第22話:期待と言う毒素
ロジとイグナとティアニスはフェジェの討伐をカタム領主に報告に領主館に訪れていた
「君がロジ・ジョット君だね?フェジェを倒す様子をイグナ君に見張るようにお願いしたのは私だ。どうだったかね?」
(ティアニス君は来なくてよかったがこの際いいか…)
「いや~あの任務は間違いなくBではなくA級の難易度でしたよ。でもイグナさん達が手を貸してくださったから無事に完了しました。魔王の手下のフェジェは討伐しましたよ。行く前に仲間割れしてたみたいで天は僕たちに味方しましたけどね。」
ロジはフェジェを倒した手柄を誇らしげに語る中イグナが口を開く
「今回は、治療役としてティアニスも呼びました。フェジェはB級の危険度ではありません。異能も使い、魔法も扱える上に人間の部下もいて我々も連帯でないと厳しいと判断してロジに手を貸しました。それと奴が死に際に脅威がセアフスに迫ってると話しました。ロジ・ジョットの異能はこれまでにない力があります。私のティアニスだけならフェジェにやられていたでしょう。」
「魔王の側近だったイテミスがシルバナの神木から力を得てセアフスを攻撃するとフェジェが言いました。嘘ならいいのですが…」
カタム領主は魔族は困ったものだと呟き
「ロジ君?君は山羊男と倒したいのかね?しかし魔族が諦めの悪いようだ。確かイテミスは魔族の将軍だったはずだ。今は奴が実権を握ったということか。話が事実の場合だと困るから山羊男の前に魔族を排除してもらいたい。」
「そこで、私も君の力を見たい。最近だがノーマルオークの大集団がセアフスの近くを移動してるらしくてね。奴らは軍隊アリのように略奪や襲撃を繰り返し決まった土地を持たない魔物だ。人型だが知能も力も魔人には永遠に及ばないD級の魔物(個体の戦闘力は兵士10人分)だが人間も食い物にする危険で知能が無い連中だから始末に負えない。」
「それで、冒険者組合に仕事を発注するから君が指揮をとって他の組合員と共に先頭に立ち討ち取って見たまえ。私も見学に行くよ。君がリーダーだ。やってみるかね?」
ロジは驚いた顔になり
「僕が冒険者組合員達を率いてオーク退治ですか?それって正にそういう晴れ舞台ですよね?やりましょう!僕がオークの大群をみんなと一緒にやっつけてセアフスを救いますよ。オホホ。」
ティアニスは内心、(大丈夫か?間違いなく逆だよコイツ)と感じるのであった。
カタム領主はイグナから任務のレポートを受け取りその場は幕を閉じた
****オーク退治に向けての談笑
ロジ達が領主館から退出してイグナとティアニスに楽しそうに先行きを話していた
「いや~今回のフェジェ退治の報酬金が20万ルオン(日本円で2000万円)でしたよ。」
「イグナさんとティアニスさんで山分けしたら余っちゃいますね?余りは備蓄金にしますかね。」
するとティアニスが意外にも
「余りがあるなら私にくださいよ。私はお金が欲しいです。私はロジさんをかばったんだからいいですよね?」
ロジは驚いて
「ティアニスさんがそんながめついことを言うとは意外ですね?お金に困ってるんですか?」
「くれるんですか?くれないんですか?どっちですか?」
と迫るので
「わ…わかりましたよ。ティアニスさんが言うなら…」
「では私の口座にお願いしますよ?私は用事がありますのでまた戻ります。今度は私にかばわせないでくださいよ?」
そう言って去って行った
「ティアニスさんってお金に執着が強いんですか?」
とイグナに聞くと
「ロジ?私から聞いたとティアニスに言わないでよ?ティアニスは犯罪被害者のための支援団体の一員で生活に困らない分は手元に残して金をそこに送ってるのよ。人に自慢したがらないから自分からは誰にも言わないけどね。」
それを聞いたロジは
「ティアニスさんはマジの天使です。この前のフェジェとは全くの逆ですよ。」
と感動した様子でティアニスの去っていく姿を見送るのだった
イグナは一言余計だと釘をさす
「フェジェを例に出さないほうがいいわよ?ティアニスがキレるからね?言っとくけどシュウノが赤子と思うほど怖いわよ?」
「わ…わかりましたよ…ティアニスさんたまに怖いですからね…言葉には気を付けないと…」
そうイグナと話しているとピー太郎が飛んできてロジの前に現れた
