第25話:歴代魔人中、戦闘では最強の異能
魔の山にて ※魔族(指導者層の魔人達の拠点)
ルナムは檻から出て魔人たちと山羊男とイテミスの戦いを見ていた
「あのたわけが押していたのにどういうことだ?山羊男の噂が本当なだけでも驚いたがイテミスが純粋な徒手空拳で負けたことは無かったはずだが…父上もそこは武人として高く買っていたからな。それをイテミスが自分から幕引きにするとは…」
不安になるルナムに魔人たちがイテミスが負ける訳がないと申し上げる
「ルナム様?イテミス様はまだ体術だけしか見せてません。新人がいきなり黒帯に太刀打ちできるほど甘くないですよ。単にあの山羊が馬鹿力なだけでしょう?」
ルナムは山羊男が魔族に敵意を向けることを恐れるのだった
****岩場の土地での山羊男と魔族の代表
山羊男のキャベツと新魔王のイテミスが激しく戦いを繰り広げ1ラウンド目が終了した
キャベツは2ラウンド目に移る前に問いを投げかける
「お前は俺をタコ殴りにしたが、まだ俺はお前に3回しか攻撃を当ててないぞ?もう1回戦目は終わりか?」
「別に構わんが…お前は風見族の神木を盗まなくても十分、人間や他の魔族とやらより強いだろ?」
「お前は自分に何が足りないと思い欲しがる?自分より強い者が現れる恐怖か?」
「動物で言うなら肉食動物の大型化だな…多くは図鑑では現代までに滅びたと書いてあった…」
イテミスは不気味にほくそ笑みその通りだと笑い捨てる
「ふふふ、誉め言葉として受け取ろう…貴様の言う通り確かに俺様は風魔龍の力などなくとも他を超越している。だがそれだけでは足りぬ。魔人を上回る龍族ですら滅びたのだからな。」
「俺が求めるは揺るぎ無き永遠かつ絶対の力を持つ存在よ…生きる者はそれを神と呼ぶ」
「この世の者は神の許しの元でのみ生きることが許されるのだ。現代でも神に背くものはそういないだろう?そして俺はその座にいずれ座る資格と才がある…」
キャベツは神の言葉に興味をもち
「実在が確認できない者を絶対の存在と呼ぶ理由はなんだ?他人の生存権を握る存在が神ならば俺にとっての神は俺の飼い主と言うことか…」
「話を聞いて魔人の考え方がなんとなくわかってきた。強いものが神や王だと考えるということだな?それで風見族の神木を欲しがったのなら理由は分かった。」
「龍であれ神木であれ強い存在にすがる点では風見族も魔族も人間も同じだ。どちらも俺に牙を向いた迷惑な存在でしかない。」
「魔族が人間と違うのは奪うことや求めることに正直すぎる点だ…人間は騙しも使うから正直なお前たちとどちらがマシかとは言えないがお前たちはわかりやすい…コソコソしたり正義を掲げて暴力や嘘を正当化する人間よりは多少マシかもな…」
イテミスは神について信じがたい話をした
「神は実在する…龍を作ったのが神だからな…龍自身がそう記録に記した。最も強い種族を神の力の限界として試すために創られたとある…眉唾と言われても仕方ないがな。龍の存在とはつまり神の力の証明と傑作であり天使なのだ。」
キャベツは耳を悩んだように動かしある答えを告げる
「神は永遠ではない…お前たちがすがる存在が神ならば、すがる者が死ねば神もいなくなるということだ。つまり人間や魔族の戦争は犠牲者の数だけ神を殺していることになる…」
「お前たちは神とやらの力が欲しいだけだ。それを安心感だと信じて…強盗のくせに安全席や特等席が欲しいだけだろう?」
「おそらくだが、神とやらの立場を得ても今と似たようなことを繰り返していると思う…」
「なぜなら神木とやらを手に入れてもお前は現に戦争をしたがっているからだ…」
イテミスは「屁理屈を…」と顔をしかめるがキャベツは続ける
「人間はジャイアントモアという鳥やフクロオオカミを無害なのに滅ぼしたらしい。風見族もシルバナにいた鎌爪虎という小型の虎を不必要な狩で滅ぼしたらしい。」
