第95話:山羊男が留守の間に悪だくみ
山羊男のキャベツはアルガナ村に帰って来ていた
先行きの悲観のあまり精神が退行したペペを人畜に改造して一緒にアルガナ村に来たのだ
「ありがとうにゃあん。私は今日からアンチエイジングの萌えキャラにゃあん。若い頃に戻ったけど髪の毛も白いし白猫の尻尾と耳があるのにゃ。年はみんなに教えないでほしいにゃん。」
「語尾をおかしくするのはやめろ…」
「猫の人畜にしろと言ったのはお前の注文だ…手に不必要な肉球と白い毛まで…」
ペペは少し照れながら「てへへ」とかなり不快な仕草を行う…
「肉球だけじゃキモイからね。手首から先と足首から先は白い毛があった方が猫っぽさが出るにゃあん。」
「お前は多くの人間から不愉快だと恐らく思われるだろう…役所があるからそこで名簿と顔の登録をして仕事と住処を貰え…しばらくアルガナ村に住むのだ。お前の心境の変化を見るためだ。」
「キャべちゃんは酷さと優しさが二つある。もっと正直に優しさに振り切った方が良いにゃん。」
「役所まではついて来てやる…俺はお前がどうなるかは見たいが喋りたくはない…俺にできるだけ話しかけるな…」
蛾の亜人の呪呟族のイコノはキャベツとペペの後ろからつけて村の入り口の近くの岩陰から遠目で見ていた
「人畜を連れて行くなど珍しい。よほどの馬鹿じゃないと彼の気は引けませんからね。」
「食事を一緒にしようと言えば家に入れてくれるでしょうかね?リメシュ君の様子を見たいですね。フフフ」
◆山羊男が家に帰った後で◆
家に帰るとキャベツは紺色の半ズボンを履き替えて汚れた半ズボンをかごに入れた
「リメシュ…お前が洗濯してくれるから使い捨てにしなくていい。あまりゴミを増やすべきでなはいしまだ使える物を捨てるのはよくないということだ…お前に気づかされた」
「上様が喜ぶなら私も嬉しいです。これも洗濯しておきますね。」
「俺はサントシティに行く。明日には帰るから留守番をしろ…猫の人畜の女性が来ても追い払うな。お前が一人でいるとどう扱われるかわからんから見張り役だ。」
「わかりました。後、応接室に先ほどからコベグという風見族の方が来られていますよ?」
「上様から頼まれていたクジとウードの報告で来てるそうです。」
キャベツは応接室に向かいカワラバトの風見族のコベグの前に座った
「アルガナ神、クジとウードの件ですが二人とも『記憶磁針』の針に生き血を垂らしてもらい居場所の先を記憶磁針のコンパスの針に覚えさせました。」
「しかし、仲間から聞きましたがウードは英雄のシュウノにやられて空に消えたらしいです。クジは任務続行中です。当てがないから盗みながら気長に探しているそうですが。」
山羊男は首をかしげ耳を斜めにしながらウードが消えたことが理解できないらしい
「空に消えたのはどういう意味だ?星の外に行ったのか?意味が分からんがまあいい。記憶磁針があるから暇なときに探してみるか。」
「クジにはあと半年は猶予を与える。ギノを探せないなら別の仕事をさせるか眼能は没収だ…」
仕事の見返りにとコベグはもじもじしながら報酬を口ずさむ
「覚えていますか?クジとウードの伝言役の見返りを…爆撃能力を俺にくれますよね?」
キャベツは山羊目が入った小瓶をコベグに渡した
「爆撃能力を眼能として設定している…傷口にこれを押し当てればお前の身の一部になる…引き続き伝言役を頼む。」
「ウードの行先を覚えた記憶磁針は置いていけ…」
「まじっすかー?やったー!規定どおり演習場で試すから心配しないでくださいよ!毎度~!俺も異能持ちに人間なんか目じゃないぜ!」
コベグは急いでキャベツの家から飛び出していった…
「ウードはシュウノにやられたか…眼能を与えなければシュウノと戦わなかったかもな…」
「力を持ったせいで不幸になる未来もあるということだ。」
山羊男はサントシティに向かってアルガナ村から出て行った…
