第64話:街に現れた山羊男の手先のオーク
セアフスシティの噴水広場で山羊男から眼能を授かったノーマルオークのウードは山羊男の依頼でギノを探しにセアフスに来た。魔王ノフィスを倒したかつての英雄シュウノが弟を余興で殺されたウードによる論理的な結論での殺し合いを止めるために戦いを挑むのだった…
「ギノのことを知っているなら、言いやがれ!」
ウードは力任せではなくシュウノの動きに合わせて罠を警戒しながら牽制をする…
噴水の吹き出す台座の後ろにウードは走り…
「ゴバ!」ウードは噴水の台座を持ち上げてシュウノに投げつけた
「ゴォ!」風を切る音と共に台座が飛んできたがシュウノはアイテムコンプで巨大な羽が並ぶ大きなうちわを出現させた
四角い正方形の膜が弾けて手元に出たうちわを握り力を込めて振る
ブォン!と大きな音がなり突風が起こる
「魔法武器:大羽うちわ…魔力を吸わせた分、緩衝作用もある魔法の風を起こすうちわ…投石は無駄だ!」
台座はズンと斜めになりながらシュウノにと届く前に地面に落ちた…
「チッ…めんどくせぇな。シーズンが過ぎたヒーローなんかもう需要はねぇだろ?俺の邪魔がしてぇのか?イテミスにもお前は勝てないだろ?わが友がセアフスを破壊しようとしていたイテミスをぶっ殺したからお前助かったんだぜ?感謝したらどうだ?お前は山羊男には勝てねぇよ。」
ウードに夫のオーバルが殺されて呆然としているトレッチにシュウノが大きな声で叫ぶ
「戦えないなら逃げてください!冒険者組合員にはこのオークに距離をとって戦うように伝えてください!」
トレッチは我に返り
「うぐ…わかった…行くわ…」と去っていくがウードは見逃さなかった…
「スズメバチの駆除は知ってるか?兵隊バチに布を括りつけて巣穴に帰るのを待つ…そして巣を見つけて焚火などの煙で一網打尽にする…俺はあの女についていく…確かあの方向に冒険者組合があるよな?」
ウードはシュウノから背を向けて噴水広場から離れようとする
「何!?逃げるのか?違う…俺が困るようにしているのか?」
シュウノを無視してトレッチを追ってウードは走って行く…
「そして俺は呪詛の実を二千粒ほど差し入れを貰い魔力量も中以上で上未満の魔法使いくらいはある…オークの魔法生物としての体機能…分裂による生殖…本来は死期や負傷したオークが子孫を増やすために使う自滅技だが俺には眼能の剛体による肉体強化と上昇した魔力量がある…」
「ちと不格好だが移動に適した姿になる…」
ウードのわき腹からめきめきと大きな足が2本生え4本足になり牛のように走行するのだった…
不気味な怪物が人間より早いスピードでトレッチが逃げた方向を目指して突っ込んでいく
「あの糞女は最後だ…他の冒険者共を全部殺してお先真っ暗だと思い知らせて殺してやる。」
シュウノはウードを追うがトレッチを追うウードは目立つ冒険者組合の建物を見つけた
「立派だねぇ?俺が赤いペンキでもっときれいにしてやるよ。」
ウードはトレッチを無視して駆け抜けていき冒険者組合に突っ込んでいった
「な…私を追い抜いていった?なんのつもり?…組合施設に行く気なの?」
シュウノは怒りが沸きあがる
「くっそおおお!なんでみんな考える力があるのに悪い選択ばかりするんだ!これじゃ誰も救われない…」
シュウノはアイテムコンプから走る速度があがる体力強化魔法:人馬走を取り出し自分にかけるのだった…
◆セアフスの冒険者組合施設◆
ウードは勢いよく扉を突き破り組合施設に殴りこんだ
牛のような体型から人の形にモコモコと戻りあたりを見渡す
「クエストの受注はここでできるのか?オークが街に出たから任務でも受けてみるかい?」
「だが今回は俺がクエストを受けに来た…お前らをぶち殺すってミッションをな。」
中にいた冒険者達は武器を構えるがウードは受付嬢を見て自分の左目の山羊目を見せる
「俺の左目を見てくれよ?わが友が俺を仲間として対等に扱ってくれたぜ?今まで俺は下に見られてばかりだった…ノフィス様はかっこよかったが所詮は俺達は捨て駒だ。魔王はカリスマがあるが下を上手く扱う演説家に過ぎない。だがわが友は違う。誰よりも遥かに強いのに対等に接してくれた…」
「うああ…」怯える受付嬢にウードは優しく微笑む
「おいお譲さん?あんたは毎日、お強い冒険者達に任務をあてがってるんだろう?俺が勤労感謝にきたぜ?毎日、俺達をぶち殺す手引きをしてくださってるからな。」
ウードは冒険者組合のこれまで武功を立てた人物の名前が並ぶ石碑を見つけた
「でかい墓石…ではないな…功業を成した人物が刻まれるモニュメントってとこかな?だがそれは魔物や魔人を倒して得た功績だろう?それはいいとしよう。お前らも生きるためだ。だがお前らは見境がなくずっと勝者の座にしがみつく。だから山羊男が出たのかもな…汚い勝者に対する罰だよ。」
