第20話:人生はドミノ
ロジの率いるチームと魔人フェジェの対決が始まった
ティアニスが結界魔法を発動する
「護聖封邪」
ロジやイグナやティアニスの周りにゆらゆらしたほのかな光のような膜が漂いはじめた
「ほう。魔法や異能の威力を低減する結界ですね?知ってますよ?しかし、それだけじゃ勝てませんね~?ここは林ですよ?加えてオレは燃焼を操れるってことは…」
フェジェは林に向かい悪意を向けた
「+O2(プラスオーツー)!林に火を放ちまーす♥」
羽が観葉植物のポトスのハチドリが現れ羽をかき回しながら羽から発生する透き通った青い気体を林に包み込んで発火させフェジェの周り以外を大火事にするのだった
しかし、イグナは炎魔法が十八番である
「封印魔法:炎食火瓶」
呪文を唱えると小さく火が出ているイグナが持つ壺に林の燃え盛る炎はシュルシュルと吸い込まれて立ちどころに消えていった
(・・・イグナがオレとは相性悪そうだな・・・鎮火用の魔法までもってるなら周囲の発火はやめるか・・・)
イグナを向いていたらティアニスが迂回して走ってフェジェに突っ込んでくる
「何?こいつヒーラーだろう?魔人相手に突っ込んでくるとはな!+O2!この馬鹿の頭を冷やせ!今回は逆の燃やすだがな!」
プラスオーツーの青い気体でティアニスは包まれるが発火しない
「調律心乱」
ティアニスの呟く呪いが文字のように浮かびプラスオーツーの気体の中で漂っている
「私がかけた「調律心乱」は異能や魔法のコントロールを阻害する呪法ですよ」
「あなたのように範囲を指定してコントロールするタイプにはその場所にもかけれるから特に効果を発揮します。」
フェジェは舐められたものだとハチドリから発生した青い半透明の気体を調律心乱を受けた部分が広がる前に切り離した。その部分の気体は消えていった
「人間が魔人に格闘戦は自殺行為だぜ!」
ティアニスに蹴りかかるがロジが弓を放つが直前にフェジェはかがんで避けてしまう
「魔人の動体視力を舐めすぎだ!弓なんかガキが投げたボールとかわらん!」
しかし、外した矢が不自然に弧を描いてフェジェの右足に命中したのだった。
「があっ!なに?あのガキの異能か?」
気を取られた瞬間、ティアニスに殴打されたのだった
「ぐ、しかし人間に殴られたぐらいでは魔人には蚊が刺した程度でしかないぞ?例え鍛えた屈強な男でもな」
ティアニスは念じ
「拷問魔法:幻痛顕現!(げんつうけんげん)」
呪文を唱え発動するとフェジェは顔に高熱のアイロンに押し付けられたような不自然な痛みを感じるようになった
「うぁああ、オレの顔が…」
「その魔法は痛みを何倍も発生させ幻痛として体中に広がらせる呪いですよ。まだ戦いますか?」
フェジェは馬鹿がと言い呪いを体外へと煙のように排出する
「魔力攻撃は自分の魔力で抵抗できるのは常識だろうが中古ちゃんよ?これくらい対処できないと雑魚魔人にもなれねぇよ!解呪魔法:排呪救!チッ、連携で後手になって来てるな。でもこれってノフィス様がやられた時のそれじゃ・・・」
イグナは手に持った火壺から火を取り出し杖に大きな炎の塊をつくっていた
「炎魔法:炎蛇狂飛」
炎の塊からロープのような炎が大量にフェジェに飛び掛かる
「+O2(プラスオーツー)!!オレに飛んでくる前に酸素が炎にくっつくのを止めさせろ!!」
青い気体を飛んでくる方向に展開し通り抜けた炎のロープは鎮火したがロジは弓を放っていた
フェジェの左腕ともう片足に矢が命中し膝をついてしまった
「やっぱ言葉を話す存在に攻撃したらドキドキしますね?嫌なドキドキですよ?」
ロジが弓をおろしてフェジェを見ている
「僕がもうあなたの異能は把握しました。酸素結合でしょう?マイ・ルールブックに応対した事象の詳細を聞くように書いたら自分の前で起こりえた情報は教えてくれますからね。」
「金縛りにしても良かったですが魔人は魔力が高いから実行が遅いか抵抗される可能性があるからあえてしませんでしたが…」
「さっきから何なんだ?普通の矢なら魔人にとっては画鋲を押し付けた程度にしかならんはずだぞ?違和感しか感じれん…こいつの異能の仕業だろうが」
イグナはすかさず追撃する
「火切石」!
