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シルバナに舞い降りた恐怖の存在

山羊男キャベツは、鳥型亜人(風見族)たちの森の街で、圧倒的な殺戮を繰り広げていた。

キャベツの「銃撃能力」により、歪んだ空間の粒が絶え間なく五月雨のように放たれる。迎撃に向かった風見族の戦士たちは、成す術もなく次々と肉塊へと変わっていった。終わりの見えない虐殺に、キャベツは苛立ちを隠せない。


「いつまで続ける? 聞こえているなら攻撃をやめろ」


数人の戦士が「風の結界」を重ねて威力を緩和しようとするが、キャベツはその障壁を飛び蹴りで突き破った。追撃の殴打が術者の肉体を直撃し、まるで熟れた果実のように砕け散る。

背後からの気配にキャベツが振り向くと、そこには十名の魔法使いが、街の象徴たる神木を背にして、高位魔法の詠唱を行っていた。


「風見族の誇りを見せてやる…!」

「『天空握潰てんくうあくさい』!」


神木から放出された莫大な魔力が、魔法使い達に集まり発動する。キャベツの周囲を半透明の膜が包み込むと、空気が中心に向かって強烈に圧縮された。


「神の掌に握りつぶされるがいい!」


キャベツの肉体は悲鳴を上げて軋み、圧壊しかけた。風見族たちが勝利を確信した瞬間、―キャベツの周囲が蜃気楼のように揺らめく。

直後、キャベツの周りの空気が“膨張“を始めた。圧縮されていた空気が押し戻されて正常な空間に戻る。キャベツは悠然と歩き出し、魔法の発生範囲から離脱した。。

キャベツは攻撃を受けたことで対抗能力として「空気膨張能力」を戦いの中で自己生成したのだ。


「な……なぜだ!? 確かに捉えたはずだ!」

「もう一度だ、もう一度撃ち込め!」


混乱する魔法使いたちを、キャベツは冷淡な瞳で見つめた。キャベツが体を力ませると、魔法使い十名の周囲の空間が不自然に膨らむ。狙った空間の空気を膨張させ風船が弾けるような破裂音とともに、十名の魔法使いは赤い血しぶきと破片になり飛び散った。


残された風見族の戦士たちは、武器を取り落とし、両手を上げて膝をついて降参した。

キャベツは怒りに顔をひきつらせ、無駄な戦いに苛立った様子で吐き捨てる。


「降参するなら、最初から戦うな」


キャベツは神木へと歩み寄ると、体をよじり蹴りを叩き込んだ。“バキバキ”と巨木が震える。蹴りを入れるたびに、キャベツの脚力は増していく。やがて根元が断末魔のような音を立てて裂け、街の誇りであった神木は無惨に倒壊した。


「貴様らの誇りなど、何の意味もない、ただの木だ」


荒廃した街の中で、キャベツは絶句する戦士たちを見下ろし、冷酷に問い詰める。


「…誰がここの偉い奴だ?案内しろ」


キャベツの前にオウムの顔の族長が歩いてきた。


「これ以上はやめてくれ…。」


そう空ろな声で頼む。しかしキャベツはその言葉に反感を抱き


「俺は先にそちらから攻撃を受けた。なぜお前らを許す必要がある?」

「人間の街の噴水広場では先に人間から剣を向けられたし空から先に鳥男に矢で射抜かれた。攻撃した側はされても仕方ないだろう?」


族長は手を出した者が原因の巻き添えの連鎖だと説明した。


「若い衆が人間を守ろうと思ったのだ。この世界でお前のような者は怪物とみられる。」

「お前を恐れたのだ。」


「なぜ自分たちに無関係な人間を守る?俺と直接関係が無かっただろう?」


「人間にも我々にも情けや優しさという感情がある。人を助けるのに理由は無い。」


キャベツは少し悩んだような耳の動きと瞬きをしたが理由がないと言う言葉に反応した。


「…そうか。特に理由もなく攻撃するのか。ならば食うのも理由はいらないな。」


そういうとキャベツは周囲に歪んだ空間の粒を発生させ族長に向かって連射された。

一瞬でズタズタになった族長に近寄り風見族の前で平然と口を開くのだった。


「…お前ら。そこらに散らばっている『食い物』を腐らせるな。きれいに集めておけ」


前代未聞の理不尽の連続に、風見族は言葉を失った。誇り高き戦士たちの遺骸に手向けることさえ許されず、生き残った彼らは、ただ怪物の意向に沿い服従して生きる道を選ばされたのだった。



***族長の部屋に座る怪物


キャベツは族長の部屋を眺めていた。本棚の本を手に取り興味深そうな目でめくっている。

ピー太郎が地獄と化した故郷を放心状態で歩きながら見ていたらキャベツが外に出てきてばったり出会う。


ピー太郎は地獄と化した故郷を放心状態で歩いていた。すると、族長の部屋からキャベツが姿を現す。少し高い、独特の山羊のような声色でピー太郎を呼び止める。


「おい。子供用の、文字の読み方がわかる本を持ってきてくれ」


ピー太郎は硬直する。まるで、親しい間柄で日常的な頼み事のように響いたからだ。


「はい…?」


「子供用の本や、読み書きの練習の本を持ってこいと…聞こえないのか?」


殺戮を繰り返した怪物が読み書きの練習をしたがる異様さに頭がショートする。


「はぃいいっ!?」


ピー太郎は血相を変え、答えを待つ怪物の前から逃げるように空へ飛び出した。


ピー太郎が街の店から読み書きの本を何冊も買い取って持っていくとキャベツはバロットと話をしていた。


「俺がお前らの部族に襲われた町の名前はなんという?そこに俺に剣で切りつけた猿が二匹いたから持ってこい。」

「二匹とも、すでに死んでるから簡単なはずだ。」


バロットはわかりましたと返事をしてピー太郎を誘う。


「風の魔法の軽量化は人間を一人掴むのが限界だからお前も来てよー。」


「セアフスに?わ…わかりました。…(シュウノ様に早く助けを求めないと…)」


「あ、あの……その……いつまでここに、いらっしゃるのですか?」


キャベツは作業の手を止め、じろりとピー太郎を見つめた。


「用が済んだら出ていく。それまでは、襲ってきた『罰』として手伝ってもらう」


キャベツはそれ以上興味を示さなかった。再びペンを握り、まるで子供が初めて文字を覚えるような真剣な眼差しで、読み書きの練習を再開したのだった。


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