第92話:救うために英雄がやること
山羊男のキャベツはビジ村に違法なペットの業者の様子の観察と自身がペットを猛獣にした怪物である獣畜の戦闘性能を調べるために業者へ攻撃にきていた
そこで調査にきたシュウノと鉢合わせになり以前、身勝手な主張でペットの延命をキャベツに頼んだ男であるコンペヨが獣畜にされており身動きが取れないで救いを求めていた。シュウノはコンペヨを哀れみ獣畜に戦いを申し込みハンデがあるなら山羊男が手を出さない条件で獣畜との戦いになるのだった…
シュウノは右腕をキャベツに折られ苦悶の表情で12mの熊のような獣畜のコンペヨを見つめる
その姿は熊の頭の代わりにたくさんのペットの頭がとキノコやところてんのように集まりうごめいてる様子だった…
「こんな怪物を作りやがって…お前は外道だ…」
「違う…ペットの商品期間が過ぎた個体や不健康な個体はゲージにいれられて放置されて死体や糞尿にまみれた不衛生で劣悪な密室で死ぬ…こいつらを悪く言うお前が外道だ。お前が戦えるから自分の正論に酔いしれているだけだ。弱いなら周りから無視されて終わりだ。お前らの価値観は強弱でしかない。」
「もういい…お前には反論できない。屁理屈とも思えない。だがコンペヨさんを苦しめて人殺しをさせている。それは間違いだと認めろ!」
「お前は救うと言っていたな?それはお前がコンペヨを殺すと言う意味だな?俺が間違いならお前が正解なのか?お前の結果を見てから判断しよう…」
キャベツは巨大な獣畜に語り掛けた
「おい…こいつがお前らを殺したいそうだ…どうする?」
「エサ…コイツ…クイタイ…オレ…ガ…ツヨイ…頼む俺を殺してくれ…」
キャベツは巨大獣畜の名前を考えていた…
「人間は雑種をミックスというらしい…だからお前の名前はミックスだ…この男は好きにしろ…」
巨大獣畜のミックスはシュウノに襲い掛かった…
両手の手のひらから巨大な鎌のような爪が左右に一本ずつ伸びて振り回す
シュウノは距離を取り以前、ティアニスからかけて貰ったストックの回復魔法をアイテムコンプから出現させ右腕に当てている…
「回復魔法:救力自助…自分の治癒力を強化しさらに回復魔法の相乗効果で大抵の傷や複雑骨折でないなら治せる高等回復魔法…」
「民家に隠れたら人がいる可能性がある…遮蔽物を出してゆく手を阻むか…」
アイテムコンプからトーテムポールのような柱を20本くらい出して足止めをした…
「魔法道具:森番精霊…バリケード代わりに設置する。一時間は倒れない魔法がかかった丸太たち。昔、金に困っていた先住民族が俺に買うように頼んで大量に買っていた…俺が金を持ち始めたころだったか…」
しかしミックスは魔法を行使した…
「オデ…カタイ…オマエ…ヤワラ…カイ…」
ミックスの体表が岩のようになる…
山羊男は獣畜の様子を観察して分析している…
「獣畜は食らった獲物の情報体を得る特性もある…過去にペット業者が違法に飼っていたロックオークが襲ってきてミックスが食ってしまった。だから魔法生物の特徴が多少使えるらしい。俺も想定はしていなかったがな…」
ミックスはトーテムポールをへし折りながらシュウノを追うがシュウノは地面に魔法:沼溺をかけていた
「土魔法:沼溺…ここは土の地面だ。土を沼の状況にする土魔法はすぐにかかりやすい」
ミックスは沈み始めるがゴールデンレトリバーの頭の一つが放電を口から射出してシュウノに命中した
バリバリとロープのような電流がシュウノに当たりひるむ程度に感電する
「ぐああ!」
魔法の発動が乱れて沼になった土地が固まってミックスは抜け出して再び襲う
「オマエ…セコ…イ…ハヤク…コイ」
だがシュウノはトランポリンを出しそれを踏みつけて大きく飛んだ
