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第72話:山羊男と狂信者の少年

前回、ケセマ村で山羊を買いに来たバロット達の帰りを尾行していた少年のリメシュは風見族達が村に入るのを遠くから眺めているのだった…

アルガナ村に帰還したバロットはケセマ村から購入した60頭の山羊を柵が立てられた土地に入れ山羊男のキャベツに報告していた


「山羊を60頭、買ってきましたー。ついでに魔人の生き残りが帰りに襲ってきたので殺しましたー。眼能が役に立ち簡単でした。ありがとうございまーす。」


キャベツは魔人がまだいたことに悩み


「やはりまだいたか…魔の山に魔人が全員いるのは確かに不自然だからな…引き続き見つけたら頼む…礼は別の日にしてやる…」


「本当ですか?お礼って期待しちゃいますよー。ありがとうございまーす。」


キャベツは柵の中の山羊を見ていた


「白いシバ山羊か…俺と同じ種類の山羊…お前とお前たちは何が違う?…お前たちは虐待されないようにしてやろう…このままでは自然にも帰れない家畜であり人間に好きにされる存在だ…」


キャベツは山羊を追い立てて小屋の中に一緒に姿を消すのだった…


その頃、バロットを尾行して遠い距離をついてきたリメシュは咳をしながらキャベツがアルガナ村の外へ出るのを待っているのだった


「このまま行ってもつまみ出される…なんとか会う機会を待たないと…コホッコホッ」



◆山羊男に会いに来た少年◆


キャベツは昼にタンポポを食べに村の外へ出かけようとしたら誰かがついてくる気配を感じた


「誰だ?足音は聞こえるぞ?…また殺し屋か?」


「見つけましたよ?私を覚えていますか?ケセマ村でお会いしましたよね?…ケホッ」


少年が林道でキャベツの前に飛び出してきてケセマ村で出会った時を思い出して欲しいと話し始める…


「奴隷オークションのステージにいたあの時の少年か…徒歩でここまで来たのか?服が汚いし風呂にも入っていない…俺に何の用だ?」


「私の名はリメシュ・シューク…いえ、シューク家からは売られましたからもう名前にいれなくていいですね。私の目的ですがあなたの近くにいたいのです。お願いします。私は居場所がありませんし、あなたが何を成すか見たいのです。」


「俺は恐らくなにも成せない。これまでの活動も俺の意に反しての場合も多いが壊す側になってばかりのはずだ…いい影響は与えていない…そしてお前の望みを聞く義理もない…」


「あなたは邪悪なケセマ村の連中を殺し、奴隷を救ったではありませんか?なぜ自分を卑下するのです?…ゴホッゴホッ」


山羊男のキャベツは人間のリメシュの思考が理解できないらしく


「お前は俺を都合がいいように解釈しようとしている…俺はケセマ村を救う気はなかった…代表のスディッキュだったか?あいつに奴隷や支配や違法な商売の理由を聞きたかっただけだ…連中が戦いをしかけ結果的にお前たちが助かったということだ。」


「だが、後で俺の支持者が調べてくれたが結局、ギャングと似た理由で矮小なことだった…金や稼業の拡大を信仰し、生活に困っていない奴でも可能な手段で私腹を肥やそうとする類だったということだ…」


「あなたは人間が欲する理由を深く考えすぎですよ…欲しいから何でもするんですよ…ルールを嫌がるのが人間でケセマ村はタガが外れただけですよ…」


「俺は物事には理由があると考えている…心理に関する本で読んだ…過剰に欲すると言う人間の病理がケセマ村に出ただけだ…そして相手の苦しみを人間共は想像も共感もできないという現実だ…実際にその様子をこの目で見たから参考にはなった…」


しかしキャベツはリメシュが風邪を引いた様子を観察しあてもなく来たことを予想する


「お願いです…確かにあなたは他人を近くに必要としないかもしれません…だけど私には必要なのです…」


「お前は恐らく放置すれば死ぬ…俺は過去に助かりたがる連中に支援したこともある…お前も助かりたいのならしばらくはアルガナ村にいさせてやる…だが長居はするな…人間がいることを嫌がる風見族も鱗清族もいるからな…間違いなく人間には居心地はよくないはずだ…」


