第98話:山羊男とクレーマー
今回の主要人物
山羊男:不満の化身であり半ズボンを履いた山羊頭の男
リメシュ:過去に人身売買のギャングから山羊男から救われた12歳の男
イコノ:山羊男に社会実験のために雇われた呪いの魔法を扱う達人であり需要の供給側を志す野心家
第98話:山羊男とクレーマー
シルバナの領地にあるアルガナ村より
山羊男のキャベツは自宅でアルガナ党での風見族の代表であるバロットから報告を受けていた
「報告が二つありまーす。呪詛の実を大量に盗んだ裏切者のカケマが龍化してレセプトを襲いレセプトの守衛であるパリウスさんに仕留められて死んだそうです。」
「もう一つがアルガナ党の第一回の幹部会があります。そこでご意見番としてあなたに出席をお願いしたいのです。」
キャベツは資料を受け取り議題について目を通す
「わかった…だがずっとは居ない。俺は長話をしない。要点だけ俺が意見を言って後は退席する。後はお前らがまとめたことを俺に言え…」
「ボォオオオン!」
話している最中に外で爆音が聞こえたのだった
「まったく…俺がしなくても仕掛ける奴がいるものだ…気を引きたいのなら乗ってやる…」
キャベツは歯茎をむき出しにして外へ向かう
「バロット…アルガナ党員の連中に客を攻撃しないように伝えろ…それと外敵の対応はマニュアルの3番に沿うようにと言え…」
「うぐ…ゲホッゲホ…」
バロットは苦しそうに胸を押さえて苦しみだした
「どうした?急病か?そこにいろ…呼吸困難か?医者を呼んでくる…」
キャベツが医者のいる建物へ行こうと外へ出るとアルガナ村の構成員達が苦しんで道端に倒れていた
「ゴホッゴホッ…ガホッ…」
「誰かが仕組んだということか…」
キャベツの前に自宅の奥からリメシュが走って来た
「リメシュ…お前は無事の様だな…」
「何事でしょうか?バロットさんが話せなくなるほど苦しんでおられますね…攻撃ですか?」
「明らかに罠だ…お前は家に居ろ…」
◆大きな音を出した連中◆
キャベツは家の外へ出るといかにも魔法使いの格好をした集団がアルガナ村の外の入り口にいた
同じ服装の20名程の小隊だった
「何の用だ?俺と戦いにきたのか?どこも壊れていないが…村民が倒れたのはお前らの仕業か?」
キャベツが集団に歩いて近づくと先頭にいた男が前に出た
「さっきの音は爆響玉という道具だ…冒険者共も使う珍しくもない音を出すだけの消耗品だ。」
「貴様か?呪詛の実を売ってる奴は…」
「お前は何を根拠にそんなことを言いに来た?俺が売っている証拠があるのか?」
「私は魔導士協会のローディグ王国の支部長…マリクスだ。」
「お前の所業は風見族の呪詛の実の運搬などネタは掴んでいるぞ!」
「お前はローディグ王国の憲兵か?本当だとして俺を捕まえるのか?」
「果物を売るのはこの国では違法ではないはずだ…」
「魔法使いは神に選ばれた存在だ…人為的に魔力を得るなどと…神や我々に対する冒とくだ」
キャベツは首をふり不愉快そうに目を細める
「お前らの希少性を脅かしたから文句を言いに来たと言うことか?ならお前らの怠慢の結果だ。人材も商品も競争のはずだ…他人を邪魔してお前らの優位性を確保しようとしている…」
「そして魔法は龍がもたらしたと学者は言っていた…神は関係ないだろう?」
「魔導士協会なら本で読んだ…魔法使いを教育や研究をしている世界的な団体だったか?」
「俺を倒しに来たのなら勝負してやる…だが戦えば全て殺す…」
マリクスは呪詛の木について場所を聞き出そうと睨みつけて威圧した
