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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
わかる世界(2011年8月)
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 今日、xxは学校に来なかった。


 先生はその理由を体調不良だと考えていた。けれど、スマホで連絡をとっても返事は帰ってこなくて、ぼくはなんだか不安になってしまって、学校が終わったらすぐに彼の家に行った。


 彼の家は、ぼくの家のすぐ近所だ。


 大きくて広い家なのに、住んでいるのはxx一人だけ。もしも彼の体調が本当に悪いなら、一人ぼっちにしておくのはまずい。


 チャイムを鳴らして、扉をノックする。けれど、返事は帰ってこない。


(居ないの?)


 と、心の中で大きな声を出す。そうしたら(飛鳥か)という小さな声が頭の中に聴こえてきた。xxの思念だった。


 珍しいな。ってぼくは思った。彼はいつも心を閉じているから、心の会話はできないのに。今日は違うらしい。


(だいじょうぶなの?)と、考えたら、

(わからない)というxxの気持ちが帰ってきた。


 ぼくは扉の取手に手をかけた。


 鍵は開いていて、扉はあっさり開いた。


(入るよ)


 そう思ってから敷居をまたいだ。


 家の中はすごく静かだった。洗濯の音も、テレビの音も、料理の音も聴こえない。


(飛鳥。おれのことを心配してるんだな)


 そしてxxの思念だけがクリアに聴こえてくる。


 ぼくは階段を上り、彼の部屋の前に立った。


(入っていい?)


「飛鳥、帰ってくれ」


 言葉が扉の向こうから聴こえてきた。今度は心の声ではなくて、言葉を使っていた。


 彼はいつも心にかけ金をおろしていて、決して心の会話をしようとしない。周りの人たちはみんな口を使って話したりしないのに、彼だけは別だった。


 けれど今日は珍しく彼の心の声も聴こえてくる。


「今日は調子が悪いから、会いたくないんだ」(そうだ、すごく調子が悪いんだ)


 xxの言葉と、心の声がダブって聞こえる。


(そんなに調子が悪いなら、一人にしておけないよ。君には家族も居ないんだし、ご飯も困るでしょ)


「良いんだ。一人にしてくれ。腹も減ってない」(どうせいつも一人だから平気だ)


(せっかく来たんだし、少しだけ顔を見ていくよ)


「駄目だ。ドアを開けたら絶交だからな」(今日は駄目なんだ。帰ってくれ)


 彼は頑として扉を開けようとしてくれなかった。

 それに、声を聞く限りはそれほど体調が悪そうには聞こえなかったし、ぼくは彼の言葉に従うことにした。


(分かった。でも、体調が悪くなったら連絡してね)


「ああ」(心配させて悪い。でも心配しないで欲しい。体調は別に悪くないんだ)


 彼の言葉を聞いて、この日は家に帰った。


 けど、彼は一体どうして学校を休んでるんだろう? 漏れ出していた心の声では、体調は悪くないと言っていたから、きっと本当に体調は悪くないだろう。


 だったら、学校に来ればいいのに。もしかして、この世界が嫌になっちゃったのかな? ……それはありえない話じゃない。それに、心の声が漏れ出しているのも気になった。あれはいったいどういうわけなんだろう?

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