第37話:遭難確実の船出式
シュウノ:ハーレム主役だが魔王を倒した後は山羊男登場後に落ち目になる
ロジ・ジョット:シュウノの後輩で偶然、概念能力者になって山羊男を倒す手柄を狙う
ルナム:魔王の娘で山羊男に魔族を全滅させられたのでシュウノの家に来る
セイル:シュウノの家に住んでいる貴族ヒロイン
セアフスのシュウノの家にて
貴族の娘のセイルと魔王の娘のルナムが同居してかなり胃を痛めていた
「ルナム…俺のことどう思う?好きじゃない奴と一緒にいても君の幸せにならないよ?俺は世間が言うほど立派じゃないし、ちゃらんぽらんだよ…。」
ルナムは鼻で笑い、ほくそ笑んで
「それくらい、わかっておるわ。サイコメトリーで怯え切った山羊男を見捨てたのも見えたわ…あの時、助けておれば我らは虐殺されていなかったかもなー?」
「別に好き嫌いで来ていない。お前が一番、生存に有利だからここに来たのだ。それで子を成すのはいつがいい?今日か?」
セイルが声を荒げて
「あなた…わたくしを愚弄するのもいい加減にしてくれて?魔人の子供など人間社会からは居場所が無くてよ?生まれた子が不幸になるのが目に見えますわ…」
「よほど悔しいようだな?魔人の子は人間より強いから差別や暴力にはほぼ負けんはずだ。逆に血祭にしてしまうかもな。熊を相手にしていると思え?」
「シュウノ…父上は魔人の祖父と人間の祖母の間にできた存在だ。私が人間に似た肌色なのは人間に近い魔人だからだ。だから子も成せる。純粋な魔人ではないが私は魔族に広くいた血統主義でもない。」
「魔人の存続はお前に託してもいるのだ。目標は10人産んで育てる。間違ってもイテミスのような才能はあっても器がないたわけには育てん。頼んだぞ?」
ルナムがプレッシャーをかけるのでシュウノは口をポカンと開くのだった
「俺が魔人のパパって…しかも10人って…断れば山羊男を呼ばれてルナムがストレスを感じると絶滅石器という名前の隕石が落ちる魔法で街が滅ぶって…」
(俺って詰みですか?人生終了?状況が前門の虎、後方の狼とはこのことだね…)
(この時の私はこの状況がまだ序章に過ぎないことはまるで考えなかった…ここが一番苦しい時と愚かにも思ってしまっていた…)
セイルが鼻息を荒くし過呼吸気味で叫ぶ
「10人ですって?わたくしは20人産みますわ?シュウノ…わかっておりますね?」
ルナムが呆れ気味で
「物理的に無理だろ?お主は頭が軽いのか?貴族育ちで現実と夢の区別もできんのか?」
「キエェェェェェ!!口が過ぎますわ!わたくしがお前みたいな寄生虫に後れを取るわけにはいきませんわ!このゴキブリの卵は絶対に許しませんからね…」
「シュウノ?わたくしはその女と一緒にいるときはずっと見ますからね?子を作る時から生まれて育てるまでずっと見張りますわ?」
セイルに脅されてシュウノは心が折れるのだった
「ハーレムってこんなんだっけ?なんで俺はこんなに苦しむんだ?」
****パパになる価値がない男
「ルナム…俺は山羊男と戦うつもりだ…だから、10人は無理だよ…」
ルナムは驚いた顔で
「トレーニングしていた過去は見えたが本気で言っておるのか?言っておくがイテミスは風魔龍の力を得て父上を倒したお主たちのチームを遥かに上回っておったぞ?品は無いが実力だけは父上が稚児のように見える強さだった…」
「ロジャノとパリウスのコンビならイテミスと戦えただろうがイテミスは戦闘では愚かではないからロジャノの限界の2時間は長引かせる選択もできる。十分、イテミスが勝つ勝算の方が高かったはずだ。それなのにお主は山羊男に戦うのか?」
「ロジャノとパリウスにもイテミスにも及ばないのに?おまけにロジ・ジョットとか言う、とぼけた男に後れを取ってるのにまだ挑むのか?イテミスを殺した後に肉体的にはどの種族よりも強い魔人たちを半日もしない内に皆殺しにした山羊男とお主が戦うのか?笑い話にもならんな…」
シュウノはそうだと顔を向ける
