第70話:勇者と言えばお風呂回だが
ロジは焦土主の残った胴体を入念にバキバキと踏み砕いて龍人の力をマイ・ルールブックに斜線を引いて解除した
「シュウウ…」音を少し立てて紙の龍が見えない火で燃えるように消えていきロジが現れる
ロジ達はリキルドを撃退して撤退させた後はアスト村へそのまま移動を開始した
ロジは龍人の力を使い揺れに酔いかなり気分が悪そうである
「あの禿げジジイには逃げられましたよ…うぷ…すいませんね…でも、A級モンスターの骨食肉はやっつけました…これでアシッドドレイクに続きノルマは2つクリアしました…おまけに骨のドラゴンはA級以上の強さがあったはず…」
「これで3つクリアしたようなもんでしょ?ロジャノ様。これでレセプトのエリトクピ国王も認めてくれるでしょうか?」
何とも言えない顔でロジャノはロジに苦言を呈する
「お主の異能はすごいかもしれん…しかしあまりにお主自身に裁量がない…こんな調子では本気の敵には心細いわ…」
「え?…まあ初回でしたしね…練習すればもっとすごくなれますよ…山羊男みたいなふざけた敵は目じゃないですよ。」
イグナは龍人の力も真似ができることにもはや不可能が少なくなっているのではないかと感じ始める
「ロジ?その異能は危険すぎると覚えておくのよ?例え山羊男を倒しても今度はあなたが世界からマークされるのを覚悟するのね。」
「大丈夫ですよ。それならロジャノ様もパリウスさんも狙われていないじゃないですか?僕も指の数の英雄になって世界をアッと言わせますよ。魔力消費もそこまで激しくないですね…どんどん低燃費になってる感じです…僕も自分が怖いですよ。オホホホ!」
ティアニスは白目を向いて後ろを歩いていた
(あーあ…ロジさんが敵だったら今すぐ殺すんですがね…困りましたね…)
メイリアの傷ついた耳をティアニスは治療魔法で治している
「すまん…山羊耳は無駄に長くて攻撃のヒットする面積が増えてしまったな…難儀な体だ…」
「苛ついてますから静かにしてくださいよ…全く…」
能天気に勇者に憧れる男が志を語る…
「僕が皆さんを助けられるように頑張りますよ。最初は下手でも多少は大目に見てくださいよ。」
アスト村は温泉が観光名所だとメイリアが教えた
「あそこは温泉が出る場所だ…首都のレセプトに行く前には丁度いいかもな…」
「温泉ですか…僕も戦いが多かったですからね…でも僕は勇者になりたいですからね。安いエロ展開になんかしたくないですよ。お風呂回なんて尺稼ぎですからね。」
ティアニスはその言葉が勘に触ったのか殺気を含んだ言葉で呪詛を呟く
「おい小僧?…安っぽく私らをさげすんだら殺すぞ?」
「すいません!ちょっと?みなさんをエロ展開にしたくないから言ったんですよ…誤解しないでくださいよ…」
しかしロジャノは少し嬉しそうだった
「わしは温泉が好きじゃ…羽休めもいいじゃろう…」
ロジャノの口調にティアニスはさらに苛立つ
(そのわざとらしい口調で虫唾が走るババアだ…ロジとロジャノも糞うぜぇ!!)
◆アスト村についたら◆
ロジ達はアスト村についた
湯けむりが立ち込める村だったが異様な光景だった
「あれ…?人間より風見族が多い…どうしたんでしょうか?」
露天風呂を見たら風見族がたくさん湯舟につかり羽毛が浮いていた…
「いらっしゃいませ~アスト村へ…」
人間の女性の店員が温泉宿の前で手を振っていた
「どうしたんですか?こんなにたくさん風見族が…シルバナにいるはずですよね?まさか山羊男から逃げて来たんですか?」
「違いますよ…この村の土地を以前から彼らが買収しまして…村人のほとんどが大金を貰って出ていきましたよ…実質、彼らの村になってしまいました…」
その光景に不審がるロジャノが風見族に尋問できる権限がないと諦観を浮かべる
「風見族は山羊男の風評被害で金に困っているはずだ…こんな真似などできる訳が…だが拉致して聞き出すわけにもいくまい…」
風見族のシマエナガに似た男がロジ達を発見し鞄から札を数え始めた
「俺がオーナーだ。いくら欲しい?金をやるから風呂に入るな…早く村の外へ出ていきな。人間が入った風呂には風見族は入りたくないのよ…」
「何ですか?ひどいですよ。僕たちはレセプトに行く途中で立ち寄っただけですよ…そんなに言うならあなた達のお風呂には入りませんよ。お金はいりません…」
