第85話:勇者は龍人の秘密を知る
ロジ・ジョットは修練場で修練を行う。前回の体術の審査でロジャノが次の段階の修練を許可した
翌日、ロジは10kmをランニングさせられた後、以前のように軽く組手を行い修練場の真ん中に立たされた
「よいか?今日より龍の力で戦おう。その前に龍人の秘密を教える。お前が異能で軽々しく使う龍の力が危険であることを教えよう。」
「ひぃひぃ…ちょっと呼吸を整えてからお願いしますよ…」
「ふん。息をしながら聞くのだな…龍人とは人間だ。創魔龍の自分の血肉から作った魔法生物から進化した魔人は龍の系譜だが龍人は違う。魔龍の輸血によって変異した人間だ。」
「え?生まれながらの血族とかじゃないんですか?」
「生まれながらでも後天的でも結果が同じなら重要ではない。血筋に説得力を求めがちなのは人間の悪癖だ。」
「わしがお世話をしていた光魔龍は人間にとってありがたい存在ではない。まず人間から龍人を出した意図から教える。」
「光魔龍は龍が滅んでいくことを嘆いていた。そこで他の魔龍が亜人を既存の生物を改造して作ったのをみて人間を龍に近づける案を考えた…飛び切り強くしてな。」
「光魔龍は亜人を作らず他の魔龍の亜人の様子をずっと見ていた。亜人は魔人に負けるスペックだ。龍の要素も魔法を使える点以外は多くは見せず龍より比較にならないほど弱い。」
「やがて人間が亜人や魔人を負かしてこの星にはびこるようになると人間を最強種と考えるようになった。そこで光魔龍は人間の豪族に関係を持った。光魔龍は半身が呪魔龍を倒した時に不具になっていたからだ。」
「その内容は人間に光魔法を教え龍の力を与えるから自分の配下になれという内容だ。力を望む人間達に龍血を与えて実験し大勢死なせた。自己責任と言ってな。」
「そんなことって…なんでそんなこと…」
「光魔龍は龍の存在を滅ぼしたくなかったのだ。やがて龍血の改良が進み人間を龍に近づける試みは成功した。だが最初の龍人は気が狂い飛び狂っては他所の国に行って人間や亜人を食い殺す事故も起こした。人間の時代に龍の昔話があるのは光魔龍の事故の産物の話もある。」
「龍血の安定が確認できたら強い戦士を何人か龍人にした。だが多くは戦争に使われ戦死した。千年前に二人が脱走し世界を支配したがる連中まで現れた。アルシオン伝説は光魔龍が原因だ。」
「そして光魔龍は龍血を得た人間の子が龍人にならないことも失望していた。改良を続けていたが所詮は龍の劣化版だ。一時的な龍に変身と魔人より強い体力では龍と同等と思えなかったらしい。なにより自力で増えないのが光魔龍の焦燥と怒りだった。」
「龍血の作成には光魔龍の命を削る欠陥もある。我が義兄のサンテガに500年前に力を与えて何度か兄は家庭を持ったがいずれも龍人にならなかった。そこで光魔龍は男から龍人にするのは見切りをつけたのだ。」
「何度か龍人から人間に輸血したら増えるかという実験も豪族がしたらしいが全員、血液が不全になり死んだらしい。光魔龍の龍血を飲んだ者しか龍人にはなれない。」
「わしの出身のテル王国は光魔龍の世話をする伝統がある。そして最後の改良版の龍血をただの世話役のわしに渡し死ぬ前に経緯を説明した。その後はサンテガと一緒に多くの国を回ってここに行きついた。」
「サンテガは世界中を旅して魔物や魔人、造龍を駆除する戦士だった。ローディグ王国を守るためにノフィスとイテミスと戦い殺されたがな。」
「ロジよ。龍人は寿命ではなく殺されて死ぬ。いずれもな。力を持つ者ならわきまえろ。できぬなら今日で不合格だ。」
ロジャノの剣幕にロジは圧倒されて引け腰になる…
「龍ってイメージと違いますね…なんでそんなことに…」
「世の中には余計なことをして事態が悪化することが多々ある。化学肥料をまいて余計土地が悪くなるように…髪を染めて毛質を傷めるように。力を得ようとして大勢、自分や無関係な者が死ぬように…みなおもちゃのように軽く考えるからだ。後始末もその者たちはしない。」
「光魔龍は他所の国から見たらテロリストですかね…龍人を増やす実験で死人が増えたってことですか?」
「…そうかもな。だが汚染水を外国に垂れ流す国もあれば侵略も不必要にする人間国家もある。人間は魔龍を悪く言えない。光魔龍もわしの国では重鎮だったしな。お前がよその国の偉い奴に何も言えないし何もできないと同じだ。」