「俺が山羊男をへらへら見て弱そうなモンスターと笑ってたら俺と似たような態度をとった衛兵が殺されてメイリアも挑んで殺されて風見族が助けにきて逆に風見族が殺されて…」
「次は、魔族があいつを刺激してルナム達を皆殺しにした…殺しの連鎖反応だよ…早く終わりにしないとキャベツが世界を壊してしまう…しかも悪いのは俺達のせいってこと?これでいいの?」
「山羊男が何を求めているかわからない…でも、やられたらやりかえすことをずっと繰り返してたら山羊男がすべてを殺してしまう…あいつは人間の業の縮図かもしれないよ…肯定しようが否定しようが消えはしない…」
「このまま、後輩のロジがキャベツを刺激したら俺達がまとめて魔族みたいに殺されるだろう…だからキャベツは俺が戦えるこの時代でなんとかしなければならない。例えキャベツに非がなくても放置したら人間の破滅だ…」
「正直、方法はわからない…トレーニングで勝てる訳もないけど方法を探すくらいはできるはずだ…一生の内に無理かもしれないけどそれをやるよ…」
ルナムがため息をして
「…ふん…男は捨てておらんようだな。無謀だが腰抜けよりマシだ…ならば今夜から子を成すぞ?お主が死んだら終わりだからな。今の内に覚悟するのだ。」
「え?今夜…?それはちょっと…」
魔王の娘が煮え切らないシュウノの態度に苛立ちを見せる
「山羊男には挑むくせに私には怯えるのか?そんな腑抜けた態度で奴に挑むなら必ず負けるな…負けた後で大衆からバカにされて犬死だと嘲笑されよう?」
「わかったよ…外へ行ってくるよ…また帰ってくる…」
するとセイルが引き止めて
「ちょっと?買い物に行って来てくださいまし…わたくしの子のおむつを買ってこい!」
****冒険者組合にかかるしわ寄せ
カタム領主は山羊男暗殺の依頼を頼んだラッキーナンバーから届いた渡り鳥の手紙を開き安心した表情を浮かべていた
「…頭と左右の肺と心臓の場所に矢が刺さって横たわった山羊男の写真と任務の報告書…流石だ…やってくれた…流石はラッキーナンバーだ…安心して眠れる…」
しかし、秘書がやってきて言いづらそうな表情で
「領主様…ラッキーナンバーことトーマス・ディスタントが両手両足と口を撃たれて死体で発見されました…手には“お前を探す”とペンで落書きが…」
カタム領主は理解不能な顔を浮かべて
「…え?…ラッキーナンバーが嘘をつくはずがない…つまり…山羊男は急所に矢を射抜かれても死なずラッキーナンバーを報復で殺し、私を恨んでいるということか?」
「…うあああー!…ヒィーヒィー…セアフスが消される!…待て、落ち着け…“お前を探す”と書いたということはラッキーナンバーは守秘義務を守ったのだ…山羊男が私を依頼主だと知ったらセアフスはすでに消されてるはずだ…そうなってないから大丈夫だ…流石はプロだ…依頼主は失敗しても不利にしない…」
「領主様、落ち着いてください!」
秘書の心配をよそにカタム領主は次の一手を考える
「ロジ君の場所を調べろ…それと博物館に“水心の盾“を差し出すように伝えろ…」
「ロジ君が城下町に出かける前にそれを渡し機嫌を取る…それと冒険者組合の2等以上の連中に集まるようなんとか説得しろ…彼らに餌をまいて防波堤になってもらう…はぁはぁ…」
「“水心の盾”ですか?あれは確か鱗清族から60年前にローディグ王国の当時のセアフスの領主がこのあたりの水源を征服した時に彼らの族長から戦利品として奪い取ったものですよね?ロジ氏に渡したら鱗清族から反感を持たれる気も…」
カタム領主は不機嫌そうに
「いいかね?飾っておくより現代で有効活用されるべきだ。それに若造は道具のルーツより機能しか興味が無い。黙って由緒正しいものだと言って渡す…」
「しかし、ロジ氏に任せてもラッキーナンバーの二の舞になる気もしますが…あのラッキーナンバーですら山羊男は殺せなかったのですよ?」
「そうだ…しかし、このままではセアフスに攻撃がいつ来るかもわからん…ロジ君の異能は間違いなく最強だ…全身を消すのも可能なはずだ…彼しかもはや切り札は無いはずだ…それに、嘆願書を書いた以上は国王様が許可をだす側だ。山羊男も私より国王様の方に責任を考えるだろう…」
