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第97話:山羊男と食事会をする策士

山羊男のキャベツがサントシティから帰ってきた

山羊男がリメシュを探しているとイコノとペペが応接室に一緒にいた


「リメシュ…何をしている?イコノもなぜいる?また報酬の話か?」


「おかえりなさいませ。イコノ様が上様にお話があるそうでお話をしていました。」


イコノが待ってましたと言わんばかりに手を組んで申し出をした


「今日は私が個人的にサイドビジネスの許可を取りに来ましてね…。よろしければ私に郷土料理を作らせてください。食事をしながら話をしましょうよ。」


「どういうことだ?偉く馴れ馴れしいな…ホームパーティーという奴か?」


「まあ、いいじゃないですか?報酬の話をしてばかりであなたに悪い印象を与えたと思いましてね。ちょっとした名誉挽回ですよ。」


イコノがにやけ面でキャベツに話をしているとペペが割り込んできた


「私も手伝うニャー。郷土料理なら私も鍋料理が得意だにゃん。」


「貴様は邪魔するなぁああ!帰れぇええ!」


「ペペはイコノの食器や配膳を手伝ってやれ…俺はリメシュと話がある…」


山羊男の指示にイコノが理解できない顔で渋々納得するのだった…


「はぁ?…まあいいでしょう…こんな糞猫といると調子が狂う…」


「モスマン君よろしくにゃん。あんまり怒らないでほしいにゃん。」


「チッ…わざと怒らせてるのか?この糞婆…私をあまりおちょくらないでいただきたい…」


ペペはその言葉に眉をひそめたが我慢した…


「ばばあ…うん…大丈夫…一緒に手伝うよ…」


拳を握りしめてグググと音をだしていた…



◆山羊男が人間の少年に内心を話す◆


山羊男はリメシュと一緒に家の奥の私室に連れて来た


「お前の服を買ってきた。お前の服が少なかったしシルバナに人間の服は売っていない…だから買ってきた…」


「え?…私にそんな…あなたは私が死んでも何思わないと言ったのになぜ?」


キャベツは自分の内心をリメシュに教えた


「俺は情など欲しくない。自分でも感じたくないし必要もない。だが命が無駄に死ぬのは良くないと考えるのは俺に情があるからだと最近思った…」


「捨てたくても無意識に湧くのかもな…お前が死んでも何も感じないのではなく俺が感じたくないと願っているだけかもしれない…」


「今の所、死んだから困ると思ったのはバロットとモデファルくらいだ。奴らは利益を狙う奴らだがいなくなると困る点も多い。」

「バロットとは風見族の中では一番付き合いが長い。危険もわかった上でいる奴は貴重だ。」

「モデファルはいないと信用できる商人が少ないから呪詛の実を売るのが困る。」


「過去に俺を襲った罰として魔王のイテミスに石を投げるように命令したロックオークがイテミスの怒りで殺されてしまったから俺は後悔した…」


「ケセマ村を観察しているときはラグド帝国の姫のエクラルがお前らを脅すために飽きたペットの犬を殺すのを俺は見ていた…観察のために透明の魔法がかかった布で見ていたが見捨てた気分になり後ろめたくなった…」


「襲った奴や危険な連中を殺すのは平気だが俺の落ち度で死んだ連中には後ろめたさがある。俺も勝手かもな…」


リメシュは嬉しそうに服を手に取った


「ありがとうございます…私は父親が嫌いでした。いつも領地の農民が水の引き合いや自分の主張ばかりと悪口やあの家系は代々馬鹿とか文句を食事の時に聞かされてうんざりしていました。」