「だから人間や風見族が魔族に滅ぼられようと俺はどうでもいいし、同じように狩られて滅んでも仕方ない。だが俺に弓を引いた以上は全て死んでもらう。」
「家畜を扱う側を家畜が滅ぼしても扱う側は文句を言えないということだ…だから山羊である俺がお前たちを根絶やしても、なんの咎も無いな?」
イテミスは「それは叶わぬ、さっきはお遊びだ。勝った気になっても困る。」と余裕を見せた
「さて、第2ラウンドと行くとしよう。うぬは学者気取りのようだがやはり、ぽっと出よ…」
「理屈をこねればその程度は人間の学生でも言えよう?」
「よいか…?どんなに理屈や理想を言おうと積み重ねた歴史や社会があるのだ。それは金なり武力なり文化なり、時代や流れに逆らえる者はいない。そして貴様にとっての超えられぬ壁がこの俺様だ。」
****第2ラウンドの開幕
キャベツは始める前に勇者について話した
「おそらく、人間に勇者とやらはいないだろう?お前が生き延びているのはお前を倒せた者がいないからだ。お前みたいな危険な存在を人間が手を打てるなら放っておくわけが無い。」
「ふふふ、左様だ。誉め言葉はうまいぞ?部下にも真似してほしいものよ…」
イテミスは折れた肋骨を瞬時に再生させさらに背中から蜘蛛の足が8本生えてくる
「俺様は魔物を吸収しその特性を自身で再現と復元と強化が可能だ。さらに組み合わせもな。俺様はこれを”スキルツリー”と呼んでいる。まさに生命の樹の図のような進化を現す異能…」
「これは馬の走力に匹敵する“地這蜘蛛“(危険度C)という象の大きさ肉食魔虫)の足よ…」
さらに蜘蛛の足の先端から注射針のような太い針が伸びる
「この針は飛ばない巨大な蚊、“牛食蚊“(危険度D)という魔虫のくちばしだ。強度は並みの魔法の槍以上にある。さらに唾液は肉を溶かす強力な毒ありそれで獲物の肉を溶かしながら吸う危険種だ。」
「組み合わせに恐怖したかな?さらに、例え落ち葉が大量に舞っても全てかわして間を通り抜けるという“密林魔豹“(危険度B」という魔獣の動体視力も俺様に追加する。」
イテミスの体毛が豹の黒い毛で覆われて黒豹の獣人の姿に変わっていく
「つまり、貴様は絶対に攻撃を避けられん!!」
イテミスは蜘蛛の足をピストン運動のように動かしキャベツをめった刺しにするのだった
キャベツは刺されながらも殴りかかるがイテミスは向上した動体視力により寸前でかわしキャベツの肘の関節を蚊のくちばしで貫く
「ドドドド」と突き刺さる音がなり引き抜く際に蚊の溶解液も注入しながら、その繰り返しを正確にキャベツの動きに合わせて隙を狙い、突く
それは勢い任せのめった刺しではなく正確に相手の動きに合わせて的に狙って当てる作業のように正確だった
さらに両足と両腕を刺して固定し蜘蛛の神経毒を注入する
「ぐうぅ…」
「ははは、ようやく余裕のない苦悶を浮かべた顔になったな?だが毒で苦しむのはおまけだ。この状況は前座よ?」
「俺の拳は“鎧貝“(危険度E)の殻に変身し関節はふさぎ折れる余地をなくし強度を高める。鎧貝は縦からの衝撃では破るのは道具を使っても不可と言われている。」
「そして右腕の肩から先は“砲手えび”(危険度A)という海の魔物の片腕に変身する。殴れば水がプラズマになるほど早く拳を打ち抜き離れた軍船すら破壊して人間を餌として食らうこともある魔物よ。」
「そして右腕には摩擦から保護するため“川衣”という水を再現して一定時間纏う初級魔法をかける…これ砲手エビがパンチを行う水中と同じ条件…打ち抜く最高のセットアップが整った。それを直接、貴様に当てるとどうなるかな?」
イテミスの右腕がパキパキと殻で覆われて異様に肥大化し蚊のくちばしで串刺しで固定されたキャベツを殴りつけた
「パァアン!」
乾いた破裂音と共に空気との摩擦で火花が散った瞬間、衝撃波とともにキャベツの胸部が陥没し肉弾戦の時とはあり得ない距離まで吹き飛び60m先位の首長の家に衝突し岩を積み上げた家が崩れ半壊した
