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第93話:英雄は帰還する

山羊男が違法なペット業者を駆除するために訪れたビジ村で巨大な混成獣畜を倒したシュウノを認め山羊男はビジ村から立ち去った…

家にいた住民たちも出てくるが憲兵たちは聞き込みを行う


「シュウノ殿はお帰りください。骨を折ったでしょう?」


「でもまだ危険があるかもですし…」


「奴が嘘をついたとは思えませんしシュウノ殿も怪我をして弱っています。調べるだけなら我々でできます。」


「わかりました。先にカタム領主に報告しますよ。」


倒した獣畜から心願の剣を引き抜いてその場を後にした

シュウノは馬車にのり応急処置の回復魔法をアイテムコンプから出して肋骨にあてながらセアフスシティに帰って行った



◆ビジ村にいた山羊男の報告◆


医者から手当をしてもらったシュウノはカタム領主に報告していた

カタム領主はお茶を飲むと手が小刻みに震え始めた


「山羊男がセアフスに近いビジ村にいて悪徳ペット業者を化け物の餌にしていた…なるほど」


「ひひひ…ひひひーひ…うひぃ―ひひひ…」


カタム領主は血の気が引いた顔になり真っ白になっていた

恐怖のあまり肩を震わせ痙攣まではじめた…


「ああああああ!奴が近くまで来たー!終わりだ―――!」


「いや…待て…まだここに来ていない…悪徳ペット業者をターゲットにしている。。まだセアフスに来ると考えるのは早計だ…しかし悪徳ペット業者なんて街に一つや二つはある…」


「わかった。今後は悪徳ペット業者を摘発したら街の外へ追放で出禁だ。奴の機嫌を損ねてはならん…」


ビジ村での山羊男との再会と応対をシュウノが説明した


「奴が人畜をセアフスに送り始めたのは人間の殺し屋が来たからと言いました。だから人間にやり返しても自分に罪はないと…」

「態度が悪いと人間も魔人みたいに消すともいいました。」


腹をくくったのかカタム領主はシュウノの働きを認め過去の失態を正直に話した

若者だけに命がけをさせるのも後ろめたさがあったらしい


「君はビジ村で化け物を殺し飲み込まれていたコンペヨという人間も殺した。君だけ汚れ役ではよくない。」


「正直に言おう…殺し屋を送ったのは私だ…凄腕の一等冒険者でも仕留めるアサシンを送った。丁度、魔人を消す前だったか…山羊男が魔人を消すほど強いとは思わなかったころだ。」


「言い訳に聞こえるかもだが権力者なら誰かがした結果だ。奴はセアフスから現れた…だからセアフスの代表である私が始末するべきと私は考えた…結果はアサシンが両手両足を打ち抜かれ最後は口の中に穴を空けられていたらしいがね。馬の給水場に捨てられていたらしい。」


「私を山羊男に差し出すべきだと思うかね?君がコンペヨを殺したこととどう違う?きみもこれまで冒険者として依頼を受けて魔物や魔人の狩をしたはずだ。私も君と同じだ。たまたま山羊男の危険度が計り知れないという話だったのだ。」


シュウノは複雑な心境でカタム領主を見つめた

山羊男を刺激したのは間違いないが彼だけのせいとは思えなかった


「今、カタム領主様を差し出してもあいつは止まりませんよ。恐らく別の国や団体と戦いますよ。セアフスがあいつのターゲットからはずれるだけです。それを話したのは私を信頼したという意味ですか?」


「そうだ。君も政治的な見方や失態の許容が多少はできる男ということだ。ロジ・ジョットという冒険者のお手本の道楽者とは違うようだ。君は薄汚い世界もあることを理解している。」


