24話 和服と銃とジェネレーションギャップ
「それでぇ! あの糞ジジイが言うんですよー! お前の銃には美学がないって! なんだよ、美学って! うぃっ」
腹を割って話した結果、まだ日も落ちていないのにグダグダの飲み会に突入していた。
出るわ出るわ、遠藤さんからいろんな愚痴が。
「じゃあ、遠藤さんは軍で銃も作ってたんだ、どんなのさ」
「あれですよ、あれ。軽くて強くて片手で持てる奴です。おーい、源! 私のあれ持ってきて! あれ!」
「へ、へい! ただいま!」
源と言われた坊主刈りの男が組長のいつもは見せない姿に困惑しながらも走って小さな革のトランクを取ってきた。
トランクを開くと映画でマフィアが持っているような武骨で小さなサブマシンガンが二挺収まっていた。
銃と呼ぶにはあまりにも飾り気がない、ただの四角い鉄の箱に、グリップと引き金を強引にくっつけたような、極限まで無駄を削ぎ落とした冷たいシルエットだ。
遠藤が手に持つと自慢げに解説を始める。
和服にサブマシンガンとかなんか変なドラマの登場人物みたいだな。
「こーれーがー! 遠藤式の短機関銃! その名も! 啄木鳥! 秒間二十発! 両手に持てば四十発ですよ! 四十発! 装填はこの取っ手の中に長い弾倉を直接突っ込むだけ! ほら、この銃床も折りたためて便利!」
明治時代のイメージだと玉蔵の親父さんが持ってた熊撃ち銃くらいだと思ってた。
小さいし軽そうだし現代でも流通してそうな形してるし、この時代にあったっけ、こんなの。
まぁ銃なんてよく知らんし、わからん。
「ばばばっばばっば! と撃てば敵はバッタバッタと倒れるんですよ! それがあの有坂のジジイが美しくないとか浪漫に欠けるとか、ケチつけて技術品評会にも出させてくれなかったんです!」
相当溜まってたんだな、だが弾は入ってないとはいえ振り回すなそんなもん。
妹さんも兄が元気になって良かった、みたいな優し気な目で見てるし、いかれてんのか。
満腹でうつらうつらしていたジェーンが銃と聞いて目を覚ました。
「ちょっと、それ貸しなさいよ!」
立ち上がって強引に遠藤の手から銃を奪い取ると色々な角度で構えた。
銃口の先にあるのが全部俺なのは何なの、止めてよ。
「これ、いいわね! 私の銃と違ってすごく軽い!」
「んん、ジェーンさんの銃は確かドラグーンでしたね、いいですねいいですね、44口径の大威力ですからね! でも、あんな骨董品どこで手に入れたんですか?」
俺を撃った銃はドラグーンって言うのか、かっこいい名前だな。
ふーん、大威力ね。
ふざけんな。
「はぁ?! 骨董品ですって? 今年買ったばっかりの新品よ、すっごく高かったんだから」
「またまた、パーカッション式の骨董品なんて今時どこにも売ってないですよー、いやー冗談が御上手だ」
サブマシンガンを握った手がミシミシと音を立てている。
やばい、自分の銃を弄られてジェーンがキレそうだ。
「あのー、遠藤さん、ジェーンの銃は多分本当に買ったばっかりです。こいつ五十年前から来たんで」
その言葉に場が静まり返った。
遠藤は静かに障子の横まで歩き、お盆の上に乗った麦茶を服に零れるのもお構いなしに一気飲みしてこちらを睨んだ。
そこにはさっきまでの酔っぱらいはもういなかった。
「坂井さん、もう一度、お願いします。ジェーンさんは、どこから来たって言ったんです?」
ゆっくりと意味を確かめるように有無を言わせない迫力で尋ねた。
「五十年前のアメリカから来たって言うんだよ、はっはっは、おかしいよね」
「はっはっは」
俺が笑うと遠藤も笑う。
「はっーーー!? 五十年前のアメリカ!?」
途中から遠藤が頭を抱えて狂ったように叫び出した。
いきなり叫ぶなよ、うるさい。
「組長! 何事ですかい!」
ほら、手下まで心配で見に来ちゃったじゃないか。
何でもないよ、ジェネレーションギャップって奴かな。
「じゃ、じゃあ、坂井さんはいつ、どこから来たんですか!!」
今度は俺の襟をつかみ、身体を震わせている。
充血した目がね、すごく怖い。
「125年後の日本だよ、なんでか知らんけど」
「あはははあははは」
やべっ、壊れた。