「呪詛の木を教えろ。お前はどこにそれを持っている?それを教えろ。二度としないように没収する。」
「正気で言っているのか?ここはシルバナだぞ?風見族の許可は得たのか?怪物の俺の方が間違いを言っているのか?」
キャベツが呆れ気味に答えていると後ろからリメシュの悲鳴が聞こえた
「ぐあああ!」
「油断しましたな…あなたは怪物のくせに人が良すぎる…」
人畜にアルガナ党のことは喋れないように呪いをかけていた蛾の亜人である呪呟族のイコノがリメシュを捕まえて歩いてきた
「お前には金も払って呪詛の実も与えただろう?…なぜこんな真似をする…お前がこいつらを呼んだのか?村の連中の容態はお前の仕業ということか…」
イコノは不敵に笑うと飄々とネタ晴らしを行った
「呪呟族は蛾の亜人。羽もありますが飛行はできない。鱗清族は水中で活動ができる。風見族は空を飛べる。呪呟族は鱗粉に呪魔法の触媒に出来る…羽から魔法の鱗粉を生成し呪魔法に役立てる…」
「私は度々来ては村の地面に鱗粉をまいていた。亜人の大体は靴を履かないはだしです。足元に鱗粉をまいて呪魔法:苦息悶という呼吸をするたび息苦しくなる呪いを私の合図で発動するよう仕込んでおいた。党員は歩いている内に私の呪いにかかっていたと言うことです。」
「あなたがずるいからですよ。一人だけ強大すぎる。だからあなたに私のためにズルをしてもらいたい。」
キャベツは初めて裏切りを経験し今までにない感覚に襲われた
「俺は損をさせない約束なのに裏切られたのは初めてだ…なんだ、この気分は?怒りか?違う寒い気分だ…失意か?」
「お前はどこまで喋った?呪詛の木以外を話していたらお前の退路はない…」
イコノは自分の意図を上機嫌にじれったく話し始める
「呪詛の木を魔導士協会に少しだけリークしただけですよ。得にならない情報は売りません。あなたは人間に対する脅威…悪者ですよ」
「人間が俺に悪さをするのは正義なのか?まあいい…お前らは理屈ではない…自分の損得や利益だと信じている物事を優先しているだけだ…理由など無意味な連中だ…」
「お前は呪魔法の達人だ…人質なんかお前に必要なのか?」
「少しあなたを試そうと思ってですね…この哀れな少年に反応するか見たかったのですよ…」
「俺は亜人も人間が死のうと何も思わない…お前の行動は無駄だ…ただ寒気と怒りを感じるだけだ…イコノ…お前の要求はなんだ?何をすればいい?」
すると魔導士たちの一人一人の手からロープのような魔法でキャベツを縛り上げる
ビシュッ!と放たれ体に巻き付くとメキメキと音を立てる…
「拘束魔法:束縄剛締…属性が無い拘束用の連帯で組むほど威力が増す上級通常魔法…」
「ぬぐ…罠にはまったのは俺だが相手の選択肢をずるずる奪っていくやり方がうまい奴らだ…」
その様子にイコノはペースが乗っているとニヤリと笑みを浮かべる
「あなたが後手に回るとは私が今回は主導権があるということですね?あなたが冷血ならこんな隙は出さずさっさと私達を人質ごと殺すはず…あなたはセンチメンタルですよ。」
「この少年は喋れません…体を動かしても焼けるような痛みが走る呪い…呪魔法:焼悟をかけています…」
「そしてあなたはそれを味合せましょうか…呪魔法:呪伝撒という呪われた人物の呪いを相手にもリンクさせる呪い…」
イコノはリメシュから魔力を少し取り出してキャベツに投げつけてまとわりつかせる…
「どういうつもりだ…」
「あなたは攻撃には対抗できますが苦しみや感覚に訴えかけるのはどうでしょうか?眠気に勝てるボクサーはいないように……あなたもできないことがあるはずだ…」
「この状況でこの少年を痛めつけると…」
