第68話:勇者は教会に相談しに行く
前回、魔人レドナにサントシティで襲われたロジ・ジョットはティアニスがレドナを撃退したあと一緒に仲間たちの元へ戻るのだった
「すいません。魔人が住民たちを巻き込んで卑劣な作戦をしかけて後手になりました。僕が甘いせいでティアニスさんが戦う羽目になって…今後は気をつけます…」
ロジャノはまだ若いからしかたないといいつつも今後はそうはいかないと叱りつけた
「必要とあれば住民を犠牲にする選択も上の者は迫られる…絵本の勇者の主役は非情な選択を求められる状況にはならんがな…」
イグナはロジャノに山羊男の情報を求めて現状を語る
「山羊男の情報はレセプトに来てないですか?奴の性格や作戦について少しでもしれればいいのですが…」
「そうだのう…手紙で報告が来たが奴に会った画家がいたらしい…少し前のアイドル、ラブリーキャット・マニーちゃんの話や誰からも安心するような人間の容姿を聞かれたとも証言がある…礼の金まで出したらしい…これだけ聞いても訳が分からんがな…」
メイリアは不快感を露骨に表情に浮かばせる
「まさか、私を山羊女にしたのはそのラブリーキャット・マニーちゃんを参考にしたのか?そんなくだらんアイドルをモデルにしたのか?確か、猫耳のカチューシャの奴だったな…最悪だ…」
ロジ・ジョットは機嫌が悪くなり山羊男の存在に怒りを漏らす
「山羊男って威厳や凄みや重みが無いですよ…茶化してますよね…これじゃ倒してもふざけたアホキャラを倒しても名誉にならないのと同じですよ…」
ティアニスは耳に手を当てたまま口を開く
「片耳は治りました…ロジさんじゃ山羊男は無理ですよ。私が今、メイリアさんみたいに殺されたらロジさんは固まりますよ。シュウノさんとそこまで変わりはしない。」
「私は教会に情報収集に行ってきますよ…」
ティアニスは教会へ歩いて行った
「僕が先輩と同じ…ああ…でも手を焼かせたのはそうですし…僕も行きますよ…待ってくださいよ…」
◆異常な教会◆
サントシティに教会を発見したロジ達は異様な光景を目にした
花が異様に植えてあるのだ
入口は花が大量にぶら下げてあり花屋のようだった
「なんですか?花に何か執着でもあるんですかね?」
すると水やりをしていた頭巾を被った女性が振り向いた
「あれ?お祈りしに来たんですか?私はパンジーという教会の者です。」
「いや…お祈りではなく、僕の仲間が行きたいって言うから来たんですが…」
パンジーと名乗った女性は白目をむいてびくつき始めた
「ヒィイイイイイイ!!!ここまで来たらお祈りしないとだめです!神様を信じないと心が悪くなりますよ?」
叫び声にロジはびっくりして心臓が動悸した
「なんで叫ぶんですか?またレドナの仕業じゃないですよね?」
ロジが警戒心を強めるがパンジーはお構いなく叫ぶ
「バァアア!!祈るんですよね?祈らないと帰れませんよ?」
「待ってくださいよ…この人も怖いですよ…情緒不安定ですか…」
ティアニスは街の様子をパンジーに聞いた
「私を覚えていますか?前にサントシティには来たことがあります。この教会にもシュウノさんとも来ました。何か妙なことはないでしょうか?教会は情報網がありますからお互い教え合いといきませんか?」
「何が知りたいんですか?まあとりあえず中へ…」
パンジーは頭巾を脱いで教会に入るが中にはあまり人はいなかった
「人気が無いんでしょうかね?あんまり人がいませんね…」
パンジーは激昂し広がるような声量で感情任せに思いを叫ぶ
「おおおお!!これからですよー!!!」
「ちょっと…叫ぶのはやめてくださいよ…声が大きいですね…」
「パンジーさんは耳が長いですね…噂のエルフ…にしては耳が尖ってない…長さも噂で聞くほど長くはない…」
「私はエルフと人間のハーフなんです。ふだんは頭巾をかぶっていますが今回は特別ですよ?なぜならあなたは山羊男を倒すために活動しているお方ですからね。お手を貸しますよ。」
