↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/82

67話 丘サーファーと復讐と

 挑発するような目つきで凜を見つめ、彼女は鼻を鳴らした。


「とても素敵なものを見せてくれてありがとう。お陰で思い出したくもないことまで思い出しちゃったわよ」


 なんだか機嫌がわるそうだが、勝手に石に触ったのも、俺にベロチューかましたのもお前だ。


「落ち着かれたようですわね。錯乱して殿方に、せっ、接吻するくらいですもの、さぞ素敵なものだったのでしょうね」


 なんで、あんたまで挑発的なんだよ。さっきまで可哀想な俺を見て笑ってたじゃん。なんなの、女子のマウント合戦なの? それに接吻って。時代劇でしか聞いたこと無いわ。いや、そう言えばまだ明治だったか。


「凜はさ、自分の先祖だったり子孫が見えるって言ってたじゃない、でも私には子供の頃の自分しか見えなかったわ」


「誰かの人生を追体験したり、知識を得ることはなかったんですの?」


 詰め寄る凜をかわして、めんどくさそうに首を振った。


「ぜーんぜん、惚《とぼ》けた顔したガキがいただけよ。強いて言えば……」


 ジェーンが俺の顔を見つめた。


「言えば?」


「いや、何でもないわ。とにかく凜が望むようなものはなかったわ」


「……そうですか、残念です。過去から、しかも違う場所から来た貴方であれば何か助けになるような手がかりが見えるかもと期待していたのですが」


 腕を組んで考える凜に、さっきから一つ聞きたいことがあった。


 いや、これ結構大事なことだぞ。


「凜さんよ、住職ってどこまで知ってるんだ? 普通にいるから違和感なかったけど、大丈夫なのか」


 住職が「え、今更ッスか?」みたいな顔をした。

 そうだよ。しれっと混ざってるから気にならなかったけどさ。普通に部外者だろ、部下に裏切られたって割にはセキュリティは大丈夫なんですかね?


「住職は信用出来る協力者ですので、安心して頂いて結構ですわよ、裏切ることはありません」


 本当かと振り返ってみれば、声も出さずに笑いながら両手でピースサインを作ってやがる。

 確実に石触って未来を見てるな、この生臭坊主。


「では坂井様、さっさと触って手がかりを教えて頂けますか」


 犬にお座りさせるよりも雑な対応、俺じゃなきゃキレてるね。


「なんか俺に対して冷たくない?」


 それ以上、凜は何も言わなかった。ただ、手のひらで石碑を指し示すだけだ。

 俺は凜から目をそらし、ジェーンに助けを求めるような視線を向けた。だが、ジェーンも手のひらを上に向け、肩をすくめた。


 俺の味方は住職だけかよ。

 ……おい、住職、暇だからってサーフボード磨いてんじゃねーよ。夏が待ち遠しい? ぶっ飛ばすぞ、てめぇ。


 しぶしぶ煙草を口に咥え、火をつけながら、あらためて石碑を見る。


 こいつを触って凜や遠藤は子孫の生き様を見た。

 ジェーンは自分の過去を見たらしい。

 住職は知らん、おたるドリームビーチでナンパでもしてるチャラいサーファーの子孫でも見たんだろう。


 前に見た、俺の祖先だと思いたくないヤバい女の知識だと、勾玉に貯めたエネルギーを使って想い人を探るための術だったらしい。壊れて誤作動を起こして、こんなことになってはいるが。


 どうか未来に戻るために必要な情報が見られますように、と願いを込めて石を触った。


 ◇


 向日葵《ひまわり》のように明るく、でもどこか儚げな少女と別れ、馬を走らせた。白人だというのに一緒にいても不思議と嫌悪感を覚えることはなかった。


 だが、もうここには用がない。牧場を襲撃した奴らの中にいたあの青服崩れを見つけ出して血祭りにあげたからだ。まだまだアイツらはこの大地にいる、絶対に探し出して全員必ず殺さなくてはならない。


 やがて街のはずれに大木が見えると、そこには目深に帽子をかぶった胡散臭い女がパイプをふかしながら寄りかかっていた。サイズの合ってないカウボーイハットはお世辞にも似合っているとはいえない。


「ちゃんとあの、かわいいお嬢様にお別れは済ませたの?」


「ああ」


 開口一番で放たれた言葉に、またかとウンザリしていると、帽子を外した黒髪の女は大げさにため息をつき、俺を睨みつけた。


「あのねぇ、シュウ。どう見てもあの子、貴方に恋してたのよ。恋よ、恋! どうせ社交辞令みたいな挨拶だけしてきたんでしょ、あーあ、なんて薄情な男!」


 大袈裟なジェスチャーで泣いたり怒ったりする姿は、出来損ないの三文芝居を見ているようだ。

 この女、ことあるごとに恋だの愛だのと、聞いてもいないのにしゃべりだす。できるならその口に石でも詰めたいところだ。


「あの子はまだ子どもだ、それに俺が白人と馴れ合うのは良くない」


「言い訳ばっかりして、あー、情けない。それでも一族を背負った男なの? こうガバーッと抱きしめてやっちゃえば良かったのよ。あたしは実際そうだったし」


 自分の身体を抱きしめて身悶えている、若干顔も火照っているようだ。


「アバズレめ、お前は死んでも魂の輪廻から弾き出されるだろう」


「インディアンの迷信なんて知ったこっちゃないわよ、さぁ次の生き残りはどこかなー、見つけた。えーっと」


「フォート・ララミーってどこかわかる?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。