「俺は他人から肯定が欲しい訳ではない…お前が俺に妙な期待をしているのは自分を見失っているからだ。それは、はりぼてに祈っていることと変わらないはずだ…お前に同情など無い…お前を見捨てればこれまでの奴らと不公平に扱ったことになるから助かる機会を与えるのだ…」


山羊男が自分をあまり肯定しないことにリメシュは怒るが同時に胸を打たれるのだった


「あなたは自分を悪く言ってはいけない。あなたは誰よりも謙虚で祈られてもいい存在のはずだ…」


「…タンポポを食べたら一緒に行く…本を読むつもりだったが今日はいい…だが所詮、お前は俺の力にすがっているだけだ。手品や見世物の演出を見て集まっている客がアルガナ党やお前だ…自覚しておくんだな…」


「人間も亜人もすぐに自分を偉大だと思いたがる矮小な存在だ。権力者や金持ちが着飾って悪目立ちをしたり無駄に大きな建物やモニュメントで存在感を示すのがその表れとしか思えない。お前も自信が欲しくて俺に寄るなら高いところから見下ろしたがる猿と変わらないはずだ…」


「私はあなたの近くにいれるなら猿でも構いませんよ。なぜなら神の前では人間など猿や虫と変わらないはずですからね。フフフ…コホッ…」



◆アルガナ村に来た少年◆


バロットはキャベツとケセマ村にいたリメシュと一緒に帰ってきたことに強い不快感を示し言葉が漏れる


「ケセマ村にいた小僧…そうか…山羊と一緒に移動したときについてきたのか…全く、鬱陶しいガキだ。」


キャベツはアルガナ村の役所のような建物でリメシュが住む家をベルトラに尋ねた


「この少年は健康状態が見るからに悪い…体調を回復させてケセマ村に返そうと思う。俺の存在に関心があって寄ってきたらしい…リスクを考えない子供だ。」


「放っておいて野垂死んでもあんたはショックとか受けないでしょう?なんで人間のガキなんか…」


「お前らも助かりたい意味では同じ立場のはずだ…俺は犠牲が広がるのは避けるべきだと考えている…無駄に死ぬことも含めてな…」


「敵は無常に大勢殺すのに命は大事だなんて言うのね…今、空き家はないわよ。それとあんたの家が完成したらしいわよ?今から行く?」


「仕方ない…後でシルバナの連中に金を払ってこの子供の居場所を探すか…確か空き家があったはずだ…俺の家を建ててくれたそうだから見に行くか…もう住めるのか?」


「今、家財道具を運んでいる最中よ。やっとシルバナの族長の館から引っ越しね。マレロニーに見つからないように気を付けることね。」


そう聞くとキャベツの山羊の耳は垂れてしまい


「奴の話をするな…気分が悪くなる…あまり恐れを煽るな…おい…リメシュとか言ってたな…しばらく俺の家の部屋にいろ…その代わり荒らしたりするなよ…子供はじっとするのが苦手な存在のはずだ…」


リメシュは不安がるキャベツの様子に驚愕し


「マレロニー?その人はこのお方でも恐れさせる人物なのか?神でも恐れる存在がいるということなのでしょうか…」



◆完成したキャベツの家◆


完成したアルガナ村に建てられたキャベツの家はシルバナの族長の家より大きかった

まるで旅館のような平屋建てだった


「合理的だ…2階があれば地震などに弱くなる…わざわざ階段をつける意味もそこまでないはずだ…ここまで立派にするとは想定外だが俺が住んでいいのなら受け取っておこう…礼を言う…」


アルガナ村にいる者たちは屋敷の完成にパチパチと拍手を送るのだった


「シルバナの長持ちするように白蟻なども食べない木を使い、鱗清族が行う防水などの処置を施した屋敷でございます。来客や会議の場にも使えるように広く見積もっております。今後ともあなたの力をこの村で存分に振るってください。」


(…まあ褒美を期待しているのだろうが今回は言わないでおこう…相手の本音だけ聞けば気を害する場合がある…人間もこんな思考をしているのか?)


