第75話:英雄は禁断魔法を魔王の娘から授かる
山羊男のキャベツが少年リメシュの風邪を世話していたそのころ
セアフスシティにて
盗賊のクジとオークのウードをアルシオンの助力を得て退けたシュウノは二人の妻、セイルとルナムを山羊男の元飼い主のギノの軟禁されている要人用の療養施設にカタム領主に頼んで入れて貰った…
自分のために命をかけると信頼したルナムは魔王の遺産:絶滅石器の秘密を教えると話すのだった…
「シュウノ…父、ノフィスの遺産である禁断の魔法…絶滅石器の秘密を教えよう…誰も聞いていない場所に移動するぞ…セイルの馬鹿に見つかると面倒だから早く来い…」
「ああ…監視が無い部屋に行こう…丁度、物置の奥部屋に医者や職員がさぼる部屋がある…そこに行こう…」
シュウノとルナムは物置の隅の部屋にこっそり移動してテーブルに座った
ルナムは匂いを嗅いでサイコメトリーを使い盗聴が無いか確認した…
「トランプやたばこまで…博打をしていたか?まあいい…サイコメトリーで安全は確認した…話をはじめよう…」
「土系統の滅亡魔法である絶滅石器…私が死ぬか苦しむと発動すると言ったがあれは嘘だ…お前やカタムみたいな立場の者から攻撃されないためのブラフだ…」
「え…嘘だったのか…そんな脅しで俺達はまんまと乗せられたのか…でもそれでよかったよ…それでもルナムは守るよ…」
魔王の娘は顔を赤くしながら照れるが強がる素振りを見せる
「ふん…当然だ…だが今はそんな話ではない…絶滅石器は実在する…私が持っている…魔力を十分貯めないと発動できないと言う意味だ…私が持っているのは術式だけだ…」
「前にも言ったが絶滅石器は発動に膨大な魔力が必要な上に自分の近くにしか落ちない試作段階でそのまま使えばただの自滅魔法だ…今から教えるのはそのルーツだ…」
「まず父上の異能を教えよう…父上は人間と魔人の間に生まれた混血児…人間を血筋に持つ魔人は異能が使える場合がある…父上も異能が使えた…」
「父上の異能:フィアーズコード…能力は他人の恐怖から魔法の基礎術式を生成する能力…父上は強い恐怖の記憶を持つ人物から魔法の原型を自動で作り出し自分の裁量で改良する方法をしばしばやっていた…もちろん異能に頼らなくてもする自分自身の知能で開発をする場合もあったがな…」
「じゃあノフィスが魔法をたくさん開発して今世紀の大天才って呼ばれたのはその異能も関係していたということか…絶滅石器もそれで作ったんだな?」
「ここからが本題だ…絶滅石器の元になった恐怖…それは龍の時代を終わらせた隕石の恐怖だ…隕石で生き延びられるのは龍の中でも魔龍だけだ…だが魔龍以外に生き残れた龍がいるらしい…つまり父上はその龍の恐怖から絶滅石器を生成したのだ…」
龍が生きていた情報にシュウノは驚きを隠せず声を出してしまう
「魔龍以外の生き残り?太古のおとぎ話の存在の?イテミスが盗んだ神木の風魔龍とは違うやつか…魔龍は龍の中でも特に強いトップ勢…魔龍でも無いのに生き延びた龍がいたのか?」
「風魔龍は私もイテミスから聞くまでは知らなかった…あやつが父上にも秘密で血眼に風見族とシルバナを調べてたどり着いた情報だからだ…父上は別の龍と会ったらしい…なんの特徴がある龍かは私も知らないがとにかく父上はその龍に会いフィアーズコードを使い絶滅石器を作った…」
「龍は話では人間より強い魔人を虫けらに扱えるほど強い怪物なんだろう?それが大人しくノフィスの異能を食らったのか?」
ルナムは魔法と龍について解説する
「魔法とは龍の体内で発生したエネルギーを使いイメージを現象として起こすこと…そのエネルギーは魔力と呼ばれており魔龍達は通常魔法や属性魔法をメジャー規格として統一した存在だ…」
「それ以前や魔龍以下のランクの龍でも固有魔法を使っていた者も数多いたらしい…だがそれは自分だけで他人に使えない再現性や汎用性がない独自規格のようなもの…魔龍は誰でも使えるようにインフラを整えた賢者でもあるのだ…」