「魔法道具:ジャンポリン…昔、詐欺にあって高値で買った魔法道具だがチャージしておけば20mはジャンプができる…安全措置はないがな」
飛んだ瞬間にアイテムコンプから大量に静止した過去に打ち込んだ矢を絶え間なく開放して射出した
「こいつ…どこが弱点だ?」
矢がいくつか顔に命中してミックスの巨体が揺れるがコンペヨの頭が声を漏らす…
「グウア…オオオ…おい…シェパードの顔を探せ…常に移動している。シェパードの口の中に山羊の眼がある…舌についていたのを見た…」
シュウノは森番精霊のトーテムポールの一本を落下地点にアイテムコンプで出現させて着地しシェパードの頭を探した
「あの頭部にはイグアナや猫の顔が19個くらいはあるが…シェパードはないな…背中か?」
「土魔法:縦横無尽…壁や天井を歩き走るのを可能にする自分にかける重力魔法…」
シュウノはトーテムポールから走り別のトーテムポールに飛び移りながら木の横に立ち考えを巡らせる
「まともにやりあってもおそらくあの怪物は死なない…シェパードの頭を探さないと」
ミックスのイグアナの顔が水をフッと連続で放つ。水の弾丸魔法がトーテムポールに命中し砲丸を当てたようにメシャっと潰れた
「スパンは遅いが当たれば大怪我は間違いないな…命中精度もある…止まったら当たるな」
ミックスは苛立ちシュウノが立っている丸太に突進したがミックスの片足が沈んで転倒した
「土魔法:踏抜地…地面をカルメ焼きみたいにスカスカにして落とし穴にする設置魔法」
ミックスの背中を確認すると後ろ首の下にシェパードの頭がいた
「あいつか…」
シュウノが飛び掛かって心願の剣を突き立てるがシェパードは泳ぐように首がずれて左肩に移った
グサっと首の下に刺さるがミックスが弱る様子がない
「お前は人間の味方のつもりか?私を殺してなんになる?何の解決にもならない。」
シェパードははっきりしゃべりシュウノに聞こえた
口の中の舌に山羊目が確認できた
「こいつ…知能があるのか?」
ミックスの背中にいくつか動物の顔が移動しシュウノに噛みつこうとする
シェパードの頭は正面に移動し背中から消えた
シュウノは心願の剣を突き刺したまま機能を発動した
「心願の剣は他人の異能を充電して効果を使える魔法武器…今回はトレッチさんが充電してマシュマロテストが使える。マシュマロテストはかけた物体を柔らかくする能力。」
心願の剣のシンプルなT時のような鍔の上にマシュマロでできたハムスターが浮かび能力が発動した
そのまま心願の剣を放置してシュウノは片手で持つ草刈鎌のような武器をアイテムコンプから出した
「魔法武器:影刈鎌…鎌の影を相手に切りつけて傷を与える魔法武器…」
ミックスから飛び降りて怪物が立ち上がる前にアイテムコンプから魔法道具をさらに発動した
「魔法道具:照明玉…1分ほど、全方位にスポットライトのような光を放つ消耗アイテムだ。」
白い光が太陽のようにあたりに照らされとシュウノは光の玉の前に立ち自身の影が大きくなる
ミックスが立ち上がった瞬間に大きくなった鎌と手の影を振るとミックスが射程に入り真二つになったのだった…
「なに…?なぜ切れる…刃物くらいでここまで切れるわけが無い…」
両腕が落ち腹から少し上が両断されて遅れて上半身が下半身の前の地面に落ちた…
「マシュマロテストのおかげだ…お前は今、柔らかくなっている。だからこの程度の切りつけでもお前は簡単に切れる…影刈鎌で刃渡りも伸ばしている。だからお前は切れた。」
シュウノはシェパードの頭を探すが動きが鈍っておりあちこち移動したが背中に移動した瞬間に蛇のような自動で動く鎖をシェパードの頭に巻き付けてシュウノが捕まえた
