第34話:寄らば大樹だが山羊は樹皮を食う側
森の街のシルバナにて
風見族は完全に分裂状態になった
山羊男に従う派閥と山羊男を憎むが先行きがない派閥だった
しかし外敵を退けるメリットがある山羊男に従うバロット派が徐々に優勢になっていった…
「おい?ラルエグ、話がある。いいか?」
山羊男を憎むピー太郎派閥が集まりを開く
「俺は、あえてバロット派に入り山羊男の行動を監視する。その情報を人間が有利に見せて人間と山羊男の戦いを煽る。お前たちは奴が弱る日が来た時のためにキャベツと戦うための準備をしてくれ。」
ピー太郎派の九官鳥の特徴を持つ女性の風見族の一人『ポーチ』が
「あいつは族長のあたしの父親を殺したの…仇をとりたいけど魔人にも勝てないあたしじゃどうにもできない…どうすればいいの?」
と声を漏らすが
「毒は絶対にだめだ。死ななかったら犯人捜しで俺達が殺される。恐らく暴力で山羊男を殺すのは誰にもできない。」
とラルエグが横に入る
「お前の言う通り情報を集めながら同士を育てよう。山羊男の存在を風見族の神木替わりにするなんて狂気の沙汰だぜ」
そう話しているとシルバナの入り口にある集団が迫ってきた
それは半魚人の鱗清族達である
以前、セアフスで人間の生活排水の抗議活動していた集団もそこにいた
****シルバナにやってきた半魚人達
「山羊男に話をしたい。おられるか?」
半魚人である鱗清族の族長のシャケの特徴を持つ老人がそう尋ねるのだった
「なんだ、今度は?何も起きない日がないな…」
とピー太郎が愚痴を漏らすと山羊男のキャベツが族長の屋敷からバロットと一緒に出て来た
「…どうした?戦争か?」
キャベツが鱗清族の族長に聞くと
「あなたが、世界の汚点である忌まわしき魔族を根絶してくださった救世主でありますか?わしは族長のクラスパと申します。」
「我々は、人間の排出する汚染水に生存領域を奪われ武力も彼らに負け戦うことすら叶いません…」
「そこであなたの傘下にいれていただきたい。ここで忠誠を誓っても構いません。」
キャベツは首を振り
「そういえば、魔の山にいた逃がした奴隷の亜人にお前みたいなのがいたな…そいつの情報か?」
「俺は誰の忠誠もいらない。くだらん王や魔王の組織ごっこはするつもりはない。帰れ…」
「俺は勇者や英雄みたいな大儀をもった戦士でもない…勝手な理由で殺しに来た連中をそいつらの掲げたルールで消しただけだ…」
クラスパは引き下がらず
「頼みます。風見族だけ優遇するおつもりですか?我々にもどうか慈悲を…」
と泣き落としをするがキャベツは
「慈悲とはなんだ?お前たちが人間から助かることか?」
「…確かに、俺はある日、ギノという男の支配者から力を得て逃げることができた。」
「お前たちだけ助かるチャンスがないのもおかしいからな…」
「先にしたのはどっちだ?お前らなのか?人間側か?どちらにしろ、わざと戦争に俺を巻き込むなよ?」
クラスパは近くに置いてくれと頼む
「人間とは仲が良い時代と悪い時代を繰り返しています…しかし最後は60年前に我々は農地開発のための水源争いを仕掛けられてローディグ王国に敗れ傘下の部族です…」
「私がまだ子供の頃ですが、その時の新種の呪い系統の魔法を水に流し実験と実用で大勢死に降伏しました。その日は人間の富裕層や支配者層たちはケーキに酒にパーティまで開きました…後は現代までローディグ王国に追従です。」
「シルバナの近くに大川があります。そこに住まわせてください。以前の風見族の族長には衝突の原因になると断れていましたが…」
キャベツは住みたいだけなのかと反応を示し
「誰も住んでいないなら勝手にそうしろ。それで攻められて戦いになったら俺を利用したいという意味だな?」
鱗清族の族長は頭を下げて頼む
「あなたの頼みは積極的に聞きます。どうか少しでも我々の苦しみを知ってください。」
「わかった…だがわざと戦いに巻き込むなよ?嘘をつかれても俺は怒らないが騙しの被害や損失具合で責任は取らせる…言うまでもないが風見族と進んでトラブルは起こすな…」
「おお、ありがとうございます。では川辺に移動しますので必要なときはお呼びください。」
それを見ていた鱗清族のネリモは顔をしかめるのだった
「人間に勝てないからと言って化け物にすがるのか…上の方針には下は逆らえんがこれも運命の流れだな…」
****山羊男にすり寄る者たちとメイリアの秘密
ピー太郎はキャベツがいる族長の屋敷に赴いた。バロットに会いに行くためである
「おい…バロット?この前、メイリアの見張りを俺に頼んだよな?ちょっと話をしてくれないか?」
「どうしたのー?君は山羊男に関わるのは嫌だって怒ったでしょー?ここに何で来たのー?」
ピー太郎は感情を表に出さず
「俺は現状に関してはお前の言う通りだと思う…神木が無い今、キャベツを戦力としてシルバナに置くしか風見族が過酷な世界のパワーゲームで生き残る手段がない…」
「それで俺もキャベツに寄る派閥にいれてくれ…お前は今、キャベツの秘書みたいな感じなんだろ?誇りを守って滅んで立派っていわれても惨めなだけだろ…?」
バロットはピー太郎をすぐに信用せず
「いいけど、ボク達の構成員とかの情報は調べないでねー。じゃあボク達の部屋に行こうかー。みんなに君が入りたいこと教えるからー」
そう話しているとキャベツが後ろから歩いてきてピー太郎たちを迂回して通り過ぎて行った
