第49話:英雄が人畜を発見する
シュウノはギノが軟禁されている要人用の療養施設で護衛の仕事を請け負いカタム領主からも雑用を頼まれる立場になっていた
オーバルとトレッチと言う1等冒険者に機嫌をとりセアフスに留まらせるために結婚式のためにカタム領主から盛り上げろと指令を受けていた
「それで私は結婚式で何をすればいいのですか?」
シュウノがカタム領主に質問をすると
「君らが面白がるのは冒険者共を見ていた君の方が詳しいのではないか?だが君は芸が無さそうな感じだね。演奏もプロが呼ばれているだろうし…思い付きで白けさせても困るからな。」
「そうだ!カナヅチマグロを切ってもらおうかな?カナヅチマグロは知っているかね?泳ぎが下手で天敵がいない南国の海の島の周りのゆっくりした海域を一生ぐるぐる泳いでいる脂が多いマグロだよ。体のほとんどが大トロに近いらしい。」
かつての英雄がマグロの解体ショーをしろという現状に呆れながらも経験がないと困惑する
「すいません…マグロなんか切ったことが無いですよ…練習とかしないと無理ですよ…」
「私のツテに魚屋がいる。療養施設の貴族共に私がサービスで一匹送ってやる。それで魚屋から教育を受けて切り方を練習しろ…ちゃんとやれよ?1匹5万ルオン(日本円で五百万)もするからな…私の娘の結婚式の時も君に切ってもらうよ。それで講師代はチャラにしてやる。」
(なんじゃそりゃ…俺って魔王倒した有名人って意味で箔付けの意味でイベントに呼ばれるってこと?着ぐるみヒーローと同じだよ…)
****飼い主のギノの前で
ギノはクロスワードパズルをしながら食堂にいた。要人用の療養施設は食堂と言うよりは機能的なレストランのように見えた
そこにシュウノと板前の男がカタム領主が仕入れたカナヅチマグロの解体を指南していた
「すでに水揚げされた時に血も抜いて内臓は取り除かれてある。ここからスタートだよ。頭はザクッとやるんだよ。おい小僧?手が奇麗だな?俺は奇麗な魚みたいな肌が好きなんだ。切りたくなるから早く動かせよ?」
シュウノは指示に従いながらカナヅチマグロを切るがカナヅチマグロは肥満の魚のような体型でフグとマグロの中間のような体型だった
「こんな肥満のおっさんみたいな魚を俺が切るのかよ…とほほ、とはこのことだね…」
シュウノは特技の魔法を使ってみる
「筋肉の動きを整え、極限まで震えを無くしブレがない精密な動きを行う魔法:精緻動を使ってみるかね。俺もアイテムコンプだけ使ってここまでやってきたわけじゃないからね。」
しかし板前が汗を垂らしながら怒り狂い叱責する
「馬鹿野郎!魔法を使う気か貴様?手で覚えろ!魚に侮辱したら俺がお前の内臓を抜くぞ、フジツボ野郎が。魚は食われるために生きてる訳じゃないのに人間に食われてるんだから少しは気を使え腐れ消費者が…」
「すいません…あれ、俺って何している?山羊男を倒すために飼い主のギノに会いに来てマグロを切ってるってこりゃなんだ?俺はピエロなのか?」
シュウノは板前に怒られながらマグロを切るのだった
ザクッと音を立てながら不器用に解体していく
「頭を切るのには気を付けろ。骨ではなく関節を切るんだ。首は沿っている場合が多いからよく観察しろ。」
「カナヅチマグロは客には受けるが俺から見たら食材としては普通のマグロの方が良いね。普通のマグロは生きるために過酷な海を泳ぐからだ。小僧は練習が足りんが肉質が柔らかいカナヅチマグロが最初の練習で丁度良かったよ。明後日は普通のマグロを切るから練習して覚えろよ?」
ギノは他の患者に混ざってシュウノが切ったカナヅチマグロをパクパクと食べるのだった
「うまいが脂っぽくて何回も食うと気持ち悪いね。兄ちゃんは魚は切るのはどんな気分だい?」
「筋にそって切るのが難しかったですよ…これで山羊男なんか相手にできるのかな…」
「マグロを切っても化け物は相手に出来んだろう?いかれたのか小僧?生きてりゃ無関係なこともしなきゃいけないよ。俺を守るために立派だねぇ。諦めちまった方が良いかもよ?」