火球をつくり飛ばすと分裂して小さな火の玉になり飛んで行った
「ワンパターンが!」
フェジェは+O2でまた鎮火するが火の玉から焼けた石が出てきてフェジェに何度も命中した
炎は石を隠し勢いよく飛ばすための隠れ蓑だったのだ
「ドドドッ!」
「ぐぁああああ!!」
「火は消せても焼石の温度は消せないみたいね?もうあなたも年貢の納め時よ?魔王にしっぽを振るべきではなかったわね。」
焼石の衝突と火傷を負いイグナがフェジェに余力が少ないことを感じ始める
しかしフェジェは密かに使い捨て剃刀の刃を手に持った。薄くて四角い市販品のそれを密かに握る。
「おい?お前ら…やはりノフィス様と戦ったのはマジらしいね。魔人相手に小僧はともかく中古ヒロイン共は連携がよかったよ…」
「褒美にセアフスのピンチを教えてやる。魔王の右腕だったイテミスがシルバナの神木の力を得てセアフスの街をぶっ壊して市民達はぶっ殺すんだってよ?泣けてくるだろ?」
ロジは笑顔になり
「え?新しい魔王が来てくれるんですか?僕の手柄になりますね~。そのイテミスもあなたみたいにやっつけちゃいますよ。それで僕も先輩みたいなヒーローですよ。山羊男じゃ迫力たりませんからね。」
「中古ヒロイン共?お前ら大変だな?こんなおめでたいお坊ちゃまのお世話をさせられて。マジで可哀そうだぜ。シュウノくんと君も変わらんぜ?ボスを倒したら飽きられるゴミラノベの主役だよ。中古ヒロインの諸君はヒロインは卒業してベビーシッターかい?キモくて、でかい坊やだねぇ(笑)」
(早く近づけゴミムシども…できればあのお坊ちゃまがいいか?)
「おい坊や?世の中も知らんきれい好きのガキに出来ることなんかねぇよ。せいぜい、強い異能で格下にしか威張れんだろ。低能の糞雑魚が。誰もお前なんか尊敬しないよ。ポンコツ妄想ニート野郎。どうせまともな仕事ができないから冒険者組合で異能でイキってるんだろう?異能者はそんなクズばかりだぜ。異能がないなら何ができるよ?ゴミムシ無能共。」
ロジは頭に血が上ったのか
「ちょっと?犯罪者のくせにまともにルール守ってる僕たちを悪く言うなんて筋が違いますよ?お前は負けたんですよ!この魔王の残りかすのクズ!」
ロジが歩いて近づき弓をまた構えようとしたがティアニスが「待って」とロジに駆け足で近づいた瞬間
「念のため手に矢を打っときますかね?」
「馬鹿が!死ね!糞甘野郎!!」
「念呪力!(ねんじゅりき)」
フェジェの持っていた剃刀が勢いよくロジの喉へ飛んで行った
しかしティアニスがロジを守るために前に飛び出し顔を切ってしまった
「うぐ!」と叫びティアニスは顔を抑える
イグナは杖を構えて火炎放射をフェジェに吹き付けて焼き尽くすのだった
「おわりよ。あなたはもうやりすぎよ。もう悪いことしなくていいわよ!」
フェジェは「ぐぁああ!」と短く叫び燃えながら幼少期を思い出していた
(おふくろと山にハイキングに行ったときだったかな…)
「あの鳥、なんで卵を捨ててるの?」
フェジェは母親にカッコウが托卵(卵をよその鳥の巣に産むこと)する様子を聞いてた。
「あれはね。自分の卵を置いたら数が増えてばれるから数合わせに捨てるのよ。残酷だけどカッコウはそうやって生き延びたんだって」
「なんで自分で育てないの?カッコウが悪いことしてるの?」
「人間もね。家畜を必要以上に殺して食べたり利用してるのよ?食べる以上に殺して売り物にして期限が過ぎたら大量に捨てたり残したりしてるのよ。」
「これは良いとか悪いとかの話ではないの。現実の仕組みの問題なの。カッコウは現実に沿ってあんなことしてるの。きっと自分で卵を育てれないのよ」