「でもあなたは違います。あなたが何も感じなくても私はあなたに対して嬉しいと感じます。あなたが父親なら良かったです…」


「領民から私が父親の悪口を聞かされて私が黙っていたら家に帰ると父親から食べ物を投げつけられて身内が馬鹿にされて黙っているお前にはがっかりしたとか言いましてね。」

「私の父親は人間的に何の価値もない男ですよ。」


キャベツはリメシュの怪我に気がついていた。話を優先度が高い順番にして目先の話をしないのが山羊男流である


「怪我はどうした?なぜ傷ついた?」


「いえ…転んだだけです…」


「そうか…言いたくないなら聞かない…シルバナの連中か?人間を嫌う奴らもいるからな。」

「シルバナに預けるつもりもあったがその様子なら無理だな…」

「サントシティで里親を探しに行ったが無駄だった…しばらくここにやはりいろ…」


「もちろんです。私はどこまでもついていきます。あなたが死ぬなら私も死にましょう…」


「つまらない上に下らない…他人に行動を合せるのは思考の放棄と同然だ…お前が自分で考えて選べ…」


山羊男はリメシュが人間社会に帰るのを望み始めていた…



◆食事会のテーブルで◆


山羊男と少年と猫耳獣人と蛾の亜人が席に座った

呪呟族の蛾の亜人であるイコノの郷土料理は魚を刻んでポトフのような野菜のスープのようだった


「どうぞ。私の郷土料理のスープです。お待たせしました。」


「ぺぺちゃんも見てたにゃん。モスマン君は毒を入れていないにゃん。」


ペペの挙動や発言にイコノは完全に頭に来てしまった…


「お前は玉ねぎを食って死ねぇええ!」

「申し訳ない。皆さん、食事を始めましょう…」


山羊男のキャベツはスプーンを手に取りイコノのスープを食べ始めた


「お前の料理はシンプルでいい…イコノ…お前の目的はなんだ?」

「バロットは自分の世界への存在感が欲しい…ベルトラは国が欲しい…どちらも俗物だ。」

「幾度も拡大路線を目指した連中が望んだありきたりだ。お前はなんだ?」


山羊男の質問にイコノは眉をひそめてスプーンをテーブルに置いて答えた


「私は自分の必要性が欲しい…いつまでも誰からも必要とされる存在に…昔から願いを叶う道具を欲しがる物語は多い。私は願いを叶える側になりたいのですよ。誰からも求められる存在にね。」


「なるほど…物を欲しがる連中よりは興味深い…必要とされる側か…」

「だがそれはクズしか寄ってこない意味だ。お前はそんな需要に応える側でいいのか?」


イコノは山羊男の考えが甘いと笑みを浮かべた。生きていく上では付き合う相手は多い方がいいと語る


「クズも立派なお客ですよ。私が提供をする側なら相手もそれなりの物を私が請求できる。需要に応える側になるのがこの世で最強の存在なのですよ。だから大企業は威張っている。」


「イコノ…お前に教えてやる。過去に先住民を大勢殺して土地の資源を奪ったギャングの実業家がいたらしい。資源を欲しがる側に頼られたがやがて事情を知った他のギャングがその実業家の家族ごと殺し今度は先住民の生き残りが土地の資源の売買に関与した連中を延々と毒殺した…」


「クズの相手をするとはそういうことだ。奴らは理性があるようで野獣だ。感情一つで予想できないことをする。気を付けることだ。」


リメシュを見てイコノは話題を変えサイドビジネスの話を伝えた


「話を変えましょう…私はアルガナ村が気に入りましたよ。ここに別荘を買って教育ビジネスを始めたい。魔法の塾なんていかかでしょうか。」

「そのうちアルガナ党員も家族を持ち始めるんじゃないですか?だから子供に魔術を教える場所があると面白いと考えました。」


「そこのリメシュ君に教えるのはどうですか?金を払えば私が教えましょう…」


「ぺぺちゃんも教えてほしいにゃー。肉球で相手をメロメロにする魔法とかあるかにゃー?」


テーブルで先にスープを完食して話かけてきたペペにイコノは憤慨するのだった


「うがぁああ!お前は話に入るなぁあああ!」


食事が終りかけたその時キャベツが魔法についてイコノに聞いた


「やはりペペに苛立つ奴もいるか…」

「イコノよ…この世に魔術は必要だと思うか?学者が言っていたが龍の残したインフラシステムらしい。」

「武器と同じと言えばそうだが生きるためには必要ないものだ。お前はどう思う?」


山羊男の素朴な問いに手を組みながら誇らしげに語る


「あなたは理知的に見えて考えが浅い部分がある。世界が魔法を必要とするなら自分が使える側になった方が得策ですよ。世界に合せるのです。自分の理想を世界に問うのではなくね。」


