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今日、xxは学校に来なかった。
先生はその理由を体調不良だと考えていた。けれど、スマホで連絡をとっても返事は帰ってこなくて、ぼくはなんだか不安になってしまって、学校が終わったらすぐに彼の家に行った。
彼の家は、ぼくの家のすぐ近所だ。
大きくて広い家なのに、住んでいるのはxx一人だけ。もしも彼の体調が本当に悪いなら、一人ぼっちにしておくのはまずい。
チャイムを鳴らして、扉をノックする。けれど、返事は帰ってこない。
(居ないの?)
と、心の中で大きな声を出す。そうしたら(飛鳥か)という小さな声が頭の中に聴こえてきた。xxの思念だった。
珍しいな。ってぼくは思った。彼はいつも心を閉じているから、心の会話はできないのに。今日は違うらしい。
(だいじょうぶなの?)と、考えたら、
(わからない)というxxの気持ちが帰ってきた。
ぼくは扉の取手に手をかけた。
鍵は開いていて、扉はあっさり開いた。
(入るよ)
そう思ってから敷居をまたいだ。
家の中はすごく静かだった。洗濯の音も、テレビの音も、料理の音も聴こえない。
(飛鳥。おれのことを心配してるんだな)
そしてxxの思念だけがクリアに聴こえてくる。
ぼくは階段を上り、彼の部屋の前に立った。
(入っていい?)
「飛鳥、帰ってくれ」
言葉が扉の向こうから聴こえてきた。今度は心の声ではなくて、言葉を使っていた。
彼はいつも心にかけ金をおろしていて、決して心の会話をしようとしない。周りの人たちはみんな口を使って話したりしないのに、彼だけは別だった。
けれど今日は珍しく彼の心の声も聴こえてくる。
「今日は調子が悪いから、会いたくないんだ」(そうだ、すごく調子が悪いんだ)
xxの言葉と、心の声がダブって聞こえる。
(そんなに調子が悪いなら、一人にしておけないよ。君には家族も居ないんだし、ご飯も困るでしょ)
「良いんだ。一人にしてくれ。腹も減ってない」(どうせいつも一人だから平気だ)
(せっかく来たんだし、少しだけ顔を見ていくよ)
「駄目だ。ドアを開けたら絶交だからな」(今日は駄目なんだ。帰ってくれ)
彼は頑として扉を開けようとしてくれなかった。
それに、声を聞く限りはそれほど体調が悪そうには聞こえなかったし、ぼくは彼の言葉に従うことにした。
(分かった。でも、体調が悪くなったら連絡してね)
「ああ」(心配させて悪い。でも心配しないで欲しい。体調は別に悪くないんだ)
彼の言葉を聞いて、この日は家に帰った。
けど、彼は一体どうして学校を休んでるんだろう? 漏れ出していた心の声では、体調は悪くないと言っていたから、きっと本当に体調は悪くないだろう。
だったら、学校に来ればいいのに。もしかして、この世界が嫌になっちゃったのかな? ……それはありえない話じゃない。それに、心の声が漏れ出しているのも気になった。あれはいったいどういうわけなんだろう?