◆イコノの企み◆
呪呟きの蛾の亜人であるイコノはアルガナ村に訪れて食料品店で買い物をしていた…
「いらっしゃいませにゃあん。お魚も野菜もあるにゃあん。」
若い見た目の白猫の特徴がある人畜に苛立ちを見せながらイコノは魚を買い物袋に入れていた
「その語尾はなんですか?なぜ人畜がこの村に?私はあなたには確か口封じの呪いはしていない…どういうことだ?」
「ぺぺちゃんは看板猫だにゃん。キャべちゃんがしばらく私の様子を見たいっていったにゃあん。
「街に行きたいけど村にいないと人畜にしないって言ったからにゃー。」
「ふん。進んで人畜になるとは馬鹿な女だ。目障りですね。この店にはもう来ません。街に行かせないからアルガナ党の関与の口封じの呪いはいらないという意味ですか…」
「えー?ぺぺちゃん可愛いと思わないのー?ショックにゃーん。」
「気を逆なでしますね。忌々しい糞猫が…いちいち苛つかせるど畜生だ!」
イコノはキャベツの家に向かいリメシュの出入りを見ていた…
「今日は山羊男が出かけている…ふふふ。少し餌付けをしましょうかね。」
リメシュがキャベツの家の前で紺色の半ズボンを干していた
「すいません。山羊男のキャベツさんはおられますか?仕事の件でお話があるのですが。」
「上様はサントシティに行かれました。何か御用で?」
「そうですか。実は仕事の話をしながら彼と食事をしようと思っていたのですよ。」
「私の郷土料理を振る舞ってね。しかし彼が好きな物がわかりません。魚じゃ嫌ですよね?」
「上様はあまり肉関係を食べません。タンポポやサラダが好きです。」
(やっぱり山羊だな…化け物のくせにベジタリアンか…滑稽だ)
イコノは山羊男が好きな野草を取りに行くとリメシュに伝えた
「では森に向かいます。タンポポが生えている場所を教えてくれますか?お金も払いましょう。」
「いえ、今日は私が明日の朝食を準備しますからいいですよ。今度、上様にお会いした方がいいですよ。」
リメシュがアルガナ村の外へ行くのを待ち伏せする蛇のようにイコノはじっと待つ…
イコノはキャベツの家の近くの喫茶店で新聞を読みながらリメシュの動きを見ていた
「ふん…私の休日を一日潰した分は元をとりますよ。」
待っていると午後からリメシュはアルガナ村の外へ籠を背負って歩いていった
「奴の餌をとりに行ったか…健気な小僧だ。山羊男に救われた経験があるから盲信しているとリサーチはしていたが、山羊男は理性があるが冷酷非情の怪物だ。あの子供はどこか頭がおかしい部分がある。」
リメシュは行きがけにアルガナ党の風見族代表のバロットに呼び止められた
「待ってくださーい!…いや止まれ小僧。」
「いつまでいる気だ?ケセマ村に帰れ…彼の迷惑だ。ボクがいつも彼の側にいた。」
「何の役にも立たないのに子供だからという理由で彼が手元に置くわけが無い…」
「どういうことだ?彼は魔人の親子も殺したから人間の子供に同情するわけが無い…」
「あの方の雑用を私はしています。あなたは今、組織の上役で雑用をする時間がないでしょう?」
「そうだな…だがシルバナは風見族の土地だ。あまり人間がうろちょろしたら風見族が苛立つ。気をつけろ…できればすぐに出て行け。」
「緊張状態である野蛮なラグド人に殺されても文句すら言えないぞ?」
釘を刺すバロットを迂回してリメシュは歩いていった
「あの人は私をよく思ってないみたいですね…」
イコノはにやりと笑って使えそうと考えたのだった
「そうだ…風見族をキャストに使いましょうかね?フフフ」
◆森の散策◆
リメシュが森の中でタンポポや野草をつんでいたときだった
空から3人ほど風見族の子供が飛んできた…
「おい?人間?アルガナ村のもんだな?なんでシルバナに好き勝手する?」
「あなた達はなんですか?アルガナ村の近くにシルバナの風見族はあまり来ないように約束があると聞きましたが。」
