第30話:敗者を余計に増やせば
カタム領主は大満足でオーク狩りの様子を魔法の望遠鏡でみていた。
「ロジ・ジョット…かつてない異能で間違いなく私が知る中で一番だ。かなり危険だが頭はキレないからイグナ君に子守をさせれば十分扱えるだろう…」
「あの数を犠牲無く200人で終わらせるのは記録的だ。オークを始末した冒険者たちにも組合によかったと声をかけておけ…」
カタム領主は秘書と話をしているとロジとイグナが領主のところに来た
「終わりましたよ。どうでしたか?終わったらここに来るようにと言われておりましたが。」
カタム領主は拍手をしながらほほ笑む
「見事だった。しかし、新魔王イテミスは凄まじい力があるらしい。君でも対抗できるかわからないから仲間と達と一緒に引き続き協力して立ち向かって欲しい。」
「大丈夫ですよ~。今回みたいに新魔王をやっつけますよ。山羊男より新魔王の方が貫禄ありますしね~。」
しかし兵が大急ぎで馬で走ってきて重大情報を伝えにきた
「カタム様…緊急速報です…新魔王のイテミスと魔族が山羊男に皆殺しされたと…しかも魔人の女子供も問答無用で爆撃で殺されたと」
「…魔の山にいた魔人に使われていた奴隷を開放して救った後に魔人を虐殺したそうです…助け出された奴隷の話です…」
カタムは口を開けて絶句して
「なんだと…ま、まずい暗殺者を送ってしまった…もし失敗してばれたらセアフスが皆殺しにされる…彼が失敗するとは思わないが…キャンセルすべきか…?」
ロジは“え?”と困った顔をして
「山羊男が魔王を倒した?しかも魔人も全殺し?なんですかそれ?嘘でしょ?」
カタムはロジに視線を移し
「ロジ君、もはや君しか希望がない…ここまでの怪物だと私の権限では君を戦わせれない…国王陛下に紹介状を送るから君が山羊男のキャベツを倒してくれ…頼む…」
ロジは呆然としたが態度を切り替え
「山羊男を倒せば世界は救われるんですね?やりましょう!元々、山羊男を探しにセアフスに来ましたから本望ですよ。魔王が雑魚なのか山羊男が強いのかわかりませんがね。」
「しかし、魔人を皆殺しって血も涙もない怪物ですねどんな勇者もそこまでしませんよ。詳しく聞かせてくださいよ。僕は山羊男に詳しくないんですよ。奴隷を助けるって悪者じゃないのかな?でも皆殺しは魔人にしてるし…」
カタム領主は一緒に帰ろうと馬に乗り
「詳しくはセアフスで話そう…今は気分が悪い…」
「戦える者たちにキャベツの危険性を教える必要がある…下手に手を出せば巻き添えだ…まさかこんな怪物になるとは…」
「ロジ君とイグナ君と私たちで先に帰るぞ?」
ロジは疑問を感じカタム領主に聞くと
「え?皆さん置いて帰るんですか?僕とイグナさんがカタム様と先に?」
「まだオークが残ってる可能性もあるからだ。魔王を倒したチームのティアニス君に任せて200名の冒険者達は兵站のキャンプに野宿させて明日帰らせよう。」
「私たちは早急にセアフスに帰る必要がある…」
「君はオークごときより山羊男をお願いしたい…」
イグナは不満そうに
「リーダーが先に帰るのはどうなんですか?」
と聞くがカタム領主が面倒そうに丸め込む
「確か、魔王を倒したシュウノ君もいる。ティアニス君もいるから何かあっても問題はないはずだ。優秀な戦士達は多数いたからな。今は早急に緊急事態に対応する必要がある。君たちは貴重な人材で時間の価値も高い。だから時間と人材の適材適所だと思いたまえ。」
カタム領主たちは要人のための馬車にのり先に帰るのだった
****ティアニスの夢
オーク狩りの冒険者の怪我の治療を終え
兵站の仮のテントの野営地で仮眠をとっていたティアニスは不自然な夢を見ていた
「…止めろ…ロジ…ジョットを…止めろ…このまま…やぎ…に会わせる…な」
それはライオンの顔が浮かんでティアニスに向かって話しかけているのだった
起き上がって回りを見渡すが変な夢かと安心する
「夢まであの馬鹿を心配するなんて…ロジも悪夢みたいなもんかもしれませんね…」
仮眠室から治療の手当のためのテントに移動するとシュウノ
「いま、空いてるか?話があるんだけど…」
「シュウノさんも参加してましたね。イグナさんから聞いてましたよ。」
シュウノはロジが心配だとティアニスに伝える
「ロジはインチキじみた異能だよ。あれじゃ同じ条件ならみんなやりたい放題できるよ。」
「でも、あのままキャベツに戦えばイグナもティアニスも巻き添えで殺されるよ。心配でいつも不安になる。」
