷さんとか油揚げとか好きなんで狐幸は逆にしてみやしたーそして白鉄はフラグ一級建築士(笑)