「え?知ってましたか?まあセアフスではニュースになるほど活躍しましたからね。おほほ。僕も有名になってきていると言う意味ですかね?」
「はい…あなたが山羊男を倒せれば私も世界を救ったことに協力したということ…一緒に世界を救いましょう。」
「山羊男の情報なら最近、奇妙な話がありまして…中古楽器店にレコードを風見族の女性が買いに来たそうですよ。少し古いアイドルのマレロニーの代表曲:ぷにぷに肉球天国・極上至福の歌に山羊男が恐れを抱いているから弱点として必要だと言いながら興奮気味で3枚と鳴らす機械を買っていったそうですよ。」
ロジは口をあんぐりあけて
「なんですか?いかれた奴しかいないんですかね…僕が馬鹿みたいですよ…」
ティアニスは意味がない話と切り捨て
「この街とアスト村の間の湿地帯に骨食肉と言う危険なスライムがいると聞きますが知っていますか?」
パンジーは奇妙な話なら聞いていると語る
「骨食肉は知りませんが最近、ドラゴンの骨が荒野で動いているって聞きましたね…何か関係があると思いますか?」
「ドラゴンの骨が?ゾンビなんて寄生昆虫型の魔物がたまに遺体を動かしているって話しか聞かないですがね…わかりました…」
ティアニスはお返しに自分たちの行動と山羊男についてパンジーに説明した
「山羊男…それほどまでに強大なのですか…魔人を全て殺すなんて…」
ロジはひどい奴だとパンジーに自分の気持ちを教える
「女も子供も魔人を殺すなんてひどいですよね。いくらこれまでの歴史で人間と争った蛮族とはいえそこまではねぇ…」
「いえ…人間も魔人のように魔王に従い暴力で勢力拡大すれば消されるということです…悪い奴は人間も魔人も死ねばいいんですよ。ロジさんも正義の味方ならそう思いますよね?」
「え?山羊男を肯定するんですか?やばすぎですよ…奴は悪魔としかいいようがないですよ」
「山羊男は私の意見ですが敵かどうかはまだわかりません…いずれの戦いも自分からしかけていないとも聞きます。ロジさんも相手を知らずに戦うのは正義ではないと思いますよ?私は機会があれば会いたいですね…」
「そんなこと…やられた人もいるのにそんな奴、ヒーローになれませんよ…」
パンジーは興奮気味で肩を揺らしながら叫ぶ
「ウォオオオ!ロジさんは敵を殺した軍人は悪いと思いますか?違いますよね?所詮は社会が認めるかどうかなんですよ。政治家の都合ですよ。正義とは悪い奴に同じくらい悪さをしかけるってことですよ。山羊男はまだわからないという意味です。」
「叫ばなくても…山羊男が悪かどうかはわからないって…まあ善悪の判断だけが勇者じゃありませんからね、人間を救うのが勇者ですから僕は山羊男とは違いますよ。」
「うふふ。あなたは神を信じれそうですね。生きる価値はあると思います。一緒に祈りましょう。写真もとりましょうね。」
「え?写真?なんで写真を…僕が有名人だから?」
「ああああ!考えるなよ?純粋に祈れ!みんなの幸せを一緒に祈ろうな?な?」
ロジは狂人と言う存在に寒気を覚えるのだった
「この教会には二度と来ませんよ…パンジーさんは頭がおかしい…」
「おい!笑えよ?無理やりやらせたみたいで写真にならないだろ?」
ロジは祈った後に写真をパンジーと一緒に撮られて教会から立ち去った
ティアニスとロジは一緒に宿屋に帰る途中でロジは決意を固めるのだった
「僕がティアニスさんを守れるようにならないと…あんまり異常者にからまれてティアニスさんまでおかしくなったら僕も立つ瀬がないですからね…かばえる側にならないと…」
◆ドラゴンの骨◆
イグナはメイリアに自分のメイリアに対する感想を伝えていた
「これまで一緒にいたがあなたは本人だと思うわ。でも少し違うところがある。それはロジに異様に親しんでいるところよ?あなたは男嫌いだったでしょ?」
「そうなのだがロジに色々してもらってなんだか親やシュウノが近くにいる気分になるんだ…安心感なのか?もしかしたらあの怪物に頭をおかしくされたのかもしれない…」