ティアニスはわかりきった顔でシュウノを見て
「私もそれくらいわかりますよ。ちゃんと見張ります。最近、問題がおきまして…」
「ロジの糞畜生がメイリアさんを連れていきたいと駄々をこねてですね…」
「しかも、メイリアはロジに不自然に心を開いてるんですよ?どう思います?」
シュウノは不気味な寒気に襲われた
「メイリアは親父が厳しすぎて男性不振だったよな?家が剣士の名家で妹が継ぐからって追い出されたって昔、言ってたし男に自分から話さなかったよな?」
「ロジに短期間で心を許すわけないよな?嘘も嫌いな性格だし…」
ティアニスはイグナとの方針を説明して会話を終えた
「不本意ですが同行を許そうと思います。メイリアがあの化け物に何を細工されたか見張る意味もあります。私は山羊男を許しません。どんなに虐待をされて人間に非があろうとも山羊男の好き放題は許されません。」
「そうだけど、勝てる要素もないしロジの見張りもメイリアの見張りも問題だらけだよな…」
「ほんとですよ。全部、ぶち殺したい気分ですよ。」
ティアニスに怯えてシュウノは仮眠をとるのだった
****盗賊と知性あるオークの逃亡
ロジ・ジョットが率いる冒険者達により壊滅したオークの集落より逃げ出した知性があるノーマルオークのウードは盗賊のクジと別の集落の100名程のノーマルオークの群れに移動をしていた
「お前、弟いたのか?兄弟仲いいのか?」
そうクジがウードに聞くと
「嫌いだよ。俺の事、しばらくしたら俺を忘れるし普通の馬鹿なオークだよ。だが弟だから死にそうな目にあいそうなら助けたいだろ?だが『ユーリ』と呼べば振り向くから呼べばすぐこっちに来る。」
「比較的に前の集落の近くにいるからあの冒険者達の馬鹿どもの点数稼ぎに殺されたら目に余る…」
クジは「お前は人間に生まれてりゃ…いや俺も人間なのにこんな立場だからお前と同じか…」と声をかけ二人は向かうが…
ウードが集落を見つけて肩を落とした
そこにはオーバルと鞭を使う鋭い目の女性の冒険者がノーマルオーク達を屠っていた
「黒鉄城・発動!今回は魔法の怪力乱心までは使わなくていいな…肉体強化魔法は下位の血肉湧踊で十分か…」
「おい、トレッチ?今、夕方だよな?他の連中は今日、野宿だから帰る前に競争だぜ?」
オーバルは両手で大剣を握りノーマルオークを小枝のように切り裂いている
トレッチと呼ばれた女性は鞭を縄跳びのように高速で振り回しオークを引き裂く
「ヒュンヒュン」とキレイな弧をヨーヨーのように描きながら振り回すと
オークにあたり「バチュッ」という肉を割く音が鳴る
それは体操選手がリボンを振り回す様子にも見える見事な扱いである
「私の異能:マシュマロテストを鞭にかける…それは影響を与えた物体を柔らかくする。つまりオークを柔らかいプリンやゼリーのように引き裂く意味になる…」
「硬いものほど何度か当てる必要があるが…ノーマルオークくらいならすぐかかる。」
マシュマロテストはハムスターの形をしたマシュマロのような思念体であり握った鞭の上に浮いている
「動体視力を強化する魔法『脅視』を自分にかけ鞭には柔らかい物やしなる物に筋力の特性を与える土魔法の『粘動』をかけ私が振る技術に加え鞭の軌道もコントロールする。」
オーバルは今日の集落を制した戦いに不満げのようである
「ロジの坊やは作戦じゃねぇ。ただ便利な道具を使っただけだ。緩すぎて戦いにもならん。こいつらで少し遊んで帰る!」
トレッチはまったくだと呟きながら鞭を振るう
「あの、小僧は異能が強いだけだよ…異能の強さをひがむのは冒険者としては無意味な行為だけどあのガキのやり方と周りの持ち上げは納得いかないわ…」
そしてウードの弟の『ユーリ』がオーバルに殴りかかり魚のアジの開きのように大剣で切り裂く
「ザクッ」という音と共に左右に切り分けられて死ぬのだった…
続けてトレッチが左右に開いて地面につく前に鞭で叩いて細切れになった
「おい!俺の前で散らかすなよ?服が汚れるだろ?いたずらか?…チッ、倒すスピードではトレッチには勝てんな…」
「私が狙ってたのよ。のろいあんたが悪いのよ。汚いのが嫌なら帰りなさい。」
クジはウードに透明化魔法をかけ直し
「おい…ご愁傷様だが飛び込むなよ?自分から死ぬほどつまらんことはないぜ?」
「ああ…わかってるよ。オークは人間も家畜も食うから人間にやられても仕方ない…さっさと山羊男に会いに行こう…」
そう言って二人は立ち去っていった




