Witches-7
紫色に輝く世界は荒寥として、待ち構えるように紅の魔女が立っていた。
「あの子は、救えそうですか?」
彼女は赤子だ。何も知らない、だからこそ美しい。
「うん。大変だったけどね」
僕がそう応えたら、ほら、無邪気に喜ぶ。
「それはよかったです。ところで、私はどうしたらいいんですか?」
僕は紅に生きてほしかった。
「わたしも、死ぬんですか?」
魔女は何も知らない。ただ、僕のためだけに殺される。
「わたしたちが死ぬことが、あなたを救うことに繋がるのですか?」
紅は問いかけることをやめない。
言ってしまいたい、この物語はもう手詰まりであるのだと。
見切り発車で書きだしただけだから、いつまでも終わらないのだと。
今、キーボードを叩く手をとめてしまえば、僕らは永遠に生きることができるのだと。
書きたくなんてない。僕はこれが駄作であることを、これが蛇足であることを、これが打算であることを、誰よりも了解しているのだから。
「そうしたいなら、そうすればよいと思います」
でも、僕は彼女にそう言わせてしまうのだ。
終わりのない物語が、醜いことを知っているから。
「悲しまないでください。人生にも、いつか終わりは来ますから」
僕らは、死んだらどうなるんだろう。どうして人類は、こんな簡単なことも分からないんだろう。
「わたしにもわかりません。でも、死は結果ではないと、わたしは知っています」
安易な答えに縋りつくことを思考停止と言うならば、それは、とても辛いことだ。
「そうしたら、また、わたしたちに会いに来てください」
紅は屈託のない笑顔でそう言った。
夏が終わる前に、死にたかった。
夏の美しさの中に、取り込まれたかった。
あの寂しさに、あの苦しさに、依存していたかった。
もしも過去を全部やり直せるなら出会えるあの日に戻って君の首を締め付けるさ。
僕は最後に聞いた。
「ねぇ、紅は何の色なの?」
彼女は首を傾げて応えた。
「わたしの色ですよ」
空が赤く染まった。
「あなたの救いの色です」
僕はあのナイフで魔女の腹を刺した。
その血の色を見る前に、世界が終わった。
きっと、世界は赤かった。魔女たちの物語は終わり、人生が産声を上げる。
今、己を証明する言葉に魂はあるか?
僕は浴槽の中にいる。握ったナイフから、透明の水滴が垂れている。
焼けた皮膚が赤く染まってヒリヒリと痛んだ。