「あなたが、ロジ・ジョット氏でございますね?」
「男としてお願いです!あなたに山羊男を倒してシルバナを奴の手から取り戻してください!」
****シュウノからロジへの時代の移り変わり
ロジはピー太郎から風見族の故郷であるシルバナの話を聞いていた
イグナは少し不満げだが黙って聞いていたがピー太郎はイグナに断りを入れる
「すいません。イグナ様。私とロジ・ジョット様としばらくセアフスの外に居させてくれませんか?男としての頼みがありますので…」
「私が居たらまずいの?私はロジと一緒に居たいんだけど…」
ピー太郎は内心苛立つが丁寧に返す
「すいません。ロジ様にどうしても渡したいものがありまして…あまり私が渡したと見られたくないのです。同胞からもよく思われませんので…」
ロジは特別扱いされたのが嬉しいのか
「イグナさん?この方と何度もあって顔見知りなんですよね?山羊男の手先って考えにくいでしょ?少しだけ話してきますよ。」
イグナは乗り気ではないが帰りが遅いとすぐ来ると言ってセアフスの検問所の近くに座るのだった。
****街の外に出たピー太郎とロジ
「ロジ様、あなたは山羊男を倒すおつもりですか?実はフェジェとの戦いを見ておりました。あるお方がイグナ様達を心配されて私を見張らせたのです。それであなたの力の一端を拝見させていただきました。」
「え?あんまりかっこよくは終わりませんでしたけどね…でも山羊男とはマジに戦うつもりですよ?」
ピー太郎は布でまかれた包まれたものを差し出した。布をめくると立派な木製の弓が出て来た
「これは私の家宝の弓、『風吹きの弓』でございます。その昔、雷が神木に落ちて折れた枝から削って作られた至高の一品でございます。弓の側面に魔法の術式の文字が刻んでいるしょう?」
「矢を引くと神木の力が宿った弓により、放たれた矢に風の魔法を自動でかけてルートを念じてある程度セットしたりスピードや飛距離を上げる魔法の弓なのです。」
「もしあなたが災いを打ち破る勇者ならこれをお譲りしましょう。いかかでしょうか?」
ロジは大喜びで飛び上がり
「僕が勇者として頼まれるって…感無量ですよ!!いいんですか?あなたは先輩にいつも頼んでたんでしょう?僕が頼まれてこんなすごそうなものを貰っていいんですか?」
ピー太郎は残念そうな表情になり
「ロジ様…シュウノ様はすでに心折られてしまいました。英雄とはもはや過去の栄光…飛べるのに飛ぶ気も無くなった彼はもはや腑抜けでございます。山羊男と戦う闘志があるロジ様の方が適任と判断しました。私も戦士を志した時期がございましたがどうもその才能には恵まれず…」
「ロジ様、どうか私の志をその家宝とともに拾ってください。」
ロジはすっかり上機嫌で快諾するのだった
「はい!もちろんっす!僕が山羊男を絶対倒しますよ。」
(先輩?安心してくださいよ?僕が先輩がヘタレた分はがんばりまーす!先輩お疲れ様でーす!)
ピー太郎は続けて会ってほしい人がいると話だし
「ロジ様、今日はもう一件ありまして、お会いしてほしい方がいるのです。」
「僕に会いたい人って誰ですか?最近、人が会いたがるようになってきて僕も注目されてきてるってことですかね?オホホ」
ピー太郎はロジの笑い声に一瞬ひきつるがその人物を隠れている岩の後ろから呼び出した
「メイリア様、ロジ様をお呼びいたしました。」
「メイリア?その人は先輩の仲間で話では山羊男に挑んで殺されたはずですよね?」
ロジが疑問に感じているとメイリアが岩の後ろから姿を現した
「ロジ…久しぶりだな。お前に頼みがある。話をしてくれないか?」
「あれ?メイリアさん?髪が白くて山羊耳で小さな角って…しかも死んだって聞いたのに目の前って…ぎゃぁあああああああ!!!!!」
「ぼく…お化けだけは無理なんです――!メイリアさんはお化けですか…?」
「私はお化けではない…と言いたいがお化けかもな…望んでもいないのに生き返ってしまった。もっとも死にたいとも思ってなかったがな…」
メイリアはパニックのロジにマイ・ルールブックについて訊ねる
「お前の異能で私を人間にできるか?望みを叶えれる力なんだろう?」
「簡単に説明するが私は山羊男に戦いを挑み殺された。その後、何のためかは知らないが遺体をこんな風に改造して私を生き返らせたのだ。こんな山羊人間の女をどう思う?山羊の尻尾まであるぞ?」
