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第55話:山羊男が作った獣と家畜の化身…その名は獣畜

山羊男のキャベツは奴隷商人のリボバルから聞いた情報に興味を持ちケセマ村に来ていた

キャベツは盗賊のクジから透明化魔法をかけた布を被りケセマ村というスディッキュ領主が運営する犯罪結社と闇市を観察のために訪れたのだった


キャベツは村の祭典の様子に戸惑っていた。その日はラグド帝国のエクラル皇女がお忍びで密入国を行い、それをもてなす祭典の日だった


「今日はなんだ?えらく村に飾りが多いな。楽団が路上の舞台で演奏までしている…」


昼間だがパンパンと小さい花火が打ちあがり拍手や酒が振る舞われており服装もいかにも中流以上といった客ばかりだった。犯罪結社の村に火遊びに来たようなカタギの金持ちも来ていた風だった。もちろんギャングやダーティな貴族のような客もより取り見取りだった


「このケセマ村は最高ですよ…金を払えば資金洗浄もアウトソーシングでしてくれるし隠し財産の運用もしてくれる。」


「この前、密輸した象牙もばれたら怖いからケセマ村の土地を買って私のコレクションハウスを建てましたよ。ここなら摘発もされませんし物を隠すには丁度いい」


「お宅はどうしてここに?私は外国の刺激が強い魔法薬を買いに来ましてね…こちらじゃ法律が厳しくて手に入らないのもありますよ。」


「ラグド帝国に居る蛇型亜人の雷呼族の牙が欲しかったのですが今日は売ってませんな…亜人の遺体や骨もいつか取り扱ってくれればコレクターとして助かりますが…」


キャベツは客の話を透明化した布を被りながら聞いていた


「祭りとはこんなものか?人が祝いや祈りのために行うと本にあったがこの村はなんのために祭りをする?」


「パァン!」と銃声が聞こえたので怯えてキャベツは振り向くと客が護衛に囲まれて運動場でライオン撃ちを行っていた

以前、スディッキュ領主が考案した動物園から余りの雄ライオンを引き取り活用するアトラクションの企画である


「一発じゃ死なねぇな…次の銃をくれ。」


ライオンが客に飛び掛かるが護衛の魔法使いが結界でライオンを近づけさせない


「グルルル…」


ライオンは悔しそうに視線を向けながら唸っている


装填されたマスケット銃を受け取り2発目の発砲でライオンの眼と眼の間にあたりライオンは倒れた


「お客様の記録は2発でしたね。後ほどライオンの頭骨はトロフィーとして贈呈します。」


パチパチパチと護衛達が拍手をして次の客が早くしろ言いながらと並んでいた


「…なぜ殺す?ライオンは檻にいて人間に捕まっていたはずだ…わざと檻からだして自分を襲わせて撃つということは余興か?」


キャベツは死んだライオンが運ばれていく後をつけていった


ライオンの死骸はすでに4頭ほどテントのなかに置いてあり頭骨を記念品にするために首が切られていた


「…どうやらこの村は普通の村ではないらしい…ここを見て人間の評価にするのは間違いだが一例としては観察しておこう…」


キャベツはハエがたかっていたライオンの死肉を一頭ずつ片手で一握りちぎって口に運んだ


「…お前らは俺の血肉となってこの先を見届けろ…お前らは俺と同じだ…」


キャベツはテントから出ると村を物色していた


「露店が並んでいるな…この辺は祭りなら普通だが珍しい品が多い…外国の武器や魔物の乾燥した手足なんかも売っている。薬品もあるな…露店では普通は売らないはずだ…ここは闇市か?」


割引セールの看板が目に留まりそこに向かうと檻に入った人間や亜人が鶏のように売られていた


{訳アリにつき2割引き…傷・軽度の病気の痛みありにつき返品クレーム不可:一人3000ルオン(日本円で30万円)から割引します}


「なぜ英雄共は魔王と魔族は相手にするくせに人間には何もしない?奴らはやりやすい相手しか相手に出来ないのか?人間のルールは破れないから人間の悪事には手を打ちにくいという意味か…」


