第15話:もし会えなくなった人が会いに来たら
死んだはずのメイリアが目前に現れてシュウノ達が言葉を失って固まっているとメイリアが静寂を破った
「シュウノ…私は山羊男に壁に投げられて殺された。その後、上に引っ張られたような感覚で夢もなく寝ている気分だったが急に下に引っ張られた感覚になり目が覚めた。そこは檻の中だった。」
「私は脱出して、セアフスに一心不乱で移動をしていたが途中でこいつに見つかって…話を聞いて…自分が死んだのだと聞かされて、遺体を山羊男に運んだって言われて…」
ティアニスは青ざめながら絶叫した
「悪魔の仕業だ!メイリアの偽物を私たちに送るなんて卑劣な罠よ!生き返るわけがない!!」
イグナは鳥肌が立った様子で
「メイリアが本物かどうか別として明らかに罠だ。私たちにそれ以上近づいたら戦うわよ?」
と警戒を露わにするがシュウノだけは「やめろみんな!」と制止を促す
「待て、話を整理しよう。この前、ピー太郎たちがメイリアの遺体を持って行ってその遺体をキャベツが生き返らせて檻に入れてたんだな?」
「その後は目覚めて自分で脱走したからキャベツが罠で送るならもっとマシなタイミングで送るだろう?まだ罠かどうかは早計だと思うがみんなどう思う?」
ピー太郎は状況を説明し始めた
「シュウノ様、山羊男はメイリア様を蘇らせ寝ている彼女を私に見張らせました。その後、魔族が攻めてきましてね…私は檻の監視を離れて魔族の侵攻の様子を見に行ってしまいました。」
「その後、私が檻の外へ確認しに行ったらメイリア様が逃げておられたのです。私は見張りが失敗した罰を恐れてメイリア様を探して見つけたのですがシュウノ様達に会いたいと言って聞かなかったのです。死んだメイリア様がセアフスに行けば混乱するからシュウノ様達を街の外に呼ぼうと思ったらシュウノ様達は不在でした。私はセアフスにいる仲間の情報網から今は外にいると聞き、空から探して今の状況になっています。」
メイリアは“そうだと“小さいく呟きもじもじしている
「みんなを混乱させてすまないが私もどうすればいいのかわからなくて…相談したくて…」
シュウノは全員が感じている“ある疑問”を投げかけた
「なんで頭巾をしてるんだ?メイリアはあんまり帽子かぶらなかったよな?」
メイリアは自信がなく不安そうな声で
「…あまり、驚かないでくれ…攻撃しないでくれよ?」
そう確認をとって頭巾を脱いだ。
シュウノは「なんて馬鹿な…」とつぶやき
イグナは「あ、あり得ない…」と恐れ
ティナニスはうずくまり無言でゲロを吐き「あいつ(キャベツ)は悪魔の化身だ…」と声を漏らす
…メイリアの黒い髪は山羊のような白い髪になり耳は山羊の耳で頭には小さな山羊の角が生えていたのだった。
メイリアは泣きながら「すまない」と声を漏らしている。
「私はただ、不安を言いたかっただけだ…山羊男が私を罠に利用しているかは疑われても仕方ない。もう、今日で会うのは最後だ…私はもう人間ではないのかもな…」
「おい、メイリア待ってくれ…」
そう言うと涙を浮かべて走り去っていった
ピー太郎はシュウノに向かって釘を刺す
「シュウノ様…おわかりですか?山羊男の恐ろしさが…我々の常識や理解を全く超えてきています。おそらく、あなたでは無理だ。」
「私は噴水広場で魔族を退治してほしいとあなたに依頼しましたが魔族に怒った山羊男が報復に向かいました。我々の折れた神木も魔族に盗まれ風見族達のプライドはボロボロでございます。」
「私の予想ですが魔族も我々かそれ以上に悲惨な末路になるでしょう。だからシュウノ様にも手に負えないと思いますので、この件の依頼は取り下げさせていただきます。誠に勝手ながら失礼します。」
そうピー太郎は断ると「メイリア様、お待ちください。どこへ行くのですか?」とメイリアの方へ飛んでいくのだった。
「そんな…もういいって、俺はまだキャベツと戦かう気があるのに…」
シュウノは力なくピー太郎とメイリアが去っていくのを見ていたのだった
****怒れる心清きもの
「―ふざけやがって!!!!!」
怒号と共に望遠鏡を地面に投げつけ壊したティアニスは完全に怒り狂った
「はぁ、はぁ、仲間を殺しただけでなくあんな風に弄ぶ化け物なんか絶対に生かしてはおかん…」
イグナが落ち着いてと叱咤を切り
「山羊男に最初に手を出したのは人間側だ。冷静さを無くせば余計な失敗を招くからやめなさい。」
ティアニスは腹の虫がおさまらず思うことを言ってしまう
「最初に人間がやったからって、それでみんなやられていいのですか?…すいません。イグナに言っても仕方ないですね…山羊男の倫理観なんか私は想像もしたくない…」
シュウノは下を向いたままメイリアに対する思いを伝えた
「俺はメイリアが好きだったから助けるべきだと思う。みんなも仲間だったらもし安全と罠じゃないと確認がとれたら助けるのを手伝ってほしい。もしメイリアがキャベツの手先なら俺たちが引導を渡そう…」
イグナは「もう、この話はやめろ」としびれを切らし
「みんな?ロジ・ジョットを探すのを忘れたの?さっき見たのは幻だと思って進むわよ?できないなら私の邪魔だから帰って?」
ティアニスが「わかりましたよ、もう化け物の話とメイリアがゾンビかどうかは終わりにします…」
シュウノは心が冷たくなり足場がなくなるような気持ちになるのだった
