第24話:現代最強の魔人が古代最強の龍族の力を得た存在
山羊男のキャベツと魔人の代表である新たな魔王のイテミスの戦いが始まろうとしている
それはロックオークが住んでいた集落の岩場の土地で始まるのだった
キャベツが魔王を強盗の首領と評した後にイテミスが思わず言葉を漏らす
「山羊男とやら、貴様の名を聞いていいか?人間には魔王を強盗の首領と評す者はいなかったからな…ここまで侮辱をした者は初めてだから最早、忘れえることは叶わぬ…絶対にこの場で殺してやるが名前くらいは知らないと後々もどかしい…」
キャベツは「お前が他人に興味をもつのか?」と呆れながら
「名など俺にはどうでもいいが多くの者は俺を『キャベツ』と呼ぶ…名前が無いと呼ばれた時に不便だからこれでいい…」
イテミスはとことん頭に来たらしく
「見た目と言い…名前と言い…どこまでも魔王も勇者も愚弄しおる…
「品位を汚し俺様の怒りをここまで買ったのは貴様が初めてよ…」
「しかし、このまま殺すのもあまりにも余興が無い…3種目といこうではないか?」
キャベツは意味がわからないらしく
「どういう意味だ?全力で戦えば1回で済むだろう?」
イテミスは「知能が浅い相手は困る」とやれやれな表情で説明し
「俺様が貴様より秀でていることを自覚させたくてな…」
「体術・魔術と異能・総力戦の3ラウンドよ。」
山羊男は考えを巡らせ聞き返す
「…誰か見てるのか?観客がいないなら3ラウンドも必要はないはずだ…」
「ふん、腹立たしいが人間も亜人も魔人もお前には注目している。」
「特別に“魔映”と言う魔術が扱える部下がこの世の魔術に精通している施設でなら見れるように記録を流すよう手配しておる…貴様の手向けとしてこの上ない光栄だろう?」
イテミスとの会話に飽きたのかキャベツは始めると言葉をかける
「ここでいいのか?体術からだったか…わかった、お前のやり方で始めよう…あまり戦う相手を“殺す”と言わないことだ…できないと恥になる…」
「ぬかせ、畜生の分際で!」
キャベツとイテミスの両者が走り向かい合う
「ふん、貴様に“闘技”を見せてやる。」
イテミスから湯気のように魔力が漏れている
「これは龍の頂点である創魔龍が最初に編み出した魔術で現代でも人間や魔人たちにも広く扱われている原初の魔法…『血肉湧踊』だ。それは体力を強化するだけの単純な魔法だが、熟練した達人は呼吸や筋肉のリズムや動きで呪文もなく発動できる…今実演しているのがそれだ。」
「肉体のみで発動できる魔法は単純な効果だが『闘技』と呼ばれる…」
「ガン!」鈍い衝突音のような音が響き
イテミスはぶつかったキャべツをサイが突っ込んだように跳ね飛ばした
キャベツは地面に叩きつけられた直後、イテミスは大柄の体格からは想像ができないほど猫のように飛び上がり膝を腹部にめがけて落下をかけながら打ち付けるがキャベツは転がりかわす
「パキキ…」
イテミスが膝をぶつけた岩場の地面は大きな亀裂をいれたのだった
キャベツは片手で強く地面を押して急に立ち上がりイテミスを殴るが片手で受け止める
「ふむ…強いが今の俺様には片手で済むレベルよ…もともとの肉体の力に加え風魔龍の取り込んでからは地力も格段に上がってるからな…強化の相乗効果もこうも続くと対戦相手にも困る…」
イテミスは柔道のような動きで腕を掴んで大岩に投げ飛ばすのだった
「ごふっ…」
キャベツが叩きつけられたその矢先に猛ダッシュで肘を顔に打ち付けて硬い岩と肘の挟み撃ちにする
空手のレンガを割る芸のように顔を何度も殴打して岩に叩きつけバウンドしたキャベツの顔をまた殴るのだった
「ゴン、カキ」と硬いもの同士がぶつかる音が聞こえ山羊男の苦しそうな表情が浮かぶ
「どうした?まだ1ラウンド目だぞ?俺様が能力だよりのカスと油断したか?常に修練は励んでおるわ!」
さらにムエタイの選手のような構えで横腹にブレがない洗練された蹴りをいれてかなり遠くへ転がすのだった
キャベツはふらふらと起き上がり
「お前は今まで会った連中の中では最も強い…この世界の強者の代表としては見てやる…しかし肝心の知恵がない…力では上回る魔族が人間に負けたのはおそらく話ができないからだ…」
キャベツの体表から蜃気楼のようなゆらぎが一瞬現れた
「そこまで滅多打ちされてまだぬかすか…?しぶとい家畜め!」
そう殴りかかるがキャベツは受け止めイテミスが受け身をとる前に素早く殴打して吹き飛ばすのだった
「ドボッ!」
「ぐ!…なんだ?急に力が上がった?こやつが手を抜く様子など見えなかったはずなのに…?」
「落ち着け…闘技は体のリズムを乱すと解けてしまう…奴を先に動かせてそこを打つ…」
キャベツは突進し蹴りの構えをするがイテミスの動きを見てフェイントに切り替えて肘打ちを胸部に当ててしまう
「ボキャッ!」
鎧がへこみ肋骨が折れる音が内部から聞こえる
「ぐぁああ!なんだ?俺様の動きを見切ったのか?この短時間であり得ない…!」
キャベツはさらにメイリアを壁に投げた時の様にイテミスの首を前から掴み岩に投げつけたのだった
「ガッ!」岩とぶつかる音が響く
「ぬあ!はぁ、はぁ…」
「やはりお前は人間より遥かに強い…人類はお前に勝てないだろうな…叩きつけても潰れない…俺をいきなり切りつけた魔王と戦ったという剣士の女はさっきので死んだがお前は違う…」
キャベツは面倒そうにイテミスを評している
「フフフ…嬉しいぞよ?人間が相手にならんのではお前しか楽しめる相手がおらぬということだ。今回が事実上の頂上決戦よ…」
「貴様の秘密は見抜いた。体力は相手に比例して上がっていくのだな?それで人間や風見族どもを蹴散らしたのだろう?」
「ならば、長く戦えば俺様がいくら強かろうと貴様の体力が上回るということだ…」
「口惜しいが2ラウンド目に移ろう…」
(俺の得意分野の独壇場で、こいつはなんの苦労もなく…)
イテミスは悔しさも混ざったような表情で2ラウンド目に移る…