****ロジ・ジョットはセアフスを去る
ロジとイグナとティアニスはセアフスを出る準備を始めていた
城下町のエリトクピ国王にカタム領主からの山羊男討伐の嘆願書とロジの紹介状を渡すためである
「イグナさんとティアニスさん。いよいよセアフスを出て城下町に行きますよ?」
「カタム領主から道中A級の魔物を何匹か仕留めた方が良いって言われましたからマイ・ルールブックの転送で行くのは無しにしましょうかね?それに僕が覚えている場所に送るって書いてもアバウトに飛ぶ可能性があってみなさんとはぐれる可能性がありますからね。」
ティアニスは不機嫌そうにロジに文句を言う
「この前、3000匹のオーク狩りの時になんで先に帰ったんですか?イグナさんから聞きましたがカタム領主に来いって言われたからって無責任ですよ?リーダーなら最後までいてくださいよ?」
「僕も一応、言いましたよ…でも山羊男が魔族を消したから緊急事態で終わった仕事に時間を割くべきではないって言われてつい…」
ティアニスはしっかりしろと叱責する
「あなたは冒険者組合の掟は知ってますよね?政治的なことに関われば私たちは除名されます。頼まれる側でも政治家の駒じゃないんですよ?癒着して免許を没収された人はたくさんいますよ?わかってますよね?」
イグナは“もうやめろ”と話に横から入り
「私もカタム領主に同行したからそれ以上はやめなさい。早くセアフスの外にいるメイリアに合流するわよ。」
(シュウノにも街を出るのは言いたかったけどロジの機嫌を悪くしても問題だし何ともいえないわね…)
ロジは気を取り直して
「せっかくの船出ですからもっと楽しくいきましょうよ?僕もリーダーの経験はほぼないからこれから補いますよ。山羊男がどれくらい強いか見たいですね…魔の山の跡地も道中見ときますか」
「…ところで僕、カタム領主が話してくれた神の産物の狼と悪魔の産物の山羊のおとぎ話の本を買ったんですけどね…後で聞いて欲しいんですけど…」
するとセアフスの門前にカタム領主が護衛と共にやってきた
「なんですか?領主様が自分から来られるなんて?この前、僕と話はしたでしょう?」
ティアニスは不信感を募らせてカタム領主を見ている
「ロジ君…君に言葉がけだけで見送るのは私としてもいただけない…所詮、私は安全な場所から君に危険な任務を頼む側だ…君には頭が上がらない気分だ…」
「だが、君はシュウノ君と違って私に対して言葉遣いもきちんとしている…決して異能が強い理由で思い上がらない謙虚な若者だと私は君を評価している…君は異能が無くとも立派な男だ。」
「せめてものだが私からも餞別を贈りたい。この“水心の盾”を受け取ってほしい。」
「詳しくは知らないが過去に鱗清族が私より2代前の領主に和平の証として渡したものらしい。君がそれを受け取りこの世に平和をもたらしてくれ。」
「水心の盾は念じると魔力消費もほぼ無く水の魔法の防壁を展開する盾だ。万能で無敵な訳でもないが心強い守りになるはずだ…私からの気持ちだ。」
「君には特別に教えるが、以前、腕利きの冒険者が急所を攻撃したが死なずに返り討ちに会ったらしい…念入りに全身を消すことを頭に入れておいた方が良い…倒しただけで油断してはだめだぞ…」
「君の旅の帰りを待つ。無事に山羊男を倒したらここに住まんかね?君は引退後にどうする?私の近くの席でよければそれもできる…すまない。今の話は余計だったな。頼む…君だけが頼りだ。」
ロジはもはやすっかりその気だった
「セアフスで一番偉い人が僕の見送りですか?なんだか手柄を上げる前によくしてもらいすぎて申し訳ないですね…風吹きの弓もこの前貰いましたし今度は凄そうな盾ですか…このロジ・ジョット、全身全霊で励みますよ!オホホ!オホホホ!」
ロジは水心の盾を快く受け取るのだった。その盾は盾と言うにはとても小さい皿のようだった




