第50話:人畜が街に現れ始め
人畜に改造された者を発見したシュウノはカタム領主に報告し住処と人権を保障する法律や対策を打診した後の事だった
現在は山羊男の飼い主だったギノの護衛になりカタム領主の部下でもあるシュウノは街の状況の説明を受けていた
「ここ最近、風見族の旅行者が増えている。さらに爆買いをしている。どういう意味だ?おまけに人畜の改造人間も来ている。」
「シルバナは山羊男が来てから風評被害で農産物や材木がローディグ王国との取引が減ったはずだ…なぜ奴らは金がある?」
「考えられるのは山羊男だ…奴が風見族に金を儲ける手段を提供したのだ…風見族は山羊男の被害者と言う意味で渡航は制限していなかったが奴の手先になったかもしれない…」
シュウノはカタム領主の話を聞いて風見族について疑問を投げかけた
「まだ憶測の範囲ですが風見族が自分から山羊男に寝返ったとはどういう意味ですか?キャベツはシルバナを制圧した彼らの敵でしょう?」
カタム領主は苦虫を嚙み潰したように仮説を立てる
「簡単だよ。奴は風見族が崇める神木をへし折りシルバナを攻撃した魔族を皆殺しにした。神木の代わりが奴になってしまったということだ。シルバナにローディグ王国が金の支援や援軍は送らず山羊男を刺激しない方針をとったから奴らの中に山羊男につく側が現れてもおかしくはない。」
「風見族はツアーで観光を楽しんでいる…おまけに風見族の戦士が何人も囲んでだ…つまり誘拐や尋問を嫌がっているということだ。君はどう思う?」
「ギノの護衛はしばらくいい…風見族と街に来た人畜の様子を見てこい。奴らは信用できなくな
ってきた。渡航制限も考えないとな。」
「噂だが食えば魔力が上がる果物が海外で流行っているらしい…魔力は後天的に上がる話は聞いたことが無い。それは身長が止まる時期があるのと似ていて鍛えて運用効率は上げれても出力の総量は上げれない意味だ…そんな果物は眉唾だと思うが…山羊男が現れてからそんな噂が出れば奴の関連性も脳裏に浮かんでくる…」
シュウノは風見族の思い出を思い出すのだった
「昔、魔族がシルバナを山火事にしようとして俺が戦った時があったんですがね。火事は神木の魔法ですぐに鎮火しましたけどいっぱい来た魔物は倒してピー太郎や風見族からは喜ばれましたよ。今は山羊男との関係が怪しいですか…なんとも言えませんね…」
街の様子を見るためにシュウノはカタム領主の部屋から飛び出していった
****異様な買い物
シュウノはカタム領主から教えてもらった観光客のツアーを発見し遠くから見ていた
それは子供の遠足のように夫婦やカップルの風見族が20人ほどの列で買い物を嵐のように行っていた
「この服はいいですね。人間様ですが風見族の体系にあわせてくださる?費用を払いますよ。」
別の客は店にあるバックをほとんど買い占めていた
「後でお土産に仲間に配りますから紙で包装しなきゃいけませんね。一番高いのを私の名前を入れてくださいよ。」
買い物のための馬車まで連れて来ている様子だった
「なんだ、ありゃ?大富豪でもあんな真似はしないぞ…どうしたんだ?風見族は森で素朴な生活をしていたはずなのに」
シュウノは近づいて聞いてみようと思ったが護衛の風見族に止められた
「すいません。我々のツアーの規定で会話はお客とはNGなのです。私でよければ聞いてください。なんの御用ですか?」
「何で急にこんな買い物を風見族の皆さんがしているのかなって…」
「最近、オリーブオイルを作り始めてですね。風見族も儲かっているのですよ。あなたは他人の財布の中身が気になるのですか?」
「偉く厳重な警備の買い物ですね?セレブでもここまで守られませんよ。」