(ああ、俺が噴水広場でへらへらしてなければ…衛兵に囲まれて怯えていた山羊男を助ければよかったのかな…)
そんな考えが頭によぎりながら移動を再開したのであった
****新生ハーレムチーム結成
ロジ・ジョットは廃村の近くの丘から廃村を眺めていた
仮にも3等冒険者になった実績があり、すぐ攻めたりしないのがロジなりの立ち回りである
「人の出入りがたまにありますね…正面突破は罠や不意打ちの可能性もあるからあんまりしたくないですね。」
ロジは紙飛行機を手で折り始めながら異能を使い偵察を始める
「ちょっと、上から様子を見てみましょうかね。…『マイルール・ブック』発動!」
ロジの手元に“ブンッ!“と言う音が鳴り白紙の本と万年筆が現れ、ロジは紙飛行機とタイトルをページに書きその下に設定をさらさらと記入していく
≪紙飛行機の羽の下側にまぶたを閉じた間、右目につながる視力を与える。≫
≪廃村を周回し続ける≫
≪高さは100mをキープ≫
≪視界はズームして真下が見えるようにする≫
「これでいいですかね?だめならまたやり直しますからいいですけどね」
そう言って投げると紙飛行機は勢いを落とさず飛んでいき、不自然に都合よく風が吹いて廃村まで飛んで行った。紙飛行機が旋回を繰り返し始めるとロジは右目を閉じて廃村の下を視覚する
「廃村にやっぱり人がいますねー。ターゲットのフェジェもいればいいですが。」
「資料に書いてあった角が生えた青白い男っていかにも中ボスっぽいですけど油断したらまずいですよね」
「この前、倒しましたが雷大蛇を舐めすぎて危なかったですし油断大敵っすよ」
その時、後ろから気配がした
ロジはうさぎのようにビクッとなり後ろを振り向いたらイグナとティアニスが立っていた。
「びっくりした…暗殺者かと思いましたよ。あれ?あなた達はたしか先輩のチームの…」
「ティアニスさんとイグナさんでしたね?どうしたんですか?」
「冒険者組合では誰かが受注した任務は受けれなくなるから重複して別の人がするってことは無いですよね?それなら事前に早い者勝ちの複数参加の説明があるはずなので今回は違いますよね?」
ティアニスが話を切り出してロジは目を丸くした
「ロジさん。私たち、メイリアを殺した山羊男を倒したいです。お願いです。ロジさんの力を私たちに貸してください。私たちもロジさんのために尽くしますから…」
「え?魔王討伐隊のトップランクの冒険者のあなたたちがこの僕に?先輩はどうしたんですか?そんな急に…」
イグナは悲しそうな顔をして
「シュウノは山羊男に恐れをなして心が折れてしまったのよ。ロジはすごい異能があるんでしょう?私たちは魔法しか使えないからどうしても1等の強さが無いわ。」
「あなたが、山羊男を倒せるなら一緒に協力させて?実はカタム領主があなたに注目して私にあなたと協力するよう頼まれたのよ。どう?」
ロジは清々しい笑みを浮かべて
「え?マジっすか?こんな麗しい美女のトップ冒険者が僕と一緒に山羊男を倒しにって…」
「しかも、カタム領主が僕を注目?手柄をとって会おうと思ってたのにまさか向こうから僕を気にするなんて…カタム領主は見る目がありますね~。」
「とうとう、僕も勇者の運命が目覚めたんですね?おほほ!おほほほほ!」
ティアニスは笑顔だが腹の中は怒りで熱くなり
「ええ、ロジさん、私はロジさんを守るためなら危険なこともします。あの廃村を調べてるんでしょう?ロジさんが山羊男に向かう前に死なれても困ります。一緒に助け会いましょう。」
(笑い方気持ち悪いよこいつ…目障りで耳障りでぶち殺したくなる野郎だ…我慢できるかな?)
ロジの反応は思いの他、警戒心もあった
「ひょっとして先輩に頼まれて僕の事、調べてません?先輩がそんな真似するとは思いませんがこの前、八つ当たりされて胸倉つかまれましたからね。」
「僕は先輩は嫌いじゃないですが“人間、落ちればどこまでも”ですから先輩がダメになってたら、あなた達にそんなことさせるかも…」
イグナが「しかたないわね」と声を出し
「ごめんなさい。邪魔したわね。私たちは他を当たって山羊男を倒せる人材を探すわ。」
と去ろうとしたがロジが血相を変えて
「ストップ!ストップ!すいません!帰らないでください!」
「一緒にやりましょう!ソロでやる気でしたが急遽チーム戦に変更っす!」
「いや~美女のエリートの魔法使いとヒーラーが来てくださるって完全に勇者っすよ。」
「ようやく僕の時代ですかね~それに先輩にパシリに使われるほど、あなた方も先輩に媚を売ってないでしょ?」
「このミッションをクリアして親ぼくを深めましょう!!」
(先輩の心が折れてるか後で確認しときましょうかね…先輩がいじけるほど僕も引き立ちますからね。ほ・ほ・ほ)
シュウノは隠れて見ていたが内心ショックを隠せないのだった
(はあ……この後の芝居でロジをイグナ達を信頼させる段取りか…俺って魔王倒してほんとに出番や立場がなくなったのかな?)
そう言いながら昼食にセイルの作ったサンドイッチを食べるのだった
「はぁ…この年(今年で20歳)で俺も来年にはパパになっちゃうのか…ハーレムチームのリーダーはロジに交代し俺は山羊男に仲間や未来をボロボロにされた上にできちゃった結婚か…誰もヒーローとはもう思わないよな…」




