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魔力ゼロのドールマスター  作者: 仁科異邦


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6/9

授業にて

## 第6話:学園の測定試験と、アンティークの真価


翌日。俺は桜花を連れて、いつも通り学園へと登校した。

昨日までとは違い、俺の胸ポケットには探索者協会で発行されたばかりの『ドールマスターライセンス』が燦然と輝いている。


とはいえ、周囲の見る目は相変わらずだった。

「おい見ろよ、月島が変な和装のドール連れてるぞ」


「うわ、装甲もないじゃん。どこの骨董品だよ」

「どうせ魔力ゼロだから動かせないのに、見栄張って持ち込んでるんだろ」


すれ違う生徒たちの嘲笑が耳に入るが、今の俺にはそよ風程度にしか感じられない。

むしろ、隣を歩く桜花が怒り出さないかヒヤヒヤしていた。


「マスター。あの無礼な者たち、撫で斬りにしてきてもよろしいでしょうか?」

「ダメだ! 学校で血の雨を降らせるな!」


桜花を宥めながら、俺たちは実技用の第三訓練場へと向かった。

今日の1限目は、定期的な『ドール性能測定試験』だった。


「よし、全員揃ったな」

教師の号令で、生徒たちがそれぞれのドールを前に整列する。


「今日は各々のドールの出力と、的当てによる攻撃力の測定を行う。

……月島、お前もドール連れて来てるみたいだし、折角だから一応参加するか?」


教師が呆れたような視線を向けてくる。

「はい。俺も自分のドールを持参しましたので」

俺が堂々と答えると、周囲からドッと笑いが起きた。


「おいおい、あのポンコツで測定する気かよ!」

「魔力ゼロのお前がどうやって動かすんだ? 念力か?」


同級生たちのヤジに、桜花がスッと目を細めた。

白鞘に置かれた指先がピクリと動く。

「桜花、落ち着け。実力で黙らせればいい」


俺が小声で伝えると、桜花は「承知いたしました」と小さく頷いた。

測定が始まり、次々と生徒たちが自慢のドールに魔法を撃たせたり、的に攻撃を加えたりしていく。


優秀な生徒は最新鋭の第五世代ドールで的を粉砕し、歓声を浴びていた。

そして、いよいよ俺の番が回ってきた。

「次、月島龍牙。……まあ、無理なら申告して下がってもいいぞ」


教師の言葉を無視して、俺は桜花と共に測定用の硬質ダミー標的の前に立った。

これは高位の魔物の装甲を模した、極めて頑丈な材質で作られている。


「月島のドール、プロトタイプ・コード00『桜花』。いきます」

「プロトタイプ? なんだそりゃ?、そんなのまともに動くわけが……」

教師が言いかけた、その時だった。


「――『桜花一刀流・壱の型』」

チャキ、と微かな音が響いた。


俺の目にも見えないほどの神速の抜刀。

桜花は一瞬で的との距離を詰め、そして元の位置へと戻っていた。


「……なんだ? 今、何かしたのか?」

「素振りしただけじゃないか?」

生徒たちが首を傾げる中、桜花は静かに刀を鞘に納めた。


カチャリ。

その音が響いた瞬間。

ズズズ……ッ!

強固なはずの硬質ダミー標的が、斜めに綺麗にズレて、重い音を立てて崩れ落ちた。


それだけではない、ダミー標的の後ろにあった分厚い防護壁、さらには訓練場の外壁にまで、一直線に鋭い斬撃の跡が刻まれていたのだ。


「…………は?」

訓練場が、水を打ったように静まり返った。

「標的だけでなく、防護壁まで……一撃で両断しただと……?」


教師が震える声で呟く。

「あ、ありえねえ……魔法も使わずに、ただの斬撃だけでこれを?」

さっきまで俺を嘲笑っていた同級生たちは、腰を抜かさんばかりに後ずさっていた。


「ふむ。この程度の強度では、刃の感触すらまともに確かめられませんね、クレープ一個分のエネルギーも消費しませんでした」


桜花は退屈そうにため息をついた。

魔力ゼロの落ちこぼれが持ち込んだ、規格外の和装アンティークドール。


その圧倒的な力を前に、先生、生徒達の唖然とするしかなかった。

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