カッコウは巣から立ち去った後に親鳥が帰ってきた
キョロキョロと親鳥が巣を眺めたらカッコウの卵を見つけて口で咥えて巣の外へ捨ててしまった
卵は割れてしまい産んだカッコウは降りてきて割れた卵をしばらく眺めているのだった
「あ、捨てられた…」
「フェジェ?世の中はあんなものよ?カッコウが有利なわけじゃないのよ?」
フェジェは過去の走馬灯に混乱した
(あれ?なんでオレはこんなことを考えてる?あの割れた卵はオレのことか?そうか…ゴミ山の山頂なんて無かったんだな…結局、オレもノフィス様と同じ…部下がいて野望があって望みを叶えようと努力して…)
(その途中で世の中を変える気も手に入れる気も無い正義ぶった新しくもない見栄っ張りどもにやられる…人間より魔法使いが強くて、魔法使いより魔人が強くて、魔人より龍人が強くて、龍人より本物の龍が強いってキリが無くてバカバカしいかもね。)
(オレは異能も使えて魔法もできるし人間を超える魔人の肉体もあって部下もいたのに負けるって誰でもいつかは負けるって意味だよね?…オレってすごい方だよね?…悪者は世知辛いね…ずっと勝つ奴っているの?)
(歴史の授業に出てくる虐殺までして裁きや報いを受けずに支配した人間の征服者どもは幸せだったのかな?オレも結局、近所の野焼きしてたジジイと同じだったね)。
「結局、罰を下すのは神様ではなく人間様だったね。あっぱれ…生き延びてお前らもオレの様にこんな目に会うといいよ…いずれ…そうか山羊男はひょっとして…」
「人生はドミノだね。親父とジジイとノフィス様とイテミスとクジとオレと君らと最後は…山羊男だろうね。自分が倒したつもりでも倒される側にすぐ交代だよ。そして最後は指で押した者以外は…倒れる…」
フェジェは灰になって絶命したのであった
「すいません…僕が前に出たばっかりに…ティアニスさん?大丈夫ですか?」
ティアニスは気にするなと顔をイグナに見せている
「どこが切れてますか?おでこが痛いですが。」
イグナが心配しながら
「額に平行に傷がある。跡が残るかもな」
「最後のカミソリは魔法か?魔力は感じたが魔法なら事前に前ぶりがあるのに無かったわね…異能なら事前に思念体がでるし…」
ティアニスは気にせず治療魔法で傷をふさぐが跡が残っている
「今更、戦いの傷なんか気にしませんよ。任務は終わりです。カタム領主へ報告に行きますよ?」
しかし、ロジが「マイ・ルールブックで治るか試します」と言い
≪ティアニスの傷跡を消す≫と書き込んだ
すると、ティアニスの額の傷跡は消えていった
ロジは喜び
「あれ?やっぱり起こる範疇のことは起こせるんですね?すいませんね。僕が油断したから怪我させちゃいましたから僕はティアニスさんに大きな恩ができちゃいましたからゆっくり返しますよ。オホホホホ」
ティアニスは「余計なことをして」と呟き
「ロジさん?私はあなたが危険なら先にあなたより死にます。でも自分から危険にならないでくださいよ?私に死んでほしいならそうしていいですが。」
「すいません!もう油断しません!敵の挑発にはもう乗らないっす…」
イグナはフェジェと話していた男は何だったのか気にしたが逃げて追跡が難しいと判断し
「撤収よ?みんな荷物をまとめるのよ。」
「では、皆さんマイルール・ブックでセアフスに帰りましょう。皆カタム領主に会うのが楽しみですねぇ~」
その様子を見ていた一人の男が木の上からこっそり見ていた
ピー太郎がロジを遠目に観察していたのである
「あの馬鹿ガキはシュウノよりは使えそうだな…山羊男と戦うように焚きつけてみるか…」




