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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第四章 異変の歌声
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Mission39.その異変、始まる


後方支援支部オペレーター部隊の大半が一日の半分以上を過ごすオペレーター室。いつも動いているパソコンの画面の光が眩しい。戦闘支部第十部隊の戦闘の状況を確認していた担当はあれ?と首を傾げた。


第十部隊が赴いている場所は浄化の力を持つ神様が収める地の近くだ。彼らの任務はその神様経由で本部に届けられた。確か内容は“近頃『忌鬼』が増えて困っているので討伐して欲しい”、だったか。オペレーター部隊に来た任務内容が書かれたファイルにはそう書いてあったが。あの時は何も気にはならなかった。


「…………………後輩ちゃーん」

「はぁーい、なんです先輩」


背もたれを後ろに倒して数台のパソコンを挟んだ隣にいる後輩に声をかける。後輩は眼鏡を頭の上へ移動させながらこちらへ顔を出す。


「今日、第十部隊かぐらが受けた任務内容って閲覧みれる?」

「えぇーとーちょっと待ってくださーい…管狐キツネにぃがいる部隊ばしょでしょー?」


管狐と知り合いらしい後輩はキーボードをカタカタと叩く。ピコンッと可愛らしい音がしたのでパソコンを見ると任務内容のファイルが表示されていた。コントローラーを動かして内容を確認する。この疑問、不安が気のせいだと良いのだが……


「先輩、どうしたんですか?突然、任務内容見せてってー今、彼ら任務中ですよー任務変更は任務終了後ですからn「ったく!やられた!!」え、先輩?」


バシッとキーボードを強く叩く。それを心配して後輩が背後にやって来る。担当はイライラとした様子で前髪を掻き上げる。パソコン画面には後輩から送られて来た第十部隊の任務内容のファイル。そこまではなんともない。問題は中身、内容だ。「ちょっとこれ見ろよっ!」と担当が指差す内容を見て後輩の顔色が徐々に悪くなって行く。騒ぎに気づいた他の者達もなんだなんだと集まり始め、顔を青ざめさせる。


「今すぐに第十部隊に連絡しじしろっ!他の部隊の様子も確認!本部へ緊急連絡し、万一に備え、医療支部にも応援を要求!」

『了解!』


上司の言葉に集まっていた者達が一目散に行動に移る。担当はヘッドフォンを付け直すと耳元から伸びるマイクを持つ。第十部隊に向かって指示を言おうとした、その時


ービーッビーッ!!ー


「っ!くっそっ……電子機器にも侵入出来んのかよ?!」


警報音と共にパソコン画面いっぱいに現れたのは赤い文字と黄色と黒の縞模様。赤い文字は“エラー”と表示されている。担当はキーボードを凄まじい速さで打つ。


「オペレーター部隊を舐めんなよ………!」


すぐさま現れた第十部隊の任務状況。“エラー”は解除したがいつまた来るか分かったもんじゃない。

簡単に云えば、戦闘支部第十部隊の任務内容ファイルが改竄されていたのだ。彼らが赴いているのは浄化の力を持つ神様が収める地の近くで間違いはない。しかし、差出人と任務内容の言葉が違っていた。

戦闘支部での可笑しなイタズラ、『アラーヴァ』に、逃げ出したかもしれない『禁忌』。予兆はあった。それもこれでもかと云うくらいに。それにオペレーター部隊のパソコンに侵入出来る者は極めて限られる。彼らのパソコンは極めて厳重だ。本部でも腕利きハッカーでも匙を投げるほど厳重だ。それを意図も簡単にすり抜けた事から推測するに、見えない敵は


「(うちらよりも上!それか電子機器に侵入する高い技術を持つ臣下持ちか…)」


そう。神様にだって得意不得意があるが電子機器を操る高い技術を持つ神様も少なからずいる。後方支援支部内と医療支部内にはいないが電子機器を使わない戦闘支部にいないとも限らないし、外部と云う可能性も否定出来ない。