イコノはリメシュの背中をボスっと殴る
「あぐう…」
するとキャベツもジリジリと焼けつくような痛みに襲われうめき声をあげた
「ぐう…リメシュの痛みが俺に伝わるということか…お前は誰も批判する資格はない…そしてお前は眠気に勝てる奴がいないと言ったが俺は怪物になってから眠気を感じないし寝たこともない…」
「ほう魅力的ですね…私はあなたと同じ存在になりたい…亜人よりも人間よりもつよくなりたい…呪詛の実などけち臭いですよ…なぜ山羊がそうなったか調べさせてもらいますよ?」
「龍より強い力が現れた…それは龍が現れた時代も似たようなことが言われたはずだ…強い新しい存在になりたい。」
「お前の望みは生き物らしい願望だ…生き物が強い存在に憧れるのは自然の摂理だ…動物の大型化などがその例だ…だが俺は違う…俺は弱者の側から発生した存在だ…お前が俺を強く見えるのは誤解だ…俺はまやかしにすぎない…その証拠に種としてこの世に残らない存在だ…」
イコノは苛立ちリメシュの腕をひねる
「ぐああ…」
「あなたのロジックなんか誰も受け入れませんよ。あなたが弱ければアルガナ党という愚連隊も集まらないように…私と同じで実利が欲しいだけですよ。」
キャベツの周りに歪んだ空間が数秒現れた…縛っている魔力のロープに電流のようにキャベツは歪んだ空間のようなエネルギーを流す…
すると魔導士たちは急に悶え苦しみ始めた…
「うあああ!」
イコノは驚愕しうろたえ冷や汗をかく
「なぜだ?攻撃はしていないはず…何をしたんだ?」
「俺は攻撃をしていない…同期能力を得た…俺の状況を選んで相手にも与える…今回はお前の呪いをその拘束魔法に伝わらせて全員にかかったということだ…」
「お前は俺のようになりたいとぬかしたな?お前は四つん這いの山羊のように改造してやる…」
「待て!この少年がまだ呪いにかかっているぞ?それに私が死ねば口封じの呪いは今後の人畜にかけれなくなるぞ?」
「それならこの同期能力がある…すでにかかっている人畜から新しい人畜に呪いを同期させればいい…」
しかしイコノはキャベツの行動が遅いのを見抜きリメシュに躊躇していると考える
「喋ってないで殺しにこないのはこの少年を気にしているからですね?この少年は人質の価値がある!」
「お前は俺しか見えていないのか?ここはアルガナ村だ…お前も知らない情報もある…」
「周りを見てみろ…村にいる連中以外も伏兵という存在がいる…」
イコノが周りを見ると獣畜が遠くから囲んでいた…
獣畜とは山羊男から改造された家畜やペットの怪物でありコモドオオトカゲのような猫やワニの体系の犬が迫って待機していた
フーッと猫が威嚇する音やヴゥウウと犬が唸る音を鳴らしながら魔導士たちを見ている
「なに?まさか…」
「俺がいなくともお前らは死んでいた…アルガナ村の連中を封じたお前はやり手ではあったがな…」
魔導士のマリクスは煙幕を自分の足元に投げボフッと姿を煙の中に隠した
「転送魔法:天任人運…これまで訪れた印象深い場所のどこかにランダムで飛ぶ未完成の転送魔法…ここを私だけでも離脱する!」
マリクスは仲間を置いてパシュンと消えていった…
「人間で俺にクレームで来る奴らは特に愚かな連中らしい…今度、まともな奴に話を聞きに行くか…」
「イコノ…リメシュを離せ…村の連中も呪いを解けば食われて死ぬのは止めさせてやる…人質をとっても状況は変わらんぞ?逃げきれると思うか?…」
獣畜が近づいて来てイコノは渋々、呪魔法を村から解いた
「ぬうう…魔導士協会も使えない…子供が人質でもこの状況は続く…命だけは勘弁してくれ…」
