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第96話:山羊男とマスコミアレルギーの男

山羊男のキャベツはサントシティに来ていた

サントシティの役所のお悩み相談窓口に座ったが職員たちは固まり視線は一斉に山羊男を向いた


「…お客様…何の御用で…」


「犯罪グループに売買された子供の里親は見つかるか聞きに来た…だがそいつらは役人とギャングが結託した集団で俺を襲ったから連中を大勢殺した。奴隷売買で買い取ろうとした子供を脅迫していたラグド人の姫も俺を不意打ちで襲ったから殺した。だから俺がその子供を引き取るわけにもいかない。」


「俺は奴隷を助ける気ではなく調査に行っただけだったが、その子供は俺を神だと依存してその子供にも良くない状況だ。里親は見つかるか?俺も対処に困っている。」


「うあああああ!」


役所は大パニックになり全員脱走した…


「リメシュは人間社会には帰れないのか?…もう少し当てを探すか…ただで帰りたくないな…」


キャベツが新聞を買いに売店にやって来た…

街にパニックが起こるが雑誌と新聞をかごに入れていく…


「情報はできるだけ集めなければならない…現代の今がどういう情勢か知らなければならない…」


すると一人のおっさんが酒を飲んでベンチに座って嘲笑をした


「おいバケモン?そんなもん嘘だよ?フェイクだよ。大企業や政府から金を貰って嘘しか載ってねぇよ?」


「その証拠はあるのか?それならばお前がこの手の情報源になるはずだ…だがお前は間違いなく情報源になっていない…なぜ嘘だと言い切れる?」


「今までがそうだからだ。前に新種のウィルスによる騒ぎがおきてよ?一般人の迷惑なおっさんが感染したのに出歩いて死んだのはみんな馬鹿にして終わったが有名人が病死したらみんな大パニックだよ。それはメディアが恐怖をあおって薬やマスクの売り上げの貢献をするためだ。」


「みんなマスコミに騙されるから俺は騙されてないんだ。そして政治家が悪さしたら有名人の浮気や不祥事がニュースになって愚民の注意力を減らしている。みんな馬鹿なんだよ。」


「お前の言い分が正しいと仮定しよう…もし本当なら危険なウィルスを報道する意味もないはずだ…政治家や金持ちが本当に事実を隠しているならそもそも報道する意味がない。社会を混乱させても税収や企業の売り上げが減り奴らのメリットがないからだ…」


「それに本当でも嘘でも俺達に確認する術はない…お前の話が事実か確認できないのと同じでな…だがマスコミは金を貰って仕事をしている…お前よりは情報を集めているはずだ…」


「社会が混乱するのはお前の言う通り、情報で混乱する愚民が集団でパニックを起こすからだ…だがお前の指摘でそれは改善していない…お前の情報が無価値だからだ…」


「愚民とは情報を活かすのではなく情報で騒ぐことが目的になっている。だから騒ぐのだ。そしてポピュリズムに走った権力者はそれに乗って余計に混乱させる。失政と愚民は大体の場合はセットだと俺は思う。」


自分が言われた側になるのが我慢ならない酔っ払いはキャベツを煽る


「お前はマスコミに乗せられている。お前の言い分は奴らに騙されて味方にされているんだ。」


「お前の存在が嘘だと言われても俺は信じられない…目の前にいるからだ…そしてマスコミは情報源を調べてまとめている…俺も粗悪な雑誌や新聞ははじいている…お前は卵をすべて不衛生だといって食べないのと同じだ。俺は卵を食べたいから中身が奇麗なものを自分で選んで探している…」


「お前はただの食わず嫌いだ…鶏を否定すれば肉も卵も食べられない…」

「そして情報を得た後は、なぜマスコミがそれを掲載したのか意図を考えるのが俺の情報の読み方だ…」


「もうマスコミの評価は聞きたくない…お前が真実味のある話を持ってきたら聞いてやる…金を払ってもな…」


酔っ払いのおっさんは不機嫌そうに煽る


「お前は顔も頭も悪そうだな?人間とは違うと思ったけど馬鹿そうだな。」


「人間から見たら俺は賢くないのか?確かに山羊は人間より知能が低いからな…だがお前には屁理屈だと思うかもしれないが俺がお前の行いを教えてやる…」


「陰謀論に根拠は乏しい…不安を煽るだけの行為だ…そして根拠がない仮説を周囲に吹き込むのは所詮お前の言うマスメディアの情報操作と同類だ…陰謀論そのものが情報操作の一例なのだ…お前に理解できるかは不明だがな…」


