第86話:帝国皇子が聞かされる狂人の歌
ラグド帝国の皇子であるクロイヤとトプレヤはローディグ王国のレセプトに入り馬車は道わきに通行人に囲まれて記者たちもパシャパシャと写真をとっていた
歓迎や好奇心に満ちた民衆が馬車に手を振ったり声援を送る…
「ほう…ローディグ王国も私達を歓迎するとは…意外だな。警戒されていると思ったが。戦争に勝てと勇み鼓舞する我が国の愚民共から喝采を受けるより純粋でマシだな。煽られるより歓迎されると心が湧く…」
「この国もまだ平和でいいですね。戦いが無いのが望ましい。僕はこの国が好きになりそうですよ。」
「ああ…だがラグド帝国が弱ればローディグ王国はつけ入る…ローディグ王国が弱ればラグド帝国がつけ入る…国の関係とは我々の意思は関係ない。状況にそうせざるを得ない立場になるのが権力者側だ。愚民共は永遠に個人のせいにして理解しないがな。」
しかし通行人の一人が中指をたてて笑っていた
目を疑う光景にクロイヤが思わず二度見した
「なんだ?…つまらんがこんな舐めた真似を…まあいい…ただの道ばたに吐き捨てられた踏まれたガムだ…気にすることはない。」
「おい!山羊ちゃんが怖くて来たんだろう?泣き虫野郎。早く帰れ~!」
クロイヤははっきり聞こえ顔に青筋が走る…
「なんだ?どういうことだ?ただの当てずっぽうか?」
「兄上。ただの狂人ですよ。気になさらずに。悪口など権力者は常に言われる側ですよ。」
「あいつと少し話をしたいな…どういうつもりか聞きたい…この国は不敬罪がないのか?」
「ありはするかもですが外国に対してはどうでしたかね…ノフィスと戦っている間に色々変わったともいいますし…」
しかし中指をたてた女性が歌を歌い始めた
「おお~チキン野郎のせいで~ゴート・トゥー・デストロイ~お前のせいでラグド人がいっぱい死ぬ~でもお前が先に死ぬから責められなくてラッキー~」
クロイヤは興味と怒りに我慢ならなくなったのか馬車のドアを開いて女性に声をかけた
「貴殿は何者だ…なぜ煽る?私になにか関係があるのか?」
「ん?俺はマレロニーでーす!私に興味もった?それなら成功だね。お前は中身がないからこんな歌にも反応するんだね。うける~。お前は小物でーす。汚い親父のチンカスと垢をこねて作った出来損ないかな?マゾ野郎。早く帰れ~そしたらラグド人は助かる~。」
クロイヤは呆れ気味でマレロニーの底を察した
「まったく…学が無さそうだな…貴殿は正気ではない。二度と声をかけるな。私は怒って罰を下すタイプではない。無能な権力者は罰で相手を従わせるからな。他の権力者は器量が無い奴もいるから感謝しろ。」
「おほほ!感謝?なんに?世間は感謝しろってやたらいうけど理由がねぇだろ~?お前の親父のチンカスに感謝するのはお前くらいだろ?感謝なんて必要な時にすればいいのにな~。ラグド帝国に侵略された連中もお前らに感謝するべきなのか~?」
「クロイヤくんは親父のチンカス野郎~お前は母ちゃんの糞~それをこねた汚い合作~ねずみの親子が天井裏に住んで人より偉いと勘違い~お前は権力者じゃない~キモオタにしゃぶられたフィギュアだよ~」
わなわなと震えながら皇子は我慢しながら反論した…
「どこを見てそう思うのだ…私は学びも家柄も責められる場所はないと思うぞ?」
「お前はスーパーの割引セールの刺身と同じだよ。魅力的な値札や設定で中身があるように見せている空っぽ野郎だよ。他人がつけたブランドや名札しかお前はつけてないもん。設定だけのキャラみたいなもんだよ。」
「お前はどうせ山羊ちゃんに妹がぶち殺されたからぶちギレて来てるんだろ? ぷぷぷ…ぶちぶちぶち~。だっせえな~俺がお前の母ちゃんになろうか?でもお前はきもいからね~アロワナの餌のヒメアノールに今度は生まれればいいよ。」
顔に汗が浮かびながらクロイヤは問いだした
「貴殿は何を知っている?当てずっぽうにしては妙すぎる…奴を知っているのか?」
「あん?私は山羊ちゃんの婚約者でーす。俺の子供が世界中のお前みたいな中身が無いスカスカの骨粗しょう症野郎を根絶やしにするんだよ。フクロオオカミみたいに血祭だぜ?覚悟しとけよ豚野郎。息子の餌にしてやるよ。」