そう考えていると党員たちが写真撮影をしたいと言い出した


「後で、党員が集まる日に集合写真を撮りましょう!写真機を用意します。」


「意味が分からない…俺と一緒にいた証拠は残すと俺が負けた時にお前らが不利になると思うが…」


だがリメシュも写真撮影に参加したいと我儘を言い出した…


「私も一緒に写りたいです…あなたが負けるなら私も一緒に死にましょう。死んだ後もあなたの近くにいたい。生きた証に写真を残したいです…ゴホッゴホッ…」


「お前は思考に乱れが生じている。早く体調を回復させて正常に戻るべきだ…お前は俺の家に明後日まではいろ…別の日にシルバナに連れていく…ここに居たら邪魔だ…俺は神ではない…間違いなく神がいたのなら嫌う存在だ…」


「あなたは神ですよ…なぜなら神とは人間にとって自身を超えた大きな力を持つ存在…あなたが人間を超えた力があるなら神なのです…そして魔人は人間に何度か負けたから神にはなれなかった…少し強いでは神ではありません。」


「神とは絶大な力がある存在か?それなら世界中にいる国を支配した連中は神なのか?…力がある者は神ではなく大体は境遇によるうぬぼれ屋共だ…そして俺が負ければ神ではなくなるのなら安くて薄っぺらな神だ…それは善の意味での神ではないはずだ…」


リメシュはキャベツとの会話に不気味にほほ笑むのだった


「ふふふ…やはりあなたは人間より上だ。人間はそんな風に考えることができませんよ。ほとんどは自分が都合がいいように考える…私のようにね…ゴホッゴホッ」



◆全体会議と眼能山羊◆


日曜日の午前9:00にアルガナ党員を集会所に集めてキャベツが舞台の上にがった

野外コンサートのような様子だった


「今日は集まってくれたお前らに報告がある…今日は3つ報告がある…それは1つ目はラグド帝国のこと・2つ目はアルガナ党の代表の選び方・3つ目はお前たちに眼能を与える方法についてだ…まずは悪い報告からだ…」


アルガナ党員達は緊張感に包まれるが3つ目の話に興味がいっぱいになった…


「まず1つ目、早く聞かせるべきだったが全員に聞かせる必要があるから今日にした…俺はケセマ村に調査に向かい俺の意思に関わらず戦闘になった。その最中にエクラル皇女という植民地主義国家の姫が密入国して奴隷の売買を行っていた。その後、俺を襲い反撃の末、死亡した…命乞いは聞いたが自滅した…」


「だが愚かな人間共は筋ではなく身勝手な感情で行動を起こす…俺はシルバナもアルガナ村もラグド帝国の攻撃という危険を高めたことになる…連中の動向はまだ不明だが今後は外を出歩く時は注意をしておけ…奴らは国と言う大義名分で平気で尋問のために民間人を拉致したりもするそうだ…」


「鱗清族が大川の上流に作った避難所にシルバナの風見族と一緒に非戦闘員と共に避難訓練をしておけ…俺はシルバナとは以前、ラグド帝国が来たら戦うように約束を結んでいるから奴らが来たら全滅させるつもりだ…だがあまり俺に期待しすぎるな…できることは自分でやれ…」


集会に集まった亜人達は不安そうな表情でラグド帝国の脅威を話し合うが次の報告で静かになる


「2つ目の報告だ…アルガナ党の部族の代表を暫定で決定する…まず風見族からバロットを選出する…これは風見族のアルガナ党員の総意という理由だ…」


「そして鱗清族の代表だが現在の族長はクラスパだがアルガナ党の代表で鱗清族の代表をそのまま選ぶのは間違いだ…アルガナ党の鱗清族で選ぶべきだ…後でお前らが選んで俺に教えろ…」