「あの山羊は人殺しだ。風見族を大勢殺して村まで立てる。お前達はなんだ?アルガナ村なんてシルバナからみたら糞野郎どもだよ。」
クマゲラの特徴がある少年の風見族が羽ばたいて風の魔法を使った
「猛き風、我の歩みを止め、立ち行かせぬ…風魔法:倒歩…歩くのが困難な強風を3秒ほど起こす初級魔法…」
リメシュに向けて羽を羽ばたくとビュンと風の塊が当たりリメシュは転んだ
そこに3人の子供があつまり蹴ったり殴ったりをリメシュに暴行を加える
ゴッ、ガッ!音を立ててリメシュを痛めつける…
「うぐ…が…」
「おい!俺達の土地にいたいか?もっと居たいならサービスしてやるぜ!」
「待ちなさい!君たちは何をしている?」
大人の声がリメシュの後ろから聞こる
イコノがそのタイミングで現れてリメシュの前に走って駆けつけた
「うわ…大人だ。帰るぞ!」
3人は急いで飛び去った
「大丈夫かね?私も彼の食事会のためにタンポポをつみにきたらこの有様だ。立てるかね?」
「大丈夫です。ありがとうございます…」
リメシュは歩いて帰って行った…
イコノは切株に金のお札を置き上に石を乗せた後に、リメシュが帰った方向に歩いて行った
リメシュを暴行した少年たちは降り立ち切株の上の金を持って飛んで行った…
「あのおっさん、また頼むかな?今度はもっとせびるか…」
◆リメシュに接近する悪党◆
リメシュが玄関で半ズボンを取り込んでいるとイコノがまたやって来た
「リメシュ君。怪我は大丈夫かね?」
「また来られたのですか?上様はまだ戻られません。」
蛾の亜人のイコノが悩みや先の考えを教えた…
「私は暇だ。仕事が終わったらやることが少ない。だから娯楽目的でたまにこの村に来るがね。」
「私の仕事は呪いをかけることだが空いた時間にサイドビジネスを始めたい。この村で教育事業を始めようと考えている。その許可を取りに来たんだよ。だが…風見族も鱗清族も一系統しか魔法が使えない。私に呪魔法しか使えないようにね。」
「人間もこの村にいてもいいと思うんだ。だが君は魔法を使えない。確かに人間はこの星では現在の最強種だ。だがその個人的な強さは魔力持ちや異能持ちが担っている。普通の人間は魔法を扱う亜人には勝てないはずだ。文明力や組織力は人間が最強だが個人戦ではそうではない。」
「そこでだ。私の呪魔法を習ってみないかね?月謝を払えば見てやろう…どうだ?彼に伝えてくれないか?君が私の教育事業の第1号だ。」
「考えておきますよ…私は魔力がありますか?自分であると思ったことはありませんし感じたこともない。先天性とも言いますがね。なぜ私にそんな話を?」
警戒しているリメシュにイコノはわざとらしく優しい笑みを浮かべた
「私は山羊男の彼に気に入られたいんですよ。だから側にいる君とも仲良くすれば彼によく思われる。一緒に協力するうえで相手によく思われるのはいいことですよ。」
「魔力が、もしないなら呪詛の実があるじゃないですか。彼がその気なら君にあげますよ。フフフ…。私が魔力持ちかどうか検査もできますから心配いりませんよ。」
(森で攫えばタイミングが悪い…いつでも攫える距離感が大事だ。魔導士協会が来たタイミングがベストですね…ふふふ…奴のリアクションを見ながら品定めしないとね。)
しかし玄関にイコノが嫌悪感を抱く人畜のペペが来た
「にゃあん。キャべちゃんに会いに来たにゃん。男を村に入れてほしいにゃん。若い子がいいにゃん。あれ?この前のお客さん。私と会うなんて何かの縁?君はモスマンだから付き合えないけど。」
「ぬああああ!貴様は水をさすなぁああ!」
◆応接室で…◆
キャベツの家にリメシュはイコノを案内して接客する
ペペは家の周りを徘徊しているのを尻目に家に入ったイコノは応接室に向かいリメシュはコーヒーを淹れていた
「シルバナで前は盛んだった特産品のコーヒー豆です。呪詛の実が売れ始めて廃れてきているそうですけどね。」