「今日はもういい。ビジ村はご苦労だった。療養して怪我を直してくれたまえ…ねぎらいも出そう。私の主観だが君は最初の頃よりだいぶ良くなっていると思うよ。」



◆ギノとシュウノの妻たち◆


シュウノは自分の部屋に帰ると廊下にギノがいてトレッチが隣に座っていた


「兄ちゃん…遅い…このいかれ女は兄ちゃんが帰るまで俺の隣にいるって…」


「うん。お前の肺を抜き取ってどのくらい汚いか観察したいからね。シュウノが死んだらお前を殺すから。」


トレッチにシュウノは深くお礼と感謝を伝えた


「ありがとう。心願の剣にマシュマロテストの軟化能力があったおかげで化け物に勝てたよ…命の恩人ですよ。」


「そう?じゃあ命の恩人ならあなたの命は私の物って意味ね♪死んだらダメだからね。死んだらギノに釘や画鋲をいっぱい飲み込ませて殴ったり蹴ったりする。」


「兄ちゃん…もう限界だ…この狂犬を遠くにやってくれ…」


トレッチはシュウノの手を握り親指でシュウノの手のひらをなぞった…


「私の無許可で死んだら殺すからね♪」


「トレッチさんも早く正気にもどってね。」



◆部屋に帰ると◆


シュウノが療養施設の自分の部屋に帰るとセイルが苦しそうだった…


「どうした?具合が悪いのか?」


「具合が悪いですわ…まさか産気でしょうか?」


「まったく」とルナムがぼやくと別の部屋から車いすを持ってきた


「朝から気分が悪そうだった。早くこれに乗って医者の所にいくぞ?お前が来てから行くと朝から聞かなかったんだ。」


セイルの実家に言い訳がおもいつかず結局お腹が大きくなるまで何もできなかったことに焦る英雄であった…


「そういえばセイルの実家にも秘密だったんだよな…どのタイミングで明かせばいいんだ…困り果てたよ…」


魔王の娘が山羊男のせいにすればいいと言い訳のアドバイスを、腕を組みながら言い放つ


「お主、馬鹿正直に言っても面倒になるだけだ。山羊男がセイルを攫ったなり殺したなり、奴のせいにすればいい。どの道、目立つ場所にルトプッシ家がいるなら奴と戦争になったら魔人のように皆殺しだ。だからお前の行動に間違いはない。」


「もう一度言うが山羊男は女子供も殺す。お主もそこは理解しろ。奴がどんなに筋が通ったことを言っても根絶やしにされて正解だと言われて人間は納得するのか?お前の子が邪悪な種族だと言われて消されてもいいのか?魔人は子も大人も奴に殺された…」


英雄は心底、考えたくなかったことだと首を振った


「誰もいないんじゃ正解か間違いかも言えない。俺の子が死んでほしくないのが俺個人の考えだとしても正しいか間違いかで子を殺すなんて絶対に認めない。悪さする種族だから消すなんて人間から見てもあまりに冷酷だ…」


「そうだ。奴は虐殺者側だ。土地や金や支配で虐殺をしたものは過去に数多いるが奴はどうだろうな…ノアの洪水を起こした側気取りか?戦乱ばかりの人間世界を海に沈めて大勢、殺して大人しい者だけ生かした伝説だ。」