「しかし、今回は初回での暫定だ…初回の期間は5年のつもりだ…その後は選挙で行う…その方法はアルガナ党の貢献度に対してや誠実さやリスクをとって実務を肌で経験した者たちから代表志望者を風見族5人と鱗清族5人選ぶ。」


「できるだけ貢献度は数値化するべきだが金銭の稼ぎや損失をそれにいれると拝金主義を煽り面倒になる…日常の所作や地味なひたむきさは数値化しにくい…5人の選出方法はしばらくお前らに任せるが公平な数値化の仕組みをその都度案を出しあおうと思う。」


「代表の任期と選挙は8年周期で代表や幹部の問題行動で降ろすための解任のルールに組み込む。その部族の6割くらいの反対票で降ろせるようにしようと考えている…」


「風見族5人は鱗清族の代表を鱗清族5人の中から選び鱗清族5人は風見族の代表を5人から選ぶ…これでお互いに不利になる代表を選ばないという心理を期待したシステムだ…」


「恐らく納得はしないだろうがこれで問題が起きたらやり方を変更する…嫌なら3つ目の眼能の話は無しだ。いきなりだと不満だと思うから初回の代表はその部族が決めろ…次の選挙は5年後でその次からは8年だ…」


このルールに不満があるのか党員同士でざわざわと騒ぎ出すが話は続く


公平さを追求したルールにベルトラもバロットも内心納得はできず


(鱗清族に最終的にボクらの代表を決めるんですか…まあ5人を我々が絞って決めればある程度リーダーがどうなるかコントロールや予想はできますが…)


(何よ、それ…でもあいつなりに公平にしようと考えているってことね…初代代表の内に何か施策をしないと…私が初代の鱗清族の代表にならないとバロットの良いようにされる…)


「アルガナ党に所属する他の部族が3つ以上に増えた場合は、最初にくじ引きで順番を決め、時計回りに隣の部族の代表を選ばせる…」


「3つ目の報告だ…以前、盗賊のクジとオークのウードに俺の力の複製…クジから眼能と名付けられた能力をお前らからも求められた…」


「今後、アルガナ党の敵は増えるだろう…そうなるとシルバナの自衛手段では恐らく対抗できないのでお前たちの望む者に眼能を渡そうと思う…だが1ずつ渡していると俺の時間がとられる…」


「そこで用意したのがこれだ…」


キャベツは舞台の裏から白い山羊を首輪のロープを引いて連れて来た

しかしその山羊の角はくぼみがあり山羊の目が角の1本につき2つずつ、ギョロギョロとついていた…


「めぇー」と鳴きながら不気味な山羊はキョロキョロあたりを見回している…


党員たちは山羊男が不気味な山羊を連れて来たシュールさに思わず声を立てる


「なんだ、ありゃ?」


「山羊男が山羊を引っ張ってくるって何の画だ?」


「この山羊は眼能山羊と名付けた…俺の情報体…蓄積した力の複製を眼球の形をした有機体に書き込んで出力する存在だ…つまり眼能を行使するための器官を定期的に生産して角から出す…」


集まっていた党員たちはガヤガヤと騒ぎ出す…眼能の力とは山羊男の力である

それを得られる手段に騒然となる


「説明が終わるまで静かにしろ…眼能山羊は記録媒体でもあり印刷機の機能があるものだと思え…紙に文字のコピーを刷る新聞の印刷機のようなものだ…」


「もちろん俺が今後、戦いで力を獲得して眼能山羊に俺の情報体を与えれば眼能山羊のデータも更新され出す眼能の種類も増える…」


「眼能山羊が出す眼能の種類についてだがルールがある…お前らが代表と選んだ人物はアクセスキーが解放される…ローヤルゼリーを食べた蜂の幼虫が女王バチになるようにな…」


