盗賊
おはようございます。引き続き庭斗凛です。喋れる彼女と一緒にキャラバンで旅を続けています。行き先は俺たちにはわからない。人がやってきて餌の補充と水。そして卵が回収される。
「おはよう」
「あぁ、おはよう。今日も一日のんびり過ごしますかねー。外に出れる訳じゃないし」
「放牧はしてくれないの」
「ん、そうだが。鶏って人懐っこいわけじゃないしな」
「つまんないわね。なんか一発ギャグやりなさいよ」
「無茶言うな。俺にそんなレパートリーがあるとでも」
「あぁ〜つまらない」
「寝ようぜ」
「そうしましょうか」
仮眠。時間が流れていき夕時に。ルーンがこっちにやってきた。
「お前らはいいよな。食べて寝て産むだけだもんな」
(なにを。こっちは退屈で仕方ないんだぞ)
「明日ここを立つ。って言ってもわからないか」
(把握)
「じゃあな」
去っていった。やる事はもう済んだのか。早いなぁ。夜。水を飲み、餌を食べ、眠る。おやすみなさい。
******
またまたおはようございます。今日は街を立つらしいです。次はどこかな。気になる。
「おはよう」
「卵は産んだのかい」
「ん、まぁね」
男がやってきて餌と水を補充。卵を回収していった。さぁ今日も一日頑張るぞ。と言っても檻から出られんしな。
「忘れものはないかい」
「「「はい!!」」」
「じゃあ出発するよ」
団長の声と共にキャラバンが動き出した。森。草木の匂いで空気が新鮮で美味しい。と思った矢先!!何人もの人がぞろぞろと出てきた。なんだなんだ。誰だろう。聞こえてくる。
「有金全部と物資はここに置いて行きな。逆らったらわかるよな」
「ふん。お断りだよ。お前ら出てこい。出番だぞ」
「交渉決裂と。いくぞ。男は殺せ。女は縛って奴隷として売るぞ」
キャラバンから男達が出てくる。金属音。戦いが始まってしまった。俺たちがいる檻に1人近づいてくる。
「ふふふ。お前達はみんな焼いて食っちまおう。そうだ。そうしよう」
小さな声で彼女に合図する。単純明快。檻を開けた瞬間に飛び掛かるんだ。それで逃げるんだ。上手くいくかな。いや、上手くいくしか生きる方法がない。男はじりじりと近寄ってきて開けた。今だ!!俺と彼女が飛び掛かった。
「ぐわっ!!なにしやがる」
バランスを崩して後ろに倒れこむ男。逃げろー!!檻を飛び出した俺たち。草むらを掻き分け走る。走る。しかしそれを見逃さないやつがいた。矢を放ってきた。彼女に当たる。そして座り込んだ。
「と、止まるな!!いけるか?!いや、行かないとだめだ」
「わ、私はここに置いていって。いままでありがとう」
「そんな訳にいくか!!お前は勇逸の話し仲間なんだ。見捨ててたまるか。立って。立ってくれ」
「わかったわよー!!もう」
弓を持った男が追ってくる。巻くのは無理か......いやそんな事言ってられるか。ただがむしゃらに走り続ける。彼女は血を垂らしながら頑張っている。誰か、誰か助けてくれぇ!!!!
どのくらい走ったのだろう。追ってきていた男は諦めたのか見えなくなった。倒れ込む彼女。くそ。こんな身体じゃ手当なんて。空は夕時。おんぶしてなんとか運ぶ。あっ灯りだ。煙。誰かがいる。助けてもらおう。でもどうしよう。いやそんな事は言ってられない。行くぞ。
男2人。女が1人。冒険者か。近づいてきた俺たちに気づいて近寄ってくる。
「おう!!生肉がこっちに歩いてきたぞ!まて、悪いお肉ちゃんだ。貪り食うぞ。天麩羅にしちゃおう。心ゆくまで味わってゲップしちゃおう」
「やめないか。訳ありじゃないのか」
「そうよ。おんぶして運んでくるなんて......すごく賢い鶏ね」
ぐっ。普通の鶏ではないのはもうバレてる。ならば。交渉あるのみだ。
「彼女を、彼女を助けてください。俺のことは売るなり食べるなりして構わない!!頼む」
「しゃ、喋った?!」
「ッ!!」
彼女をおろす俺。女が近づいてきて矢を抜いた。悲鳴をあげる。そしてなにやら呪文を唱えている」
「神よ。この者達に癒しを!!ヒール!!」
緑色の光を放ち傷口が塞がる。凄い!!魔法なんてあるんだ!!た、助かったぞ。あ、俺の出番は......おわっ終わった」
暗転。もう目は覚めないのかな。ははは。少しの間だったけど楽しかったな。
******
朝。目を覚ました俺。食われなかったのか。良かった。毛布から出て彼女に近づく。
「起きてるか」
「ん。今起きた」
「もう痛みはないか」
「おかげさまで。やるじゃない。で、近くにいる3人は誰」
「俺らを救ってくれた人達だよ。お礼言おうか」
「そうね。て、喋ったの?!」
「あぁ。もう普通じゃないのはバレバレだ」
「仕方ないわね」
「鶏!!起きたのか。矢が刺さっていたほうは大丈夫か」
「はい。おかげさまで」
「やっぱり喋るんだな。夢かと思ったよ」
「ジーク!!て、鶏!!起きたのか」
「ふぁぁ。鶏はどうなの」
「あの、助けていただき本当にありがとうございます。この恩は忘れません」
「アルト。どうする」
冒険者らしい格好をしているほうがジーク。大楯を持っているのがアルト。もう1人は。
「私はリリィよ。よろしくね!鶏。て、ジークどうする。名前」