メイリアが不安を吐露しているとイグナは今後について注意しろと釘を刺す
「あなたはこれまで戦いでは異常な行動はしていないわ。でも自分が自分じゃないと思ったのならさっさと立ち去るのよ?ロジに自分から言いなさいよ?」
「ああ…私がなんであるかは証明できないがそれはイグナ達も同じだ。明日、お前たちと同じ性格で同じ記憶の人間が現れたら私も判断がつかないのと同じだ。」
ロジャノはシュウノが元気なのかとイグナに質問した
「あの小僧は元気にしてるのか?ロジとはそりが合わずに来なかったと聞いておったが」
「はい。ロジがシュウノと組むのは嫌だと言う理由でずっとソロでロジが活動していました。カタム領主に依頼されて私がロジの見張りを頼まれてティアニスも一緒に来てもらった形です。道中、ロジがメイリアを連れてきましたがね…」
「まったく…それでセアフスで何をしておる?隠居でも始めたか?金を貯えたらやめる冒険者も多いからな…」
「いえ、山羊男をカタム領主の側で調査しています。国王にロジャノ様がすぐに言わないなら情報も提供します…カタム領主も上にバレたら山羊男を刺激することになるとデリケートな話です…秘密を守れるなら言いましょう。」
ロジャノは生意気だなと眉を潜ませるが信頼しろと不機嫌そうな態度を露わにし
「まったく…昔から問題が起きたら上の者が下手な対応をして乱れるから下の者が問題を言わないで別の問題になるという構図はなおらん…だから山羊男に後れをとるのだ…」
「わしもお主と同じ戦う身だ…すぐには言わんから教えるのじゃ」
イグナはシュウノがキャベツの飼い主だったギノを警護しているのと人畜という改造人間がセアフスに放たれているのを教えた
「メイリアみたいな者が改造されてまた街に返されているじゃと…?それでレセプトの上の者が人畜を解剖したり虐待したりしたら山羊男が怒る可能性があるから下手に上に言えないということか…まったく山羊男は何がしたいのだ…」
「小僧は飼い主の男の番人か…まあ、山羊男を調べる選択としては間違いではないがおっさんの近くにいても怪物のことは深くはわかるまい…意味がないことだ…」
するとロジとティアニスが宿屋に帰ってきた
「皆さん、サントシティから離れた荒野にドラゴンの骨が動いているという噂があるらしいですよ。湿地帯に生息する骨食肉を探す予定でしたがそこを見ようかと思います。A級魔物かもしれません。」
「でも今日は泊まりましょう。もう夕暮れで遅いですしね…」
ロジャノはぶっきらぼうに宿屋の外へ出て行った
「あれ?ロジャノ様、どちらへ?」
「時間がもったいない。飛んでその骨とやらがいるか見てくる。噂が嘘なら行くのが無駄になるだろう?戦わないからお主だから見てくるだけじゃ。」
「…なんだか僕がお世話をされているみたいですね…かっこよくないなぁ…」
◆宿屋の展開といえば◆
「こういう場合って女性陣達と仲良しイベントがあるもんですがみんなピリピリしてますね…魔人のレドナのせいですよ…どうしよう…」
不安があるとイグナがロジに声をかける…メイリアのことで懸念を伝える
「話がある。メイリアは様子がおかしいのよ。前と少し違う。男に仲良くする性格じゃないのにお前に懐いている…だからあなたも好かれているとは思わず警戒をしておきなさい。」
「前にも聞きましたよ。メイリアさんは生き返らせられたから居場所がないんですよ?罠なのは僕も想定はしていますけど今まで命をかけて戦ったこともあるじゃないですか?」
「私もそう思うわよ。本人だと思いたいけど今回の山羊男はこれまでの敵とはまったく違う…敵の意図がわからないから気を付けるのよ?」
心配事ばかりが続くことにうんざりした様子でロジはもっと明るい話がしたいとぐずり出す
「先輩とも心配の話ばかりしてましたか?もっと先の夢とかいいましょうよ…嫌な話ばかりしても楽しくないでしょう?明るい話をしないと未来がないですよ。」