「そのアクセスキーとは眼能山羊が出した眼能に触ればどの能力か代表が一度だけ設定ができると言う意味だ…さらに代表は眼能を2つ持てるようにロックが解除される…理由は代表の危険度は高いから自衛のための施しだ…」


「…党の代表は眼能の保持者から選ぶ必要があるのが欠点だ…代表をやめた時に眼能が2つある場合は1つがふさがる。理由は新しい代表を邪魔しないためだ…」


「眼能を配る際のルールだが代表がまず能力を設定し代表候補だった4人がストックを配ると言うやり方だ…代表になれなかった4人は幹部という意味だ。好き嫌いではなく先の説明で行ったように数値化した貢献度の人材や元々の技能に応じて配るようにしろ…」


「盗難防止処置として眼能山羊が眼能を出した段階では何の力もない…代表が力を設定し下の者に渡すシステムだ…そして眼能山羊はストレスを感じたり慣れない飼い主以外が近づくと眼能の生産を停止する…」


「眼能に能力を1つ設定した後は被験者の体表に傷をつけ、眼能の山羊目の眼球を傷口に乗せれば卵の黄身のように溶けだしその箇所にインストールされる。その後はその者の肉体のその箇所が変化して眼能を発生させる場所になる…腕時計をつければ時間を確認できるようなものだ…」


「プロテクトとして部外者が捕まえようとすると反撃も行う上に生殖能力も停止する…治療以外で解剖をしようとしても罠が作動するようにしている…同じ種族が毎日、世話をしても眼能は出なくなるようにもした…気を付けて扱うことを助言する」


難しい話についていけない者がいたが会場は落ち着きがない熱気に満ちた様子で先を聞こうとしている…


「眼能山羊の管理についてはアルガナ党で行え…部族の独占は許さない…さらに、魔法や眼能はアルガナ村で無許可では使わせない。村の外から離れた場所に試験運用の演習場をお前らに整備させたからそこでやれ…」


「独占防止の措置として眼能山羊は部族の代表を覚え認識する能力を与えている…定期的に眼能山羊に代表が顔を見せる必要もある…それは別の部族が代表不在の状況の間に眼能を独占する恐れがあるからだ…だからアルガナ党の代表が揃っている状況でないといずれ眼能は出さなくなる。」


「眼能の収穫だが眼能山羊の角の窪みに目が盛り上がるほど露出したらその時期だ…なついている飼い主が撫でれば外れやすくなり落とすはずだ…」


「眼能は欠点がある…山羊の目は力の起点であり発生源…潰されれば10分以上は修復に時間がかかるはずだ…俺の分身だと思え…それと俺の眼を潰せば力が使えなくなるわけではない…あくまで眼能を受けた者は山羊の眼が欠点だと言うことだ…俺の不意をつけると思うな…」


「これについて不満がある者は手を挙げろ…」


期待していたバロットが魔人を殺した褒美について質問をする…


「すいませーん!この前、魔人が逆恨みでボク達を襲いましたー。そいつを殺しましたがそのお礼とは具体的にどういう物でしょうか?今後も戦士の方が魔人を殺した際にも知りたがると思いまーす。」


キャベツは舞台の裏側から瓶に入った胃の形に似た腫瘍のような塊を持ってきた…小さな口があり山羊の歯が上と下に生えていた…


「まだ実験中だが外付けの機能をもつ臓器を作成している…『欲臓』と名付けた…完成すれば魔力の吸収機能や血液の改造機能でのシーケンスで延命やテロメアの修復など効果を持たせるつもりだ…つまり敵の魔法は吸収し寿命の若いままの延命も期待できる臓器を研究している…」


「理由は魔人を殺せる戦士は希少で長生きして奴らを絶滅させてほしいからだ…魔人を3人殺した戦士は実力を認め褒美として渡す予定だ…完成できるかは不明だがな…欲臓の改良も続けるつもりだ…魔人以外の危険種が確認したら消すのを手伝って欲しい…」