キャベツは首長の家の入口からボロボロで胸が痛ましく陥没し両手か折れた状況でふらふらと出て来た
「ほう…まだ、辛うじて生きているが死ぬ寸前だな?ダメ押しだ。闘技をもう一つお見せしよう。」
「風魔龍とはライバルの“雷魔龍”が考案したとされる“雷鳴鼓舞”だ。体内の生体電気を自身の魔力と結合させ雷系統の魔法の威力を底上する魔法であり現代まで広く扱われる魔法使いでは常識の魔法だ」
「これもまた先に説明した『血肉湧踊』と同じでた修行で熟練すれば呼吸や筋肉のリズムで発動可能なのだ。」
イテミスの体がパチパチと電力を帯び始める
「さらに先ほどの地這蜘蛛の足を“雷大蛇”(危険度A)に変身させる。雷大蛇は落雷を平行に口から射出すると言われるほど放電を行う魔法の体液と発電器官をもつ魔物だ。」
蜘蛛の足が黒と黄色の模様を持つ大きな蛇に一本ずつ変わり、8本の蛇がイテミスの背中からくねくねと現れる
「そして雷鳴鼓舞と雷大蛇の放電が組み合わさり8本の雷を1本にまとめると…」
雷大蛇の口がカパッと開き牙がアースのように放電し電磁ビームのように射出し8本が1本に組み合わさりあたりが雷の白い光に包まれ一本の雷となった」
防ぐ余地が無い激しい稲妻がキャベツに命中し入口の奥へと吹き飛ばされ首長の家は強大な雷により粉々にはじけ飛んだのだった
「ピシャァアアアン!」
「ふふふ、以前はこれをすると3日は動けず疲れたのだがな…全く疲労も無いわ。」
「魔物は魔法生物で単純ながら魔法が無詠唱で可能だ。俺様は魔法がそこまで上手くないからな。」
「魔法は補助にとどめて異能と武術と肉体の修練でこれまで勝ち抜いてきたのよ。家畜には積み上げというものが理解できまい?」
パラパラと浮き上がった土や小石の音落ちる音が終わると首長の家だった瓦礫が盛り上がりこの世ではあり得ない存在が現れた
「魔人からお前のようなものが生まれてくるなら根絶する必要がある…魔族は不合格だ…」
「お前たちは力ずくの競争と略奪を繰り返した人間の成れの果てかもな…」
キャベツは不気味な姿で身を現した
体表は山羊の骨のような滑からな装甲で覆われ骨の鎧のような姿で瓦礫から出てきたのだった
山羊男のキャベツは“装甲能力”獲得し防御に適した姿となったのだった
さらに折れた腕は徐々に治っていき、腕を動かして動作を確認している
「第2ラウンドはお前たちが異能や魔法と呼ぶ手段で戦かうと言ったな?お前にはまだ第3ラウンドの全力があるだろうが俺には第2ラウンドまでしか持ち札は無い。」
「したがって第2ラウンドからが俺の全力だ」
キャベツは移動速度は遅くなるが走りながら歪んだ空間の粒を浮かべて“銃撃能力”を連射を始めた
「チュン・チュン・チュン」
イテミスの体に風見族の戦士や数多の魔物を容易く屠った銃弾の雨が襲いかかる
「ぬるいわ。その程度の攻撃は戦地では似たり寄ったりを見て来たわ。」
イテミスの皮膚はワニの皮のような体表に変化していく
「城壁ワニ(危険度C)と呼ばれる火薬の爆発や弓矢や槍を通さぬ皮膚を持つワニの皮膚に、しなやかさと剛性を併せ持つパズルピースビートル(小型で頑丈だが無害の魔物)というパズルのようの様な細かい組み合わせで象の体重がかかっても潰れない外骨格を持つ魔虫の甲羅の構造を骨と皮膚の2層目に反映する。毛ほども痒くないわ」
キャベツは歪んだ空間を集めてボーリング玉のサイズにした
キャベツは“砲撃能力”を得てイテミスに4発撃ち込んだのだった
「ゴシャッ!」
「ぬぁあ!」
イテミスは内側の折れる音と共に転がった
「貫通しないな…先端をとがらせるか…」
キャベツは歪んだ空間の塊を楕円のようにして“砲撃能力”を発射した
「ボッ・ボッ・ボッ」という音と共に砲撃していく
ついにはイテミスの体は撃ち抜かれ横腹に穴を空けて倒れこむのだった