「まあまあですね。ローディグ王国では風見族のコーヒー豆は大衆が飲む安い豆です。だが風見族が作るのをやめたら高くなるでしょうね。風見族は山羊男のおかげで税金も払わず呪詛の実で儲けて警備も山羊男がいるから身内くらいしか警戒しなくていい…ウハウハですよ。」
自分の一族のことを話し信頼させるためにイコノは呪呟族の現状をわざとらしく嘆いた
「リメシュ君。私の部族を少し教えましょう。呪呟族は山に隠れ住んでいる。人間と衝突を避けてずっと隠れている」
「昔は人間の戦場の跡地から武器を盗んで呪魔法をかけてまた販売するということもしていましたがね。無念の死を与えた武器は強い呪いがかかりやすい。陰湿な一族ですよ。」
「人間や亜人の無念の戦死した遺体の顔の皮をはいで仮面に貼り付けて儀式や敵を呪うためにも使う…あまりに品がない。」
「呪魔法の威力をあげるため若手の使い手をいたぶる教育もする。恨みや苦しみがあるほど呪魔法は強まる…」
「そこで私は一族に嫌気がさし修行を積んで山を出た。魔導士協会にも昔は入っていましたね。」
魔導士協会の話を聞いて目を丸くしてリメシュは口を開けた
「魔導士協会?…あの国際的な魔法使いの育成や魔法の研究を行っている世界的な団体の?」
「エリート中のエリートしか入れませんよ。」
「言うほどすごい組織ではありませんよ。ノフィスの生涯の方が魔導士協会よりは成果を上げています。所詮はエリートブランドの古臭い組織ですよ。国際的なスポーツの祭典組織が金や癒着で腐っているのは聞いたことがないですか?似た話は古い組織ならどこでも起きます。」
「魔導士協会の内情は暗部も多い。強い魔法使いや異能持ちの死体を闇取引で仕入れて徹底的に解剖して調べる。異能の移植研究もしていましたよ?細胞移植とかでしていましたがいまだに成果が出ていません。人体実験もしていましたね。どこからか外国の囚人を使ってやっていますよ。」
少年はエリート組織もケセマ村に似ていると首を降ろすのだった
「ケセマ村は奴隷売買していた役人がらみのギャングのたまり場でしたがまさか魔導士協会も似たり寄ったりとは。何のための組織ですか?」
「国際的な組織は金と人材を送った国のためにあります。仲良しの団体ではありません。各国の協力の成果のぶんどりありですよ。」
「話は変わりますが山羊男は冷酷です。当初は感情が無いと思っていた。魔人の親子も殺すと聞いた。だがあなたの扱いを見ているとそうじゃない。彼は変化をしている。魔人を殺したのは彼に慈悲が育っていなかったころだったからだ。だから君との関わりで慈悲がでたと私は思うんですよ。」
少年は少し期待した様子で目を泳がせたがイコノはそれを見逃さず観察している
「え?まさか…そんな。私が死んでもなんとも思わないと上様は言いましたよ。」
「嘘ですよ。隙を見せたくないからです。風邪の君を看病した理由が思いつかない。君は彼に心配されていますよ。」
(この少年はあの怪物を信仰することで心の安定を得ようとしている。そこを少し刺激してみましょうかね。)
しかし想定外のイレギュラーが現れる…
応接室に奴が来た…
「いい匂いにゃー。ぺぺちゃんもコーヒーを飲みたい。」
「ぶふ…貴様…なぜ侵入した?山羊男の家だぞ?家の見張りもいただろ?玄関から帰らなかったのか?」
コーヒーを思わず吹いてしまったイコノを差し置いてペペが喋る
「キャべちゃんが留守なら家に居ていいって言われたにゃん。多分、リメシュ君が心配だからニャン。」
「…そうか貴様がうっとうしいから留守番には最適だと言うことか…山羊男とは利口な奴だ…」
「ペペさんですか?わかりました。お待ちください。私がコーヒーを淹れますよ。」
「ありがとにゃん。私の肉球で握手してあげるにゃ。」
ペペにイコノは苛立ち机に置いてあるペンを見つめるのだった…
(いつか、その手の平の肉球にこのペンを突き刺してやる。糞猫が…)