「欲臓は元々、呪詛の実の食いすぎで龍化しないようにする魔力の貯蔵のための実験の産物だがエラーの改善も順調で機能の多様化も進んでいるから今回発表した…期待を裏切らないように俺も取り組む」


「…注意点として欠点を埋め込んだ…俺に敵対する種族に味方したら欲臓の持ち主は欲臓に取り込まれて敵対種族に対しての殺戮生物になるから注意するように…俺は支配するつもりがないからこの仕様をここで明かしたのだ…怖いなら欲臓を得ようとするな…」


バロットとベルトラは同じ意見を話し出す…


「私らが5人選んでその中から1人別の部族に選ばせる?…冗談じゃない…けど裏であんたらと口裏を合わせればそれも問題ないってことよね?」


「そうですけど…断れば眼能山羊も手には入れませんし…今回はわかったと言いましょう…でもベルトラさんが代表候補になれるかすら怪しいですがねー。」


「でも5人は実績を出さないと仲間同士から選ばれないから困ったものね…まあ後で考えればいいわ…5年は猶予がある。眼能がキャベツじゃなくて私らが配る側なんて采配を握ったのも同然よ…」


会場は困惑の声も上がるが最終的には拍手がなるのだった


「パチパチ……パチパチパチパチパチパチパチパチ」


アルガナ党員は眼能の力に注目を集めている…


「納得いかないがこれ以上、公平に決められるのは亜人や人間には無理だろう…それに眼能山羊は亜人が異能を使う人間を超える手段だ…アルガナ党に所属するメリットを優先しよう…それに選出方法も風見族も鱗清族にもデメリットは無いはずだ…」


「眼能があれば人間はおろか魔人すら上回る…呪詛の実もあるし俺達は恐らく世界最強の亜人の集団になる…眼能があれば魔人を仕留めるチャンスも増える…欲臓の開発状況も要注目だな…」


ネリモはキャベツの力以上に思考能力にも激しく危惧するのだった


「力も龍を超え思考能力やルールも公平に考えようとする…こんな怪物に対抗できる存在がいるのか?隙が無さすぎる…馬鹿なら仕留めるチャンスはあるのだが…奴はそうではない…倒す希望はないのか?…」


キャベツはルールを破った罰も考え始めていた


「見張り役がいるな…代理人が必要だ…曲がらない冷徹な存在がズルをやる奴に罰を下す必要がある…」


会議が終わるとバロットには風見族がたかり鱗清族達は早く代表を決めようと議論が大きくなっているのだった…



◆鱗清族のアルガナ党の代表◆


会議の後で鱗清族のアルガナ党員は揉めていた

誰が初代代表かを激しく言いあっていた


我こそはと譲らない状況が続きウナギの特徴をもつ鱗清族のネリモが物申す


「先に族長のクラスパ様に伝えるべきだ…あの方の助言を聞くべきだ…」


「そうだがアルガナ党員の代表は属していない者の意見を聞く必要があるのか?部外者の息がかかれば公平性にかける。」


他の鱗清族からも族長の干渉を嫌がる意見すら出ていた…


そんな中、ベルトラが声に勢いをつけて名乗りを上げる


「この中で一番、汚れ仕事をしているのは私よ?初代の任期は5年だけど初回はかなりメリットがある。5年中に利益や手柄を下に見せれば再選もされやすい…私が5年以内に少しでも有利にするわ…正直、キャベツのルールは真面目過ぎて付き合いたくないけど奴以上の後ろ盾は亜人にはない…」


「代表候補の5人も5年以内は実績づくりにはメリットのはずよ。私にやらせてよ?揉めている間にあの風見族のミミズク野郎が好きにするわよ?でもクラスパに言った方がいいわね。間違いなく後で面倒になるから。」