「さっさと失せろ!客の邪魔だ!俺に色々聞くな、浮浪者が!昼間から暇なのか?」
シュウノは呆気にとられながらも距離をとり様子を遠くから見ているのだった
「こんなこと面と向かって言われたのは敵ぐらいだったな…事情を口で聞くのは難しそうだな。オリーブオイルで金持ちになれるのか?オリーブオイルは嘘だろ…」
シュウノは魔法の風魔法の風噂をアイテムコンプで発動した
“風噂”は特定の音を聞きやすくする風の魔法だがシュウノは風の魔法は扱えない
だが他人が過去にかけてくれた魔法はアイテムコンプで保存し好きなタイミングで行使が可能なのだ
「風魔法:風噂を発動!客の会話を遠くから盗み聞きをする…昔、ピー太郎にかけて貰ったストックが3回ほどある…」
正方形の結界に包まれた魔法を呼び出し結界が解け魔法が発動する
そんな中、客のうちのエミューの特徴を持つ風見族のムエハという男が農具を大量に買い込んでいた
ムエハは過去に呪詛の木をキャベツからコーヒー豆の木を改造してもらい提供されていた農家の一人である
「人間の農具も改良が進んでいますね。作業がはかどりそうですよ。コーヒー豆はもう廃業でいいですな。ふふふ」
「お宅は観光中でも買い物熱心ですなムエハさん。今日くらい仕事はいいんじゃないですか?」
「せっかく来ましたからね。取引相手も、もっと増えればいいですがあまり供給過剰になれば我々の仕事も終わります…適度に争いでも起きれば需要も安定するんですがね…」
「あまりしゃべりすぎですよ…こっそり言わないと護衛の人に怒られますよ。」
ツアーの先導役の風見族のウグイスの特徴を持つ女性が次の行先を告げて街の出口に向かっていった
「みなさん、次はビジ村に行きま~す。あそこは珍しい魚がいるのですでに注文して皆さんの到着に合せて新鮮なお刺身にしてあります。買い物の後はグルメですよ。」
ツアー客は護衛が人数を厳しく数えながら移動をしていった
「何か、よくない物を売り始めたのか?争いで需要が上がるもの?山羊男の仕業なのか?いずれシルバナは調査をしないと…シルバナを放置したせいかもしれないが偉い人も山羊男が怖いのもわかるし…救いようがない話だな…」
****人畜の様子
シュウノは風見族のツアー客がセアフスから出ていくのを見ると人畜の様子を観察することにした
人畜とは山羊男によって改造されてペットの特徴を持つ獣人の見た目の改造人間である
「なぜ人畜を街に送る?しかもカタム領主によるとセアフス以外では見つかっていないらしい…メイリアも山羊耳を付けられて逃げて来ていたが他の人にもやり始めたなんて…」
シュウノはカタム領主が人畜に提供された廃業したホテルを訪れて出入りしている様子を見ていた
「あの黒猫の男の人をついていくか…見た目は可愛らしいが歳はわからないな…この前の人たちは40代なのに10代後半にしか見えなかったしな…」
黒猫の人畜の男性は着替えてゴミ捨て場のゴミを集めて荷車に乗せていた
「すいません。仕事中に声をかけて…後で色々お尋ねしていいですか?」
「私に?前に尋問された時には話せる部分は全て話しましたよ。私達は話せる部分が限りがあるんですよ。」
人畜には人に構われたり世話をされると懐く本能とキャベツに与するアルガナ党の情報は喋れない呪いを組み込まれているがシュウノはそれを知る由もなかった
黒猫の人畜の男性と話していると風見族が近くを横切って店の近くでメモをとっていた
不自然にチラ見をしているように見えた
「なんだ?さっきのツアー客じゃなさそうだな。こっちをたまに見てるような…」
シュウノに気づいたのか風見族の男は店に入店して見えなくなった