手を握りしめながら勇者を目指す若者は苦し紛れにぼやくのであった…
「何もできない…そうですけど…それじゃあ力の意味はなんですか?国同士で殺し合いの牽制をしあうための手段ですか?僕が山羊男を倒しても先は同じなんでしょうか…」
「では何もできない僕より千年前の世界を変えようとした龍人二人が道理という意味ですか?力で世界を変えるのはどの世界でも悪になる。でも僕に力があっても何もできないことは責められる。どうあるべきなのですか?」
ロジャノはロジに強く叱責した
「力があると思うがままにしたくなるのが人間の病理だ。この前の毒沼主は覚えているか?龍人二人はアルシオンに倒された後はクズやゴミと貶されていただろう?」
「お前も力で好きにすれば後に残った者からそんな評価を受ける。アルシオン伝説の龍人二人は世界も変えられず犠牲を増やし魔人からも造龍からも人間からもクズと言われて終わりだ。お前もそうならないように気をつけろ。いなければよかったと言われる存在になるな。」
◆龍化しての修練◆
ロジャノは龍化して前に立った
白き龍に変身すると二本足で立ち上がりロジを呼び立てる
「さあ、お主の力を見せて見ろ!青二才!」
ロジが龍人の力を実行するとペーパークラフトの龍の中に包まれて10mの巨体になり二人が相撲のように立ちすくんだ
二人はぶつかり合い組み合った…
「ドガッ!」
重たい重機がぶつかり合うようにあたりに地響きが起こる
しかしロジがよろめいて投げ飛ばされズンと音が鳴り響いた
「あああ!やっぱりロジャノ様は大きな壁ですね…超えられる自信がありませんよ。」
「早く立たんか!何か月もやらんぞ!」
そのさなか、ガムを噛みながら見ていたパリウスに渡り鳥の手紙が飛んできたのだった
「あれ?シュウノ君からだな。あの子から手紙なんて…ピンチかな?」
開くと女性の紹介文と写真だった
~パリウスさんへ~
パリウスさんはいまお付き合いしている人はいますか?
イグナが好きだと思いますが最近、セアフスで未亡人の方が
パリウスさんとお付き合いしたいとご希望です。
もし興味があるならこの写真のトレッチさんとお会いしては
いかがでしょうか?
シュウノより
「うーん。見た目は結構いいけど未亡人は恋愛市場では中古だよね、俺にはふさわしくないよ。返事を書くのも面倒だからきつく書いて嫌われるようにしようかな?」
「俺が死んだらまた別の男に乗り換えそうだしパスかな。遺体から遺体へ飛び移るおさるさんでも困るからね。」
「イグナ君も山羊男が死んだら結婚してくれるって言ってるし、わざわざ自分を安売りしているバーゲンセールに行かなくてもいいよね。パスだパス。返事書くのめんどいな~書くけどさ。」
パリウスは噛んでいたガムの包み紙として手紙に吐いてくるめると写真をゴミ箱に入れた
◆レセプトに近づくトプレヤ皇子の不安◆
ラグド帝国の皇子達であるクロイヤとトプレヤは首都のレセプトに行く前に外交の要人が止まる大きな建物に来て宿泊していた
「兄上、終わった後ですが襲ってきた暗殺者の遺体は消した方がよかった気もしますが。捕まえて吐かせるのもよかったでしょう?なにも首をちぎって案山子の頭に挿げ替えて飾らなくても…」
「奴らも簡単に口は割らん。目的は首都に行くことだ。間違えるな。それにラグド人の伝統的な拷問に比べれば優しい。祖国では口を割らせるときはアンコウのように吊るして鞭や刃物で刻んで塩やトウガラシの粉末を刷り込む。まだ配慮した方だ。殺し屋など恥をかいて嘲笑されればいい。」
トプレヤは待合室から個室に戻って先行きに望みを持てなくなったのだった…
「例え山羊男を倒しても延々と領土や金や地位で揉めて悩み続ける…何が楽しい人生なのか…」
そうぼやいているとまた頭に声が響くのだった…
「お前は…正しい…だが…人生…は諦めたら…楽しく…ない…その馬鹿…は見捨てろ…楽しむ…ためには…見捨てることも…大事だ…悲しみ…は3日…で薄れる…グッドラックだ…」
雷龍牙はカタカタ震えるのをトプレヤは気づくのだった…
「まさか剣が?何が言いたい?」
剣は沈黙して静かになった…