「捨てキャラが自暴自棄になってドラッグしてるぜ、こいつ。お前はドラッグ中毒の糞雑魚メンタルで~す。若いのにすぐ死にそう。コクワガタ君ばんざーい。」
「シルバナで立ち話を聞いたんだよ。お前の妹が密入国して奴隷売買で男の子を買おうとした病的なショタコンで山羊ちゃんを殺そうとしたから顔を割られて豚に食われたって。マジウケるよね~カニみたいに割られて食われたのかな。」
「見たくないよね~美人でも割られたらグロテスクなのは同じだからね。お前の妹の頭は割られてカニみそがでたかもね。カニみそ美味しい~お前の脳みそもカニみそみたいに美味しいの?カニ缶かもね。」
「頭を缶詰みたいにバリバリ開いてオホホ~でもお前の妹は山羊ちゃんに喧嘩を売る脳が無い馬鹿だからね。糞の缶詰かシュールストレミングかもね。俺は臭いのは駄目なんだ。お前も臭くなるなよ?フィーロ王女にも嫌われる~。クロイヤ君は風呂ギライで病死するかも~」
「妹は新しいのをアロワナに産んでもらえ。ヒメアノールに生まれたお前を食い殺したアロワナの妹を俺が刺身にして食ってやる。」
「ラグド人が大切なら山羊ちゃんに会うな~お前は山羊の糞にもなれないから~お前のせいでみんな死ぬ~あれ?違うかな…妹とお前のせいだ多分。」
クロイヤは血の気が引いたのか顔が青くなって馬車に戻った
「水をくれ…血の気が引いてしまった…血圧が高まり過ぎたからか…あいつはなんだ?奴の手先か?」
「兄上…どうしたんですか?彼女はただの通行人ですよ…お気を確かに…」
マレロニーは憲兵に捕まり連れていかれた
「おい?どうしたんだ?私がすきなの?ラグド帝国はアホ~ネズミのチンカスを偉大と崇める~」
「貴様、クロイヤ皇子になんてことを…こっちにこい!」
その様子をみてクロイヤは汗をハンカチでぬぐった
「初めてだ…許せん…だがなぜ私は傷ついている?なぜ気分を悪くしている?ただの狂人の世迷い事に…ぬうう…大丈夫だ…トプレヤが目の前にいる…現実だ。奴は幻だったのだ…」
雷龍牙はまたカタカタ揺れていた
(ぐははは…トプ…レヤ…この馬鹿…を帰らせろ…アロワナ…の餌にも…ならない…あの狂人と結婚しろ。多分退屈しない。)
「まただ…誰かの助言か?しかしあの狂人の言う通りかもな…なんとか山羊男に手を出す前に兄上を帰らせなければ…さっきの怪物と結婚だと?発想が正気じゃない…」
◆ローディグ王国の国王に会いに来たラグド帝国の皇子◆
トプレヤ皇子達は城の庭に馬車をとめて入場した
「よく来た…はるばるここまでご苦労である。お主達は領事館を好きに使うといい。花婿が娘に挨拶…ではなさそうだな。山羊男だろう?」
エリクトピ国王に膝をついて見上げるクロイヤに単刀直入に問いだす…
「そうでございます…今や奴は世界の脅威です。国際的に対処するべきと父上は判断しております。どうかこの機にシルバナから奴をどうするか協議をお願い申し上げます。」
「お主達の先祖たちは二百年ほど昔にシルバナを攻めて大勢、戦死者を出して撤退した…その数は一万の軍隊が呼吸困難の高山病にされて死んだという。神木による空気の調整魔法と記録が残っておる。」
「その雪辱のつもりであるまいな?まあ国の関係の者が正直に答えることもあるまい。無意味な質問と思ってくれ。」
しかしクロイヤはあまり関心が無さそうに返事を返した
「私は昔のことを理由にはしません。私は現代に生まれた者。現代の問題にしか対応できません。昔の愚かな采配は現代の者は繰り返さないよう参考にとどめるべきと考えます。歴史で怒るなど無学で無力な者が陥る思考の罠でございます。」
「そうか…報復は確かにお主の言う通り愚かな行為だ。だがどんなに地位や学位がある者でも歴史上の人物たちは感情に振り回されておる。お主も気を付けるのだぞ?自分で制御できていると考えておる者ほど土壇場でボロがでる。若いうちに学んでおくのだな。」
クロイヤは謁見の間から退席した
◆兄弟の心境◆
トプレヤはクロイヤに領事館で紅茶を入れていた
「どうでした?エリクトピ国王のご様子は。」
