第74話:山羊男が看病をする
龍姿研究会を村に招いて応対していたら夕方になっていた…
山羊男は商人のモデファルにまた明日と伝え自宅に帰宅する
「なぜ俺の周りはまともな連中が集まらないんだ…俺という存在がまともではないからか?」
山羊男のキャベツは風邪を引いたリメシュがいる部屋に向かいに着替えの服を置いて話を始めた…
「…お前はなぜ奴隷に売られていた?ケセマ村の扱いを教えてくれ」
咳が止まって普通に話せるようになったリメシュは嬉しそうに返事をした
「神が私を看病してくださるなんて…私に興味を抱くとは感激ですね…私はシューク家という貴族の下の弟ですよ…貴族と言っても金がなければ平民以下の家系も多々あります。」
「魔王ノフィスの戦火で私の家系も土地を失い、戦費のために上から没収された土地や資産も相まって落ちぶれましてね。だから売られたのですよ。私の見た目が可愛いという理由で…」
「ケセマ村ではあなたが殺したエクラル皇女に売られる予定で執事の訓練を受けていました。」
「お前は可愛いのか?俺にはわからないが人間も豚や家畜のように売買されるということか…エクラルは俺が殺したことになるのか?」
「確かに獣畜に改造した豚をケセマ村に襲われる前に準備をしていたが連中が俺を攻撃したので放った…エクラルはその最中に俺を殺しに来て返り討ちにしたが命乞いを聞いたのにまた敵意を向けたから左顔を砕いたせいで豚から逃げられなくなったからな…俺のせいになるのか…」
責める気ではなかったリメシュはキャベツが気を悪くしたと思い陳謝した
「申し訳ございません…神のご意思は絶対です…あなたが死ぬことを望むなら悪逆非道なケセマ村もエクラル皇女も神のおぼしめしで死んだのです。お気になさらずに…彼らが下等すぎて神を理解できなかったのでしょう…」
「俺は神ではない…別に人間からみて善か悪かの評価など欲しくない。俺は家畜だ…ケセマ村の話はこの辺にしよう…奴らはただの役人ぐるみのギャングだった…」
「魔王のノフィスはどういう人物だ?別の魔王のイテミスには会ったがノフィスとイテミスではノフィスの方が圧倒的に人気らしい…」
「だがイテミスは元から体力ではノフィスを超えており風魔龍の力を得て多くの者はイテミスが戦闘力では遥かに格上で個人では現代最強だったと評している…同じ魔王でも強ければ人気という意味でもないのか?」
「魔王ノフィスは現代のやり方で世界征服をしようとした正統派だからですよ…古代最強という肩書の龍には興味を見せず己の裁量を振るうタイプです。手を焼いても楽しむ節もあるから自分の腕でどこまでいけるか試す正統派の魔王ですよ。登山家にも似た心境かもしれません。」
「そのためには演説や信頼関係や協力者や服従した者には不快感を与えないように配慮したとも言います…言葉も下につきたくなるような演説が多かったとも言いますね。魔法の達人で開発の天才とも言われています…人間からも信者がいたくらいですよ…」
キャベツは新しい飲み水をリメシュの側に置いた
「イテミスは高い格闘技術や自身の体力や能力を存分に扱う技量もあった…俺の見立てだがイテミスは風魔龍の力が無くとも並みの戦士では手も足もでないほど強かったはずだ…ノフィスは幅広く相手の心境まで掴む裁量があったのにシュウノとか言う人間共のチームワークに負けた…」
「恐らく風魔龍を得たイテミスは人間が何人相手でも負けなかっただろう…勝てるなら俺を襲う前に人間が倒していたはずだからだ…だが死んだ後で評価されたのはノフィスだ…」
「強さではなく心に残る者が覚えられるらしい…棺を覆いて事定まるという言葉があるがそういう意味か?本を読み終われば本の価値があるか皆が考えるように…」
山羊男は魔王の違いを椅子に座りポーズをとらずに考える
「つまりイテミスはノフィスの人気を理解できずに強ければ影響力があると誤認していたということか?奴の過剰な強化の固執はそれが理由だったのかもしれないな…俺が殺さなければ今頃どうなっていたか想像もつかない…また他の魔龍の死骸でも探していただろうか?」