担当は脳内でそんな高度な考えを巡らせながら第十部隊に向かって今度こそ指示を叫んだ。


「今すぐそこから離れろっっっ!!!」


**


【今すぐそこから離れろっっっ!!!】


イヤホンから聞こえて来た鬼気迫る担当の声に第十部隊は首を傾げた。一体何故だろう?もう少しで『アラーヴァ』の討伐が終了すると云うのに。

国彦は大太刀で『アラーヴァ』を薙ぎ倒しながらイヤホンから聞こえてくる会話に耳をすました。


【なんでだよ?あと少しだぜ?】


訝しげな声で西珠が問う。それに同意するように千聖と螢が【全部倒させろ。もう少しなんだ】【理由は?】と声をあげる。


【『忌鬼』も『アラーヴァ』もほっといていい!!いいからそこから離れろ!!】


まだ数回しか担当と話した事がない国彦や灯茉でも、長年話していたであろう西珠達でも担当が焦っているのは手に取るようにわかった。そして、何かが起こっていると云うことも。

国彦の頭の中で再び警鐘が鳴り響く。


【やられたんだよ!!うちら全員!!】

〈…ま、さか…〉


何かに気づいた灯茉が深刻そうな表情で呟く。国彦は事情がわからず、ガキンッと大太刀を地面にぶつけ、彼を見上げた。


「【呪詛わなだ!!】」


担当の声と管狐の声が重なった。一同壮絶。状況が分かり、『アラーヴァ』の相手などしているヒマはないとその場から逃げ出そうとする。

呪詛は運が悪ければ、死をもたらす。それに呪詛は神である臣下に後遺症をもたらすなど、良い印象は何一つない。


だが


ーブワッ!!ー


倒し残していた『アラーヴァ』自体が呪詛だったらしく、彼らは黒い靄と一瞬にして化すと逃げ出そうとしていた第十部隊に襲いかかった。


「っっ?!」


黒い靄に怯え、身を引く国彦。彼を守るように灯茉が立ち、近くに来た千聖と合流する。螢が弥厳と共に黒い靄から逃れるようにジリジリと後ずさる。


「管狐!なんとかなるか?!」


西珠が背後にいる管狐に聞くと彼は仮面越しでも分かるほどに狼狽えながら言った。


「俺に聞くな…!ただでさえこれだけの呪詛に臣下共々、驚いてるんだぞ?」

「マジかよ」


管狐の言葉に驚く西珠。その会話を横目に国彦が灯茉を見上げた。

狐さんでダメなら、一か八か…!

国彦の真剣な眼差しに気づいた灯茉はゆっくりと首を横に振った。えっ、と国彦が驚愕する。まだ、その時じゃない、使うな、と云うことだろうか。それとも………


そんなこんな考えていると呪詛の黒い靄はジリジリと第十部隊に迫って来ていた。イヤホン越しにオペレーター部隊がてんやわんやしているのが聞こえてくる。

管狐がチッと舌打ちし、刀を構えた。


「やってみるしかないか……」


何か始まる。いつもとは違う構えに全員がこれから始まる何かに身を固くした。


【今そっちに防衛部隊と医療支部が向かってる!無茶はするなっ!】

「こんなの、無茶以外にどうしろと?」


管狐がそうニヤリと笑って言う。黒い靄から逃げていた第十部隊はいつの間にか全員集まっていた。

キィン……甲高い音に国彦、灯茉、千聖がなんだと振り返る。その音の正体は薄い、美しい月光に包まれた管狐だった。


「狐さん?!」

「国彦、大丈夫よ!」


驚愕のあまり叫んでしまった国彦に螢が場に合わない笑みを浮かべて彼を安心させるように言う。国彦がそれでも心配な表情で管狐を見る。それを知らずに管狐はニィと笑った。


「仕事だぞ………狐幸こゆき!」

〈承知致しました、我が君〉


管狐の刀から優しい中性的な声が響いた。

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