ウードは受付嬢を掴んで石碑にブン!と投げつけてペンキが満たされたバケツをぶちまけたように赤くするのだった…
「ゴチャア!」
「これが俺の功業だよ。たまには魔物が勝ってもいいだろ?負けイベントが無いとゲームは楽しくないだろ?俺の名はウードだ。その石碑に後で刻んでくれ。」
室内にいた冒険者はトレーニング道具などを捨てて一斉に飛び掛かった
「この外道が!」
ウードは昔を懐かしむのだった
「ノフィス様は“わしの野望にはお前たちの存在が重要だ。わしも全力を注ぐ。お前たちの全力を望む。それをささげよ”って前に会話ができる魔物と俺達の指導者層の魔人たちによくかっこいいことを言っていた…俺もノフィス様みたいになりたいって思ったが…」
冒険者達は魔法や異能を使いウードを攻撃するが傷がゆっくり目に見えてふさがる上にどんどん強度も増していく…
ボフッ!火の玉がウードに当たり火傷するがウードは左目を腕の一本でかばいながら動き続ける…火傷もすぐに治っていく…
「お前らの世界に金持ちの成功本とかよく売ってるだろ?ノフィス様もそれと同じだよ。尊敬はできたが高見から下を使うのは人間の世界と同じだ…俺は魔王にはなれねぇな。オークは人気が出ない。魔人や龍がトップなら説得力はある。みんな由緒正しい系譜が好きだからだ…」
ウードはかかってくる冒険者達に対して腕をメキメキと6本に増やして殴り飛ばす
そしてトレーニング道具である大きなバーベルを発見し掴んで振り回して頭をかち割ったりして残虐な無双を行うのだった
「ガン!」と音がなると「うがぁ!」と人間の悲鳴が鳴り響く…なじみ深いギルドではなく悲鳴が鳴り響く拷問部屋のようだった…
「オーク無双って言ったところかね?今回は人間が無双される側だが。この場合、モンスターハウスって言葉があてはまるな…魔物がたくさんいるエリアのことだよ。この建物は魔物の敵の冒険者のたまり場だからそのままの意味だよな?」
バーベルをバットのように振り回し「ゴスッ」音を立てて骨が「ボキャ」と折れる音を立てながら冒険者達を屠っていく
「飽きて来たな…建物の柱を狙うか…」
◆英雄の意味◆
シュウノが駆け足で組合事務所に行くと建物が斜めになり倒壊するのだった…
バキバキと音を立てドガァと横に傾いて崩れた…大地震が起きたように
「そんな…中にいた人たちは…」
シュウノが立ちすくんでいるとウードが瓦礫をかき分けて出現した
「遅すぎだ。3分もあればここまでできるぜ?お前はノフィス様を倒してからなんにもできてねぇな?」
「お前はどうすれば満足するんだ…お前の恨みとは関係がない人だっただろ?」
「よく言うぜ?お前はこの前のオーク狩りに参加してたか?200人くらいは冒険者が来ていたはずだからお前も呼ばれたんじゃねぇのか?それで関係ないのにオークを倒したんだろう?じゃあ関係ない訳ないよな?」
「もう筋が通った理由で殺し合うのはやめてくれ…何のための理屈や理由なんだ…死ぬのが正しい論理なんか誰が助かるんだ…」
ウードはシュウノに拍子抜けした様子になり
「ノフィス様とは話し合いはしていないんじゃないのか?黙って俺を殺しにくればいいだろう?人間にとってもオークにとっても理由は重要じゃねぇ。どいつもこいつも気分次第で好き勝手をする馬鹿ばかりだ。オークも人間も同じだ。快と不快でしかものを考えれない。」
シュウノは涙を浮かべた
「みんな馬鹿だから死ねってか…それなら救いようがないな…でも俺は神様じゃないし他人に賢くなれとも言えない…お前はそれでいいのかよ?お互い消えるだけだろ…」
「ケッ…情けねぇ。俺は感情で泣けないが悲しみはわかる。今回が良い機会だと思わんかい?人間が生き残る価値があるのかってよ?オークは多分、無いかもな。ほとんど野蛮で馬鹿だからな…俺みたいに弟を思える奴なんかほぼいない…だが人間もオークと同レベルのはずだ…」
「そうだ…みんな馬鹿だ…馬鹿が多数派だ。俺がオークの中で利口に生まれたようにほとんどは馬鹿で賢い奴の邪魔や下らねぇ感情任せに群れる。お前が人を助けてもお前の足を引っ張られるようにだ…」
「成り行きでケセマ村に行く羽目になりそこで奴隷売買の様子を目撃したがノフィス様を倒しても人間のクズが悪さをしてお前も俺も何もできない…全部、虚無や幻だよ。お前も俺も役には立たない。」
英雄は英雄であることを捨てた
「もう魔王を倒したなんてどうでもいい…ここでそんな過去や栄光は捨ててやる。お前をこれ以上は好きにはさせない。正しい理由での殺戮があったとして止めさせる…」
「シュウノだったか?冒険者組合が倒壊したから今度は冒険者組合に頼ってた市民を消す…ギノの居場所を言えば止めてやる…」
「俺は魔物だがお前と同じだ。正しい理由で魔王を倒したお前が正しい理由で冒険者や人間を倒す俺を止める権利はねぇはずだ…」




