Mission16.戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』、捜索任務開始!
「ん〜暇ですわ〜」
夜のように暗いその場所でそう呟いて空を見上げた。まだ昼のはずなのに真っ暗だ。自分がいる場所はいつも夜のように暗いことから近辺住民には恐れられておりついた名前が『暗闇の地』。なんともそのまんまの名前だ。もう少し良い名前はなかったのかと常々思う。
「?あら?」
何か気配がした。自身の背後に控える臣下と共にゆっくりとその気配がした方向へ歩み寄った。
**
「うっわ〜真っ暗」
国彦が昼なのに真っ暗な空を見上げ、言った。目を凝らせば星が見えそうだ。国彦は視線を今から行く方向へと向けた。崩れた建物の瓦礫が散乱している。
〈国彦、行くぞ〉
「あ、はーい」
灯茉に呼ばれ、国彦が隣を向く。そこには灯茉が空中に漂いながら大太刀を持っていた。その隣には大斧を担いだ千聖。3人は第十二部隊を探して歩き出した。
「何処にいるんだろうね第十二部隊の人達」
「うーん…さあなぁ。オペレーター部隊が血眼になって探したにも関わらず見つからなかったからなぁ」
ガシガシと頭をかく千聖。そう、千聖の言う通りでオペレーター部隊が生体反応が消失した後探しても見つからなかったのだ。生体反応が消えただけでも緊急なのに怪我人がいるとなると…緊急を要する。
と、灯茉がなにかを見つけたらしく声をあげた。
〈のぉお主ら。『忌鬼』がおるんじゃが〉
「「え」」
灯茉が指し示す方向を国彦と千聖が見ると黒い大鷲の姿をした『忌鬼』がいた。濁った4つの金色の瞳が3人を射抜く。『忌鬼』がこちらに気づき、声を上げる。仲間を呼んでいるのか、と理解した次の瞬間、千聖は『忌鬼』に向かって大斧を振り上げた。が、『忌鬼』は翼を持つため飛んでそれをよけながら仲間を呼んでいる。
「くっそ。仲間呼ばれる前に倒すぞ!」
「うん!灯茉!捕まえて!」
千聖が「そっちに行ったぞ!」と叫びながら振り返り、国彦が灯茉に指示する。灯茉が持っていた大太刀を国彦に投げ渡し、飛び回る『忌鬼』を追いかける。だがすばしっこいらしくなかなか捕まらない。それに痺れを切らした千聖が灯茉に「どけっ!」と怒鳴った。
〈なんじゃ千聖!〉
「いいからどけって!」
バッと飛ぶ『忌鬼』に向かって跳躍すると大斧を振った。『忌鬼』の羽を切り裂いたが『忌鬼』はまだ仲間を呼んで飛んでいる。
「チッ。まだ呼んでやがる」
「でも、仲間が来る気配なんてないよ?」
〈倒されたのを知らぬのかもしれんのぉ〉
「まっさか…たんに『忌鬼』が馬鹿なんじゃねぇの?」
千聖がそう嘲笑うと『忌鬼』がその鋭いくちばしを向けてこちらに向かって来た。聞き捨てならなかったらしいが千聖にとっては知らない事だ。ガキンッと大斧とくちばしが交差した。その背後からそぉっと近づく国彦。そして鞘に入ったままの大太刀を『忌鬼』の頭目掛けて振り下ろした。ガコンッと軽い音がして『忌鬼』が地面に落ちる。が、黒い靄となって消えはしない。倒したと思った彼らは消えない『忌鬼』を囲んでなんでやと怪訝な顔をした。
「消えね…?」
「なんで?まだ仲間がいるとか?」
〈…本体じゃない〉
「「え?」」
灯茉の言葉に2人が顔を上げた。そして灯茉が真剣な面持ちで消えない『忌鬼』を指差しながら言った。
〈こやつ、本体じゃない。身代わり行動をするタイプの『忌鬼』のようじゃ。もう一体に命でも隠しておるのだろうな。そのもう一体を倒さない限り、こやつ何度でも復活するぞ〉
「なんでそんな事わかったの?」
〈んー…勘じゃ〉
灯茉の言葉に納得する2人だが勘でわかった灯茉には納得いかない。やっぱり神様だから?2人は考える事を放棄した。
この『忌鬼』が本体じゃないのならば命を隠していると云うもう一体は何処に?そう思い3人が辺りを見回し始めた時だ。少し遠くの方で何かを切る音と落ちる音がした。ふと灯茉が『忌鬼』を見ると『忌鬼』は黒い靄と化して消えていた。
〈………消えたのぉ〉
「誰か倒したって事?」
「いやー…倒し残しで良かったのか…」
「あともういませんように…」
灯茉が小さくつぶやき、千聖がめんどくさかったと頭をかき、国彦が『忌鬼』をいない事を祈る。
て、いうか
「倒したの誰?!」
「第十部隊か第十二部隊か関係ないやつの3択かな」
国彦が驚愕したように叫ぶと千聖が警戒した様子で音がした方向を睨んでいる。灯茉も国彦を背にしながら千聖と同じ方向を睨んでいる。誰もが敵ではないかと緊張した。
「あらあら、あらあら?倒し残しでしたか。でもこれで任務は完璧に完了ですわよね?ツルギ」