「お前は得をするのに適した性格かもな…お前がもし俺の力があれば即座に世界を手玉にできるだろう…」


「俺は征服や支配者としては興味がないばかりか恐らく無能だろうからな…」

「この世の強者気取りの連中から依存される存在になれると思うが恐らくお前はいずれクズの相手にうんざりするだろう。」


「フフフ…謙遜に誉め言葉ですか。あなたは人を見る目がありますよ。私の才能を見抜いているのだから…フフフ」



◆魔法使いの徒党◆


キャベツはリメシュを見て魔術に興味があるか聞いてみた


「イコノの魔法の塾は場所を制限するが許可しよう…リメシュは魔術に興味があるか?」

「亜人の多数派は魔法を使う。アルガナ村で丸腰の人間は力関係では最下位だ…」


「しかし、私はそこまで学が得意でありません。貴族学校でも真ん中位でしたし…」


「わかった…学業も適正があると言うからな。スポーツの得意下手も学業でもあると聞く。お前がやる気なら俺が手を打とう…」


イコノは山羊男がリメシュを心配しているか確証が欲しかった…

そこで山羊男が怒りそうなことをあえて聞いてみる


「話はそれますが食事も終わりましたしあなたに聞きたいことがある。」

「先ほど、クズの話をしましたね?あなたは過去に魔人を子供も大人も殺した。そしてセアフスシティには人間を攫い改造し放流し人畜実験と称して人間の内面を探る社会実験をしている。」


「これは人間からみたらあなたはクズに見えるでしょう…おまけにリメシュ君をえこひいきしているとも言われてもしかたない。あなたは自分をどう思いますか?」


キャベツは悩んだ表情になり耳を傾けながらイコノに切り返した


「お前の言う通り人間から見ればクズに見えるだろう…俺はクズと思われても仕方ない。」


「順番に理由を教えよう。まず魔人についてだ。俺が戦った魔王は魔龍の力を扱えた。魔龍の力は間違いなく世界を破壊できる代物であり魔人は略奪民族で身内でも実力主義のピラミッド社会だ。龍の大王である創魔龍を信仰し自分たち以外を糧にして当然と考える連中だ。」


「魔王を殺してもまた魔人から魔龍の力を使える奴が出た時に俺がいないと亜人や人間は奴らの奴隷か気晴らしの殺し相手にされる。だから俺が手を打った。人間の英雄共の責任でもある。何度か魔王に勝った時代に魔人共を子飼いにするなり滅ぼすなり手を打てばよかったのだ。」


「それなのに魔人は強く生まれたことに胡坐をかき征服欲に駆られた魔王が出た時代に戦争をする。そうなると他の部族の子供も大人も戦死や餓死や奴隷扱いされて惨めに死ぬ。それは俺が魔人を根絶やしにしなければ延々と起こるリスクだ。」


「魔人の子供が可哀そうとかぬかした連中もいたが大人になった子供が何度も殺戮と略奪を繰り返し威張っている…これはもう失敗種族としか言えないはずだ。」


「それに魔王は俺の顔が嫌いだと言って山羊を絶滅させるともいった。だから俺が魔人を絶滅させても奴らのやり方に沿っただけだ。」


リメシュは食器を片付けながら笑顔で褒めたたえた


「上様がそうおっしゃるならクズとぬかす者が間違えでございます。魔人たちも神の神罰を受けたのです。甘んじて滅びを受け入れるべきですよ。」


「リメシュ君…怖いにゃ…」


ペペが引き気味で反応しているとキャベツが話を続けた


「次に人畜実験についてだ。これには理由がある。俺は人間からずっと虐待を受けて生きて来てある日、怪物の存在になった。」


「人間はもう怖いから関わりたくないと思っていたが街から逃げようとしたら奴らは娯楽目的で俺を剣で突いた。」


「だから俺は恐怖と怒りでやった奴らを全員殺した。それでシルバナに来て紆余曲折の末に風見族から許しを得た上でここに留まった。だが人間の殺し屋が来た。」


「俺は我慢の限界を迎え人間が魔人と同じか知りたくなった。だから人畜という人間が格下に使いそうな存在を用意し奴らの動向を見ようと思った。」


「一番の原因は人間共がやったくせに責任を取らないで逃げるからだ。だから全員にとらせる。」

「そして俺に何の罪も咎も人間共は言う権利はない。家畜を食い物にしているし無駄にペットを殺す…だから俺が奴らにしたところで家畜の反撃だ。人間に弁論する価値はない。」