シュウノは野暮だと怒り
「このくらいで音を上げる気なら山羊男なんか最初から倒そうと思わないよ…マグロだろうが何だろうが相手にするよ…」
(妻も二人も家に来てるし…いまさらマグロくらいでひるむかよ。)
****嫌な奴らの結婚式
以前、ロジによるオーク狩り以降、度々シュウノの目の前に現れたオーバルとトレッチが結婚式の会場に来ていた
シュウノは魚屋の格好でカナヅチマグロを運び、カタム領主から預かった50万ルオンとシュウノの自腹の50万ルオンが入った現金ケース(日本円で1億円)を受付に渡していた
「カタム領主の使いとして来ました。これをご祝儀でお願いします。」
現金ケースを渡していると後ろから声を掛けられた
「兄さんじゃねぇか?聞いてたぜ?カタム領主から頼まれて今日、催しをしてくれるそうだな?」
それは結婚式の主役の新郎のオーバルだった
新郎の衣装も屈強な肉体に合わせて特注のようにも見えた
「魔王を倒したお前が来れば俺達が目立たないんじゃないかって不安もあったが流石にそれで出席者達も騒ぐほど空気を読まない野次馬でもなかったな。今日は来てくれてありがとよ。」
シュウノは会場を見て貴族や冒険者組合の強豪のような顔ぶれが多いのを感じた
「すごいね…1等の結婚式に街の有力者まで集まるんだ。」
「兄さんの結婚式もすごいかもしれないぜ?俺達はセアフスであげるがよ?目立てばいいもんでもないがね。ところで祝儀はカタム領主と兄さんで合計100万ルオンもくれたのかい?」
「カタム領主の機嫌取りは透けて見えるが兄さんまで俺達にしてくれるってどういうことだい?あんまり面識はなかったのにすごいじゃないか?1等は金銭感覚がおかしくなるが俺はまだマシな方だぜ?兄さん俺に恩でもあったか?」
カタム領主に半ば強要されたのはシュウノは伏せて話す
「1等になったのはオーバルさん達は今年でしょ?俺もセアフスに住んでるしオーバルさん達も住んでくれたらこれからの脅威に一緒に立ち向かえるかなって…オーバルさん達がセアフスで勝ち続ければ住民も守られるかなって…理由は複数だよ。」
「兄さんは住民を守る志はあるのかい?結婚式でこの話は野暮だが正直に言いなよ?知らない奴のために戦うなんて見たことないぜ?戦う時はそんなこと考えないだろ?冒険者は住民のためではなく自分の可能性のために戦うんだ。」
「じゃあ建前はやめるよ…俺は山羊男の飼い主を守る仕事をしている。秘密だよ?だからオーバルさん達がいると俺の仕事の今後にもよくなると思うんだ。納得してくれる?」
「兄さんは山羊男を追っているのか…兄さんの心に魔王を倒しても火は消えてねぇってことだな。応援してるぜ。俺達の実力も兄さんは認めてるってことなら嬉しいぜ。いてほしいって言われたら金を貰うのと同じくらいは気分がいい。」
「すまねぇ。あんまり相手に建前は邪魔だと言っても失礼だったな。俺も浮かれてるから大目に見てくれ。お祝儀は受け取っておくよ。俺も今度お礼をするぜ。俺はマグロを切らんがな。がはは」
シュウノはカナヅチマグロを奥の部屋に運んで会場のステージに置いた
「ちくしょう…50万ルオンも払ってマグロを切る芸までするのかよ…」
そうぼやいているとトレッチが歩いてきた
ウェディングドレスに着替える前の服装だった
「あんた来てくれたんだ。私らに前に言われて悪く思ってたと感じたけどマグロの解体ショーをしてくれるんだって?ありがたいわね。私は恩返しできることはないわよ?」
「ああ…マグロはカタム領主からの提供だけどね。カナヅチマグロは5万ルオン(日本円で五百万)もするんだって。俺が練習したから切るよ。」
トレッチはカナヅチマグロの顔を“バチッ”と音を立てて殴った
「え!?ちょっと何してんの?」
「カナヅチマグロは知ってるわよ。生ぬるい海で一生同じコースでクラゲや小魚を食い続けて肥満体で泳ぐ魚でしょ?雑魚の癖に現代まで生き延びで苛ついてね。まあうまいならいいけど見てたらむかついてくるわよ。」