「もし人間共が、神が罰を下した話とノアの洪水を評価するなら人間共は家畜であることを認めたのと同じだ。自分は被害にあっていないだけなのにな。」


シュウノは思慮が足りなかった自分を恥じたが先を考える


「安全圏から物を言うのは卑怯者で自分もそうだった…だけど昔の失敗を延々と責められても気分が悪い。自分なりに昔よりマシになれるように何かするよ…」


しかしルナムとの会話が長いことに車いすに乗ったセイルが腹を立てた


「キャアアアア! シュウノ!はやく医者に連れていきなさい!シュウノと二人にしなさい!追いかけてくる女は死ねー!」


「おい軽石頭。お前がシュウノと別れていいぞ?ギブアップしたら私がシュウノを貰ってやる。魔人は独り占めが人間以上に好きだからな。」


「貴様ぁああああ!舌を切って二度と口を利けなくしますわぁああああ!」


「もうやめて…ここは偉い人も来る療養施設だ…叫ばないで…」



◆妻との会話◆


シュウノはセイルを車いすで運びながら話をしていた


「俺、山羊男の作った怪物の一部にされた人を殺してしまった…悪い魔人を過去に殺したことはあるけど人間はなかったよ…気分が重い。こんな父親は子が喜ぶかな…」


「子は親を選べませんわよ。あなたが好かれる必要もありません。ですが自分から恥ずかしい真似をしてはいけませんよ?子は自分でものを考えられるんですからね。」


会話の中でシュウノはなぜか胸が楽になるのだった。肯定されたわけではないのに安心感があるのだった


「俺って結構、信頼があるのかな?妻からもカタム領主からもギノさんからも…」


「でも私が最初の妻なんですよ?いずれルナムもトレッチも殺してくださいね?あの害虫どもは許しませんわ!」


気が重くなりながら「それはできないよ」と弱弱しく答えるのだった…


シュウノはセイルと一緒に診察室に入室していった



◆夕方の酒場で◆


シュウノは疲れて酒場に来ていた

清掃員のアルシオンも隣に来て話を聞いていた


「そうか…山羊男のキャベツに会ったか。理屈っぽい性格になっているようだな…」

「狩猟世界グスティナにいた行方の山羊男:パセリとは違うらしい。」


英雄は山羊男の性格に差があるのか問い詰めた


「パセリはどんな性格ですか?キャベツとは違うんですか?」


アルシオンはあまり言いたく無さそうな顔だったがパセリについて教えた


「パセリは暴れない。実力も隠す。奴がどれほど強いかは見せなかった。山羊男が発見された世界は山羊男を始末できないと100年後に隔離宇宙に捨てられる。だがパセリは見つからないようにこそこそしていた。だからグスティナはまだ廃棄されていない。」


「奴は老獪な性格だ。知識をよく集める男だ。キャベツとは違う。キャベツは論理のために知識を使うようだがパセリは自分の欲のために知識を集め神の存在に興味を持っていた。」


気になっていたが機会がなくうずうずしていたシュウノは神がどんな存在か興味が尽きない


「神様って太陽系の大家さんって前に言ってましたよね?グスティナにもいるんですよね?」


「ああ…だがグスティナ神はアグルス神より一つランクが上の世界を管理しているがやり方はアグルス神以下だ。問題を起こした人類は大量に処分をする。」


「無駄話だが土産だと思って聞かせてやる。グスティナ神は龍を遊びで創ったこの世界の先代の旧アグルス神と癒着していた。強い生物の設計データをゲームソフトのデータみたいにやりとりして自分の世界に役立てていた。旧アグルス神は遊びすぎて降格されてこの星から更迭されたがね。」


「グスティナ神は旧アグルス神から貰った龍の開発データなどを参考に食生物というこの世界でいう魔物を作り、大きな大陸に繁殖させて人間達の狩場にしている。コンバットスポーツのようなものだ。そこは狩猟大陸と呼ばれていて人間の法がない。」


「人間たちは有益な資源が豊富な上に食べれば肉体が強化される特性がある食生物を求めて危険で怪物がひしめく狩猟大陸にハンティングにいくレジャーな世界だ。ハンティングゲームみたいな世界かもな。」


「その目的は人間同士の戦いを避けさせるためであり、戦う相手と魅力的な報酬がでる怪物がいれば人間は怪物を相手にしに行き協力すると考えたためだ。狩猟大陸から食生物は出ないように設定しているため人間世界にはいかない。グスティナの狩人たちはこの世界の1等冒険者や魔人並みに強い者が数多いる。」


