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第35話:山羊男を暗殺成功の報告

今回の登場人物

山羊男:不満の化身で好物はタンポポ

ラッキーナンバー:権力者のために働くが固定客にしないアサシン

風見族:鳥型亜人

鱗清族:半魚人

山羊男のキャベツは天気が良い午前中にタンポポがたくさん生えている森のはずれの草原にいた。

そこは彼が望んだ暴力がない草原だった

そこに切株に座り読書をしながら小休止にタンポポの花を食べる

彼にとって望みが叶う時間だった


「…誰にも呼ばれないのは気楽だ…シルバナの連中は怒りより利益が重要なのか?…俺を追い出すなら絶好のチャンスなのに…。俺を利用したがっている連中はまだわかりやすいが…」


そう珍しく独り言を言った瞬間に珍しい草を発見しそれをむしってモグモグと食べている


「やはり肉より草が良いな…草は動物と違って悲鳴も上げない…苦しんでいる訳じゃないはずだ…草を食べても戦いにはならない…草は痛がるのか?」


「タンポポはこの世でも稀な完璧に近い存在のはずだ…誰とも争わず、仲間を増やし、力強く生きる…しかしタンポポが生えた場所には他の草は生えないから草も土地を奪いあってるのか?」


それを遠くから望遠鏡で見ている男がいた

カタム領主に山羊男の抹殺を依頼され狙う権力者御用達のアサシン…

トーマス・ディスタントを偽名にラッキーナンバーという通り名で活動する遠方からの暗殺者である。


「定期的にあの場所で草を食べにきますね…切株に座って読書を始めると30分は動かない…」


「的としては簡単すぎる…今日やりますかな。」


そう言ってラッキーナンバーは旅行者用の鞄を開けた。

中身はボウガンの部品が奇麗に枠組みにはめられて納まっていた


「さて、着席から3分経過…今回の依頼は頭と心臓と肺の場所を狙撃でしたな。矢の使用本数は4本。狙うポイントは左右の肺と心臓と脳天の4カ所…」


ラッキーナンバーは手際よく時計を組み立てるように特注のボウガンをガチリ、ガチリとネジを使わず組み立てる


「私の異能:スナイピオンをこのボウガンにかける…」


「ゾゾゾ」不気味な音と共にボウガンがサソリの外殻のような殻で覆われていく


そしてアーチェリー競技で使いそうな棒のような矢と矢羽がついた矢をセットするのだった。


「ガチン!」


「そして私の目に視力強化の魔法を使う…それは光魔法の“遠望“と呼ばれる。」


「…遠く、我が郷里、眼に恋しく望み…」呪文を読んで遠望(えんぼう)を発動する


「右目の視野は極端に狭くなるが遠くを見つめれる…風の角度は西風が吹いている。」


「風魔法:空知をつかい湿度や風の状況を細かく体感する…風速は4mくらいか…矢の位置を左側に少しずらして…」


「一人で2種類の属性魔法はあまり使う者はいませんが私は特化ではなく、あくまでスナイピオンの補助のために魔法は使う…魔法は体質や個人差で扱える種類が先天的に決まっている上に威力が高い魔法は熟練も必要だ…」


