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第48話:山羊の飼い主を護衛する仕事

シュウノはセアフスの要人のための療養施設で山羊男が山羊の頃の飼い主だった男に面会をした後、あまりにも心無い返答が続いたため来た意味があるのか考え始めていた


ギノは施設の運動場に移動して患者たちのスポーツや馬に乗って飼育員と歩いている様子を見ていた

飼い主のギノはシュウノに説明するのをうんざりし始めてまとめの話をした


「兄ちゃん?その末期的な病状の頭で理解できるかわからんが話をまとめるぜ?」


・俺は山羊のキャベツを4年間は暴力を振るったり残飯を餌にしたりして虐待した


・俺がある日、蹴りをいれてひっくり返って痙攣したどうでもよくなってタバコを買いにいった


・キャベツは山羊男になって俺が干してた半ズボンを履いて噴水広場に行ったらしいがその後は見ていない


・俺はその後、尋問されて山羊男がどうやって生まれたかの原因の一つの調査資料の意味で要人用の療養施設に軟禁されている


「これで山羊男が俺のせいで生まれたと思うかい?当たり前だが虐待なんか世界中で起きてるぞ?なんならペットを飼うこと自体が虐待だよ。虐待と関係ない人間なんかいないんじゃないのか?」


シュウノは一つだけ違うと話す


「カタム領主やたばこ屋から聞いたがギノさんはタバコ屋で山羊男になったキャベツとは偶然鉢合わせになってキャベツはギノさんを恐れて逃げたという話をきいたよ。下手に情報を伏せるのはやめてくれ。自分以外が死んでいるってことを知ってほしい。」


ギノはへらへら笑い、ほくそ笑みながら仕事を例にあげる


「ぷっ…お前ら冒険者組合員のガキらだろ?密林に行ってパンサーに噛まれて泣きべそかく探検家がいるのか?お前ら自分から危険を背負ってるんだから同情なんか引くなよな?戦場のジャーナリストとかも同情してくれなんか言わないだろ?」


「化け物や犠牲が怖いなら俺みたいな市民として暮らしてればいいのさ。警官や軍人が戦いで傷ついても一般人よりは自分からそういう仕事だとわかった上だから同情なんかいらないよ。お前は自分から冒険者だろ?徴兵されたなら同情くらいはされるけど救いにはならないね。」


「メイリアちゃんが死んだのは俺が山羊を虐待したせいだと思ってるならお前はただのいかれた馬鹿野郎だよ。それに噴水広場にいた逃げた市民達は死ななかったんだろう?キャベツを襲ってお前ら死んだならお前らのせいじゃねぇの?」


シュウノはギノの話にストレスに耐えるが過呼吸気味で具合が悪そうな顔になり


「はぁはぁ…じゃあ、キャベツにみんな殺されてもいいのですか?たしかに俺は怯えている山羊男をギノさんみたいに笑ってみてましたよ…でもこれ以上は死人が増えているのに茶化している場合でもないでしょう?」


「おい僕ちゃん?今日は退屈しなかったからプレゼントをあげるよ?おい俺の部屋のゴミ箱を持ってこい。」


ギノはゴミ箱を看護婦にゴミ箱を持ってこさせると手紙がたくさんまとめて捨てられていた


「俺に手紙が山羊男が現れてから届いてね?戒厳令が敷かれていたのに山羊男に関係する手紙は俺に来るんだよ。3、4通は読んでやろうか?」


ギノは手紙をゴミ箱から取り出し開封して簡単に読み始めた


・あなたのせいで無関係な人が死んだ。魔人の次は我々だ


・死ね お前は悪魔を呼んだ


・ろくでなしの疫病神。街から出ていけ


・お前は死人の糞を食って生きている


・山羊と結婚して山羊男が生まれたからお前は山羊男の父親


「どうだ?セアフスの市民と俺はどっちがひどい?俺のせいにしたくて仕方ないらしいね。俺が山羊に虐待したなら市民達は俺を虐待していると思わないか?」


シュウノはケホッケホッとむせ始め


「ゲホ…」


とうとう吐いてしまった…



****英雄は無意味?


ギノは心配そうにシュウノに気にかけリタイアしろと言う


「僕ちゃんは奇麗なものしか見なかったんだろう?魔王みたいなわかりやすい悪者は残虐で陰湿なことは多分しないかもね。野望を語るかっこいい悪者止まりだろ?本物の悪なんてこんなものだよ。コソコソしてせこくて自分が安全な場所から攻撃するもんさ。」