シュウノはトレッチの考え方に興味が出たのか
「トレッチさんは弱い側の存在がなんで嫌いなの?」
「私の親は雑貨店をやっていてね。この街では無いけど私の子供の頃、貧困層が暴動を起こして地元の店をいくつも略奪して廃業に追い込んだのよ。住民なんてパニックが起きたら何でもするの。理由が無くても人から奪えるのよ。自分が弱いから免罪符にしてね。」
「だから生きる力を得ようとしないか自分から弱るなら迷惑する前に自分から死ねばいいの。結婚式の始まる前にする話でもないけど私は金が無くて高校も行けなかったわよ。」
「だからカナヅチマグロも弱者を演じて甘い汁をすする卑怯者なんか滅びればいいんだけどそうはならないわよね。弱くても生き残れるって意味?」
「でも私は住民のために戦うなんて御免だからね。山羊男と戦うにしても自分を守るために戦うわ。いくら住民が死のうと私のせいじゃない。」
弱い側とは何か疑問を感じトレッチに尋ねる
「それなら赤ちゃんはみんな捨てろと言ってるのと同じだよ。みんなエリートや頑強に生まれてくるわけじゃないんだよ。完全な生き物なんてこの星にはいないんじゃないのか?」
「赤ちゃんを捨てるのは現実でも起きてるでしょ?完全な存在がいるなら…そうね…山羊男になるのかな?あいつが人間より強くて完全ならあいつがやることは人間より正しいのかしら?」
シュウノは強い側が勝てばいいのは魔王の論理と反論する
「強い側が全部正しいのなら…人間がいる意味があるのかな?なんのために強い人はいる?守る側になるためじゃないか?」
「うーん…それって雑魚が強い奴の気まぐれやペット感覚で慈悲や庇護を受けるって意味?結局は強い奴の気分しだいよ。それは支配と大差はないわよ。羊を守る番犬次第って意味かもね。」
「あなたが魔王を倒した英雄なら悪くなれば魔王になれるって意味じゃない?番犬が狂犬になれば羊は死ぬって意味よ。それにあんたは強い境遇に生まれたなら弱い側なんか考えないか心境を理解できないんじゃないの?世間に聞き心地が良いことを言ってるの?」
シュウノは沈黙してしまったのだった
しかし…
「俺がどうなるか見ててよ…俺は多分、山羊男と戦うから長く生きないよ。俺が死んだ後で世間がどんな反応をするか見ててくれ。例えなじられても俺はそれでいいよ。強い側が正しいのなら俺は間違いかもね。間違えたまま生きるよ。」
トレッチは“立派ね”と手を振って奥の部屋に去って行った
「あんたが勝てばあんたが正しくなるかもね。間違いか正解かは力関係だからね。天動説が間違いなのに地動説より正しい時代があったみたいに。応援してるわよ。山羊男を倒したら私も助かるわ。」
シュウノはカナヅチマグロを見て未来を予感するのだった
「…魚は食われるために生きている訳じゃないのに人間が漁をして食べる…」
「だからカナヅチマグロを悪く言う権利は人間には絶対にない。今日は俺がさばくが山羊男が俺をカナヅチマグロみたいにさばくかもね…強いか弱いかの差で現実ができているなら俺は現実から背くよ…」
****結婚式に不測の事態の前触れ
結婚式が開幕し披露宴が始まった。
シュウノは魔王ノフィスを倒した後の催しを思い出すのだった
「新郎新婦のご入場です。それではどうぞ。」
司会が読み上げるとウェディングドレスを着替えたトレッチがオーバルと共に奥の部屋から出て来て出席者から拍手が響き渡っていた
会場から“おめでとう“と過去に何度も繰り返されたであろう祝辞の言葉が飛び交う中、シュウノが魚屋の格好でマグロの解体ショーを行う
「皆様、ご覧ください。本日、カタム領主様からカナヅチマグロという高級食材が送られております。この私、魔王ノフィスを倒したシュウノがマグロをさばき皆様のお口へ運ばせていただきます。」
シュウノは板前から習ったようにマグロをさばいていく
