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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
わかる世界(2011年8月)
8/33

(今日もxxは休みだ)


 朝のホームルーム。先生が心の声でxxの欠席を告げた。


(えー今日も休み? これで2日連続だぞ)


(病気かなぁ?)


 クラスメート達は、ザワザワと心の会話を始める。


 本当にどうしちゃったんだろう? もしかしたら、本当はひどい病気なのかな? でも、それなら家に居ないで病院に行くだろうし、よくわかんない。


(飛鳥。お前はxxと仲が良かったよな。今日の放課後に様子を見てきてほしいんだが、どうかな?)


(はい。行きます)


 ぼくは心の中で答えた。


(助かるよ。あいつは変人だから、困ってるんだ。心も閉ざしっぱなしで、何を考えているかわからないしな)


 先生のその考えは、少しひどいなって思った。

 けど、この世界じゃあそういうショックに慣れないと生きていけない。

 この世界じゃ、心を閉ざすのは変人なんだ。普通じゃないから、仲間はずれにされてもしかたない。


(……はい、わかりました)


 だから、その考えは心の奥底にしまっておいた。


 放課後になってから、ぼくはxxの家に向かった。

 まあ、頼まれなくても行くつもりだったけどね。


 彼の家のチャイムを鳴らして玄関の扉を叩くと、(また飛鳥か)というxxの心の声が聴こえてきた。


 それと同時に、階段を降りる音が扉の向こうから聴こえてくる。


(まだ体調が良くないの?)


「ああ、うん。ダメだよ。でも心配するほどひどくはないから、安心してくれ」(いや、ほんとうはすごく悪いかも……)


(もう2日も休んでるし、理由くらいは教えてよ)


 ぼくが質問すると、扉の向こうで足音が止まった。

 xxはこの扉の向こう側にいるんだろう。だけど、彼は黙り込んで、なかなか喋りだそうとしなかった。


「実はさ」

 突然、xxは喋り始めた。

「長い時間心を閉ざしていたら、頭がおかしくなったんだ。心の声がどんどん大きくなってきて、それを閉じ込めておけなくなったんだ。心を閉ざしておけなくなって、心の声がダダ漏れになってるんだ」(俺は頭がおかしくなったんだ)


(病院には行った?)


「外に出られないよ。心が読まれるから」(知られたら終わりだ)


 彼はすごく怯えていた。

 もしかしたら、本当に病気なのかもしれない。

 それにしても、いったい彼は何をそんなに怯えているんだろう? この世界じゃあ、他人に心を見られることくらい当然のことなのに。



(部屋に入っても良い?)


「だめだ、絶対だめ」(飛鳥には知られたくない。他の誰よりも、飛鳥には)


(でも、心配だよ)


「心配要らない。来週になったらきっと、普通に戻ってるからさ」(本当は大丈夫じゃないと思う。けど、誰にも会いたくないんだ)


 ぼくはすごく悩んだ。xxをこのまま放っておいて良いのかな?


(やっぱり、入るね)


 ぼくは覚悟を決めて、玄関のノブを回した。ぼくに何ができるか分からないけど、これ以上放っておくのは、いいことじゃない気がしたから。


「来るな!」(開けたら殺す)


 けれど、あとは扉を押すだけというところで、xxが怒鳴り声をあげた。

 ぼくは驚いて扉から手を離した。


(……なんでそんなに怒ってるの?)


「出ていってくれ」(怒鳴って悪かった)


 そしてぼくはまた、彼の家から追い出された。

 厳密に言えば、家というよりも、xxの心から追い出されたんだ。あんなに必死になって隠し事をするなんて、それに、学校を何日も休み続けるなんて、普通じゃない。たぶん、誰にも言えないような秘密を抱えているんだ。

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