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第59話:英雄がアルシオンに会う

今回の登場人物

シュウノ:魔王を倒して役目を終えた主役。現在、望まぬ経緯で妻が2人いる状況

アルシオン:1000年前の伝説の英雄らしい男。清掃員で現代にいる

ウード:ノーマルオークの知能が高い特異個体。飼い主のギノを山羊男に二度と会えなくするという依頼を受けて山羊男に力を授かり活動を開始する

山羊男からキャベツの使える能力の一つを眼能として授かった盗賊のクジとノーマルオークのウードがセアフスにギノを探しに向かう頃


セアフスにて


シュウノは家でセイルとルナムと団らんしていた

シュウノの子を妊娠して家出した貴族の娘のセイルは妊娠でおなかが大きくなっていた


「なんですか?何見てんですか?このゴキブリ!」


ルナムはストレスか?と考えながらシュウノから預かった大金について使途を聞く


「セイル。この前、シュウノから預かった財産の半分…500万ルオン(5億円)はどうした?私には使い道を教えなかっただろう?」


「あの金は非常食を作る会社の株を買いましたわ…さらに缶詰工場を買収しましたわ。避難グッズを売る会社の株にも…」


「山羊男の恐怖でそういう会社の株が上がると思ったのです。手元には50万ルオンと金を50万ルオンずつ持っていますわ…残りの400万ルオンは株につぎ込んでいます。」


ルナムは人間社会の知識を知らない分野があるので株とはどんなものか聞く


「その株とはなんだ?会社の権利だったか?なぜ直接、金でやりとりしない?」


「ふん…浅学ですね。それはただの建前。本質は会社が発行するチケットや独自通貨に近いのです。株を買うほどその株は株を欲しがる連中には希少性があがる…つまり宝石に似た物です。石のそのものには価値は無くイメージに価値があると買い手が思うのです。」


「株とはまず会社が発行し買い手が株を買い会社が現金を手に入れ買い手には株券が手に入る…次は買い手が買い手に売り買いを始める。これが株の売買と儲けを得る仕組みですわ…」


「何かを始めるには現金がいる…それを商売を始める前に集めるのはほぼできない。だから株と言うチケットを作って売って集める。法律で縛られた打ち出の小槌ですかね?」


「会社が株の売買で現金を手に入れる時は株を発行するか再発行の時のみ。手に入れた資金で営利活動や設備投資を行い儲けを狙う。株の買い手は負ける側に株を売るか買うかのババ抜きを繰り返しますわ。例えが悪いですが偽札の売買とその後に似ていますかね?」


「株はたくさん持つほど会社の経営権を手に入れる意味でもあります。つまり選挙の票を金で買っている感じですよ。おまけに会社が好調なら利息もつきます。ずっと優良企業など無いですがね。」


ルナムは感心した様子だが疑問を呈する


「それは問題があるだろう?株は客が買うほど上がるなら人間の数はいずれ限界があるから買う奴がいなくなるタイミングがあるのではないか?」


セイルは教えたくなったのか株価の変動について解説する


「株は売り買いで値段が変動するのです。つまりみんなが売れば下がる。みんなが買えば上がる。だから予測不能なんですよ。負ける人がいないと儲かる人がいないゲームです。」


「買い手は株価を見て買うのではなく背景もみます。工場を立てているや売り上げの毎年の上昇や資金の増減や従業員の年齢や入社に人気があるのかなども…」


「わたくしは上がりそうな会社の株価が比較的に安定している会社を買い、上がるのを待つやり方をしています…待ち伏せ型のやり方ですよ。今回は山羊男の関係で上がりそうなのを注目しました。」


「ふん…金儲けに山羊男すら利用するか…強欲よのう…そのでかい胸は欲望が詰まっているのか?」


セイルはルナムの態度にとさかに来たのか罵声を浴びせる


「だったらお前もパートやバイトでもしてこい!このゴミニート!」


「私にも金をよこせ…何かやってみよう。ニートはお前も同じだろう?金を人に預けて金を稼ぐならお前は働いていないのと同じだ。実質的に企業相手に金貸しみたいなもんだろう?しかもそれはシュウノの金だ。」