「私はイテミスには詳しくないですが奴は魔人らしい武人ですよ…武術や技術を習得して高めますが周りを育てられない…ノフィスは部下の魔人には魔法をよく教えて魔人の兵としての質も高めたと言います…ノフィスは多方面で才能がある育て屋なのですよ。」
「イテミスは魔人では珍しい性格ではありません。魔人の才能がある者はイテミスみたいな性格の者は昔から数多いたとも言います。ノフィスが魔人では異質なのですよ。」
「人間の魔法使いもノフィスの手がけた魔法を使っているほど新魔法や既存のものから改良された魔法が優れているのです…」
「そうか…魔王でも王でも侵略をする側なら等しく強盗団のはずだ…だがノフィスは強盗でも慕われる…魅力があった男なのだろうな…恐らく、奴が生きていたら俺とは戦わなかったかもな…対話で済んだかもしれない…」
過去にノフィスの声を聴いたとリメシュがキャベツに打ち明けたのだった
「私もノフィスの人間向けの演説を耳にしたことがあります…風魔法:天声皆聞という大規模な拡声魔法で聞いたことがあります…」
「我が名はノフィス…わしは支配を一つにする…この世の争いを無くそう…わしの元へ集え…この世の不平をわしの下で無くそう…強きも弱きも生きられる世界を目指す…そのためにお主達の心が必要だ…わしに心をゆだねよ…わしも忠義には応えるよう心血を注ごう…」
「どうですか?魅力はあるでしょうか?私は心地よく聞こえましたがね…今考えれば甘言ですが…」
「そうだな…アイドル的な魅力も持った稀有な男だったのだろう…支持を集めるのは力を振るうだけでは集まらないからな…相手の内心の問題だからだ…」
「例えばあらゆることが可能で俺を一瞬で殺せる人物がいるとする…そいつが世界征服をしても恐らく魅力はない…力で全てを済ませればそれは出来ることをやっただけで、工夫や協力の意味がないからだ…」
リメシュは山羊男の存在を理解したがるように質問を投げかける
「あなたは神ではないのですか?それほどの力があるのに…」
「力が神なら恐らく神ではない…お前らを救う存在がいないし力を使っている奴らの大体は武力主義や実力主義だからだ…奴らは利益が無いなら何もしないはずだ…」
「俺は本で神の価値観を見たがどの国でも大体は救いや善を意味している…戦いや悪の神の考えもあるが俺には救いや善の神以外は必要性がないと思った…無意味で救いにならないからだ…俺は救いの神がいればいいとは思うが実在は確認する方法はないから深くは言わない…」
「俺を神と呼ぶな…お前の救い主でもない…救世主や神を名乗ったりする連中は大体、金や武力を欲しがる連中のはずだ…神を気安く口に出す奴はろくでもないと気をつけろ…」
少年は納得いかない様子だが自分の呼び方を許して欲しいらしい
「では上様と呼ぶのをお許しください。私の上の方と言う意味です。」
「俺は上下関係には興味がない…人間から見たら家畜は下のはずだ…お前にはそこまで興味はない…だが今日の会話はよかった…」
「本当ですか?では必要な時はいつでもお相手しましょう…上様は家畜ではありません…この世を正せる唯一のお方だ…人間は現代まで何もできていませんよ…あなたが救いに生まれたはずなのです…」
◆エルフとキツツキ◆
以前、奴隷商人のリボバルに自我を洗脳されていたエルフの女性がようやくまともに話せるようになったと報告が山羊男の家に入った
キツツキの特徴をもつ風見族のルクセは早口でそれを山羊男のキャベツに伝えた
「あのですね!以前、あなたが奴隷商人のリボバルの頭をぶんなぐってぶちまけた脳みそがかかって錯乱したエルフのセヤさんが正気に戻って食事をできるようになりました!でもどんどん図々しい態度をとっています!働かないで飯を食べたいと言っています!」
キャベツはルクセの唾がかかりながら聞いている…
「俺は前に言ったはずだ…落ち着いたら故郷に帰らせろと…許可を取りに来たのか?」