〈はい。ですが生体反応が消失しているため捜索部隊が来ているはずです。彼らと合流を〉
「わかったわ。それでは参りましょう」
が聞こえて来た声は鈴と響く少女の声と同じく鈴と響く高めの男性の声だった。そして瓦礫の陰からその声の主達が現れた。それに緊張の糸が切れた灯茉と千聖。だが警戒は続いている。国彦に至っては綺麗な人だなーと見惚れているらしい。こちらに気づいた少女と少女の背後に控える臣下らしい男性はこちらに近づいて来た。
「誰だお前ら」
千聖が警戒した様子で問うと臣下らしい男性が不愉快そうに眉をひそめた。少女が可愛らしく首を傾げて「そちらもですわ」と返す。千聖はこの少女を見たことがある気がしたが気のせいとその考えを捨てた。
〈可愛い子じゃない!ね、ね、ちーちゃん!ワタシあの子好みよ!〉
「お前の好みなんか誰も聞いてねぇよ!!」
テンション高く、今まで黙っていた亜矢都が喋った。それに少女が可愛いと言われた事に対して照れながら小さく笑った。その笑いがその場の警戒していた空気を和らげた気がした。国彦が遠慮がちに言う。
「僕ら、戦闘支部第十部隊『神樂』の者です。戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』を捜索してます」
「あら、わたくし、戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』の者ですわ」
「え、嘘?!良かったー!」
少女の答えに国彦は見つかった!と喜び、灯茉と千聖は警戒を解いた。国彦が自己紹介するとそれに続くように千聖、嫌々に灯茉とテンションが高い亜矢都が続いた。それが終わると少女がスカートの裾を持って軽くお辞儀をしながら言った。
「改めてましてご挨拶を。わたくしは戦闘支部第十二部隊『天雪羽衣』の五紋時 鶴姫と申します。何卒宜しくお願い致しますわ」
少女、五紋時 鶴姫は白銀の腰まであるロングヘアーで髪の先が少しだけ黒い色をしている。赤い小さい球が連なった髪飾りをしている。瞳は黒。服は私服なのかどうかは不明だが白を基調としたワンピースで差し色に黒と赤、薄い黄色を使っている。靴は同じく白のブーツで紐は黒。
鶴姫の容姿と自己紹介を聞いて千聖が「何処ぞの鶴だよ」と呟いていた。千聖の言う通り、鶴姫は鶴のように美しい容姿だ。これほど白いので(多少白以外の色も使ってあるが)なんか目が痛い、言っちゃ悪いが。
少女は嬉しそうに笑って言った。
「そうですわ。わたくしは鶴です。鶴が大好きですの!!家族も鶴が大好きなのです!!嗚呼、鶴は美しい中に気品さも持ち合わせた素晴らしい鳥なのでございます!!」
両頬を恋する乙女のように赤くして鶴姫が語る。それに国彦も千聖も苦笑するしかない。彼女の鶴語りに止めをかけたのは彼女の臣下らしい男性だった。
〈姫様〉
「あら、あらあら。わたくしとした事がお恥ずかしいですわ。ありがとう、ツルギ。こちらはわたくしの臣下のツルギと申します」
〈どうも〉
鶴姫がニッコリ笑って紹介するが臣下の男性はほぼ無表情で軽く頭を下げたのみだった。
男性、ツルギは紅色のセミロングで首根っこ辺りで一つに束ねている。瞳は白色。首に桜の形をした物がついたチョーカーをつけている。服は髪に合わせたのか秋色風味の狩衣で靴はヒールが高い赤茶のブーツ。
〈……ふぅーん…お主、その女子に惚れ〈言うな馬鹿者!〉ハハハ!〉
灯茉がからかってそう言うとツルギは顔を真っ赤にして怒った。それに灯茉が可笑しそうに笑い、つられて亜矢都も笑い出す。楽しそうに笑う臣下。それを横目に千聖が言う。
「無事で安心だが他のやつらは?」
「戦闘中にはぐれてしまいまして…」
先輩方は大丈夫かしら…と心配そうな鶴姫。それに国彦も心配そうな顔で言う。
「そっか。隊長さんに報告した方がいi「静かに」?」
国彦の言葉を遮り、千聖が再び、緊張と真剣な面持ちをする。何かあると思ったのか笑いあっていた臣下達も黙る。
暫くの沈黙。誰もが息を飲んで静かにしている、と。
「……こいつは…おいぃ」
〈血が騒ぐ?なんちゃって!〉
驚愕しながらも愉快そうに笑う千聖とこんな状況で冗談のような事を言う亜矢都。
「あらあら…大変だわ」
〈姫様、お気を付けください〉
驚き、口元に手を当てる鶴姫と彼女を守るように立つツルギ。
「これって…大変?」
〈大変じゃわ馬鹿者〉
驚きつつも首を傾げる国彦に一喝する灯茉。
彼らの目の前にたくさんの『忌鬼』が出現していた。
作りたくなったんですよ!!真っ白い女の子!!