相手にどけと言わず避けて謙虚な態度で動物図鑑を片手に無言で通り過ぎて行った
ピー太郎は冷や汗が出るも呼び止める
「あの…聞いていいですか?メイリア様のことですが…」
キャベツは振り向いて「部屋に来て話せ」と言いながら風見族の族長の部屋に入った
キャベツは新聞や雑誌を切り取って集めたシュウノ達の活躍のスクラップノートを見せた
「こいつらは俺が噴水広場で襲われているときに出くわした連中だ…世間じゃ魔王を倒した強者で有名人らしい。怖がってる俺を見てへらへら笑っていたがな…英雄とやらは弱者を助けないらしい。」
「それでこの女は俺を最初に襲った兵士を自衛のために殺したら加勢しに切りつけてきた…」
「だから俺の家畜だった時の気持ちをわからせようと思ってな…剣でついた兵士の男も同じようにしたかったが頭が潰れててだめだった…以前お前たちに運んできてもらったから覚えてるだろ?」
ピー太郎は緊張で心臓が早く動くが質問を続ける
「メイリア様に何をしたのですが?ただ生き返らせたって意味じゃないですよね?」
「実験だ…俺は情報体を扱う能力があり色々、改造できる…」
「それであの死体に家畜の性質を与えた上で生きた状態に改造した…」
「俺は食らった動植物の情報も知れる…もともと山羊の情報は持っていたから実験してみた」
「俺は家畜の特徴を与え改造した人間を『人畜』と名付けた…奴らは自分の世話をして構う者に
なつき従う本能がある…」
「俺を痛めつけた人間どもには丁度いい罰だ…あの女は実験動物だ…いきなり俺を切り殺そうとした報いだ…」
ピー太郎はますます、おぞましいと思いながらもさらに聞く
「それでメイリア様を奴隷にして使うつもりだったのですか?」
「違う…人間どもが人畜をどう扱うかそれで見ようと考えていた…あの女は第1号だ…」
「俺は奴隷を扱う者には反吐が出るし必要ないからな…人畜の扱いで人間どもの本性や社会の性質が測れると考えた」
「人畜を奴隷として便利に使うか、それとも憐れんで救うか…」
「期間は10年だ…奴隷として扱うのが多数派と判断した場合は魔族のように消えてもらう…」
「人畜は年も取らないし病気にもならないようにできるだけ改造してある…実験の結果だが人間が人畜を救うという結果になれば人畜は人間に戻して俺は撤収する。人間の世界には二度と近づかない…お前らが望むならここにいてもいい…」
「実験開始はまだ予定は考えていない…人間を攫う必要もあるがまだそこまで俺は攻撃されていないから実験の理由もない…」
「今度、人間の奴らが俺に手をだしたら実験開始だ…ちょうど鱗清族も来たら人間どもを攫うように頼むか…風見族は人畜の扱いのレポートを俺に持ってきてもらいたい。俺に肯定的な連中だけ頼むのも公平ではないから迷っているが…」
「俺は人間という種族が俺をいたぶった飼い主の男と同じか知りたい…この話を口外したらお前も罰を与える。お前に教えたのは俺の頼みを何度か聞いたからだ。」
「滅ぼす案については魔族と同じ方法か、人畜の繁殖の世代交代で人間を減らしていく案があるがどちらがいいと思う?」
ピー太郎は身震いするのだった…
(こいつを放置したら世界の終わりだ…山羊に世界がぶち壊される…魔王のほうが断然ましかもな…)
バロットが良い考えですと相槌を打ちながらスケジュールを読む
「キャベツさんの実験はいいと思いますよー?これで人間どもの底の浅さや慈悲があるか測れると思いますよー?でも人間はこの実験で脱落するでしょうねー。」
「奴隷を使う国は世界にはまだありますからねー。ローディグ王国は奴隷禁止ですけど人畜みたいな便利な連中がいたらきっと欲望むき出しの猿になりますよー」
「滅ぼすなら人畜の繁殖での世代交代がボクはいいと思いまーす。殺すと可哀そうだからでーす。」
(人間の領土も風見族の物になるし人畜もなつくならボク達の手先につかいやすいよねー。ラッキー、人間さんありがとう。自分から山羊男に嫌われてくれてー)
「ボクのアイディアですが人畜の本能は人間どもに教えた方がいいですよー?それなら自覚した上で奴隷扱いしてるってわかりますからー」
「明後日の午後に風見族の農家の代表があなたに会いたいそうです。面会は予定を入れていいでしょうかー?」
キャベツは人畜の情報を人間社会に教える案を聞いて
「確かにそうだな。ある程度、人畜の情報は実験開始と共に人間どもに教えるか…」
「バロット…その農家のいる場所に一緒に行くぞ…ここで話しても状況がわからんから農家の代表にはこちらから向かうと今から伝えろ…俺は森で草を食べに行くから今日は夕方まで帰らない…」
ピー太郎はキャベツにある申し出を頼む
「あの…定期的に報告しますからメイリア様の監視をしていいでしょうか?私が人畜の扱いについて調査をいたします…」
「それで…報酬とかありますか?ただ働きでは飢えてしまいます…」
キャベツは考えたように山羊耳を動かし
「お前がバロットの下に来るならそれが仕事でもいいかもな…1号の様子の監視を頼むか…」
「…風見族が金で困っている奴が増えているらしいな…問題を調べて対策を考えるか…報酬の話は後で話す…それまではシルバナにいろ…」
バロットは「わかりましたー」と答えて退席し、ピー太郎はキャベツの狂気には恐れながらラルエグ達に報告に向かうのだった…
「付き合いきれん…あの化け物は間違いなく破滅の化身だ…」