「まさか見張ってるのか?なんとも言えんが他の人畜の周りも調べないとな…」
黒猫の男はその後、仕事の終わりに会話をしてくれた
「どうしたね?私は見た目ほど若くなくてね。こんな姿で仕事も変える羽目になったよ。言っておくが山羊男の話は憲兵にもうできる限りしたよ?」
「あの、その後はどんな感じですか?偉い人に頼まれて俺は人畜の調査でどう暮らしているか調べていましてね…」
「いい目には合わないね。若い女性に可愛いと言われるぐらいだ。みんな可愛いものや気味が悪いと扱うよ。人間扱いでは無いね。」
可愛らしい見た目と声とは裏腹に年季を感じるような話し方だった
「見て見なさい。この猫の尻尾を。寝るときに邪魔だよ。でも切る勇気もないね。自傷行為をしようとするとかなり恐怖を感じるよ。山羊の化け物は何がしたいんだろうね。」
黒猫の男のインタビューを終え別の場所にシュウノは移動した
次に犬のヨークシャーテリアの特徴を持つ女性が働くカフェに行き聞き込みをした
「いらっしゃいませ~。ご注文はいかがいたしましょうか。」
「すいません…後で話をお伺いしていいでしょうか?街の代表からの依頼で聞き込み調査でして…」
ウェイトレスは休憩中に応対してくれた
「何よ?金貰うわよ?100ルオン(日本円で1万円)ね?」
「あなたは人畜と呼ばれる存在に改造されたそうですがその後の周囲の反応とか困っていることはありますか?」
そう聞かれてウェイトレスは鼻を鳴らして答える
「私は顔が悪かったからね~。整った容姿になっていいこともあったけどキモイ目で見られるのも多くなってこまるわね。犬耳美少女が可愛いって言われてると最初は良くても嫌になるわよね。」
「おまけに客に優しくされるとなぜか安心感も湧くし…あの化け物、何しやがったって感じよ。まあ、私は良いこと悪いことのイーブン・イーブンだったけどね。美女になるのも結構、いい気分ではあったわよ。」
シュウノは次にパピヨン犬の耳を付けられた人畜の学生がいると聞き会いに向かった
「何だよ?俺に何の用だよ?」
学生は帽子で耳を隠して帰宅途中に声をかけ調査だと説明して質疑応答してくれた
「…俺は化け物に犬にされたんだぜ?学校ではからかわれるしよ…ようやく復学が認められたんだぜ?親からも泣かれたり怒鳴られたり人間も山羊男も最悪だよ。」
「周囲の人たちの扱いが悪いんですか?すいません。心苦しいならこれ以上は結構です。」
「偉い人に言ってくれよ。俺達は苦しんでいるって。この前なんか俺の母親が狂って俺にボールを投げて来たぜ?犬扱いで心が傷ついたよ。」
学生の話を聞き次第に人畜が社会に与える影響を危惧し始める
シュウノは帰り際にウサギ耳の女性が男に絡まれているのを発見した
「君?仕事に困っているならぜひ私のところに来なさい。私の名はリボバル。君のような美しい見た目の存在をステージに上げる仕事をしている」
「困ってないからいいですよ…」
シュウノはリボバルの前に立ち寄り
「困っているからその辺にしてくれ。彼女に関係があるんですか?」
リボバルは「チッ…これは失礼」と言い離れていった
(山羊男の力は素晴らしい。人畜は奴隷革命ですよ…クジ君と是非とも会いに行きましょう…)
「大丈夫ですか?変な勧誘か?乗ってはいけませんよ?」
ウサギ耳の人畜の女性は安心した様子でシュウノに振り向き
「ありがとう。あなたは確か有名人のシュウノさんですね?私もあなたみたいな人が近くいれば変な人に構われずに済むのに。」
立ち去る女性を見てシュウノは不安がよぎるのだった
「人畜を悪く扱う人間が出るのが怖いな…人畜を街に送って、テストするというつもりなら悪い奴がでるのを待ってるのかもしれない…」




