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豊臣家のオカンによる公開説教

正座させられた劇団王太子の皆様。


腕を組み、見下ろす寧々。

その後ろには、静かに控える茶々と竜子。


更に劇団王太子の後ろには、逃亡防止担当の福島正則と加藤清正。威圧担当の石田三成と大谷吉継が並ぶ。


加藤嘉明が椅子を持って来てくれたので、素直に座るキャサリン。

キャサリンが座ったのを確認すると、嘉明は斜め前へ、黒田長政は斜め後ろへ移動した。


完全にボディガードである。


そして、観覧席の皆様で後半戦をお送りします。


「あの、私は帰っちゃダメですか?」


キャサリンは恐る恐る嘉明と長政に尋ねると、二人は首を横に振る。


「あかん。」


「貴女は当事者であり、被害者です。」


(早く終わってくれないかしら……。)


キャサリンはチラリと観客席に目線をやる。

大人たちは酒片手に、ワクテカしながら見守っている。

なんなら、両親まで酒片手に見ている。


(もうどうにでもなれ。)


キャサリンはヤケクソになった。


「さてと……。」


寧々が帯に刺している扇子を手に取る。


「アンタとあそこにいる姫君の婚約は、王家と公爵家の約束……言うなれば同盟や。

それを当事者であるアンタが、一方的に反故にするんか?」


一拍


「……その意味、分かっとる?」


王太子は答えられない。

会場の空気が一段冷えた気がした。


「婚約というのはねぇ……恋人ごっこじゃないのよ。

王族や貴族にとっては、契約やで。」


観覧席の大人たちがワイングラス片手に、うんうんと頷いている。


「アンタ一人が『嫌になった』で済む話じゃないのよ。

王家の信用、公爵家との関係、他の貴族への示し。

全部ひっくるめての婚約やで。」


寧々は一つずつ、指を折りながら説明した。


「だ、だが!私は王太子だ!」


遂に王太子が反論。

キッと寧々を睨み付け、"王太子の圧"を纏う。

普通の人間なら、たじろぐだろうが、寧々がその辺の小僧に動じるわけがない。


「だから、問題やって言うてるのよ。

アンタ、王太子やろ?

王太子やから好き勝手してええんやない。

王太子やからこそ、一番約束を守らなあかん。」


寧々はふっと息を吐いて、続けた。


「王族が約束を軽んじたら、誰が王家を信用するん?」


観客席から拍手が鳴り響いた。


「いやはや!まさにその通り!」


「ご夫人の仰る通りだ!」


「王太子殿下ともあろうお方が、そんなことも分からないとは!」


「国王陛下と王妃陛下もさぞ、苦労されてきたことだろう……。」


劇団王太子の皆さんは顔を真っ赤にして俯いた。


その時、会場の扉が勢いよく開いた。


「国王陛下!王妃陛下の御成です!!」


招待客たちは一斉に道を開け、キャサリンも立ち上がって、カーテシーで出迎える。


「父上っ!母上っ!この無礼者たちをなんとかしてください!王太子である私に」


しかし、言葉は最後まで続かず。


「こんの馬鹿息子がぁぁぁっっ!!」


ゴンっっ!!と鈍い音が響き渡る。


「ち、父上っ!?いきなり殴るなんて、あんまりじゃないですか!!」


「もう喋らないで……。」


王妃が物凄い冷たい目で息子を見下ろす。


「私と陛下が視察で留守にする間に何かやらかしそうと思っていたけど……。

まさか、婚約破棄とはねぇ……。」


王妃は、某夫人ばりの圧を放っていた。

そのまま、取り巻きたちを睨み付ける。


「あなた達……臣下なら止める立場でしょ?

何を一緒になって、馬鹿騒ぎしているの?

一人の令嬢を寄ってたかって、大勢の前で……。

貴族としての品格と誇りはどこに置いてきたの?」


すると、ここで空気の読めない男爵令嬢が声を上げた。


「王妃様!!王太子殿下を虐めないで下さい!!殿下は私の為に!」


「貴女には聞いてないわ……。」


王妃は静かにリリィを見つめる。


「全員、連れて行きなさい。一人ずつ事情を聞くから、個室へ。」


王妃は護衛たちにそう命じた。


「「はっ!」」


護衛たちは劇団王太子全員を連行して行った。


「全く……。なんであんな馬鹿になったんだ?」


「前はもう少しマシでしたが……。」


「うむ。まぁ、もうどうでも良い。」


国王は肩を落とす。


「王太子は廃嫡だ。

こんな大勢の前で馬鹿騒ぎを起こす奴に国を任せられぬ。」


貴族たちは勿論だが、寧々たちまで頷いた。


「ケネディ公爵にはまた日を改めて謝罪に行こう。

今宵はもうお開きだ。皆、疲れたであろう。帰ってゆっくり休むが良い。」


「あら?もう終わり?」


「陛下がそう仰られるなら……。」


「お疲れっした〜!」


貴族たちは、案内係の誘導で帰って行く。


国王と王妃はキャサリンの元へ行き、頭を下げた。


「すまない、キャサリン嬢。」


「変なことに巻き込んでしまったわね。」


「いえ!そんな……。陛下、臣下に頭を下げてはなりません。」


「すまないな、ありがとう。」


そこへキャサリンの迎えに来た公爵夫妻がやって来る。


「キャサリン〜!帰るぞ〜!」


「今日はオールよぉ!」


公爵夫妻は自由だった。


「公爵、夫人。また日を改めるゆえ。」


「かしこまりました。」


「あんまり飲み過ぎちゃ駄目よ〜?」


「……善処します。」


ケネディ公爵家が帰って行くのを見届けた寧々が、大きく息を吐く。


「私らも帰るか。」


「はい。」


「後の処理は国王陛下と王妃陛下に任せましょう。」


「ええ。私らはここまでや。」


帰ろうとする寧々を王妃が呼び止めた。


「あら〜!飲んでいきませんか〜?上等なお酒を用意しますわ〜!」


酒、と聞いて、"酒で全てを駄目にする男"の目がギラリと光るが……。


「他所の家やで!」


「コイツは監禁しといた方がええな。」


清正に羽交締めにされ、三成に監禁されそうになっていた。


「離してぇぇ!酒ぇぇ!!」


「「やかましい。」」

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