「…どうやら英雄の連中は遊びみたいな活動しかしていないらしい。英雄ではなく英雄と周りから思われたい目立ちたがり屋だ…それは自分の欲を満たす自己満足の類だということだ…」


「シュウノだったか?噴水広場で俺を笑っていたからな…英雄とは他人の痛みに何もできないということだ…」


移動をしていると病死したと思われる奴隷の鱗清族が檻の中の魔物の餌にされているのを見つけた


「亜人に対する差別の一例か?…人間の内面もここでは素直にでるらしい…」


続いて大きなサーカスのテントを見つけて中をのぞくと歓声が沸いていた


「赤コーナーはノーマルオークの通常より大きな5m級の個体です。青コーナーは熊より大きな狼…滅多にお目にかかれない月光虚狼という群れない狼です!」


司会の声が響き渡り魔物同士の闘犬ならぬ闘獣が行われていた


「魔物の殺し合いをステージにさせてやらせるのか?蟲毒のようなショーと言うことか…」


「ブォオオ」


ノーマルオークは木のこん棒で狼を「ドガッ」と音を立てて殴り飛ばして昏倒させた


キャベツが見ていると月光虚狼にスポットライトを当てられる


「月光虚狼は魔力を含んだ光を浴びると自分に蓄えた魔力で体が大きくなると言う珍種です。皆さんご覧くださいよ?今、照射しているのは偽月照という月の光を再現する光魔法です。」


月光虚狼という狼は戦っている途中で筋肉質に膨らんでいきノーマルオークの首を「バリッ」と音を立てながら食いちぎってしまった…


「グルル…」


狼は客席をにらみながら自ら檻の方へ入りスタッフに運ばれて行った


「ここは魔物も扱うのか…見世物にしているがこれは人間にとって面白いのか?」


「もういい…無意味に命が死ぬのを眺めている。肉食動物の狩りの本能が人間にもあるからこれで楽しめるということか?」


キャベツはテントから出るとケセマ村のコロッセオみたい楕円の建物を見つめた


「あそこがメイン会場のようだな…」


キャベツは家畜小屋を道中見かけた

クジとウードが作業していた豚小屋もあった


「行く前に俺もイベントを一つ用意してやるか…」


キャベツは家畜小屋に侵入して従業員がいないことを確認した


「豚・牛・鶏…お前たちは人間に食われる側だ…人間に品種として体を弄ばれて自然に帰れなくなった存在だ。だからお前たちも人間をどう扱っても咎はない…お前たちに自由をやる代わりに俺の頼みをいくつか聞いて欲しい…」


キャベツは自分の肉を毟って潰して液体にしたものを一匹の豚に近くにあった鎌で傷をつけて注入した…


豚はだんだんとライオンのような体格になり隣の豚に噛みついて情報体を注入し合い、おなじライオンの体格の豚のような怪物になった

その額には新たに山羊の眼があり三つの眼になったのだった…


「お前らにはライオンの情報体に俺の情報体を加えた物を与えた…俺が合図を送ったら好きにしろ…ただし奴隷の者は食うな…檻の中にいた奴隷たちは見分けるためなのか白い服や首輪をしている…人間の視覚も与えておくから見分けやすいはずだ…」


「お前たちは今日から家畜ではない、獣と家畜の化身…獣畜だ…存分にお前たちを食い物にした支配者共を食らいつくせ…」



****オークション会場


キャベツが発見した会場では外とは比べられないほどの金額で店やオークションが開催されていた

キャベツは会場に行き、透明化魔法がかかった布を纏って歩いているとたくさんの護衛に囲まれているエクラル皇女とスディッキュ・ルトプッシ領主を発見した


「あいつらが一番、立場が高そうな奴らということか…権力者なのか?権力者も金に困るのか?それで違法な売買をするのだろうか…ついて行ってみるか…」


キャベツが近くにいるとは知らずにスディッキュ領主は展示品や珍品をエクラル皇女に説明していた

歩いている途中で絵画が目に入り説明をはじめた


「どうです?この絵はどうですか?我が国の50年前の天才画家のクラリオットが描いた死蔵品の絵画ですよ。本人のサインもあります。盗難されたものもここには流れてきますから表では取り扱いができない物もありますよ」