「そしてお前は陰謀論を広めたリスクを把握していない…仮に俺が暴れるなり戦争が起きるなり洪水が起きるなりして危機が起きた時にマスメディアが嘘だとみなお前を信じれば避難が遅れて死ぬ者も出る…その責任を陰謀論者は取れるはずもない…」


「その時は噂だと言って自分の責任はないとほざくだろう…その分、マスコミはガセネタの時は非難されるからマシかもな…それが金を貰って動いている者と酔って自分を賢いとのたまう者との差だ…お前はなんの責任も負えない楽な立場だ…」


「あああ!もういい!お前は偉そうだ!みんなを混乱させて遊んでるんだろう?その証拠に街にきてパニックを起こした!」


「それも説明はつく…俺と言う存在を視覚という情報から反応しパニックになったのだ…お前の言う愚民という言葉で説明がつくはずだ…お前は理解できると言ったくせに俺のせいにするのか?」


「お前は愚民と大衆を馬鹿にするが人間は本と同じだ。大体は内容がないし後から改定版になる本は少ない。お前は駄本に駄本と言っているのと同じで誰の成長にもならないし馬鹿にして悦に入っているのがお前だ。」


「ベンチに座って酒を飲んで大衆を愚民と馬鹿にする男が賢者の訳が無い…真の賢者とは人を育てる側のはずだ…お前は他人を馬鹿にして酒を飲んで誰からも相手にしたくないと思われて終わりだ。」


酔っ払いはせき込むと自信が無さそうに心細いことを愚痴り始めた


「誰も俺の意見を聞かないからだよ…自分の話を聞いてもらって納得してくれたら楽しい気分になるんだよ…」


「そうか…それは情報ではなく単に話題や共感を得たいということか…それが知れたから会話の価値はあった…お前と似たような主張をする連中のことがわかった…」

「その分の情報の代金として払おう…」


キャベツは雑誌の裏面にあった金額を確認し近い金額の紙幣を酔っ払いに渡した後、店のカウンターへ向かった…


おばちゃんが普通に会計をしている…


「雑誌が6点と新聞が3冊ですか。全部で90ルオン(九千円)になります。」


「わかった…お前は逃げないからここは使いやすい…助かる…」



◆キャベツは雑誌を読む◆


キャベツは1冊だけゴシップ雑誌を買っており酔っ払いの隣のベンチに座った…

ゴシップ誌の見出しにこんなタイトルがあった


[シュウノが隠し子疑惑でダブル妊娠疑惑♥魔人と貴族が妻?さらに第三婦人は病院を襲った狂人テロリスト?]


「あの噴水広場の男…嘘だと思うが気になってしまった…魔王を倒してもこんな記事を書かれるとはな…お前はどう思う?この前、ビジ村で見かけたが…」


「よくある話だよ。成功者は金も暇もあってなんでもやりはじめるんだ…」


キャベツは目を尖らせて記事を見つめる


「違う…魔人の妻なら俺が子も親も殺す必要がある…確かめるべきか…」


「そういやお前は魔人をぶっ殺したんだってな。マジかよ?…シュウノはガセネタだよ…面白けりゃなんでも記事にしてネタにするんだよ。クエスチョンマークを最後に入れているだろ?曖昧にして情報発信の責任から逃げてるんだよ。」


「そうか…人間とは享楽的な存在だな…」


その時、剣士が走りジャンプしてバク転して着地した…珍妙な格好のポーズを構えた。丁度、アルファベットのYの文字のような姿勢だった


「とう!私の名前はエデュリオス…人間世界最強の剣士…貴殿の噂を聞いてきた…わが剣が強者を求めている…」


「俺は剣士ではないからお前の相手にはならない…素手の相手を切っても剣士の名誉にならないはずだ…帰れ…」


「お前はこの街にたまに現れて騒ぎを起こしているのだろう?腕に覚えがある者が集まってくるのは必然だ。勝負しろ!」


「お前は最強の剣士と言ったな?どうやって最強を証明する?グランプリでもあるのか?」


エデュリオスは誇らしげに経歴を語った


「剣客の世界大会がある…魔法や異能や異種間の体力差はできるだけ抜いたフェアな技能戦だ…それで過去に2回優勝している…武人なら最強を目指すものだ…弟子もたくさんいる。」