「だが人間を消したところで亜人が似た立場になるだろう…だからテストで助かる余地を与えているのだ…」


リメシュはコーヒーをキャベツとイコノとペペに配ると席に戻った


「慈悲深いと思います…それほど人間に惨い目に会わされたのに慈悲をくださるとは…それでもチャンスを不意にするなら人間など滅べばいいのです。私もその時は消えましょう。」


(この小僧はやはり心の支えがない…だから信仰に逃げていますね…)


コーヒーをイコノは飲むとキャベツは最後にリメシュについて説明した


「俺は人間の子供が可愛いなどと思わない…所詮、可愛いという感情は庇護欲を刺激する戦略の一つだからだ。俺には必要ない。」


「リメシュが来たのは成り行きだ。俺がケセマ村を調べに行ったときに偶然助ける羽目になった奴隷達の一人がリメシュで俺に依存してここまで来た。俺は引き離そうと里親も探しシルバナにも条件が悪いため近くに置いている状況だ。」


「俺としても対応がわからないから近くに置いている…それをえこひいきと言えばそうかもしれない。イコノ…お前はリメシュを俺はどうすればいいと思う?」


イコノはキャベツがリメシュに動揺しているのを確信して狙いを定めた…


「私にお聞きになるとは…。一緒に居ればいいと思いますがね。そうすればその少年もあなたの迷いも晴れますよ。あなたは真面目になりすぎて学ぶ機会を失いがちです。人間を知りたいなら近くに置けばいいと思いますがね。えこひいきでもいいではないですか?」


(間違いない…この小僧はこの怪物の情を引き付けていますね。当たりが一発目で引けるなんてね…フフフ)


しかしペペが水を差すようなことを小耳にはさむ


「モスマン君もいいこと言うにゃん。リメシュ君と入ればキャべちゃんも優しさを理解するとおもうにゃん。でもモスマン君が良いこと言うと怪しいにゃん。」


「この猫ばばあぁあああああ!失礼しました…あまり怒りっぽいと気が小さい男に思われますね。今日は良い日でしたよ。魔法塾の土地と建物については今度、また話しましょう。失礼します…」


イコノは退席して家から出た…


「フフフ…アルガナ村には手を打った…いつでも戦闘員は無力化できる。後は魔導士協会の連中が私に従うかどうかですね…フフフ。あの糞猫は終わったら殺してやる…」


しかしペペが外に出て来た


「なんですか?私に御用で?」


「ぺぺちゃんにババアって言わないでほしいにゃ…リメシュ君に聞かれるにゃ…」


「視界から失せろ!化け猫が…お前は何歳だ?人畜は年がわからんからな。ババアは図星みたいだな。消えろ…」


ペペは泣き始めた…


「えぐえぐ…ひどいにゃ……チッ…煽るなら乗ってやるよ…貴様は死ねぇええええ!」


ペペは急に動くとイコノの腹を殴り暴行した


「ぶはあああ!なんだ?力が強い…」


拳を振り上げてイコノをゴッゴッと顔を殴打して血を吐かせる


「ラグド帝国の攻撃に備えて自衛のために私は人間の4倍は筋力が改造されている。だから舐めて煽っていると殺す。」


最終的にイコノを持ち上げてキャベツの家の庭に投げ捨ててペペは帰って行った


「モスマン…あんまり悪口いうとまたぶちのめす。害虫の蛾になるなよ?」


ドサ…


「ぶは…あの化け物…ゆ…ゆるさん…語尾は普通に話せるくせにわざとか?…くそ…屈辱だ…呪ってやるぞ…」


「クズは感情一つで予想できないことをするか…あの糞猫がまさにそうだな。山羊の癖に教訓にはなったよ…ぬがああああ!」

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