「職人の道具や剣の種類に似ていて色んな形の道具を使うと慣れないし感覚のズレが起きるからだ…だから一つの形に絞る…」


「私の異能:スナイピオンは私が飛ばした物体の直進性と貫通力と加速を付与する能力…」


「1本ずつ速度をずらして発射して4本同時にあたるように調整して素早く発射する…」


「パシュッ!」「パシュッ!」「パシュッ!」「パシュッ!」


早業で矢を装填して4本の矢は飛んでいく最中にぴったり並び、マラソンのゴールテープを同時に切るようにキャベツに命中したのだった


「ガッ!」


4本は全て突き刺さりキャベツは握っていた本とタンポポを落とした


胸の右・真ん中・左に矢が命中し、額に最後に放たれた1本が命中し横に力なく倒れたのだった…


「おや?…貫通して通りぬけませんでしたな…手を抜かず貫かなかったのは初めてだ…かなり頑丈なのか?しかし矢の長さの半分以上も刺さったから問題ないでしょう。」


ラッキーナンバーは遠くから望遠鏡がセットできる特注の写真機を使いその様子の写真を撮り渡り鳥の手紙にサラサラと終了日時と結果を記入する


「よし、これでいい。渡り鳥の手紙ができて報告もたすかりますな。」


渡り鳥の手紙を鳥の形にして写真をその中に包み、投げるとカタム領主に飛んで行った


「簡単すぎましたな。この前のトイレで見えにくかったエグニグ氏の方が大変でしたよ。」


その瞬間、ラッキーナンバーの近くの木が真っ二つに折れた


「バキャッ」


「な!なんだ?」


キャベツは起き上がり砲撃能力で歪んだ空間の弾を砲撃したのだった

その顔は歯茎をむき出しに食いしばり激しい怒りを浮かべる


「どうやら俺はどこにいても殺しに来る者が後を絶たないならしい…」


「今回は遠くからか…ぐぁああああああああ!!!!!」


激しい叫び声を上げて森がビリビリと張り裂ける音が鳴る


「この矢はお前が死ぬまでぬかん…」


キャベツの片目は山羊目から黒くて丸い瞳孔に変化し、徐々に小さな丸に大小広がり縮むように変化した。それはズームによる調整のようだった。


「遠くが見える…“望遠能力”を得た…お前も同じ目にあってもらうぞ…」



****恐怖の鬼ごっこ


キャベツは空に浮遊能力で浮かび上がり望遠能力でラッキーナンバーを見つける


「お前は奇麗に当てた…俺も連射はやめて狙い撃ちの練習をしてやる…」


山羊男のキャベツはデコピンの構えをした

人差し指の先が親指の付け根に近くに当て丸い輪ができるポーズである

その輪の中に歪んだ粒を発生させた


「ビシッ」そう指をはじくと歪んだ弾は放たれた


キャベツは銃撃能力から狙撃能力を派生させ望遠能力と併用するのだった


ラッキーナンバーは逃げながら空からの狙撃に恐怖する


「はぁ、はぁ、あり得ない…死なない化け物など…!!」


キャベツは怒りに顔を歪ませながらまっすぐ飛ぶ形を試していき最終的に小さなラグビーボールのような形に行きついた


「ビシッ!」そう何度も飛ばしてはラッキーナンバーを焦燥させていく。


「うぁああ!やめてくれ!こんな化け物はででたらめだ!」


キャベツは当たらないことにも苛立つが練習だと思い狙撃を繰り返す


「弾の回転も加えてみるか…お前が狙われたことが無いらしい…どんな気分だ?」


5時間ほど鬼ごっこは続いた


「ヒュン!」「ビシ!」


ラッキーナンバーの近くの地面に当たり冷や汗と恐怖で顔がゆがむ


「あああ!なんでこんなことに!完璧に当てたのに!」


最後はラッキーナンバーが足を前に出した瞬間に右足のふくらはぎに命中した


「ぐああ!」


キャベツは離陸してあえて少し遠くから話しかける


「お前はなぜ俺にこんなことをする?初対面だろ?お前を不幸にしたのか?」


「やめてくれ…もう狙わない…」


キャベツは理屈の嚙み合わない言い分に苛立ち


「お前が殺しにきて自分の命は惜しいのか?どういう意味だ?なぜ自分が死ぬのが怖いなら他人の命は同じように思わない?」


「人間はお前を恐れているからだ…お前がすべてを破壊するのを恐れて…私以外も続々とお前を狙う…」


その返事にキャベツは人間のやり方に怒りを見せる