「そうかい?あの小さな宿なら空いてるよ?この村は風見族の保養のための村にするつもりだ。やがて街になるかもな。人間の土地に俺達の街もあってもいいだろ?それとあんた冒険者か?もし偉い人と仲がいいなら紹介してくれよ。自治区にできるかとか知りたいからさ。」
ロジ達は小さなボロい宿屋に向かった…
「いらっしゃいませ~あら…ロジャノさん?年取らないね~」
店員の老婆が昔を知っていたのかロジャノに話しかけてロジャノは顔を真っ赤にした
「年に関係することを言うなあああ!!」
「ちょっと…声が大きいですよ…もう…お風呂回以前の話ですよ…」
ティアニスが温泉はあるのかと見回るが温泉ではなく五右衛門風呂だった…
「…見た目は大きな鉄の鍋ですね…東の国の風呂らしいですが…」
老婆の店員がお湯は温泉だから湧いているのを使うか貰ってくるかの違いだと言う
「ゴメンね~。温泉を風見族が買収して温泉を貰ってくるしかないのよ。…温泉のお湯でその気分を味わって。」
「なんだか僕たち歓迎されていないみたいですね…まあ仕方ない。勇者は無名の時もありますからね。いずれ僕が来た場所は名所になりますよ。おほほ…ってから元気にしかなりませんね…」
しかし、ロジはメイリアがいないことに気づき…
「あれ?メイリアさんがいないですね…どこに行きましたかね?」
ロジが外へ出るとトラブルが発生していた
メイリアがシマエナガの男を捕まえて半殺しにして尋問していた
「どういうことだ?言え!」
「やめろおお!俺は知らない!」
顔を殴られて怯えながら叫ぶとロジが走って来た
「ちょっと!何してるんですか!やめてくださいよ!」
見物していた風見族達が怖がって逃げていく中、メイリアが怒鳴る
「山羊男がシルバナにいてその後、こいつらが金持ちになっている…明らかに奴の仕業だ…どういうことだ?言え!言わないと羽を折る!」
「おい、あんちゃん!助けてくれ!この狂犬を何とかしてくれ!冒険者だろ!」
ロジはマイ・ルールブックでメイリアに<金縛りをかける>と書き込んでメイリアは痺れた感覚に襲われ倒れた…
「うぐ…ロジ…」
「民間人に駄目ですよ…すいません…見逃してくださいよ…助けたからトレードオフでお願いします…」
シマエナガは怒った顔になり特注であろう高そうな革靴で倒れたメイリアの顔に蹴りを入れた
ガッ!「ぐう…」
「ちょっと!助けたのにメイリアさんを蹴らないでくださいよ…そりゃ怒るでしょうけど…」
「おい?訴えるからな?憲兵を呼んでくる…クソ…買収やりすぎて憲兵まで行っちまったからな…こういう状況は考えていなかった…おい?この駄犬はあんちゃんのペットか?ふざけんなよ?だが止めてくれたから蹴るのはここまでにしてやる…」
シマエナガの男は逃げるようにメイリアから去って行った…
イグナがメイリアに罵声を浴びせる
「なんでこんな真似を!いくらなんでも突飛よ!」
「私は死人だ…こんな真似は死人にしか向いてない…奴らに遠慮していたら手遅れになる…いいのか?」
「それで情報は取れたの?無駄だったでしょ?今度、勝手にしたら殺すからね。」
お風呂回を予想していたロジは顔が青ざめるのだった…
「ハードすぎますよ…なんで暴力沙汰に…メイリアさん…やめてくださいよ。山羊男が風見族をお金持ちにするメリットないでしょ?油田か金脈かなにか見つけたんですよきっと…」
「ロジ…お前は甘い…奴は賢い…そんな思考なら私のように殺されるぞ…」
「その通りです。ロジ様」
その声と共に空からピー太郎が飛んできたのだった
「あれ?あなたは風吹きの弓をくれた…お久しぶりですね?あなたも温泉に来たのですか?」
オカメインコの特徴を持つ風見族のピー太郎は事情を説明した
「山羊男がメイリア様の様子を見てこいと命じたのですよ…だから来たのです…私は奴に組する亜人の徒党に自ら潜り込んで出方を伺いながらあなた方に情報を提供するつもりです。」
「以前、私と一緒にセアフスに来たバロットという男がキャベツが魔人を皆殺しにした後に風見族を中心に徒党を始めました…今は鱗清族まで参加していますよ…奴は支配をしていない…自らの志願者の異常者共ですよ…それはアルガナ党と名乗っています…」
ロジャノがピー太郎に詰め寄った
「お主は確かシュウノとよく付き合っていた奴だな?どういう状況だ?詳しく申せ!」
「落ち着いてください。私も全てを把握していません。ただ金を稼いでいるのはアルガナ党です。風見族が成金になっているのはアルガナ党が稼いでそれが下に流れているのですよ。稼いでいる理由は知りませんよ…」