「例えるならそうだな…弓や最近、注目されている銃がいい例だ。遠くからみんな安全に攻撃したいんだよ。言葉でも暴力でもな。」


シュウノは大丈夫ですと気を取り直しながら


「俺達は真面目にやっていたつもりでしたけど市民からどう思われているかはあんまり考えませんでした…みんな困ったり魔物を倒したら喜ぶ顔しか見てなかった…」


「シュウノ君だっけ?手紙くらいで吐くならままごとで出来レースみたいな戦いでもやってな?俺も魔王を倒した若造と話せて面白かったよ。でも内面は俺の山羊より駄目だな。言葉くらいで吐くんだから。魔物を倒して喜んでる奴らはなんだろうな?草むしりで喜んでるのと同じかもな。」


「でも僕ちゃんはマシな方だな?話の途中でキレてごまかしたり脱線する馬鹿もいるからお前はマシな大人になると思うぜ?多くはガキのまま大人だからな。」


「俺がマシ?どういう意味ですか?」


「ナマケモノって生き物は知ってるか?食い物を食っても消化できないで餓死する場合があるらしい。ガキみたいな大人がまさにそれだよ。時間だけ食って内面だけ痩せこけて死んでいくのさ。」


「大人の癖に子供向けコンテンツで大騒ぎする社会現象とかあるだろう?あれこそガキのまま年を食った連中が多い証拠だ。俺に文句を言う奴が多くなればそれに便乗する馬鹿も増えるってことさ。」


シュウノは話が山羊男からズレていることに気づき終わりにした


「わかりました…キャベツについてはもうこれ以上は知らないんですね?タバコ屋で出くわしたら逃げたのは本当ですか?」


「ああ…そうだな。俺もビビッて咥えたタバコを落としたよ。でもあいつは“めええ”と鳴いて逃げ出した。その後、虐殺を繰り返したって話だから何で俺を殺さなかったんだ?自分の力を把握していなかったのかな?」


「山羊男の話はいいか?こんだけ話せばいいだろう?僕ちゃんにアドバイスだが結婚は慎重にやれよ?しくじれば人生が壊れるから人選ができないと結婚しないほうがマシだぜ。」


しかしシュウノは決意を最後に言う


「明日からギノさんの護衛を引き受けます。俺もキャベツをなんとかしたいからです。俺は正直キャベツを倒す大義名分も無い。戦えばキャベツから見たら俺が悪に見えるだろう。」


「でもこの時代で止めないとこんな話もできなくなる世界になる。山羊男に殺される人が一人でも減るために働きますよ。あなたがそのカギの一つかもしれないなら俺が守りますよ。」


ギノは驚いた様子でシュウノを見る


「お前は俺が虐待したせいだって言わないんだな…なんというか人間は周りのせいにするダメな奴が多数派でマシな奴が苦しむもんだと思ってたがお前は苦しむ側になりたいらしい…立派だが無意味にすごいって褒められるだけだぜ?俺はシュウノを悪く思わねぇよ。久しぶりな気分だ。」


「兄ちゃんはなんでキャベツを何とかしたいんだ?殺される可能性が高いんだろう?メイリアちゃんのためか?キャベツをみて助けなかった自分を責めているからか?みんなのためは嘘だろう?俺は国民やみんなのためとか全部嘘だと思ってるよ。詐欺師はみんなって言葉を使う。」


シュウノはギノに目線を合わせて思いを語る


「俺は自分しか見てませんでしたよ…かっこいい自分が好きなだけのナルシストと変わらない。でも魔王と戦ってそれより強い山羊男には怯えて逃げるんじゃ結局、力の差で相手を選んでるって意味ですよ。噴水広場で見捨てた山羊男が死人を増やしたらなんだか…俺のせいみたいな気もするんです…」



