「社会人になる」ために、各年代で身につけなければならないことは?
だいぶ寄り道が長くなってしまった。そろそろ話を戻そう。
そもそもしつけは「社会において自律した生活を送れるよう、社会性を育む」ために施すものであり、それらを身につけなければ社会人として生きていくことは難しい。よって、しつけは必須のものだが、教育現場の荒廃が進む現在、学校や塾にしつけを任せることは難しく、そのほとんどを家庭で施す必要がある……という話をしていたのだった。
ここまでの話については、それほど大きく反論が上がることはないのではないかと思われる。
さてでは、家庭内でしつけを施すとして、具体的に、どのような手順でそれを教えていかなければならないのだろうか。
まず頭に入れておいてほしいのは「子どもは成長するものだ」ということである。
さまざまな知識を吸収して外界に少しずつ順応し、徐々にその生きる世界を広げていくその過程において、保護者はその時その時に必要な知識や生活態度を身につけさせ、外界への順応がスムーズに進むよう、心をくだく必要がある、
要は「子どもの権利を守って」「子どものやりたいことを制限せずに」などと大ざっぱなくくりでずっと育てていくのではなく、子どもの成長度合いに目を配り、その時その時に必要なことを必要なだけ教え、適切に導いていかなければならないのだ。
具体的に、どういった必要なのか。
子どもの一般的な成長度合いに即して見ていくと、次のようになる。
まず、0歳~3歳時においては、子どもの自己評価が低くなりすぎないよう、子どもを褒め、認めてあげることが主となる。褒めて導いてあげることによって、保護者の愛情を実感させ、その愛情をてこに、さまざまなことへ挑戦し、自らできることを増やしていくようにしてあげるのだ。
この時期に大事なのは、なによりスキンシップと愛情になる。だが、それだけではなく、もし子どもが本人に危険の降りかかりそうなことを行った場合、素早くその危険から引き離し、決してそのようなことをしてはならない、と厳しく教えなければならない。
次に、3歳~10歳ぐらい、すなわち幼稚園入学から小学校中学年の時期には、社会性の基礎を身につけさせること、生きていく上でどうしても必要な知識や技術を身につけさせることが主目的となる。
ここで重要となるのが、社会の中での基礎的な生活態度を身につけさせること。すなわち、家庭内とは違い、外の社会では、自分のわがままが全て許させることはない、ということをしっかり身につけさせること、同時に将来に備え、学習の際の基礎的な態度を身につけさせることだ。
自分以外の人間も自我を持つ存在であり、それぞれ自分自身の心地よさを求めて生きている。その他者に対し、自分のわがままを押しつければ、当然軋轢が生じる。そういうことが起こらないよう、他者を自分の同格の存在であると認め、互いの心地よさをそこねないように共存していくための振る舞い方の基礎を身につけ、そして同時に、将来より高度な学習をする際、きちんと知識を吸収できるよう、授業を受けるときの基礎的な態度――最低限、授業時間中、私語をせず、きちんと椅子に座り、先生の話をきちんと聞き、必要に応じて板書をノートに写すことができるようにしなければならない。
さらに11歳~15歳の時期、すなわち小学校高学年から高校入学前後くらいまでの時期。ここで重要なのが、自ら考え、予定を立てて行動する態度を身につけさせることである。
中学受験を考えておられる家庭では、本格的な受験勉強が始まる。昨今中学受験は必要以上に加熱しているので、求められる学力は高く、身につけなければならない知識は多岐にわたる。それら全てをしっかり身につけ、応用できるようにならなければ、入試突破はおぼつかない。
中学受験を考えていないご家庭であっても、この時期から徐々に学校での授業が高度になっていく。しかも、中学からは定期テストが行われ、自らの実力がはっきり成績に反映されるようになる。予習復習、きちんとした授業態度を身につけ、日々家庭学習に一定の時間を割くようにしなければ、来たる高校受験でよい結果を残すことはできない。
また、一般的な方法ではなく、先に挙げたような生き方――スポーツ競技や芸能、芸術など、「その道」でプロとなり、生計を立てていく――を選びたいと思っていらっしゃる場合でも、この時期にしっかり学ぶ態度と、その学んだことをしっかり身につけられるまで何度も反復練習する習慣を身につけなければならない。
そして、これらのより厳しく難度の高い学習が必要となるにつれて重要となるのが、「自己管理」である。
先ほども述べたが、学んだことをきちんと身につけ、自分のものにしていくには、反復演習が必須である。そのためには、「今現在」自分がやりたいこと、興味あることへ時間を割くことを我慢し、基本的に退屈であまり面白みのない「反復演習」に時間を振り向けられるようにならなければならない。つまり――これはありとあらゆる学問・スポーツ・芸術などに共通することだが――反復演習をこなせばこなすほど、学力・体力・技術は向上し、将来への道が開けていく以上、きちんとした生活スケジュールを立て、必要でない時間を削り、その分を反復演習へと振り向ける計画性が、なにより重要となるのである。
加えて、基本的に周囲と争うことなくうまくつきあい、それでいて流されることなく、相手からの無茶な要求があれば何らかの手段でそれを退け、乗りこえ、「自分の立てた目標を達成する」ために、しっかりとした自覚と計画性を持って毎日を送ることも――それができなければ、いくら計画を立てたところで絵に描いた餅となってしまうのだから――重要となる。
そして最後に、16歳~18歳。高校時代とかぶるこの時期は、近い将来自立して生きていくための最終的な行動規範を身につけ、志望している職業のために必要な専門知識を徐々に身につけていくこと、またはそれらを身につけるための土台を作ることが主目的となる。
自立すれば、保護者に頼ることはできない。行動の制限がなくなり、大幅に自由な生活が可能になる反面、自らの行動の全責任を自分で負わなければならなくなる。数年後には早くもそういう状況になることを踏まえ、失敗をくり返しながら「どこまでの行動の自由が社会的に許されるのか」を見定めていかなければならない。
また、大学や短大・専門学校への進学を志望するにしても、高卒で就職するにしても、これまで以上に専門的かつ深く難解な学習をし、知識・技術を身につける必要がある。そのためにも、より計画性を持って自分の生活を律していく態度を身につけなければならない。
このように、子どもが社会的にも「子ども」である時期に身につけるべきことは、その時期によって、それぞれ違ってくる(もちろん、子どもの成長度合いは子ども一人一人違っているから、必ずしもこの通りにいくとは限らない。しかしながら、成人するまでにこれらを身につけなければ社会で生きていくのに支障をきたす可能性が高いことは、肝に銘じておくべきである)。それに応じてしつけも、その形を柔軟に変化させつつ、施していく必要があるのである。