「こいつらを捕まえろ…色々話そう…いい訳も聞くのもたまにはいい…」
◆少年は山羊男に…◆
解放されたリメシュはキャベツに歩き寄り陳謝していた
「なんと申せばいいのか…私ごと攻撃すればよかったのに…」
「お前のことが大事な訳ではない…無駄に死ぬのは避けるべきだと思ったからだ…お前じゃなくても似たような展開になっただろう…」
「お前が死ぬにしてもイコノが責任を負うべきであり俺の責任ではないし気にする必要もない。」
「そんなわけはないでしょう?私が捕まっている間、上様は躊躇なされました…上様の隙になったことをお詫びしたいです…何をすればいいでしょうか?身を切ればいいのでしょうか?」
キャベツは不快そうな顔になりリメシュを叱責した
「無意味な自傷行為はやめろ…俺にはなんの興味もない…お前も安っぽい救出劇で感動しているなら深く考える知能がない…」
「それではお側で恩返しをさせてください…命じれば何でも行います。私の命はあなたに捧げます…」
「俺に命を捧げるなどくだらないが手を貸してくれると助かる…お前も人間の世界に帰る準備をしておくのだな…人畜実験で人類が生き残る資格を得る可能性もあるのだから…」
そんな中、事件の中心人物がうめき声のように声が聞こえた…
「助けてくれ!深く詫びる!償うチャンスをくださいよ!」
イコノは呪いが解除されたアルガナ党の党員に取り押さえられリメシュを見ていた
「お前も俺と対等な関係を結んで入れば眼能を得る機会もあったものを…上に立ちたがるのが仇になったということだ…お前は山羊になる価値もない…ゴミ以下の龍になれ…呪詛の実を大量に食わせて龍化させた後で龍姿研究会にくれてやる…」
その様子を見ていたリメシュは山羊男に意外なお願いをした
「すいません。お願いがあります。イコノさんを殺さないでください。」
「なぜだ?奴は生かす価値がない。実験動物にして切り刻まれればいい。」
「イコノさんは魔法が得意でずる賢い…色々、教えてもらいたいのです。」
山羊男はどうするか迷った様子で耳を動かしながらイコノを見ている…
「ありがとう!リメシュ君。君の役に立とう!魔法塾で色々話そう!今回は無かったことにしくれ!キャベツさんもリメシュ君の頼みを聞いてくださいよ? 命は無駄に死ぬべきじゃないのでしょう?」
リメシュは自分の手のひらをナイフで切ってイコノの頭に血を垂らした
「なんだ?なんのつもりですか?」
「これは誓いですよ。二度とあなたに騙されないという私のまじないのつもりです。」
山羊男はリメシュを見て注意をするのだった
「お前がその男から学びたいのならちゃんと見張るんだな…イコノがまたやったらリメシュが殺せ…それでいいならイコノは塾に住ませて見逃してやる。10年はアルガナ村に住むんだな…」
「いや、駄目だな…リメシュが殺したら人間社会に復帰が難しくなる。俺がやろう…だがリメシュ、イコノに人質にされても今度は見捨てるぞ…」
(くうう…いつか見てろよ?私が最後にだしぬいてやる…このいかれた小僧をまた利用してやる…最後に笑うのはこの私だ!)
しかし遠くからペペが走って来て取り押されたイコノの側によった
「ペペちゃんがモスマン君を連れていくにゃん。息苦しかったにゃん…」
「この野郎…やりやがったなああああ!」
ペペはイコノに馬乗りになり殴り掛かった
「ぶはぁあ!」
ゴッ!ガッ!と拳を振りイコノを痛めつける
「謝れ!糞野郎!謝っても許さん!」
「リメシュ君!こいつをなんとかしてくれ!助けてくれ!」
「ああ?私に言えぇえええ!」