「魔法を扱う者は魔力を体内で起こし燃料にして魔術で現象を発生させて放出する…そして空気中の魔力を使いながら外に飛んでいく構造だ…それは龍でも魔人でも人間でも大差はない…だが体内で起こす段階がとても強いのが龍でその次が魔人だ…」
「人間が単体で魔人に魔法の火力で勝てない理由はそこだ…人間の場合は魔力持ちが先天的で少数派だ。魔人にも強弱があるがな…私が魔人なのに人間と大差がない体力で肉体的には最弱であるように…話がずれたから戻そう。」
ノフィスと出会ったという龍についてルナムが解説を続けた
「その龍は父上の話では老いたジジイでボケていたらしい…だが父上は土産話を私に教えた…その龍を捕まえて研究しようとしたらすり抜けたらしい…捕まえることができないから絶滅石器だけ持って帰って放置したという話だ…」
「フィアーズコードは近くにいるだけで発動できるから触る必要が無いので絶滅石器の原型はできたらしい。」
「そして絶滅石器を改良している途中でお主達に囲まれて父上は倒されたということだ…」
「絶滅石器は直撃したら魔龍でも死ぬ威力だ…ボケた龍は恐らくすり抜ける魔法があるから無傷で耐えたのだろう…この意味がわかるか?」
絶滅石器の運用で誰でも気づくような方法にピンとくる
「そうか…すり抜ける魔法と絶滅石器を合せれば使い手は死なずに済む…」
「その龍が協力してくれればいいが、そのボケた龍の居場所はかなり危険らしく父上は私には教えなかった」
「会えたとしても父上は会話にならない老人と言っていた…会いに行っても無駄骨かもな…」
「山羊男は風魔龍の力を得たイテミスすら殺した…ボケた龍の存在がバレれば恐らく山羊男は危険種として殺すだろう…魔人を皆殺しにしたように…そうすればこちらのヒントや手段が減る…」
ルナムは右手の親指の爪から何かがモクモクと飛び出してくる…するとどんどん広がって羊皮紙になった…
「これが絶滅石器の術式だ…父上が魔力を羊皮紙に込めれば誰でも発動するように改良していた…自分が魔力を貯めなくても羊皮紙に貯めれば発動できる…」
「拳の大きさで発動しても父上は2週間倒れたほど魔力を使ったらしい…それで運動場ほどの無人島が消えた威力だそうだ…ちなみに父上は飛行できる魔物の上から何重もの結界を自身に部下からかけて貰い高所から発動してテストした…」
「発動には魔力も潤沢に注がなければならない…お前にどうするか託そう…術式はお主以外が見ると羊皮紙が燃える仕掛けにしてやった…慎重に扱うんだな…魔力の装填は裏向きにして注げばいい…たくさんの魔力持ちがいるかもな…」
「俺にくれるのか?君の命綱の一つを?…ありがとう…ルナム…山羊男を倒す切り札になるはずだ…」
「ふん…まだ発動する条件も満たせておらんだろう?あまり期待するな。そしてこの話はばれれば私のブラフも無意味になるから気を付けるのだぞ?私にはお前の子も身ごもっているのだから。」
「だが所詮、火力が高い魔法だ…この前、ツテから聞いたがイテミスがロックオークの拠点の広い岩場や建物や突起物が更地になり粉微塵になるほどの大技を使っても山羊男は死ななかったらしい…手段の一つとして過信はするなよ…」
「風魔龍の虐殺魔法…望郷風化は雷魔龍の配下の龍の街を皆殺しにして更地にした伝説がある大魔法を超えた風魔龍法…それを受けても死ななかった怪物を相手にすると思え…」
シュウノは未来に進むために少しでも可能性は掴むと意気込む
「ああ…俺はキャベツを殺したいんじゃない…この殺し合いを終わらせたいんだ…でも力が無ければ止められない矛盾がある。俺は泥沼にいるのかもしれないがもがかないと沼から出られずに沈むだけだ。俺は最後までできることを探すよ。」
「フッ…セイルには勿体ないな。運命とは不思議だ…セイルがうっとうしいならいつでも一緒に逃げてもいいぞ?」
「そんなこと聞かないで…俺からセイルを怒らせるきっかけを言わせないで…怖いんだ…俺は20歳の情けないパパだけど君らと子のために何でもするよ…」
シュウノは羊皮紙を手に取って眺めた…不気味な円を何重も描いたような文字の羅列の術式だった…