「剣の山の下に足が長い椅子から落ちたくなさそうな人の絵ですね…あんまりいい気持ちの絵ではありませんね。」


「これは責任が重い立場から降りるに降りれない意味の絵らしいですよ?画家は風刺が好きですからね。タイトルは“足長椅子とその真下”ですね。」


エクラル皇女は楽園切符の話をスディッキュ領主に話す


「依存症の成分をもつ植物なんか、どうして栽培したいのですか?国民が衰弱して税収もマンパワーも減るのでは?」


「ふっふっふ…以前、フェジェという男から外国から苗の仕入れを頼まれましてね…その時、思いついたのですよ…タバコのように加工しようとね…」


「タバコの目的はどう思われますか?あれは私が思うに年金対策ですよ。寿命を減らして間抜けな連中が長生きしないで死ねば年金をそいつらに払わずに済む…おまけにたばこ税もとれる…依存症も植物由来の意味なら楽園切符と同じですよ。」


「年金受給者は権力者にとって金食い虫以外の何物でもないですからね。税収に貢献しない国民などいなくなってほしいという意味ですよ。だからタバコはある…楽園切符も同じ意味にしたいのですよ…」


「タバコの場合は病気のまま生きてしまい社会保障の財源を圧迫するリスクがありますが楽園切符ならタバコより恐らく死にやすいでしょう。健康以前に精神が廃人になり生活ができないから野垂れ死ぬ以外に先がない。」


エクラル皇女は感心した様子で


「スディッキュさんは博識なのですね。しかし制限をつけて世に出すと若年層まで死んでしまいます。意図的にスラムに流して人口を減らすのには使えそうですが彼らは買うお金がないからその手には使えませんね。楽園切符は外国に売ればその国は弱るから裏のビジネスにはいいかもですね。」


「そうですな。やりようは考えるほど浮かびます。是非ともご協力をお願いしますよ。裏のビジネスは世界中で起きています。エクラル皇女様のようにお考えのお方はたくさんおられます。高貴で聡明なお方はその発想に行きつくということですよ。」


絵画の“長椅子とその真下”の絵をよく見ると椅子の足の一本が傾いて折れそうな様子で描かれていた…


キャベツはスディッキュ領主に興味を持つのだった


「権力者は民の未来を案ずるのが仕事ではないのか?間引きのような話をしているがそれではスズメバチが幼虫の管理で噛み殺すのと同じ意味のはずだ。」


「人間もスズメバチのような思考をするのか?楽園切符は聞いたところ毒に近い植物だ。そんなものを間引きのために権力者が扱うのか?それはスズメバチの巣でも崩壊の話になると思うが…」



****弟役の執事


エクラル皇女はスディッキュ領主がリボバルに管理をさせていた10人ほどの少年執事を並べてみていた


「どれも可愛くていいですね…しかし、愛想笑いが鼻につきますね。自然に笑える子がいいです。心は表情にでますからね。」


スディッキュはリボバルが帰らないことに苛立ちながら説明していた


「すいません、奴隷は重鎮のリボバルに任せていたのですが今回は不在ですので私が説明します。彼らはオークションに出しますのでここでは買えません。改めて入札をお願いします。」