「ああ。経験があるお方の雰囲気は感じられた。ノフィスが荒らしていた時は防衛戦で世界の国々でもダメージを押さえた国王とも言われている。」
不機嫌そうにクロイヤは顔をしかめながら紅茶を飲み干した
「だが今日は腹の虫がおさまらん。狂人の罵声と威厳ある国王の説教…気分が悪い…ぐうう…私が未熟だから怒るのか?」
「お気になさらずに。僕はシアタシティに行きますよ。3流メディアの代表役に大金を渡して山羊男の悪評を煽ってきます。すでにラグド帝国の人員がこの国の反社組織をいくつか手中におさえています。メディアの代表役の家族もいつでも人質にできる状況です。」
「金を渡すだけでは言うことは聞かない。相手の足元を掴むのが交渉だ。流石だ、弟よ。妹も見習ってほしかったがな。最後までお前を甘いと見くびっていた。」
「金を渡した後は裏切ったら死ぬと思わせないとな。具体的には金を渡してその代表役の子供を攫うのはどうだ?すぐに帰すがな。」
お茶を飲み干すとトプレヤは軽くうなずいた
「いつでもできると思わせる…それがいいと僕も思います。兄上が落ち着いている間は大体、上手くいくときですよ。人間に義理は期待できない。所詮は自分の都合で生きるからです。」
気をとりなしたクロイヤは部屋を出てフィーロのいる場所へ向かった。
◆皇子と王女◆
城の2階の屋根が無いバルコニーでテーブルに座りフィーロ王女とクロイヤが会話をしていた
「お久しぶりですね。最後に会ったのは二年前でしたか…以前よりフィーロ王女はお美しい。」
「そうですね。遠路はるばるとお越しいただいて。しかしクロイヤ様の妻に私が勤まるか自分でも心配ですよ。」
「フィーロ王女。我々は言葉が悪いですが権力者の家系。自分の自由があまりない。結婚も犬の配合のように上が決める…ならばせめて私達の意思で幸せの見本になりましょう。民が王族の結婚に注目するのは幸せの指標だからですよ。」
「ごああああ!!犬だと?言葉を選べ!去勢手術して噛み殺すぞぉおおおお!」
フィーロの顔が真っ赤に赤面し汗がながれて睨みつけるが気を取り直した
「すいません。私、すこし怒ってしまいまして…落ち着きましたので気になさらずに…」
クロイヤは血の気が引くのだった
「ああ…すまなかった。言葉を間違えましたよ。あはは…」
(この国の連中はおかしいのか?予測がつかん…胃が痛くなる連中だ…)
◆ロジのハーレムチームの様子◆
ピー太郎とティアニスとメイリアは身辺検査を終了してレセプトの街に出ていた
「まったく。人畜とやらにされたからと言って全身を調べられた。私も乙女なのにな。だが危険性がないと調べられた方が私も安心だ。」
メイリアがそう不満げに話しているとピー太郎が気にしていることを話す
「ロジ様が修練を成されているのですよね?見に行けないのですか?」
「見てもしょうがないでしょう?呼ばれたら行きますよ?」
ティアニスが歩きながら返事をしていたらマレロニーが憲兵に連行されているのを目撃した
「クロイヤ万歳☆クロイヤ万歳♪侵略的外来種の火蟻軍団のキャプテンを歓迎しているお前らローディグ王国もアホ~♪」
「街の外へ放り出す!お前はレセプトへ出禁だ。」
「あいつら追い出せよ?山羊ちゃんを怒らせるのを煽ってるぜ?お前らも巻き添えで死ぬ~♪」
メイリアが近づきマレロニーに問い詰める
「お前は誰だ?何を知っている?」
憲兵はメイリアに怒鳴った
「話しかけるな。お前は見張るように言われている。どこにいても見張られているぞ?英雄の一人でも狂人とは話させん。」
連れていかれるマレロニーはメイリアに振り向いた
「うーん。お前の仲間は多分死ぬ~。何かをしようとして死ぬ~。お前が酒場に投げられて死んだように~。みんな過去から学ばない~♪でも山羊ちゃんはお前を殺さないかもね。」
「どんな存在か人間を見てるんだよ。山羊ちゃんは。チキン野郎でお前らをぶち殺していい理由を探してる。でもお前らは進んで殺される理由を作る~♪私が言っても誰も聞かない~♪だから馬鹿はみんな死ね~♪馬鹿は自分の考えが正しいと思う奴ら~♪人間の病理~♪」