「だが過去にグスティナの人間世界で覇権主義の時代が起こり荒れた…環境破壊と増える犠牲者に神の目的である徳の高い人間を上の世界に送る業務の業績が落ちた。」


アルシオンは『徳』についておさらいの話を始める

徳とは公平な人生評価であり生まれの境遇や生きた行いから算出される力や富や名誉や血縁は点数にならない評価システムである


「善い行いやまっとうに生きるほど『徳』というポイントが加算され死者になれば徳の大きさに応じて上の世界に行くが荒れた世界では徳を積める人間も大幅に減る。」


「愚かな戦いに腹を立てたグスティナ神は『くまんばち』という飛行する熊の戦闘力を持つ蜂のような食生物を大量に人間世界に送り、戦争ができなくなるまで人間を餌にして間引きした。」


「グスティナ神は戦争をかなり嫌っている。生存のためなら許容するが略奪のための戦いを認めず間違いを認めない。気に食わない迷惑な存在は死ねというスタンスだ。」


「神の中にはグスティナ神みたいな存在もいる。あまり期待するな。」


シュウノは酒を置いて唖然とした…


「神が管理のために人間を大量に殺す?ノアの洪水みたいに?それじゃあキャベツと同じじゃ…」


「ああ…だからグスティナにもパセリという山羊男が出たのかもな。山羊男が出た星は評価が落ちる。グスティナ神もパセリの存在を隠したがるだろう。発見したら上から隔離宇宙行きの猶予期間のカウントが言い渡されるからな。」


「そうだ…現在のアグルス神が君に注目しているらしいぞ?ひょっとしたら従者が会いにくるかもな。そしてロジ・ジョットにタイミングを見て面会するそうだ。」


「神が個人に面会などほぼしない。ましてやあんな世間知らずな若造にだ。彼の異能についてだろうが危険だと感じたのだろう。聞いた話だとロジの異能はこの世界の異能を超えていてかなり不自然らしい。」


「アグルス神は強力すぎる異能が個人の暴走につながると嫌っていたからな…強くなる要素は与えていたがマイ・ルールブックとやらは異常だ。アグルス神は調査に行くのかもな。」


シュウノは酒を飲むと話疲れた顔になった


「妻が3人…山羊男…神…めちゃくちゃだ…ロジが異常って神でも思うんだ。神にも心配されるロジってなんだよ…」



◆山羊男の悩み◆


山羊男のキャベツはビジ村から離れた丘で獣畜達を改造して新たなミックスのような巨大個体を作成していた…


「今度は弱点の山羊目を複数ある改良版の大型の混成獣畜を作成した。」

「名前はブレンドだ。今度は融合以外にも分裂もできるようにしている…」


ブレンドは8mほどの体長で起き上がった。体格はカバに近く顔には猫や犬などの頭が複数生えておりその中に人間の顔も複数あった…


「俺達がお前になにしたっていうんだ…」


「お前らは無駄にペットを金目的に殺した悪辣なブリーダーやブローカーどもだ。だからペットの餌食になればいい。無駄に命を殺す奴らを殺して最後は人間に殺されろ。それがお前らの罰だ。」


「俺は上から目線の話が多いから神話が好きではないが死神の話がある。罪人の魂は死神に捕まりこの世に留まる罪人の魂を捕まえる奴隷にされるらしい。それで懲役が減るとの話だ。お前らは人間狩りを許された怪物だ。お前らがいつもしている命を殺す作業をすればいい。」


「俺は帰るから後は頼む。無意味に殺す奴を餌にしろ…」


「オレ…ジユウ…エサ…サガス…」


キャベツはブレンドを置いて歩いて去って行った…


「ビジ村に来たシュウノ…奴は噴水広場にいた時と雰囲気が違う。人間に変わる機会は認めるべきか?だが改善に向かったところでこれまでの犠牲や荒れた場所は回復しない。改善する奴もごく少数のはずだ。なら人間の変化にそこまで価値はないはずだ。反省で変わるなら今の時代はもっとマシなはずだ。俺も恐らくいないかもな。」

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