「いえ!エルフは掟が厳しいらしくて洗脳されて故郷から離れたとはいえ怒られないか不安だそうです!だからここでおなかいっぱい食べて遊んで帰ると言っています!」
「そいつを連れてこい…帰りたくしてやる…あと唾を飛ばすな…」
ルクセはセヤが怖がって離れないから自分たちが行くしかないと言う
「あなたを恐れています!脳みそシャワーマンと錯乱しています!」
「狂人のふりをしているかもな…脳みそが好きならまた浴びせてやる…」
ルクセとキャベツは診療所に向かって移動をした…
耳が長くとがったエルフのセヤは焼き芋をほおばっていた
「あれ?…キャアアアアア!脳みそマンだ!」
「お前はもう無事だろう?早くエルフの里へ帰れ…アルガナ村は慈善団体ではない…自分の部族の在り方とは違うやり方で立ち位置を探ろうとしている者達だ…子供がいない血の気が多い連中だ…村と言うよりは徒党なのだ…お前の居場所ではない…」
「嫌ですよ…里から離れたエルフは罰があるんですよ?食べ物も毎回、同じだし…木の実とか狩とかで目新しさがないですよ…」
「お前は奴隷商人に攫われたんだろう?それを理由にすれば許されるはずだろう?」
「きゃああああ!脳みそまーん!助けてー!」
「ふざけたら追い出してやる…それとも脳みそが欲しいのか?真面目に話せ…」
セヤは焼き芋をほおばらせて口がきけないことをアピールした
「フガフガ…」(口に芋が詰まってしゃべれません…)
セヤの口や手に持った焼き芋から細かくなった芋がぼろぼろベットに落ちる…
キャベツは歯茎をむき出しに前歯と下歯をギチギチと噛みしめるのだった…
「今週までは待とう…それで帰れ…」
「フガフガ…来月がいいです…フガフガ…」
「お前らは長生きのエルフなのだろう?精神面が少年のリメシュ以下とはどういうことだ?生きているのに精神面の変化が低レベルで終わっている…それは当の昔に死んでいるのと同義だ…」
「そうだ…リボバルがエルフは森ではないと寿命が犬と同じくらいになると言っていたな?お前はシルバナの森でも生きられるのか?」
「フガフガ…まあまあ大丈夫…フガフガ…森はエルフにとって魚にとっての海だから…フガフガ」
「…芋を食いながらしゃべるな…お前は実は前から正気でショックを受けたフリをしてここで遊んでいたのだろう?」
キャベツは芋を取り上げたがセヤが号泣して奇声を上げた
「ウイイイイイイイイイイイイイイ!ビィイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「話が通じないというより話しかしない奴だな…自分の主張しか話せない奴だ…」
キャベツは芋を返して退席しようとしたがセヤが後ろから注文をつける
「今度来るときは果物を持ってきてください!退院したらお金もください!帰る前に遊園地や食べ物屋さんにも行きたいです!」
「お前は森に住み着くカミキリ虫だ…木に穴を空けて枯らす害虫だ…カミキリ虫も昆虫の中では長生きと聞く…無駄に長生きで害悪なのがカミキリ虫でありエルフだ…」
「三千ルオン(30万円)渡してやる…それで出ていけ…俺の私費だがお前がいるよりましだ…」
「もっとおおおおおお!ビィイイイイイイイイ!もっと上げないとここに住みつきます!」
「カミキリ虫でもここまでにはならないな…お前は不快害虫として図鑑に載るべきだ…」
山羊男はエルフが捕まった経緯に問いだした
「奴隷商人のリボバルにはどういう経緯で捕まった?」
「え?里が嫌になって里の外のギリギリをうろちょろしてたら商人が珍しがって写真を撮る商売にちょっとだけ協力したらお金くれて…買い物ができるって聞いてこっそり逃げて借金していっぱい買ってたら借金取りが来てピンチになったけどリボバルに肩代わりするから来なさいって言ったんです…そしたら借金が返せないって私が意志表示したら自我を弱める異能を食らって何も考えられなくなって…私は外道に騙された被害者です…」
「リボバルもクズ以下だったがお前は自分からクズの餌食になっている…反省したらいいのにその様子も見られない…害虫だから自覚もできないのから救いようがない…」