「違う…お前は最強と言う情報を自分につけて多くの者に認めてほしいのだ…この雑誌の記事と同じで紙に情報を書き足すようなものだ…お前は自信がないから称号にこだわっている…」


キャベツは雑誌の4コマ漫画のページを開いて説明する


「最近、脚本術の本を読んだがキャラクターというイラストに設定を書き込んで何度かそのキャラクターの性格なり技能なり披露させる…すると読者はこのキャラクターは次も似たようなことをするという印象が残る…お前がしているのはそれだ…認識の連続により相手に印象を与え続け固定観念化を狙っている…」


「脚本術は世の中の人間の動きを見る上である程度、参考になる。なぜなら人間の似た行動の連続で他人の性格や行動を測るからだ…よく寝坊する奴はまた寝坊するだろうと予想するようにな。」


「そして筋が通った話を現実でもフィクションでも人間は求めるが駄作の大半は筋が通る物語を途中で放棄する。現実でも信頼を裏切る人間は続いた関係を離脱したり壊したりする…連続の途絶が人間にとって嫌がることなのだ…お前が最強でなくなるのを嫌がっているように…」


キャベツは信頼の正体は予想の敵中とそれの連続だと持論を展開した


「牛乳屋が毎日、決まった時間に牛乳を届ければそれが当然だと思うようになり、なぜだとは考えなくなるはずだ。」


「お前は甘いリンゴと言って売りつける商人のようなものだ…リンゴはそもそも甘い…それなのに別のリンゴより甘いと宣伝している…人間は情報に惑わされ求めすぎている…」


「俺にとってお前が最強である話より隣の酔っ払いのゴシップ雑誌の評価のほうがまだ有益だ…帰れ…」


山羊男の問答を聞いて自信が揺らいだエデュリオスは青ざめた表情になってしまう


「これをやろう…私の剣が折れた時の予備の剣だ。君も剣士の道に興味を持つかもしれない…これでもし君が剣の道を素晴らしいと思ったら戦ってくれ…」


「なに?…いらんが安物じゃなさそうだ…お前の本気だと思って受け取っておこう…だが試合をするときは木刀でしかしない…俺は殺し合いを魔人との戦いでうんざりしたからだ…」


「本当か?自分に自信がついたら呼んでくれ。私も剣術ができない相手は勝負相手にできないからな…ありがとう。」


「だが俺の予想ではお前が恐らく常に勝つ…俺は対応して強くなる側だ…お前が自分で高みを目指すなら対等な技能戦ではお前が常に上回るはずだ…なぜなら人間なら励んでいる間は向上するからだ…俺は殺し合いには勝てても試合には勝てないはずだ…」


「どうやら君は武人とは違う精神の高見を持っているようだな…いつでも呼んでくれ…対戦を楽しみにしている…」


エデュリオスは悔しさも含めながらふらふら去っていった…

酔っ払いにキャベツは自分の境遇を打ち明けた


「お前の立場は恐らく俺よりマシだ。俺はずっと変な連中に絡まれる…だが俺が聞きたいことがある時はまたそのベンチにお前がいると助かる…話し合いができる話し相手は希少だからだ…」


酔っ払いは相手にされたことが無意識に嬉しいのか安らぎにも似た心境になり表情が和らぐのだった


「俺がお前さんよりマシだって?そんなこと到底、思えないが俺がいたら助かるって…覚えておくよ。お前さんは多分、化け物じゃない。誤解されて化け物扱いされたんだ。」


「そうか…やはり人間は魔人とは違う点がある…お前みたいな存在は魔人の社会では捨て駒に使われるらしい。魔人は手柄を上げるなり強い奴らが強盗や略奪の指揮をとる…」

「お前でも社会で生きるのが認められるのが人間の良さだと思う…考えを常に改めなければ思考停止と同義のはずだ…」


「それとお前に頼みがある。俺に盲信した孤児が俺に付きまとい家に来ている。里親を探しに来たが今日は無理だった。お前に12才くらいの男の子供が着れる服を買ってきてくれ…」


「千ルオン(十万円)渡すから頼む。店員が逃げると困るからな。派手な服は買うな。上着と下着を一式5着ずつ頼む。報酬は三百ルオン(三万円)でどうだ?」


酔っ払いは快く引き受けて千ルオンを握って服屋に向かっていった


「人間にも山羊男みたいなやつがいればいいのにな。俺は何も考えていなかったんだな…もっと早く気づきたかった。」

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