(連中が呪詛の実で儲けているって知れば世界が俺達を総攻撃するだろからこのババアには全部は言えねぇな…俺達、シルバナまで脅かされる…)
「詳しくはここでは言えません。風見族がたくさんいて私が話したと言われればまずい…後でお話しましょう…ロジ様しかもはや太刀打ちできませんよ。ロジャノ様は伝説ですが魔龍に及ぶ力はございますか?山羊男は龍人より上の魔龍すら殺せる実力があります…」
「なめるな。小僧に後れを取る気はない。戦う時はパリウスと一緒にやる。みくびるでないぞ?」
◆ぼろい宿屋で報告会◆
ピー太郎は宿屋の部屋で都合が悪い情報を避けながらこれまでのシルバナの話を始めた
「山羊男は人間の殺し屋が来たと言う理由で激怒しました…そこでセアフスに人畜と呼ばれる改造人間を送って経過や扱いを見ているそうです…意図は不明ですが恐らく人間が魔人と同じか調べたいのだと思います。人間に懐きやすく従順になりやすいらしいですよ?」
(目的は知ってるけど全部は言えないね…俺が喋ったって言えば俺がやられるしね…)
「誰かが悪手を打ったか…山羊男が怒って人間がどんな種なのか試すということか…全く、神気取りか?だが奴は凄まじい力を持っている…本気で暴れるとどうなることやら…奴が本気でないからまだこの国も大騒ぎになっていない…」
「ロジャノ様?あんまり不安ばかり煽らないでくださいよ。殺し屋で山羊男がマジギレして人間に牙を向き始めたって話ですよね?」
イグナはシュウノから来た手紙と情報が一致している部分があると考え嘘じゃないと感じる
「奴はどうやって稼いでいる?亜人が集まってきているのはなぜだ?」
「風見族は魔人を殺した奴の力にすがったグループ…そして鱗清族は水辺が人間に奪われてこれ以上は先が無いと考えて奴の近くに来たのです…風見族も神木を奪われたのに人間が手を貸さなかった点で奴に組み入った者もいます…」
「現在、シルバナは従来の在り方の風見族と山羊男からの受益者になろうとする風見族に割れています…従来の在り方をする風見族ですら奴が去るとラグド帝国の脅威があるのでいないと困ると言う厳しい立場です…」
「そしてローディグ王国はシルバナに手を貸してくださいません…ローディグ王国の人間もノフィスとの戦いで余裕が少ないのは知っていますから人間を責めたい訳でもありませんが…」
ピー太郎は困った顔でロジを見る…
「今後は私も同行の許可をお願いします。メイリア様を観察しているポーズを見せないと奴の情報をこれ以上、探れなくなります…」
「わかりました。あなたは恩人ですよ。今後とも協力関係でいましょう。」
ティアニスはロジの近くに寄り
「今日から私があなたの近くで寝ます…いいですね?護衛と言う意味ですよ。」
「え?ちょっと…みんなの前で照れること言わないでくださいよ…」
「寝ぼけたこというなぁああ!…お前が死ぬと困るからだ…」
ロジはひきつった顔で気を取り直そうと仕切り直し
「怖がるように言わないでくださいよ…優しく言ってください…」
「みなさん?今日はお風呂で気を休めましょう…」
ティアニスは不気味な笑みを見せる…
「バロット…セアフスに来ていたミミズク男ですね…あいつはぶち殺したかったから好都合ですよ。山羊男の仲間なら殺しても誰も私を責めませんからね…殺す…山羊男の周りの奴は全て殺す…」
「…ヒロインらしくお願いしますよ…狂戦士じゃないんですから…」
◆ロジ・ジョットの憂鬱◆
ロジの部屋でティアニスは仮眠をとっていた
「あれ?寝てますね…ティアニスさんは疲れてたのかな…」
「いつも奇麗なテンプレのようにはいきませんね…僕の展開はズレてばかりです…先輩は英雄になれたのに僕だけ変なことになる…社会からは持ち上げられてるのに上手くいかないですね…」
「でもティアニスさん可愛いですね。清楚系ですよ…僕も男だからやっぱり思っちゃいますね。エロ展開は品が落ちて勇者の存在感が傷つくから嫌いですけどね。その辺が遊び好きの先輩の嫌なところでしたが…」
ロジは無意識に顔が赤くなった…
「あれ?何も考えていないのに胸が熱くなる…何ですかね…心臓が動きます…」
ロジは動揺して部屋の外に出て風呂に向かうのだった…
「まさか、僕がティアニスさんを好きに?…そんなわけないですよ…勇者が個人に肩入れの感情なんかいりませんよ…ふふふ…ティアニスさんは怒れば怖いですからね…怖いから赤くなったんですよ…きっと」