****パシリ君に抜擢


シュウノが療養施設から出る前にギノの警備を任せられている衛兵を見たがとても山羊男の襲撃を備えた人材に見えなかった

ギノは中年男性だが守る者達も定年退職してガードマンの警備員をしているような衛兵だった


「どういうことだ?厳重な警備ではないのか?」


衛兵が近づいてきて話しかけて来たがその男は若干肥満っぽい体型だった


「明日から君が我々の下に来るんだね?なぜ有名人がここに来たんだ?ここにいる者は定年近い者や出世コースからズレた者達だよ。」


「元々、この施設は要人のための療養施設だから娯楽でも運動場でも何でもあるし外側も内側も警備も厳重だ。だから一人のおっさんの見張り位は我々で十分だということらしい。」


「山羊男ではなく怒り狂った市民がここにきてギノを襲わないように守る仕事だよ。若い君が来るような場所でもないよ。」


しかし話している途中でカタム領主の秘書がやってきてシュウノを呼ぶ


「シュウノ、カタム領主がお呼びだ。早く行け。」


シュウノは秘書が自分に対して敬語をやめたことに戸惑いを感じ


「なんですか?俺をカタム領主が呼んでいるの?」


「俺とはなんだ?カタム領主様の下になったら私の下と言う意味だ…言葉くらいちゃんと選べ、低知能め…」


秘書に悪態をつかれて立場を痛感するのだった


「わかりました…」


(つまり今まで内心から敬語を使ってた訳じゃなかった意味だね…表面上の態度からはわからないね)



****結婚式に行く指令


カタム領主はソファに座ってシュウノにお茶をついで持ってこいと命じた


「これは東の島国の“緑茶”というものだ。紅茶に飽きてね。外国から仕入れて買ってみたがこれが落ち着く味なんだ。だが君は入れ方が悪いから今日から私が呼ぶ日に備えて入れ方を覚えたまえ。」


シュウノはお茶の入れ方をカタム領主から文句を言われながら練習をさせられた


「まずお湯は葉が煮えないようにかけるのだ…いきなりかけると風味が悪くなる…」


(…俺は何をしている?ロジは山羊男を倒す旅をカタム領主から乗せられて俺は雑務?なんだこれは?)


ソファに座り新聞を広げて読みながら依頼を話す


「本題に入ろう。オーバル氏とトレッチ氏が結婚する。二人とも1等の冒険者だ。彼らはセアフスに残ってもらわないと困る。セアフスの冒険者組合でもトップ顔の奴らだ。」


「それで魔王を倒した君も結婚式に参加して盛り上げろ。私が頼んだと言葉も添えてね。祝儀も持っていけ。」


「君はすでにセアフスで一等地も国王から貰い賃貸収入を得ているし手持ちの資産も一千万ルオン(日本円で10億円)以上は持っているのは調べている。金で困らないなら恵んでやれ。」


「私は50万ルオン(日本円で五千万)を出すから君も余裕があるなら同じ額を出しなさい。」


シュウノは唖然とした


「え?仕事もして金を出せってどういうこと?月給が1500ルオンの仕事をして自腹で50万ルオン出せって狂ってない?」


「君は金ではなく山羊男に倒せる可能性を求めて来たのだろう?働く必要もない君が私のやり方に文句があるなら出ていけ。君も使えない男ということだ。」


「魔族とやりあってた時は混乱している時期で裁量を任せられてやり方を咎められない状況だったんだろう?つまり君は人の下で働く場合は一般人以下のスペックと言う証明だよ。」


「恐らくだが一般人が君くらい強くてちゃんとした組織の長が命令をして仕事をやれば君以上の仕事をみんな出すだろう。君は下働きが嫌で好きな仕事でやりたいようにやって褒められた社会経験が無い若造だよ。あまり言いすぎても酷だがね。」


シュウノはギノとの会話で慣れてきていたがお腹が熱くなる

それは腹が煮えるという意味であった


「…はぁ…たしかに、魔力が高い境遇の者は少数派ですよ…でも戦いに行くのは自分の意志です。」


「カタム領主様は戦う経験はおありですか?」


カタム領主は話に関係ないと思いながらも冒険者に苦言を告げる


「私の家系は国と民に仕える意味で子供は貴族学校卒業後には軍隊に入らされて5年はやめるなと言われる。」


「私は運動が下手だが衛兵も経験したよ。君たちは競走馬で言うなら走っても疲れない馬だ。それで疲れないことを褒められて我々のような野生馬よりすごいと自慢されても困るね。」