「カナヅチマグロの頭をまず切り落とします。マグロ包丁で骨の関節を狙って角度に注意しながら力を込めて切っていきます…続いて胴を3枚降ろしにしていきます…皆さんも良い時も悪い時も心が寂しい時はありませんか?そんな時はマグロでも食べれば元気になりますよ。」
出席者達は切り分けられるカナヅチマグロの切り身に釘付けで見世物としてかなり上手くいっていた
「そしてカナヅチマグロは脂がたくさん乗っています。筋に沿って切らないと奇麗な刺身になりません。細かく切ってお皿に盛っていきますよ。新郎新婦様から先にどうぞお召し上がりください。カナヅチマグロは体のほとんどが大トロのような肉質です。」
刺身にされたカナヅチマグロはオーバルとトレッチに真っ先に運ばれて食べて感想を言う
「うまいが何回も食うとやっぱり脂がくどいな。最初だけうまい…こりゃなんだ?」
「そうね。甘いものを続けて食うと気持ち悪いのと同じね。美味しいのも最初だけなのも変な話ね。」
新郎新婦はカナヅチマグロを美味しいと認めながらも大トロの脂っぽさに人が絶賛する状況が長く続いた結果をなんとなく感じるのだった…
出席者達の顔ぶれも素晴らしいと声は上がるがそこまでガツガツとはカナヅチマグロは食べていなかった
結婚式が終わりに近づいてシュウノはカナヅチマグロの頭と骨を片付けていた
「さて仕事は終わりだな。マグロを切るなんて考えもしなかったがいつかセイルとルナムにも食べさせてやりたいよ。」
オーバルとトレッチはブーケトスを終えて拍手を送られて部屋の奥へ消えていった
「みんな!俺達を祝福してありがとよ!俺達はほんとに恵まれてるぜ。」
シュウノがマグロの骨が乗った調理台を片付けていたころ異様な光景を目にした
トレッチが厨房の近くで謎の2人組とオーバルがいない場所で騒がしく話しているのを見かけたのだ
「なんで父さんと母さんが来てるの?家を出た後は一度も会ってなかったのにどうやって調べたの?迷惑なんだけど…しかも何で年をとってないの?」
「なんだ?トレッチさんが誰かと揉めてる…両親なのか?」
****山羊男の呪い
トレッチの両親と呼ばれる男女は十代後半のような見た目で帽子をかぶっていた
「お前がこの街にいると聞いて探して来たんだよ…結婚も勝手に決めて相談くらいはしてほしかったね。」
「話すことなんかないでしょ?今の私は金もあって泥棒もリスクを恐れて近づかない力もあり冒険者で稼ぐ地位も実力もある。親なんか巣立った鳥には必要ないわよ。何しに来たの?まさか、世間がお膳立てしている親子愛のつもり?」
母親と思われる人物が怒りに囚われていると諭す
「あなたは人を許せない性格になってるのね。でも悪人を見て自分も冷酷になっていいと開き直っても世の中にとって悪い存在に成り下がるだけよ。」
「そんな現実に意味のないことを言うために来たなら帰れば?世界平和でも成し遂げてみんなに言えば良い。私が悪さはしたわけではないのに何で文句を言うの?…それになんで私より見た目が若いの?化け物なの?」
その態度に父親らしい男が叱る
「相手に無理難題を言ってごまかすのは話し合いから逃げているのと同じだ。お前ができる範囲のことがあるだろう?その範囲で威張っているならお前は悪党の側だ。法で罰せられていないだけだ。世界の話を相手に振るのはお前の幼稚さだ。」
トレッチは苛立ち視界から消えろと怒鳴ってしまう
「結婚式に説教とか意味わかんない…あんたたちは私より弱いし金もないなら会う資格はないわよ。同じレベルの連中と仲良くやりなさいよ。石をひっくり返せばダンゴムシと蟻がいるようにね。私は石の下なんかわざわざ見たくないし立派な家に暮らすわよ。」
「あなたは無関心で困っている人を侮辱している。溺れている人に早く沈めと言っている。母親としてそんなこと娘に言って欲しくないのよ。」
母親に対して娘はさらにいきり立つ
「最近、首都のレセプトにゲートエリアがあるのは知ってる?金持ちが浮浪者や強盗を恐れて街の中に壁で囲まれた地区があってそこは豪邸が立ち並んでいるのよ?」
