Mission15.一時の休憩と
戦闘支部第十部隊『神樂』に所属し、任務を行い、早一週間。本来ならば何日か前には光希と壱華と会う約束だったが防衛部隊の任務で遠出することになり、また今度と云う事になった。
そして、本日は第十部隊に任務が舞い込んでこない、ヒマな日でもあった。副隊長・螢によるとたくさん部隊があるにも関わらず、数週間に1、2回のペースでヒマな日が来ると云う。
そのため、本日、第十部隊は休日と云う名のヒマ日である。
「ヒマだー」
「しょうがないでしょ」
食堂の椅子をギコギコ動かしながら千聖が言うと呆れたように正面に座る国彦が笑った。国彦の隣の席には灯茉が座っているが亜矢都はいない。ヒマ日なので隊長命令で武器を点検に出しているからだ。設備室と食堂の距離はそんなにないため離れたら何かが起こるというあれもない。
「任務が来ない日なんだから。稽古も出来ないしね」
〈お主らには今、武器がないものなぁ〉
国彦がそう言うと灯茉も笑った。千聖は稽古もなにも出来ないヒマなこの時にため息をついた。
と、食堂にぞろぞろと別の部隊の人達が入ってきた。昼食の時間はとっくに過ぎているが任務帰りと云うことで今摂るのだろう。
「光希達、うまくやってるかな」
「大丈夫だよ。みっちゃんと壱華さんだもん」
「えれぇ自信だな」
「チームメイトだったしねー僕ら」
「まぁな」
〈本に国彦は友人思いじゃのぉ…千聖もな〉
「おい俺をあとからとって付けたように言うんじゃねぇよ」
千聖が身を乗り出して怒った様子で言う。国彦がどうどうと抑える。灯茉は可笑しそうに袖口で口元を隠して笑っていた。
〈妾の主は国彦じゃ。臣下は主を一番に考える。当然であろう?〉
「っ。亜矢都がいないから言い返せねぇ…しかも正論だし…」
千聖が悔しそうにダンッと机を叩くと灯茉が笑う。国彦はこれをどう始末して良いか決めかねていた。灯茉の悪ふざけだと分かったのはその数秒後だった。
「はいはいその話はやめやめ。あ、そうだ千聖」
国彦が話を変えようと話を振る。
「次にみっちゃんと壱華さんに会う時、お菓子作ろうと思ってるんだけどリクエストある?」
「お菓子って…女子力高いわお前。リクエスト?マフィン」
〈そういう千聖もリクエストの物が女子じゃな〉
クスクス笑う灯茉に千聖がわずわらしそうに手を振った。国彦も笑って「わかった」と言った。ふと、国彦が視線を上げると管狐が食堂に入って来た。キョロキョロと辺りを見回している。とこちらに気づき、向かって来た。灯茉と千聖も気づいたらしい。急ぎの用なのか管狐は走って3人の所にやって来た。
「狐さん?どうしたの?」
国彦が少しだけ息を整え、肩を上下させる管狐に問う。管狐の腰にはいつもはあるはずの刀が国彦や千聖と同じく点検に出しているためない。急いでやって来たような管狐に灯茉と千聖がなにかあったな、と勘付く。
「……第十部隊、緊急召集だ。戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』の生体反応が消えた。今動ける第十部隊が捜索の任務を受けた」
「き、消えた?!行方不明って事?!」
管狐の言葉に国彦が驚愕して問うと管狐はそうだと頷いた。灯茉と千聖がガタッと立ち上がりそれに続いて国彦も立ち上がる。そして4人は食堂を飛び出し、設備室に向かった。
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「行方不明って大丈夫なの?!」
「詳しくは聞いていないが怪我人がいるらしい!それに任務先は夜のように暗い場所だと云う。気をつけろ」
「武器の点検終わってるのか?!」
「嗚呼。タイミング良く終了している」
走りながら叫ぶ。設備室の前には先に着いた西珠と螢、弥厳がおり、3人分の武器を持っていた。
「来た!はい、国彦!」
「ありがとう螢!」
国彦より一足先に空中を飛んで着いた灯茉が螢から点検済みの大太刀を受け取る。
「管狐ーお前さんの」
西珠はまだ距離があるにも関わらず、点検済みの刀を管狐に向かって投げた。それをキャッチして管狐が軽く頭を下げた。
〈ちーちゃん!早く!〉
〈千聖!〉
「サンキュー、弥厳」
弥厳が大斧を着いた千聖に渡すと彼は礼を言う。
戦闘支部第十部隊『神樂』が全員集合した。西珠が「よしっ」と全員を見回し、任務の内容を告げた。
「これは戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』の捜索任務、緊急任務だ。彼らは『忌鬼』討伐に向かい、終了した後、生体反応が消失。怪我人もいると云うことから早急な対応が要求される。なお、『忌鬼』が全て倒されているとも限らないため、お前ら、十分に気をつけろよ?」
「酒呑童子の隊長もね。お酒飲まないでくださいよ任務中に」
西珠が隊長らしく言った横で螢が釘を刺す。それに西珠がやられたと苦笑する。
「気を取り直して。第十二部隊の人数はオレ達と同じで人の姿の臣下も合わせて7人。怪我人はそのうち1人が重傷より、2人が軽傷だ。第十二部隊を探すに当たってオレ達は3つに分かれて捜索する。分け方はオレと管狐、螢と弥厳、国彦と千聖、灯茉だ。お前ら、お仲間を救いに行くぞ!」
『はい!』
隊長のやる気を出させるような掛け声に全員が声を上げ、彼らは第十二部隊の捜索に駆け出した。