「…山羊娘ですか?この世界に人間っぽい獣人は見たことないですからね…わかりました。マイ・ルールブックでやってみましょう。」
ロジはマイ・ルールブックにメイリアのページタイトルを書いてさらに
≪人間になる≫と書き込んだ
しかし、すぐにその書き込みは消えてしまった
「すいません…僕のマイ・ルールブックは種族を変えるとか他人を能力者にするとかまだできないんですよ。」
「あり得ない願い程、実行が遅いし、そもそもできません。」
「あまり同時に命令を書き込んでも精度が落ちたり実現率が減ったりします。」
「僕が魔力無限にしてずっとマイ・ルールブックを連続使用するとかも無理です。」
メイリアは「そうか…」と落ち込むがロジが「元気を出してください」と声をかける
「メイリアさん?僕はまだ発展途上でできる領域も増えています。いずれ人間に戻すのもできるよう頑張りますよ。」
話の途中でピー太郎が横から入り
「ロジ様、メイリア様も山羊男討伐隊に向かい入れたらいかがでしょうか?罠が怖ければそのマイ・ルールブックとやらで山羊男に味方できないと書き込めばいいのでは?ティアニス様も呪いの魔法は得意ですから山羊男に協力できないようにする手はあるはずです。」
「それにメイリア様の状況の確認も観察して確認したほうがわからないよりいいでしょう?」
メイリアは迷った顔をして
「しかし、仲間が私を警戒してるし…」
と不安をもらすがロジが「ぜひ一緒にやりましょう!」と声をかける
「メイリアさん?僕が間に入ってイグナさんとティアニスさんを説得しますよ。メイリアさんの剣技があれば山羊男と戦うのに間違いなく有利になりますよ。」
ピー太郎も「それがいいです」と相槌を打つ
「私もロジ様と同じ意見です。山羊男にここまでやられてメイリア様もいいのですか?せっかく魔王を倒した剣技もあるのに仲間からも山羊男から逃げたら間違いなく良し悪しは別として結果も見れませんよ?」
メイリアは前を向き
「そ…そうだな。私は少なくとも山羊男に従いたいとは絶対に思ってない。私の意志があるということだ。シュウノのことも気になるがとりあえずティアニスとイグナにもう一度話をしてみよう。」
「そこで待っててくださいよ?イグナさんとティアニスさんをお呼びしますから。」
ピー太郎は「私はこれにて」と言い飛び去って行った
「ではロジ様、その“風吹きの弓”にふさわしい立派な勇者になってくださいよ。私はロジ様の味方でございます。」
ロジはすっかり代替わりした気分になり勇者の運命に入り浸るのだった
(先輩のチームで先輩だけが僕と交代しちゃいましたね。僕がメイリアさん達を守りますよ。オホホ。今回はゆっくりベンチでお休みしてください。神様が僕を導いてるんですかね?オホホホ!)
****その頃、山羊男のキャベツは
ロジ達がフェジェを相手に奔走していた頃
山羊男のキャベツは以前、風見族の街のシルバナを攻撃した理由を聞くためにロックオークの集落の岩場の土地に来ていた
そしてロックオークの首長の簡素な岩を積み上げてできた家で質問をしていた
「…お前たちのリーダーのイテミスとやらはお前たちを助けに来ると思うか?」
ロックオークの首長は震える声で山羊男に話す
「…おで達は昔から魔王に使われる側…でもイテミス様はノフィス様より怖くて荒い…」
「オデ達は倒せてもおめぇはイテミス様と戦えばじぬ…」
キャベツは魔王という言葉に興味を持ち
「魔王が怖いからお前たちは言うことを聞くのか?」
「…魔王はあの男…そうだな…俺の飼い主の男と同じと言うことか…」
「つまり魔王とは強くて怖くて他人を言いなりにしようとする存在でいいのか?」
ロックオークの首長はキャベツに恐怖と違和感を抱き
「おでは、お前がわがらない…何がしたいんだ?世界を征服したいのか?」
キャベツはそれに対して
「世界?自分より弱いものを従わせてなんの意味がある?どの道ルールなど守らせる側とは異質で強い存在には無意味だろう?」
「わかった…魔王は弱い側を征服するのが好きなのだな?どんな理由でも俺に暴力を向けた以上、すべてのその存在は死んでもらう…」
「決めた…俺の目的は暴力が無い世界があるかどうか確かめることだ…」