「きええええ!お前にはやらせん!この馬鹿!調べる物が多くて大変なのですよ?楽してると思うなああああ!」


シュウノは怒号に胃を痛めてせき込んだ…


「休みの日に揉めないでくれ…俺の心が休まらない…」


シュウノが疲れた様子にルナムが近づいて来て嬉しそうに笑顔で語り掛ける…

それはルナムにとっての福音だった


「できたぞ…お前の子が…闇医者に診断してもらったらできていた…」


セイルは口から泡を吹いて倒れた


「あぁー…」


シュウノはパニックになりセイルに駆け寄る


「おい…大丈夫か?俺も倒れたいよ…」



◆心の乱れが生じて◆


シュウノはソファにセイルを寝かしてルナムと話をする


「本当なのか?俺がまたパパに…ショックで胃じゃない場所でも穴が空きそうだよ…」


「なんだ?貴様…嬉しくないのか?重荷だと思うならお主を殺すぞ?」


「嬉しいって言われても…セイルも倒れて妊娠させた女性が2人もいて俺は最低な男として見られるんじゃないかって気持ちだよ…子供は祝福されるべきだけど俺はクズなのか?…」


ルナムは拳でシュウノの顔を「ゴン」と殴り口から「ごふっ」と言わせてしまう


「お主には子供より世間体が重要なのか?そんな気持ちで山羊男に挑むなどと片腹痛いわ…見栄を捨てたらどうだ?」


「すまない…ルナムも俺の家族だよ。誇れるように頑張るよ…」


「お前は私に良い男に思われたいのか?たまには強い意志を見せて見ろ。この腑抜け。」


シュウノは心が荒れ始めていた…立て続けに誰からも肯定されず満たされない気持ちに我慢なったのだ…


「俺は山羊男の飼い主のギノからもメイリアや俺を貶され、ルナムやセイルに不自由させないように金を送っているし悪口も家で言わない…なのに…なのに…なんで俺を追い詰めるんだあー!!」


「もう!バカバカしい!しばらく帰らない!」


シュウノは家から飛び出した


「ふん。今のうちに弱音を吐き出しておくんだな。この程度で叫ぶならまだ余裕がある証拠だ。」


「魔人のように人間が滅んだらそんな風に情けないことを言っても誰も聞いてはくれんわ…」



◆街の酒場で◆


シュウノは普段はいかない酒場で飲んだくれていた


「俺はなんだ?なんのための存在だ…」


マスターが困り顔でシュウノにアドバイスをする


「あなたは若い…存在意義に悩むなら何か人のためにしたらいい。小さなことでもいいですよ?」


「俺は十分やったよ。魔王も倒したし馬鹿女を2人も養ってる…なんだよ、みんな…」


「私は愚痴を聞くのが仕事ですがあなたの悩みは浅い…人の関係は自分が招くものが大半ですよ。」


「魔王は確かに誰でもは倒せない…英雄は何のために魔王を倒すのでしょうかね。周囲の評価のためですか?名声ですか?報酬ですか?どちらにしても心は満たされなかったようですな。魔王を倒した喜びは今飲んでる酒と同じで時間がたてば切れるものです。」


若き英雄は説教を酒と一緒に貰いたくないとやさぐれる


「英雄や勇者はなんで魔王を倒すかって?簡単さ…みんな褒めるからだよ。理屈もいらないし魔王に勝てない人たちは英雄や勇者に頼ってくれる…それがヒーローになった気分で自信がでるのさ。言うならば神になった気持ちかもね…」


「お前しかできないって言われたらマスターも嬉しいでしょ?俺は実は英雄じゃないんだよ…他所の遠くにいてくだらない人生を送ってたんだ…英雄なんて夢への逃げだよ…」


マスターはグラスをふき酒をトクトクと注いだ


「子供の夢は大人から見たら誰かがセットやジオラマを用意して見せた物…映画に行きたい子供とそこに連れていく大人の関係かもしれませんな…」


「ですがあなたは夢と現実で悩んでいる。それは夢で楽しんでいる人よりは現実を見ようとしている証拠ですよ。苦しみがなければ葛藤がない。楽しむだけでは真の英雄ではありませんからね。」