「所詮は君の覚悟など人間の範疇だ。なぜなら危険でも一般人から軍隊に入る者もいるからだ。自分の意志がすごいと思わないことだ。戦えば偉い訳でもない。バンジージャンプで勇気があると言われる程度のものだよ。」


「冒険者共は自分たちが希少だからと社会が優遇していると誤解しているか高を括っているね。たまたまそういう境遇で生まれただけなのに。オアシスに生まれて土地の権利を主張し水を飲みに来る者から金をせびるようなものだよ。自覚しなさい。」


シュウノはカタム領主に言い返せずに結婚式の話に戻す


「参加しますよ。結婚式ですね?オーバルさんとトレッチさんは優性論者みたいで正直、嫌いですけど祝儀くらいは渡しますよ…」


「連中の主義主張はどうでもいいよ。セアフスのために役立つなら私が奴らによく思われればいい。どうせ連中など金持ち止まりで権力は老後にはないからな。」


「だが山羊男のキャベツだけは私の恐怖だ…奴は権力も武力も通用しない…冒険者共でも紙の役にも立たないかもしれないが備えはどんな可能性でもすがるのが私の方針だ。君もそこはわかってくれるね?君を今回、招いたのは君の底を見るためでもある。君はマシな方だよ。」


シュウノはマシとはどういう意味か引っ掛かり聞いてみる


「俺…すいません。私が他の冒険者と違うとはどう意味ですか?」


「理由かね?魔力を使いこなす連中は上に立ちたがり下積みをする者がいることを理解しないからだ。優遇されてみんなが必要とされると思い込んだ自己愛者どもばかりだ。君は恐らく違うと思う。こんな仕事を任せられても逃げないからね。多少は男だ。」


シュウノはカタム領主に混乱して理解が及ばないのだった


(ロジには戦うようにおだてたのに俺には悪く言いながら教えるってどういう意味だ?嘘は俺には言わないって意味か?)


「シュウノ君の給料だがそれは私が衛兵だった頃の初任給だ。君も冒険者では5等からのスタートだっただろうが君はスピード出世で1等になったそうだな?便利な超能力でショートカットした分、こういう経験もできなかったということだ。天の采配だと思いたまえ。」



****帰宅後の妻たちの反応


シュウノは結婚式の説明を自宅に帰りセイルとルナムに説明したが反応がよくない

特にセイルが顔にしわを寄せるほど怒りを向けている


「山羊男に戦うための方針はいいでしょう…しかし給料に対して50万ルオンも祝儀をよこせって奴隷以下ですわ?今から殺しに行きましょうか?」


ルナムは制止を促し


「私が結婚するときに祝儀を貰えばいいではないか…しかし魔人だからこの国で結婚は誰も集まらんし認められんかもな。どうしたものか」


「あなたが結婚式などなくてよ?それより本気でそんな大金を持っていくのですか?」


シュウノは仕方ないと首をふり


「俺は一般人より金に恵まれている。富豪だと言っていいほど持ってるよ。1等の世界でも50万ルオンは3~4か月も働けば貰える額だ…貰った方もそこまで驚かないよ多分…」


「まったく…あなた少し流されすぎですよ?私に財産を少し任せなさい…運用も考えますわ…」


「頭が軽いセイルが運用すれば大損するのではないか?魔人も金の運用は下手な連中ばかりで無いなら盗ればいいという者ばかりだったから私が言っても説得力ないかもだが。」


「わたくしはルナムをいずれ殺しますから自分に保険金をかけた方がいいかもしれませんね?でも魔人は無理か…やくざ者扱いですからね。」


「俺は家でも落ち着かないよ…虐待されたとは違うけど心は針のむしろだね…」


「それはどういう意味ですか?わたくしが気に食わないのですか?1500ルオンでは3人養うなんて無理ですからね。あなたの貯めた資産で不労所得(資産運用で労働せず稼ぐ意味)を考えるしかないでしょう?」


「違います…すいません…金の扱いだが資産の半分はセイル達に任せるよ…無駄遣いはやめてね?」


ルナムは困り顔でシュウノを心配しながらセイルに話しかける


「私たちが揉めるとシュウノが早く死ぬかもしれん。ここは休戦として対立をさけよう。つまらん喧嘩はやめにせんとな。」

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