「つまり、お前は頼まれたのか?俺が以前、返り討ちにした連中の逆恨みか?だったらお前はなんだ?どんな理由で頼まれた?俺がお前らを恐れたら誰でも狙っていいのか?」


「私のような者は仕事でくる…この世界で武器を持つ者は仕事で戦う…それは報酬や存在意義を自分で感じるためだ…他人から必要とされるためだ…」


キャベツはさらに質問を重ねる


「誰がお前に頼んだ?言え…存在意義を他人から言われたいなら俺がお前を必要だと思うか?」


「言えない…守秘義務がある…頼む、見逃してくれ…」


ラッキーナンバーは弱弱しく返事をするが


「つまり、俺にしたように他の者はそんな風に殺したくせにお前は助かりたいということか?」


「しかも、俺の質問には答えないのにお前の言うことは聞いてくれだと?お前に都合がよくて有利すぎるだろ」


「仕事と言うのはそちらの都合でなんでもしていいということか?それは大儀のためか?利益のためか?名誉のためか?」


ラッキーナンバーは相手に何も言い返せないことを聞くなと頼む


「見た目に寄らずまっとうなことを言うのですね…」


「相手の非を突いても自分が正しいことを言っているつもりにしかなれませんよ…」


「私も含めて人間は弱みや矛盾を抱えて生きているのですよ…あなたにとって正論を人間に言っても無駄ですよ…」


キャベツは聞いても無駄だと感じ始め


「もういい。どちらにしろお前らの都合だ…俺の言い分を聞く気が無いのに一方的に俺を殺したいということだな?」


「そのあまりの勝手さにはこちらが折れた気分だ…いいだろう…ならチャンスを1度だけ与えよう。」


そう言ってキャベツは狙撃で両手ともう片足を打ち抜いた


「バスッ・バスッ・バスッ!」


「ぐあああ!!」


「膝で立て…この辺にたまに行商人が通りさっき遠目で見たが今こちらに近い…そいつらに聞こえるように一度、大声で叫べ…」


「そいつらが気づいてお前のところに来たら見逃そう…10分待つ」


ラッキーナンバーは大声で叫んだ


「助けてくれ――ごほっごほっ!!」


キャベツは助けが来るのをしばらく待っている


ラッキーナンバーはもう一度叫んだ


「た、助けてくれ――――――――!!!!」


その瞬間、キャベツは開いた口に向かって指を放つのだった


「バスッ!」


「チャンスは1度と言ったはずだ…1度叫べと言ったのは聞こえていただろ?」


キャベツは矢を抜いて傷が治るのを待って浮遊でラッキーナンバーの死体を掴んで一緒に浮かびラッキーナンバーの手には「お前を探す」とペンで書き、行商人が立ち寄る馬の水飲み場に投げ捨てて帰宅したのだった


「お前を送った奴に見つけてもらえ。いつか俺が自力で見つけだしてやる…そいつはお前の倍はひどい目にあう…」


ピー太郎は双眼鏡で遠くから震えながら見ていた


「恐ろしすぎる…俺達が直接、手を出したらやはり終わりだ…暗殺は馬鹿の発想だ…」



****帰宅後の怒り


シルバナに帰ったキャベツはバロットを不機嫌そうに呼び出す


「…鱗清族の俺の支持者とお前の派閥を呼べ…人間どもの刺客が俺を狙った…仕事だからいいとぬかした…」


「…ならば、俺が仕事だと言えば何でも許されるはずだ…」


バロットはミミズクが怯えたように体を少し細めるのだった


「わかりました…」


(今日はかなり機嫌が悪そう…下手なことは言わない方が良いよね?)



****森の広間で全員集合


鱗清族と風見族のキャベツの支持者たちが集まる中、集合をかけた本人が現れた


「…人間には目をつむってきたが、魔人だけ消して人間だけ見逃すのは平等ではない…」


「まだそこまでされてないと見逃していたが今回、殺し屋が来たので宣戦布告の挑戦だと判断した…」


「俺は生まれた時より支配者からずっと生き地獄を味あわされた…お前らは俺を強者や勝者に見えるかもしれないが俺は生まれついての敗者だ…」


「その恨みはここで捨てる…そのかわり人間を試す試験を開始する。それは魔族と同じかテストするという意味だ。暴力や支配をしなければ気が済まない種族かどうか確かめたい。奴らは嘘つきで魔族以上にわかりづらい。」