「私の夢?そうね…私は安心して退屈しない男と結婚して金に困らない生活をしたかったけど結局誰もが欲しがる夢よね?人間の望みなんかほぼテンプレートよ。似たり寄ったりの望みの繰り返しよ。」
「でも山羊男が暴れたら大勢死ぬのは間違いない。あいつは大戦争を一人で起こせる存在なんだから。」
ロジは幸せについて考えるのだった
「僕が山羊男を倒しても同じような日の繰り返しになってイグナさんたちもテンプレに沿う存在になる…僕たちの在り方は過程にしかないんですかね?」
「冒険者は挑んでいる間しか輝かない…それは花火ですかね…映像や写真で見ても面白くない…実際に体験しないと実感がない…終われば後は帰るだけ…それが冒険の終わりですか…クリアしたゲームが遊ばれないように…」
ティアニスはメイリアと一緒に宿屋の近くのカウンターの近くで食事をしていた
「あなたと兵士の死体を運んだ風見族のバロット達はどうしてるでしょうか…あいつは嫌いですよ。」
「“早く持って行かないと腐るから早くお願いでーす“とかぬかしていましたよ。カタム領主も渋々、山羊男の命令に逆らえないからあなたを渡しましたがメイリアさんが生き返って来たから私も混乱しました…」
メイリアは少しうれしそうにスープを飲みほほ笑む
「しかし、また一緒にいることを許してくれて感謝する。ティアニス達も死人といるのは気分がよくないかもしれんが私としては嬉しい…」
「私はあなたを危険視していますが最近はあなたが本物だと思い始めています。しかし、あまり私達に安心感をもたないでくださいね。妙なことをしたら私が殺しますからね。」
「昔からティアニスは変わらないな…だがそれがいい。」
「ロジはどう思う?このままでは無理だと私は思うが…」
ティアニスはパンを毟って口に運びながら苛立ちを顔に浮かべる
「無理の前に私が根性をたたき直したいですよ。一度、全身を粉々にしてリサイクルしてやりたいほど甘い…でもシュウノさんでも山羊男には似たような対応しかできないでしょうからね。」
「もうしばらく、実戦をさせて改善するか見ますよ…駄目ならぶち殺しますよ。」
「ロジがいなくなると山羊男に対する切り札が一つ減る。ロジは守らなければだめだ。私がなんとしても守る。」
ティアニスは顔に青筋が浮かぶ
「…扱いが面倒な野郎だ!できるなら縛り上げた上で袋を頭に被せてなぶり殺しにしたい気分だ!」
食事をしていた他の客たちは怯えてティアニスを見つめるのだった
怒りに震えるティアニスに視線が集まる
「あの人、魔王を倒したチームのティアニスだよな?」
「偽物か?怖いこと言ってる…」
ティアニスはますます気が立ち睨みつける
「私を邪魔した奴や市民でも攻撃します。無条件で助かると思わないようお願いします。操られて襲ってきても躊躇なく殺します。野次馬になって巻き込まれても責任とりませんので気を付けてくださいね。…じろじろ見るなぁあああああ!!!」
客は怯えて料理を見るのだった…
◆荒野にさまよう龍の骨◆
ロジャノは白き龍に変身し上空を飛んで荒野に向かっていた
「この辺りしか荒野はないな…龍の骨などそうありはしないはずだが…下らん嘘かのう…」
だが荒野に動く巨体が夜に徘徊していた…
「ぬ?あれは…」
それは二本足の大きな骨の龍だった…
体型は大きな鶏の足のような丈夫な足に立派な尻尾があり熊が2足歩行しているような体型である
しかし、その骨にはミンチのような肉塊があちこちにへばりついていた…ちょうどフィギュアの骨組みに肉付けをしているようでもある…
「ズン」大きな足で歩き回り野生動物を追い回していた
「体長15mクラスか…どういうことだ?あの肉塊は恐らく骨食肉というスライムだ…龍の骨に纏わせて駆動に利用しているということか…」
頭の骨の中に少し禿げている中年の男がいた
コクピットのように目の穴をガラスで覆って操縦をしているように見えた
「ふふふ…この研究で一山あててやるぞ…この天才リキルド博士がな…」