タカ派の声が大きくなることに危惧を覚えたネリモは仲間に説得を試みる…


「眼能など得たら奴と同じになるぞ?人間から自衛手段を得るにしても悪手としか思えない…奴は魔人を消した…私達も奴と同じ目で見られるぞ?」


「そうなれば我々は虐げられないのではないか?舐められるから攻撃される…ネリモはなぜアルガナ党にいる?」


「A級の魔物を倒せる人間もいる。それは兵士千人力の力を持つ敵で亜人の多くは強い戦士でもD級の10人力の魔物くらいしか個人では相手に出来ない…」


「戦えば人間には負ける。いい人と思われて死んでなんの救いにもならない。天国の救いの話をしている訳じゃないんだぞ?」


「しかし、ベルトラはバロットのように頻繁にキャベツの近くに相談しに行っていた…奴の機嫌を損ねない対応は一番詳しいはずだ…とりあえずベルトラにさせてみるのはどうだろうか?」


この機会を逃すまいとベルトラは声を強める…


「1年やらせてよ?それでだめなら後は別の奴にやらせなさいよ。期待以上にやるよう尽力するわよ。」


ネリモは昔の幼馴染のベルトラに冷ややかな目を向けるのだった


「いつの間にか政治家志望か。一族の庇護や盾役に山羊男に近づいた結果、力の獲得と肥大化に目的がずれてしまっているということか…なんとか止めなければ…」




◆帰宅途中と帰宅後◆


キャベツは出来たばかりの屋敷に帰る途中でネリモが前に立ちふさがる


「今すぐ眼能山羊を廃棄しろ…あれは亜人を不自然な存在に変える!欲臓もすぐに取り下げろ!魔人を殺すのを煽っている!」


「お前は正しい。だがお前らは龍と言う害獣が作った存在と魔王が言っていた…もともと自然な存在ではない…それに人間に異能や魔法があるから手段が少ないお前らには好都合なはずだ…」


「嫌ならお前が代表になって眼能山羊の能力設定を放棄すればいい…それに魔人はすでに少ない上に強い…亜人で勝てる奴はそうはいない…欲臓を手に入れる亜人もほぼいないはずだ…」


ネリモは拳を握りしめて口を噛みしめる


「お前は毎回、相手を言いくるめる…お前の土俵で毎回優位にたっている…」


「優位?お前との口喧嘩で勝ち負けがなんになる?お前の話は先が無い…もっと進展性がある話をするんだな…眼能を得た奴が問題を起こしたら俺に報告しろ…」


キャベツは家に帰るとキャベツの紺色の半ズボンが外に干されていた…


「なんだ?俺の半ズボンが…誰かが洗濯したのか?いつも過剰に汚くなると使い捨てだったが…」


さらにリメシュが咳をしながら鉢にタンポポを植えていた


「何をしている?お前は風邪だったはずだ…そんなことをして俺の気を引きたいのか?」


「そうですよ…私はあなたが反応するなら何でも…ゴホッ…何でもしますよ…あなたがタンポポを外まで取りに行かなくていいように私が育てましょう…」


「俺は構われたり媚びられたりされても困る…この際、言うが俺は人間を魔人のように消すか迷っている。今は審査中だ…俺はお前の敵だ…」


「あなたが人間を消しても何の咎もありません。人間は甘んじてあなたの行動を受け入れるべきです…私もその時は人間として運命を受け入れましょう…コホッコホッ…私も肉親に売られた身…人間に情などありませんよ…」


「お前は病気だ…体調を回復させて考え直せ…命令はしたくないがあえて言おう…今すぐ俺の家の寝床に安静にしろ…それとタンポポの根っこはまっすぐ長くのびる…もっと縦に底が長い鉢や植木箱が最適だ…」


キャベツはリメシュを抱きかかえ家に連れて行くのだった…


「思い出した…俺もギノの妻に抱きかかえられてギノの家に連れていかれたのだった…この少年はその逆かもな…だが俺と関わっても人間は間違いなく幸せにならない…俺がギノと会ってろくな目に会わなかったようにな…」


リメシュはキャベツの腕に抱かれ感涙するのだった


「あなたは体温が無いようにも感じる…だがとても暖かい…あなたの存在は世界が望んでいますよ…コホッコホッ」

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