するとシュウノの近くに清掃員のアルシオンが座った…

右目の眼帯でシュウノは思い出した


「あの時のアルシオンという清掃員…そうだ…この前、意味不明なことを言ってたな…でも酒の席で聞くのもな…」


アルシオンはマスターに話しかけた


「アグルス神に伝えてください…情報を細かくこちらにも渡すように…会いたい時だけそちらから来られても態度が悪い…」


「承知しました…ですがアグルス神様にきつく言わないでくださいよ?従者としてもあまり心地が悪い…」


シュウノは意味深そうな内容をわからないまま聞くのが我慢できなくなり


(アグルス神?従者だと?…また変なことを話してる…なんなんだ?)


「あなたはこの前、俺に言ったことを覚えてますか?山羊男が見捨てられた者の悲しみや怒りから生まれるって…それはどういう意味ですか?」


アルシオンはシュウノを見て


「君も堕ちたものだ。山羊男と戦うとか言っていたくせに酒浸りかね?山羊男が来た時に酔っていたらそれ以前の問題だ。」


「うるせぇ!俺はみんな周りは今で優しかったんだ…みんないい人が俺に味方したのに…でもキャベツが出た後はもう滅茶苦茶だ…元凶のギノにもボロクソ言われて…最後は心の傷すら酒でごまかすのも悪く言われる…もう俺は後には残らない…使い捨ての消しゴムのケシカスだよ…」


「後で占いをしてやろう…店の裏に来い…」


「占いだって?俺を?くだらない…俺を占ったって何になるんだよ…」


「君は妻が2人いるだろう?当たっているかね?」


シュウノは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした


「おい?今すぐ占え!店の裏に来いよ!」


他の客たちが大声にシュウノを見つめて注目が集まるが無視して二人は外に出た…



◆シュウノの暗い未来◆


店の裏に出たアルシオンとシュウノは対峙した


「占いってのはなんだ?未来を当てるのか?言えよ?名前もアルシオンは嘘だろ?1000年前の英雄の名前だぞ?名前負けしてるよ。」


「私は地球にいた…自堕落に生きてこの位の低い宇宙に来てその星の一つで立ち往生をしている…分相応という奴だ…君も地球にいたんじゃないのかね?」


「なに?…どういう意味だ?あなたは何者だ?」


「まあ今はいい…占いをはじめよう…」


清掃員は手をゆっくりと伸ばし眼帯を外した…


その右の眼は青い山羊目だった…キャベツとは違う色の不気味な目だった…


「な!?…なんなんだ?お前は山羊男か?」


「奴らは力を他人に複製として与えれる…私は過去に別の世界で山羊男に会い交換条件で力を貰った…暴虐の山羊男:キャベツとは違う山羊男…奴は『行方の山羊男:パセリ』と呼ばれていた…」


「私はパセリが欲しがった情報を教えた…その見返りに未来をある程度、視る目を私にくれた…この目で賭け事や権力者共をすがらせ金を貢がせて遊んで暮らしたこともある…」


「私は君と同じ、堕落者だ。英雄崩れの行き場のない亡者だよ。」


アルシオンの右目の山羊目は不気味に瞳孔が丸くなり広がったり縮んだりを繰り返した


「この未来を視る目で君を見るが…君の妻も子も死ぬ…そして君を英雄としての立場を与えた冒険者組合もこの街の支部は終わる…山羊男の手先が迫ってきている…」


シュウノは混乱し


「おい…不吉なことを言いだして…俺を不安にしたいのか?」


「間違いなく確実なのは酔っている状況で手先と戦えば君は死ぬということだ…」


「奴らは…2人だな…オークと盗賊か?君も油断しないことだ…奴らは冒険者共以上に超能力を持っている…それを私とタイプが違うが強力な山羊男の力の一つだ。気を付けろ…」