「人間が人間を下に扱うのはこの世の真理で世界がそれを望んでいるしみんな仕方ないって甘んじているの。世界の現実に文句言っても無駄でしょ?身分制度や貧富の格差はそれで説明がつくわよ。誰も理想なんて信じてないからそうなるの。」
「みんな自分の立場を守りたいから恵まれた側は独占的なの。だったら恵まれた側を目指すしかないでしょ?受験で落ちる連中がいるなんて受験生は気にせず自分だけ受かるように頑張るでしょ?それと同じよ。」
「そういや人口爆発とか未来問題があったわね?だったら愚かで無計画な弱小連中からいなくなればいいんじゃない?人生に辛いことが多くてやけになって問題を起こすのはそいつらだしね。人間もネズミと同じよ。」
父親はあまりに人道を無視した発言に頭を抱える
「なぜそんなことを言えるんだ?私は家でお前にそんな風に他人を見ろとは言ってないぞ?相手の境遇は考えないのか?」
「神様や権力者に文句言えば?それに私が根性無しや解消無しがい無くなれって言っても奴らは明日も無駄に生きているわよ。私が何言ったって現実には何も影響ないからいいでしょ?」
「知能が足りない弱者ほどすぐパニックや集団で騒ぎを起こす。金持ちやエリートはデモにも暴動にも参加しないしね。所詮は負けた奴らが何しても悔し紛れか迷惑にしかならないわよ。」
両親はため息をして
「わかった。では山羊男が人類を消す方に我々はすがるよ。それで強者とやらがいかに傲慢であるかわかる日が来る。」
両親は帽子を脱いで頭部を見せる
父親にはハムスターのような耳が生えており母親にはシマリスのような耳が生えていた
二人は山羊男により人畜にされていたのだった
「私たちは口がふさがれていて上手く言えないが山羊男は10年間、人畜と名付けた改造した人間の扱いを見るそうだ…私がいた檻の近くで会話が聞こえた。」
「それ以上は知らないが恐らく人間の内面を試しているんだろう。お前が強い者が勝つのが正しいと思うなら山羊男に負けて大人しく滅びるのを受け入れなさい。恐らく誰も勝てない。」
「母さんたちはね。セアフスに来る前に捕まってこんな姿にされて近くに帰されたのよ?検問は帽子を被って通れたけど他の人たちも続々と帰ってきているから人畜と呼ばれた存在はこの先問題になるかもね。今日は会いに来てごめんね。好きなようにしなさい。」
呆気に取られてシュウノは思わず心臓が動いた
「何だと?10年間試すって…魔人みたいに人間を消す考えもあるってことなのか?人畜って、あの動物耳の人のことか…とうとう山羊男が人間を相手にする気になったという意味だ…」
両親の様子にトレッチは怒りと混乱を抱えた様子で
「あんたたちは偽物よ!親を装った怪物よ!今すぐ消えて!山羊男が送ったならあいつを殺してやる!」
「それをすればお前は死ぬ。奴は戦いではおそらく負けない。お前は一人で魔人は全滅させれないだろう?奴はそれができる。わたし達をこんな見た目にもできる。お前は人間の枠の強者にしがみついているに過ぎない。」
両親がトレッチから去った後にシュウノは彼らの後を追っていった
****人畜との対面
シュウノは両親から山羊男に関する情報を聞くために尋ねた
「すいません…トレッチさんのご両親ですね?話を聞いていいでしょうか?山羊男に会ったんですか?」
「君は何だね?山羊男には捕まっていたがね。今から寝床を探しに行くから邪魔しないでくれ。」
シュウノは金を払いとホテルを紹介する約束で話をお願いした
「お金を払います。俺は山羊男を止めるためなら何でもします。」
「君は確か…魔王を倒したシュウノ氏だね?そうだな…わたし達は手持ちがあまりないから千ルオン(10万円)でいいなら話をしよう。」
「お願いします。教えてください。」
トレッチの父親は椅子に座り話を始めた