「鶏だと味気ないよな。俺たちで決めていいか」
「は、はい。構いません」
「えー!!じゃあ。貴方はウショク。矢刺さってた子はヒジョで」
「わかりました」
「繋げると非常食じゃない?!」
「まぁ、リリィの名付けなんてその程度だぞ」
「ジーク、酷いわね」
「あはは。冗談だよ。冗談」
「それで、ヒジョとウショクはこれからどうするんだ。行く当てがなければ俺たちと来るか」
「いいんじゃないかしら」
「だな。お願いします」
「よーし!!決定!!今日の晩御飯はウショクの丸焼きだ」
「俺、食われる?!」
「アルトやめなさいって。ははは」
なんか天麩羅どうのこうの言ってたな。リリィは魔法使いかな。先端に石が付いている杖を持っている。白いローブに紺色の服装。
「次行くところはマッシグって街だ。ウショクは行ったことあるか」
「ありませんよ。産まれてからずっとキャラバンにいましたから」
「キャラバン??そうか卵か。高級品だもんな」
「そんなところです」
「私は村で普通の鶏として振る舞っていました。まさかこんな事になるなんて思ってもいなかったけど」
「ヒジョっち喋ればその村の名物になったかもじゃない??」
「いやよ。持ち上げられるなんて」
「まぁ、そのおかげで俺達。出会えたしな」
「今度は冒険者......ね。私たちのこと守ってくれるのかしら」
「おう、もちろんだ。もう仲間だ。遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます。お世話になります」
「畏まるな。タメでいい」
「わかった。よろしく。ジーク。アルト。リリィ」
「喋る鶏と旅できるなんて私達ついてるね」
「運命の出会いかもな」
「食料だしな」
「おいおい。やめろって」
「歩く肉でしかない。天麩羅にして貪り食うぞってな。ははは」
「それは置いといて。あと30リーグで着く。なにか気になることがあればその都度聞いてくれ」
「助かる」
「アルト怖いわね......」
「に、肉に嫌われた。まぁいいけどな。はっはっは」
歩いて、歩いて。歩く。雑談は楽しいな。鶏になってこんな出会い。神様ありがとう。って思った時期が今です。それまでは退屈な檻生活だったからな。ヒジョももう問題なく歩けてるし安心。
着いた。黄金色の街並み。広い通路。その端でお店が沢山。歩いてて楽しいぞ。小さい子供や大人達が俺らを興味津々で見てくる。珍しいだろうな。宿屋。手続きを終え俺たちに。
「近くに獣魔用の小屋があるらしいんだが、どうする」
「いや、ここに泊まらせてください。確実に餌になりますって」
「そうだよな。食われたら天麩羅にできないしな」
「やめろアルト。もう俺たちは仲間だろう」
「あぁ。ごほん。すまない」
「私は先に部屋で休むわね。ヒジョとウショクも来る??」
「お言葉に甘えます!!」
「私も」
「ねぇ、穀物とお水頼んでもいいかしら」
宿屋の人。
「ええ。構いませんよ。持って行きます。いやぁ。喋る鶏に出会える日がこようとは」
「大事な仲間なの」
その大事な仲間に非常食って名前つけますかねぇ......まぁいいか。
「俺らは武器の手入れしてからだな。夜ご飯には来る」
部屋へと入っていく2人。俺たちはリリィと一緒に。コケコッコーな感じに休む。なにがコケコッコーだって??便利だろう。
ドアが鳴る。
「鶏の餌と水持ってきました」
「ありがとう。入っていいわ」
「失礼します」
置いて出ていった。布団に飛び乗る俺たち。ふかふかだぁ。檻生活は硬かったからなぁ。リリィが撫でてくれる。コケコケ。
「明日は水浴びしようね」
「お、お手柔らかにお願いします」
「水浴び?!嬉しい」
「喜んでくれてなにより!!てウショクはオスなの」
「身体はメスです。大丈夫です。問題ありません」
「心は男の子って感じみたいだったからさ。私らに対して気遣いしなくていいからね。嫌だったらそう言って。私は知りたいだけだから貴方達のこと」
「わかったぜ。ありがとう」
「自然体が一番よね」
「ウショクはそうでなくっちゃね」
「ヒジョはザ・女の子だし」
「そうよ。私は女の子!!」
「可愛いやりとりね」
夜時。部屋から出ていったリリィを見送り。穀物を啄み。水を飲む非常食。いや、ヒジョとウショクね。
戻ってきた。閉まる音。ベットへと腰をおろすリリィ。
「おトイレはどうするの」
「そうか。人間用は使えないかなぁ」
「持ってくれればいいんじゃない」
「だ。リリィ。いいか。俺もう限界だ」
「おっけー!!行こう。おいで」
トイレ。持ち上げられて空中で全てを出し切った。ふぅ。スッキリー。ヒジョも同じくだ。
部屋へと戻る俺たち。その途中でジークとアルトと顔合わせに。
「明日は冒険者ギルドで依頼を受けるぞ。あと獣魔登録もな」
「鶏を獣魔ってどういうことだってばよ」
「言葉が変になってるよウショク」
「ははは。いいじゃんか」
「天麩羅......」
ベットに腰をおろすリリィ。飛び乗る俺たち。おやすみなさい。明日はなにがあるのかな。楽しみだ。冒険者ギルドで獣魔登録って鶏でもいいのか。知らん。その時次第だ!!




