授業にて
## 第6話:学園の測定試験と、アンティークの真価
翌日。俺は桜花を連れて、いつも通り学園へと登校した。
昨日までとは違い、俺の胸ポケットには探索者協会で発行されたばかりの『ドールマスターライセンス』が燦然と輝いている。
とはいえ、周囲の見る目は相変わらずだった。
「おい見ろよ、月島が変な和装のドール連れてるぞ」
「うわ、装甲もないじゃん。どこの骨董品だよ」
「どうせ魔力ゼロだから動かせないのに、見栄張って持ち込んでるんだろ」
すれ違う生徒たちの嘲笑が耳に入るが、今の俺にはそよ風程度にしか感じられない。
むしろ、隣を歩く桜花が怒り出さないかヒヤヒヤしていた。
「マスター。あの無礼な者たち、撫で斬りにしてきてもよろしいでしょうか?」
「ダメだ! 学校で血の雨を降らせるな!」
桜花を宥めながら、俺たちは実技用の第三訓練場へと向かった。
今日の1限目は、定期的な『ドール性能測定試験』だった。
「よし、全員揃ったな」
教師の号令で、生徒たちがそれぞれのドールを前に整列する。
「今日は各々のドールの出力と、的当てによる攻撃力の測定を行う。
……月島、お前もドール連れて来てるみたいだし、折角だから一応参加するか?」
教師が呆れたような視線を向けてくる。
「はい。俺も自分のドールを持参しましたので」
俺が堂々と答えると、周囲からドッと笑いが起きた。
「おいおい、あのポンコツで測定する気かよ!」
「魔力ゼロのお前がどうやって動かすんだ? 念力か?」
同級生たちのヤジに、桜花がスッと目を細めた。
白鞘に置かれた指先がピクリと動く。
「桜花、落ち着け。実力で黙らせればいい」
俺が小声で伝えると、桜花は「承知いたしました」と小さく頷いた。
測定が始まり、次々と生徒たちが自慢のドールに魔法を撃たせたり、的に攻撃を加えたりしていく。
優秀な生徒は最新鋭の第五世代ドールで的を粉砕し、歓声を浴びていた。
そして、いよいよ俺の番が回ってきた。
「次、月島龍牙。……まあ、無理なら申告して下がってもいいぞ」
教師の言葉を無視して、俺は桜花と共に測定用の硬質ダミー標的の前に立った。
これは高位の魔物の装甲を模した、極めて頑丈な材質で作られている。
「月島のドール、プロトタイプ・コード00『桜花』。いきます」
「プロトタイプ? なんだそりゃ?、そんなのまともに動くわけが……」
教師が言いかけた、その時だった。
「――『桜花一刀流・壱の型』」
チャキ、と微かな音が響いた。
俺の目にも見えないほどの神速の抜刀。
桜花は一瞬で的との距離を詰め、そして元の位置へと戻っていた。
「……なんだ? 今、何かしたのか?」
「素振りしただけじゃないか?」
生徒たちが首を傾げる中、桜花は静かに刀を鞘に納めた。
カチャリ。
その音が響いた瞬間。
ズズズ……ッ!
強固なはずの硬質ダミー標的が、斜めに綺麗にズレて、重い音を立てて崩れ落ちた。
それだけではない、ダミー標的の後ろにあった分厚い防護壁、さらには訓練場の外壁にまで、一直線に鋭い斬撃の跡が刻まれていたのだ。
「…………は?」
訓練場が、水を打ったように静まり返った。
「標的だけでなく、防護壁まで……一撃で両断しただと……?」
教師が震える声で呟く。
「あ、ありえねえ……魔法も使わずに、ただの斬撃だけでこれを?」
さっきまで俺を嘲笑っていた同級生たちは、腰を抜かさんばかりに後ずさっていた。
「ふむ。この程度の強度では、刃の感触すらまともに確かめられませんね、クレープ一個分のエネルギーも消費しませんでした」
桜花は退屈そうにため息をついた。
魔力ゼロの落ちこぼれが持ち込んだ、規格外の和装アンティークドール。
その圧倒的な力を前に、先生、生徒達の唖然とするしかなかった。