◆セアフスの林で…◆


セアフスの近くの林で3人組の冒険者が談笑をしていた…男性1名と女性2名のグループだった

斧を担いだ男とヒーラーと弓構えた女性の若き冒険者達だった


「ねぇ~?林は虫が刺しに来るから早く出ようよ~。」


「うるせぇ!この辺でB級の岩飲みトカゲがでたらしいから倒すまで帰らねぇよ。」


ヒーラー役の女性が結果や功績について林道に来たのが不満らしく自分の髪の毛をいじっている


「エクストは2等だからB級なんか倒しても1等にはなれないしょう。私らは3等だから協力して倒せば点にはなるけど…」


すると岩に擬態していた巨大なトカゲが動き出し呑み込みに来た


「グオオ!」


エクストは斧を振り下ろした


「ふん!雑魚が!異能:バターカットを見せてやる!」


「ドジュウウウウウ!」


大きな斧は真っ赤になりトカゲの顔を焼き切りながら顎に斧を打ち込み尻尾まで真っ二つに切り裂いた


「異能:バターカットは溶かしたい対象の融点を超える温度を付与する。さらに斧の素材である攻守鉄は四千度の高熱にも耐える。」


「俺自身には出歩く時は火魔法の結界術:火伏陣という中級の結界を張っている。熱い要素は俺には一定時間は跳ね返す耐火魔法だ」


弓使いの冒険者が早く終わったことに頭が軽そうな愚痴を漏らす


「も~私の出番なーい!」


「遅いんだよ?もっと早く手を出せ。俺にたかって手柄を狙っても役に立たないと等級があがらないぜ?」


すると木を倒しながら身長が3mほどのノーマルーオークが現れた…


「よう?お前ら冒険者組合の奴らだな?等級を言いやがれ…3等までなら見逃してやる…」


エクストは喋るオークに少し驚き興味を持つが侮蔑の表情を浮かべる


「なんだ?口が利けるオークがいるのか?雑魚の癖に見逃すだと?D級の雑魚なんかが偉そうに下らねぇ…俺が相手してやる。俺の連れのノルマにもならねぇよ。」


斧を振りかぶってノーマルオークに切りつけた


「俺の名はウードだ…暇だから遊んでくれよ…1対1でやろうぜ?」


「ノーマルオークのくせに生意気だぜ!せめてロックオークで威張りやがれ!」


ウードは避けるが斧を振り回され腹や腕を切られて負傷し焼き切られる


「ブシュウ…」


「俺を相手にして輪切りにされねぇとは、オークのくせに回避行動か?頭が回るだけはあるようだな?」


ウードは痛みで顔をしかめるが「チッ・チッ・チッ」と指をふり


「今のは経験値集めだ…俺は受けた力を超える体力になる…もちろん回復力も体力の内だ…」


ウードの傷はゆっくりだが目に見えるスピードでふさがり体は歪んだ空間に一瞬包まれた


そしてウードは左目の黄色い山羊目を見せた


「眼能:剛体を披露してやるぜ!」


エクストに突進してウードが飛び掛かる


「馬鹿が!正面から俺の斧にかかるとは!」


大きな斧を飛び掛かりウードの頭に振り下ろすが頭に届く前に殴って逸らしながらガラスのように砕いてしまう


「パキッ!」


「なに!?国王の避難室でも使われる鉄の千倍の強度をもつ攻守鉄だぞ?」


「ちょっと手が痛かったぜ、坊主…もっと頑丈なのを持ってこないとだめだぜ?そしてお前は振り下ろすスピードは俺より遅い。もうお前を超えたから興味はねぇ。あばよ。」


「バキャ」


ウードは頭上を殴ってエクストの頭が半壊し撲殺した


「いけねぇ…手が血で汚れちまった…川にいかないとな。…女たち、もっと冒険者を呼んで来い。今は機嫌がいいから3等までは見逃すよ。俺の弟を殺した奴らは2等以上だったからな。」


「いやー!あああああ!」


二人の付き添いの冒険者は追撃もせず逃げ出していった…


「勝ち馬に乗る奴らは薄情だな…俺も山羊男に救われた側だがあいつは見捨てなかったぜ?俺達みたいなオークはウキウキと殺す癖にやばくなると逃げるんだな。」


「まあ悪くは言わねぇよ。俺達と人間、どっちが邪悪か比べっこしようぜ?」


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