◆ティアニスの夢◆
ティアニスは夢を見ていた…
「…守…れ…ロジを…山羊…に戦…るな…」
ライオンの顔が浮かんでつぶやく夢をまたみていた
「はっきり言えぇえええ!ライオンが何で夢に出るんだああああ!」
「すみません…ロジをまだ戦わせないで。お願い…みんな死んじゃう…」
ティアニスは目を覚ました…
「またですね…ライオンの夢…しかし、確かにロジを戦わせればみんな死ぬのは正夢になりそうですね…」
◆お風呂回と言えば◆
ロジは風呂に行くとメジロの風見族がすでに別の五右衛門風呂に入っていた
見た目は人の形に近づけた人間サイズのでかい鳥のメジロである…
「あれ?他のお客様もこのぼろい宿屋に?…風見族は立派な温泉宿に集まってたはず…まあいいですけどね…」
しかしメジロの風見族がニコニコしている…
「なんですか?僕がおかしいですか?」
メジロの風見族は恥ずかしそうに肩を見せる…
「有名人のロジさんだ!どうですか?色っぽいですか?」
女性の美声がメジロから発せられロジは呆気にとられた
「え?女性?男湯ですよ…なんで…」
メジロの風見族は黄緑の濡れた羽毛をブルブル振るわせてロジを見つめる
「うふふ…ロジさんがいて男の客がいませんでしたから来ちゃった…私、人間の奇麗な男の見た目好きなんです…」
「ラッキースケベではなく放送事故ですよ…エロ展開以下ですね…とほほ…鳥人に好かれるって僕は鳥に見えるのかな?…」
◆急いでレセプトに◆
ロジャノは風呂に入りながら焦りを感じていた
「急いで国王陛下に伝えねば…事態がかなりまずい状況じゃ…明日にでもここを発つ…観測もここまでだ」
イグナがロジのこれまでの戦いの観測の評価をロジャノに聞く…
「ロジはどうですか?国王陛下に紹介できそうな人材だったでしょうか?」
「かなり強力な異能だとは認める…しかし、経験と判断が不足している…その点も含めて相談する…陛下も知らなければまずいレベルの強力な異能だ…」
「山羊男が魔龍より強いのは悪夢だ…魔龍は一体でも星の環境を変えるほど力をもつ…それを殺したニュースは信じがたいと思っていたが魔龍以上でないとこの状況は説明がつかない…おまけに支配もせず亜人を味方につけるとは…人間以上の精神性を持っているのかもな…」
「この世で過去に最も強かった生物と言われるのは魔龍を束ねたという龍の大王…創魔龍と言われておる…しかしそれより強いと言われた存在が裏の歴史で存在する…」
メイリアはロジャノの眉唾のような話に山羊耳をぴくつかせ裏の存在に期待をわずかに寄せる
「そんな存在が現代にいるのですか?確かに風魔龍の肉体は神木の中で現代まで存在したから魔人と山羊男の戦いになった…同じようにそんなものがいればまだ希望があります…」
「現代には無意味な話じゃ…確認できた現存していた魔龍の力は風魔龍だけ…創魔龍もいないし裏の存在も伝承だけで無意味…全ては太古の終わった物語じゃ…わしが仕えていた光魔龍も呪魔龍との戦いの傷と龍人の力を人間達に渡したせいで50年以上も昔に死んでおる…」
「龍の滅んだ伝説では巨大な隕石で滅ぶ前に龍は神にすがったと伝説がある…しかし龍を創った古い神は去り新しい神がお前たちは命を生かせないから滅びを受け入れろと通告し見殺しにしたという…」
「龍は所詮、強いだけの存在だ…わしは神聖と名乗って来たが本当の龍は強くなりすぎた人間達に似ている存在だ…強い存在がトップに出るまで殺し合い拡大を繰り返す悲しき存在よ…人間も下手を打ちすぎれば神に見捨てられるかもな…それが山羊男かもしれん…」
その言葉にメイリアは顔をひきつらせるのだった
「神が匙を投げて私が殺されてこんな角と耳をつけられて生き返ったとは思えません…紛れもなく山羊男が自分の意思でやったことです…私は2度生きた身として奴と戦うために命を使いますよ…」
「人間より強い生き物は人間より素晴らしい意味ではないとわしは言いたいのじゃ…所詮、力は手段だ…剣を持てば剣を振るう選択肢が生まれる…龍は強く生まれたせいで力を高め驕る方針をとったということだ…人間ならそれを知るべきだ…」
しかしイグナは光魔龍の話を聞こうと思いつい年代を聞いてしまう
「50年前はロジャノ様がおっしゃられた光魔龍はどんなお方でした?ロジャノ様がお仕えしたお方なら良い心の龍だったのでしょうか…」
「年の話をするなあああああ!」