「魔族は略奪や支配を堂々と名誉や誇りと当然と公言して強盗を肯定したから危険な種族として滅ぼした…人間は大人しい時期と殺戮を繰り返す時期が時代によってムラがあるから理由を知りたい…本だけで判断はできないからな…」


「支配しないと気が済まない種族だと判断した場合は即座に滅ぼす。たとえ善人とやらがいたとしてもそれは少数派で主導権を握れない無意味な存在とみなし例外なく滅ぼす。」


「ここからが重要だがそのテスト内容とお前たちの仕事についてだ…」



****人類存続テスト


「人間の内面を暴くテスト…それは人畜の扱いだ…」


「人畜とは以前、罰として俺が殺しに来た人間を家畜の特性を与えて改造した存在で年も取らず病気にもならず世話をしたり構う存在になつく本能を持つ存在だ…」


「そいつらを増産し街中に放流してどう扱われるかで判断する…期間は10年だ…」


「人間が改造された同胞を哀れみ救う態度を見せたら生存する価値があるとみなす。」


「人間が人畜を奴隷のように使い捨て虐待するなら滅ぼす。方法は人畜を過剰に増やすか俺が攻撃するかまだ考えていない。」


「そこで仕事内容だが鱗清族は俺が生まれたセアフスに出入りする人間どもを攫ってここに連れてこい。そしてぬくぬく恵まれて暮らしているペットも連れてこい。人間と揉めて戦いになったら俺のせいにしろ…不利ならお前らに手を貸して戦地での攻撃に参加してやる…」


「俺が調べ終わったらペットを生肉の塊にして持ってこい…遺伝情報や毛の質感を知るために必要だ…そして俺が人間を人畜に改造したらセアフス近くに放り棄てて帰せ…」


「風見族はセアフスでの人畜の扱いの観測を行い、レポートを俺に届けろ…データの公平性のため、ここにいない風見族も雇え…わざと俺が人間を高評価や低評価に見えるようにしたら罰を与え二度と飛べなくする…」


「それができたらお前たちの利益のために、いつの日か最大限働いてやろう…それは生存なり、土地なり、戦いなり、利益なりだ…協力してくれるか?嫌なら今すぐこの席から立ち去ってくれ…無理強いはしないが途中で嫌になってやめるのは無しだ…」


出席者たちは戸惑って隣同士でざわめきながら話をするがバロットが拍手をして…


「やりましょう!風見族も清鱗族もローディグ王国には力関係で下の立場です。いつも命令を聞かされ困ったときは捨てられる側です。これではまるで魔族と魔物の関係ではありませんか?」


「今回が、人間どもが我々、亜人の上に立つにふさわしい存在か測る機会だと皆さん思いませんか?英雄が魔王を倒しても王国の人間達が繫栄しても我々の立場は変わりません。」


「ローディグ王国ですら亜人の扱いは世界ではマシな方ですが人間が世界の主役であることを愚直に我々が肯定しても彼らが有利で機嫌がよくなるだけで我々は惨めではありませんか。」


「この際、我々に人間以上に手を貸してくださる彼にも恩返しとして協力し今後も持ちつ持たれつのよい関係を続けていこうではありませんか?」


一人が拍手をしだし、会場はつられて拍手が連なりキャベツが全員に顔を向き


「俺はお前らが俺を利用しようとしているのには目をつむる…今後、実験中はお前らのためにも働くし終了後もお前らが手を出さないなら戦わないことも誓う。暴力から守るためにも力を貸す…お前らの活動費用については後日また連絡する…それでいいな?」


「パチパチパチパチパチパパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ」


会場は満場の拍手で閉会するのだった…


ピー太郎は席の奥にいて冷や汗を流す


(人間達が暗殺者を送るのは当然だが完全に下手を打って裏目にでたな…人間に教えたいが下手に裏切ったら俺も山羊男に何されるかわからん…拍手してる連中も異常で人間も両方とも救いようがない…ロジの馬鹿が最後の希望だなんて人間側も終わってるぜ…)

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