「魔法武器:蛇足の鎖…魔力を流せば持ち手の意思で動く鎖だ。人間を殺して生きるならこれ以上、お前は生きるな…」
回復が完了した右手と左手で掴んだ大剣を突き立てたのだった…
「グオ…お前が上手だったということか…だがお前の先は私と同じだ。飼われて不自由になり死ぬ…」
「俺は間違いだ。だから俺は間違えたまま生きる。だからお前はもうこれ以上、正しいと思うことで殺すな…」
シュウノが安心した瞬間だった…イグアナの顔が移動し水の弾をプシュっとふいて吹き飛ばされた…ボキボキと肋骨が折れる音が鳴りながら倒れこんだ
「ぶは…なに?どういうことだ?」
上半身は虫のように6本ほど足がはえ正面をむいた
山羊目がコンペヨの左ほおに移されていたのだった…
「そうか…俺に追われて移動したときに弱点も移していたのか…」
しかし心願の剣が抜けておらず効果が常に続いたせいで足が柔らかくなり崩れて倒れた…
天はシュウノのコンペヨに味方した
「今だ。俺を殺してくれ…死に時だ」
シュウノは起き上がりアイテムコンプから金具がとりつけられた丸太を横に出現させた
「城壁を破るために使われたという骨董品だ。昔、金を貸した奴がこれで勘弁してくれと、こんな怪しい骨董品をくれた…だが風魔法が残っていて横から鎖を引っ張ると勢いよく前に飛ぶ」
「剣で刺せばすぐに死なないかもしれない…これがマシだと思ってください。」
シュウノは丸太についていた鎖を横に引っ張るとコンペヨの頭に勢いよく飛んでいき柔らかくなったミックスを丸太は貫いてコンペヨの頭を潰したのだった
「ありがとう…お前は死んでも忘れない…」
グショオっと音を立てて突きささり山羊目は潰れミックスの体は動かなくなった…
◆死闘の後で◆
山羊男のキャベツはシュウノを見て感心した様子だった
「勝つとはな…お前は機転が利く能力と思考を持っている…人間を殺せる決意もある。つまらん男と評したがお前はあの時から変わったということか?真剣な戦士だ。」
「はぁ…もうやめろ!お前は犠牲を増やしている。いい加減に惨いだけだと思え!俺がこう言ってもまた理屈を返して遮るきだろうがこんなことを繰り返しても何もならない。」
英雄の憤りも含まれた物言いに山羊男は首を傾げた
「お前の命令は聞かない。お前の価値観は権力者にすら通用しない。俺が悪徳なペット業者をなんとかしろとお前に頼んでもなにもできないはずだ。だからお前の意見はお前の中での自己満足だ。」
「今回は獣畜の負けということにしよう…俺は帰る。お前は人間の中ではマシな方になったと思う。噴水広場のことは別に気にしていない。いつまでも過去を責めても未来にならないからな…」
「じゃあ人間はお前と戦うしかない…俺は虐待された山羊男を聞いた時は可哀そうと思っていた…だがお前はもっと酷いことをしている。人間を人畜とやらにしてセアフスに送っているだろう?お前も虐待しているだろ?」
非難を浴びせられた山羊男は苛立った顔になるが最後に返事を返した
「可哀そうだと?お前は思い付きで同情するのが傲慢だ…教えてやるが俺に人間の殺し屋が来た。魔人を消した後だったか…お前らに何もしなくても襲ってきた。だからお前らが魔人と同じか確かめようと思った。お前らの格下を用意してな。」
「俺はお前らの態度次第では人間も消す。そして俺が虐待しても罪はない。先にしたのは人間だ。俺だけ耐えて終わりにしろというのも虫が良い話のはずだ。無関係を巻き込むなといいながら俺を巻き込んだのだ。だからお前らも巻き込まれていいのだ。」
「それを同じだと難癖つけるならお前の身内も巻き込んで同じことが言えるか確かめてやる。そして人間は永遠に勝てる最強種でも無い。戦いたいならそれでいいが自分より強い存在がいれば戦っても滅ぶだけだ。俺の意見だが戦い以外で生き残る方法を探した方がマシだと思う。」