「ボグッ!」
しかしイテミスから背中に生えた雷大蛇が放電を行いキャベツに命中した。
だが装甲能力はダメージを散らす効果があり雷は四散したのだった
「お前は、何のために力を得たい?魔人は人間より少ないと聞いたが事実なら人間から土地を奪っても使い切れんだろう?」
「お前が指導者なら魔族の繁栄は強奪より身内を大事にすることのはずだ。俺や人間と戦えば魔人が戦死してお前たちには不利だろう?お前だけ強ければいいのか?」
イテミスは粘菌のように溶け飲み水がある場所に移動し水を吸い魔人の形に戻り傷を完治させた
「ポンドスライムという水分で過剰に増殖するスライムと永遠クラゲという自己再生が得意な魔物の合わせ技で回復した。魔力は食うが今の俺にはまだ一日の限界の5%しか魔力は使ってない…」
「俺様の力を望む理由だと?…魔人は強いものしか評価されない社会だ。それは人間も同じ…人間だろうと魔人だろうと子供の頃から学生や大人に至るまでの選別よ…」
「弱いものや波に乗れない者は存在すら否定される日陰者の定め。貴様はこの世の存在ではないと感じた…家畜がここまでの力を持つなどあり得ない…何者なのだ?」
キャベツは装甲を身に着けていたので表情はわからないが目の動きで正解を感じたように見開いた
「なるほど、つまり自然生物や社会の営みである選別や過剰な競争がお前のような存在を煽って世界を悪くしているのだな?」
「質問に答えるが俺の出自については飼い主の男の下にいたとしか覚えていない。気分次第で暴力を受けたり腹を壊すまずい飯を食わされたことしか記憶にない…お前が誇るようなルーツも無い。」
「ただ、突然人の形になっただけの存在だ…俺は何の脈絡もなく現れた、俺自身も正体を知らない存在だ。」
キャベツが話していると地中から大きなミミズのようなワームが飛び出した
ワームの口から牙が飛び出し鉄の棒を切るような太いペンチのようなハサミだった
「地中を潜るがうまい土葬ミミズと万力手ガニを合わせた魔物だ。さっきのポンドスライムの分裂能力で生み出した我が分身を変身させた。そのはさみは岩でも容易く挟み潰す。戦闘中のおしゃべりは死を招くだけぞよ?」
イテミスの分身から生まれたワームに腹を挟まれるも牙の付け根が挟む力に耐えられず…
「バキッ」と音を立てて付け根の可動部が自壊して折れてしまう
キャベツは「飽きた…」とつぶやき殴打してワームの頭を潰すのだった
イテミスは業を煮やし2ラウンド目を切り上げた
「もはや、侮るまい…先ほどまでは俺様が風魔龍の力を得る前の全力だ…風魔龍の魔力で持久戦も可能になったから全盛期以上だった…」
「ロジャノとパリウスは俺様に近づかない戦法をとったからな…正面から俺様を諦めさせたのは貴様が初めてよ…俺様が討ち取ってきた歴史にふさわしい獲物として認めてやる」
「次はお待ちかねの3種目、風魔龍の力を得た龍魔王としてのデビュー戦の開幕…」
~魔物の危険度の等級について~
E:兵士1名であれば対処可能。
D:兵士10名と連携で対処可能
C:兵士100名の連携と充実した武装であれば対処可能
B:被害を抑えるために事前に作戦を立てるなど準備が必要で安全に討伐するには地形や罠を利用するのが望ましい。兵士500名の作戦活動が必要。
A:単体か群れで活動する危険な魔物。兵士1000人以上の人員とまとまった武装と食料や医薬品の補給が必要。一般兵が損耗なく討伐は前例無し。
特殊:極めて危険で組合での依頼や受注は不可。作戦の参加にはその地域の指導者や国王の許可が必要。街に壊滅的な被害を与えるような危険度で一般兵が数をそろえて対応するのは不可。
住民の生活区域に来る時期が予測できる場合は速やかに非戦闘員の避難に協力すること。
一般兵は支援に回り異能者や魔法使いと連携して対処する必要がある。無許可で関与した場合は免許はく奪の上に厳罰もあり。