クジと話していた少年のリメシュもそこに居てエクラル皇女に笑いかける


「あなたはなぜ奴隷が欲しいのですか?皇女様でも困ることがあるのでしょうか?」


スディッキュは勝手にしゃべるなと怒るがエクラル皇女はいいと遮る


「貴様、無許可でしゃべるな!奴隷は相手に求められるまで口を聞いてはならない!そんな風に調教されてないだろう!」


「いいですよ。スディッキュさん。私も買う前には色々内容は知りたいですからね。」


「わたしはとっても寂しいの…わたしは一番下の妹で公務や写真を撮られておお忙し。奴隷が欲しいんじゃなくて心に癒しが欲しいの。」


リメシュは少し考えた様子で苦言を言う


「あなたは美しいと多くの方は言うでしょう。しかしあなたの心には穴が空いています。満たされたことがないのではないでしょうか?」


エクラル皇女はリメシュを見て


「この子がいいかな?可愛いし自己主張もちゃんと出せるし…喋る人形みたいなのはつまらないですからね。ちゃんと主体性がある子が飽きなくていいですよ。」


リメシュが自分を見くびっているのか疑問に感じエクラル皇女は力の差を理解させたい欲求に駆られる…


「でもわたしを弱いと舐めたらだめですよ?下等で出来が悪い人類とは違うのを先に見せましょう。」


エクラル皇女は護衛が抱いていたキョロキョロと落ち着きがなく弱弱しく震えているビーグル犬を持ってこさせた


「この子は4年前にわたしが買ったノンちゃんですけど病気になってわたしのことを忘れたようなんですよ。最近じゃ真っすぐに歩けなくなりました…」


「前に撫でていたらわたしの手を噛んで傷がついたんですよ…すぐに専属の医者に見せて傷を消すようにしましたが傷跡が消えるのに長くかかりましてね…」


エクラル皇女から魔力が漏れ出し異能を発動した


「わたしが持つ異能…神の見えざる手…フューチャーハンドと呼んでいますがお見せします…」


エクラル皇女の真上に石でできたような巨大な右手と左手が現れた。幻のように透き通った巨大な浮かんだ石のブロックが組み合わさったような両手だった


両手はノンちゃんを掴んで持ち上げリメシュの目の前の頭上に持ち上げ…


「ガキャ!」


石と石がぶつかるような音が響き、蚊を叩くようにと両手で叩き潰すのだった…


ノンちゃんの血と肉塊をリメシュの足元へ「ベチャッ」と落とすのだった…


「わたしを困らたら窓から飛び降りた執事がいます…自分から身投げしたと周りからは言われていますが異能で起こされた犯罪は大抵の場合、立証できませんし多くの国では権力者がやる罪は警察も見て見ぬふりで無罪です。わたしを困らせたらだめですよ?」


リメシュはエクラル皇女の目を見て鼻で笑い


「あなたは銃で脅している人と変わりませんよ。昔いた貴族学校でテストの良い点を取った同級生の方が自分を優れた存在だと威張っていましたがそれと同じです。あなたはお金を自力で稼いだことはありますか?おそらく盗む危険も背負ったこともないでしょう?」


「人を困らせているのはラグド帝国の植民地主義でしょう?人から集めた税金で奴隷を買うなんて…下等なのはどちらかわかりません。泥棒の最後の強がりですか?いや…違うか…強盗の血筋の厚顔無恥でしょうかね?歴史は悲しいほど繰り返します…滅ぶしか救いが無い…」


エクラル皇女は顔から笑みが消えて


「2人買いますわ…この子といい子を2ずつ…悪い子は相手にしたことがないから新鮮かもしれませんね…」


スディッキュ領主は困った顔で腰が低くなるように許しを請い…


「どうかお気を悪くせずに…」


と謝罪するがエクラル皇女はむしろ気に入ったと返事を返す


「いいですよ。わたしも怒る経験が少なくて…しつけをする練習もしたくなりましたわ。リメシュ君と一緒にわたしも怒るのを我慢する練習をしないと。前にわたしより弱いくせに説教したお母さまを殺したとき、お父様から新しいお母さまを探すのが大変だと、とっても怒られましたからね。」


リメシュはエクラル皇女に哀れみの感情を向ける


「あなたは生まれたのが不幸だ…強い者しか認められない魔人に生まれたほうがよかったかもしれませんね…優勢劣敗など余裕がある悪党がすがる詭弁ですよ。ですがあなたは悪人になる度胸も力もない。守られているのに強がるとは見世物にもなりませんね。」


「うふふ…小僧…あなたを買ったらまず利き足を折りますわ。後遺症を与えて逃げられないようにしてわたしに買われて幸せだったと思うまでもてなしてあげますよ。丁度、インコの羽を傷つけて脱走できないようにするように…」


山羊男のキャベツはエクラル皇女には興味というよりは理解できないといった表情になり


「あいつは買い物に来たのか?なぜ犬を殺し子供を脅迫している?要求をのませたいのか?さっきの会話でそんなに腹を立てたのか?人間の思考は俺には理解できない部分が多いな…」

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