拳を握りしめてシュウノは声を漏らす…
「人間が悪いってか…そんな言い分は誰も納得しない…人間は悪さ以外もできるんだ…命を愛でれるんだ。ずっと悪いことが続いているから消えろって…お前を誰も認めない。」
「もう話は終わりだ。お前らは強者の座を失うのが怖いのだ。だから俺を襲う。くどいならネズミみたいに惨めに駆除してやる。愛情とやらがお前らの価値なら全くの無駄で思い込みだ。結果を出せていない。金を稼げないなら仕事にならないのと同じだ。」
「悪徳なペット産業の犠牲の動物を殺したのはお前だ。力を得たペットの怒りを理解できないし許容できないのはお前らの方であり生きるために戦うならお前らも同じ土俵だ。やめてほしいなら殺し屋を送った奴を差し出せば考えてやる。だがどうせお前には無理だ。」
「お前らが認めるか認めないかは力の差があれば無駄だ。俺は家畜でお前らが食う側だ。だから何をしてもお前らは文句を言えない。お前らが強いことに胡坐をかくから惨めな状況になっているのだ。お前らが品種改良されて食われる側になったとしてもお前らのやり方が返って来ただけだ。」
シュウノに同行していた憲兵たちが震えながら剣を握り罵声を飛ばす
「屁理屈だ…悪党は自分を正当化する理由を吐く…」
しかし、山羊男は人間の文明がいかに現れるかを口説いた…
「セアフスシティができる前には先に鱗清族が住んでいたらしい。人間共が農地の開発で水源を欲しがり川に排水で汚して鱗清族を怒らせて煽り、手を出させてそれを口実に戦争をしかけ鱗清族を大勢殺して土地と水源を手に入れたと聞いた。事実ならお前らは強盗の子孫であり強盗のルールを住民に守らせている。セアフスシティの憲兵はそこを理解した方が良い。」
「そんなこと我々の世代の責任ではない…後の世代に罪を言うのは筋違いだ。」
と憲兵たちは反論したが
「恐らく、土地を奪われた側も同じ気持ちだろうな。お前らは自分に非が無いならされたくないと言っているが過去に今、お前らが感じていることをお前らの先祖は他人にやったのだ。だから末裔がその理由で滅んでも先祖の責任の咎と罰だということだ。借金を後の世代に回すようなものだ。」
「そして無知なまま大きくなった今の世代がまた自分たちの利益が当然と似たり寄ったりの理由で川を排水で汚しセアフスシティの近くの鱗清族の住処を放棄させた…確か、抗議活動していたがセアフスシティを諦めて出て行ったはずだ。お前らは結局、先祖と同じだ。」
「最後に教えるがビジ村の連中は進んで悪徳業者の情報を俺にくれた…この村以外もそうだったがな。お前が救いたい人間は助かるためなら悪徳業者が改善する機会なんかどうでもいいということだ。」
キャベツは獣畜を連れて行きビジ村から去って行った
コモドオオトカゲの体格の猫や虎の体格の牛…大蛇のような犬達がぞろぞろと集まっていく
山羊男の後ろを行列のように歩いていく。それは百鬼夜行の様子だった…
まさに怪物たちの救世主といった様子だった…
憲兵たちはほっとした様子だがキャベツに徹底的に言われて生きた心地がしないのだった
「家畜の恨みが形になったのだ…人間はあいつに何も言えない…」
しかし、シュウノは折れた肋骨の痛みに耐えながら言い返せなくていいと決意を固めた
「相手が正論でもいいですよ。それに正論は世の中じゃ通りません。だから山羊男の正論を聞いて滅ぶ必要なんかないですよ…私はあがきますよ。滅べば正論も間違いもありません。人間は生きるためにあがくしかありませんよ。どんなに醜悪で弱いと言われてもね…」