「会ったではなく捕まったのだ。若くて整った見た目にされて帰されたよ。若いころはここまで顔は可愛くなかったがね。手術の部屋にはモデルの絵が賞状みたいに飾ってあったな…テンプレートに似せて容姿を弄ってるのかもな。多分、君らに親近感や安心感を持たせるためだと思う。」
「私の他に捕まった人と会話していたが殺し屋が来たからお前らをどうするかは俺も決めるとも言っていたな。関係なくても攻撃されたなら自分も関係ない人間を相手にしても公平だとも言っていた…」
シュウノはため息をつき事態の深刻さを苦慮するのだった
「誰かが殺し屋を送ってキャベツを怒らせたんだな…最悪だ…」
「いや、奴のような怪物に刺客を送るのはどの国でもいずれするだろう。だが山羊男に人間が消されても文句は言えないよ。マンモスが人間が現れた時期に消えたみたいにね。」
「娘のような思想が世界で標準の流れなら人類に残る資格はないかもしれない。略奪を肯定する魔人と同じだよ。」
「一緒にカタム領主のところに来てもらえますか?俺が悪く扱わないように説明しますよ…人間に捕まって人畜を切り刻んだりして細かく調べたらキャベツにマイナス評価になるかもしれない…」
「マンモスみたいに滅びろって俺は受け入れませんよ…身内のためだとか人類のためだとか理由を考えるのはもう正直こたえました…例え山羊男が正義でも俺は間違えますよ…」
****ショックニュース
シュウノはトレッチの両親を連れてカタム領主に結婚式の報告を行っていた
しかしカタム領主の表情に違和感を出した
「なるほど。結婚式は上手くいってお祝儀とカナヅチマグロの解体ショーで新郎のオーバル氏は喜んだ…」
「しかし新婦のトレッチ氏は閉会後にご両親と揉めて不機嫌を起こした…なぜ両親を私に連れて来たのだね?両親なら最低でも40歳近くだろ?なんだ、この若造どもは?」
トレッチの両親は帽子を脱いでハムスターとリスの耳を見せた
そしてシュウノが聞いた内容を教えた
「山羊男が殺し屋を送られて激怒したらしくて…人間をこのように改造してセアフスに放してるそうなんです…どう扱われているか見るって山羊男が言ってたらしくて…」
カタム領主の顔は青ざめていき
「はぁ…はぁ…うあぁあああああ!! セアフスがやられる!みんな殺される!うぁあああああ!奴の尖兵か?やめてくれぇえええ!」
「がたん!」と椅子から転げ落ちてしまう
秘書が駆け寄り「落ち着いてください」と声をかけカタム領主は気を取り直していく
「はぁ…はぁ…大丈夫だ…それで山羊男が改造してそのふざけた見た目にしているんだな?なんのためだ?人間兵器ではないよな?」
トレッチの両親は山羊男が語っていた内容について話す
「我々に人畜と名付けて自分のテストを人間にさせるって言ってました。それで10年後に我々を戻すとも言いました。なんのテストかはわかりませんが…予想ですが人間の様子を我々を放り出して反応を見るという意味でしょうかね?」
「反応を見るだと?…どういうことだ?人間を調べるための社会実験なのか?」
「どの道、君たちはいくつか調べさせてもらう…拒否権はないぞ?」
シュウノは釘を刺す言葉を入れる
「キャベツは虐待された過去があると飼い主から聞きました。彼らに非道なことをすればカタム領主もギノさんと同じとキャベツに見られるかもしれませんから丁重に扱った方がいいと…」
「ゲホッ、ゲホッ…あまり私の心臓を悪くしないでくれ…確かに、それもそうだな…あの怪物め…厄介なことをしおって…」
(ラッキーナンバーを送ったせいでこうなったのなら私の責任になる…誰にも言えん心労が一つ増えたな…くうう…)
カタム領主は呼吸を乱して咳き込みながら両親の取り調べを衛兵に命じて方針を決めるのだった
「街に廃業したホテルがある…そこを買い取って、人畜とやらに住処を与えて監視付きで人間として扱うよう私の権限で法を作るよ…大勢、来られたら困るがな…」
「やはり山羊男は倒さねばならないな…ロジ・ジョットを国王に向かわせたが陛下がどんな判断をするか…全く最悪の時代だよ…ゲホッ」




