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ラストダンジョン最寄りの村の定食屋ですが、魔王様が常連客になりました  作者: 松本雀


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七輪異変アラカルト!~雑貨屋の主人は商魂(グッズ展開)を発揮した!〜

「そうだ! メルヴィちゃん、すごくいいことを思いついたよ!」


 雑貨屋のご主人が突然、何やら嫌な感じに目を輝かせました。今までの人生経験上、この人がこんな表情をした時、私にとっては大抵ロクでもないことしか起きないんです。ああ、どうして今日もこうなるんでしょう……。


「伝説級の勇者様がうちの村に来たのって、これもう奇跡じゃない!? 村おこしチャンスだよ! 入り口に『勇者様ご来訪の村』って横断幕を掲げてアピールしよう! 勇者グッズもいっぱい並べて、一気に観光地化で成り上がろう!」


 やっぱりロクな話じゃなかったぁぁぁ!!!!


 私は内心、派手に頭を抱えました。


 完全に地雷を踏みにきましたよ、この人!

 元勇者の魔王様が目の前にいるのに、そんな雑な商売話をしないでくださいってば!


 ジルヴァラク様は顔色ひとつ変えず無言を貫いていますが、目だけは完全に泳いでいて、どうすればいいか私に助けを求めています。


 いやはや、こっちが助けてほしい!!!


「村限定味の勇者まんじゅうに、勇者キーホルダーのランダム販売とか良いよね! これに村の未来を賭けよう!!」


「何で村の未来をランダム販売に賭けちゃってるんですか!?」


 どうしてこの村、まんじゅうとキーホルダーが経済の主軸になってるんでしょう……。


「まずは勇者まんじゅうだよ! ブロンズ味、シルバー味、ゴールド味、ミスリル味とか作って村限定販売にしたら、即完売すると思うんだよね~」


「何味で作る気ですか!? 何でもかんでもまんじゅうにしないでくださいよ!!」


「それはほら、適当にキャラメルとか胡麻とかカスタード味にしてさあ! 聖剣型のピックも入れよう!! あっ、勇者様もこのアイディア気に入ってくれますよね!?」


「……すまないが、オレ様はまんじゅうに詳しくないのだ……」


 ジルヴァラク様が気まずそうに小声で答えると、ご主人はすぐさま別のアイディアで話を進めます。


「それなら勇者キーホルダー! フルコンプリートしたくなるやつ!! 7種類のランクごとに作って、ランダム封入したらコレクター魂が刺激されること間違いなし!!!」


「ちょっと待ってください! ランダム販売ってあれですよね!? 欲しいのが出るまで無限にお金を吸い取る、悪魔のような商法ですよね!?」


「あぁ~、そこはさすがに僕も反省。ランダム商法って、やっぱり人類悪だよね……!」


「そうですよ! ランダム商法なんて邪悪そのものです! 純粋なファンの財布を空っぽにする悪魔の──って違います違います!! そういうことじゃありません!!!」


 思わず同意してしまった自分に慌ててツッコミを入れました。論点がズレています。いえ、そもそも最初から論点なんてないのですが。


「じゃあランダムをやめて、全部セットにして売るとか──」


「勇者グッズそのものがダメなんですよ! どうしても村おこししたいなら、もっと健全で穏やかな商品にしてください!」


「健全で穏やかかぁ……あ、じゃあ勇者抱き枕とか?」


「余計アウトです!! むしろ勇者ギルドだけじゃなく色んな方面から怒られますよ!!!!」


 私が心底呆れながら全力でツッコミを入れると、雑貨屋さんはまた残念そうに肩を落としました。


「えぇ~……絶対にいい案だと思ったのになぁ……」


 ご主人は、ようやく自分のアイデアに反省点を見出したらしく、顎に手を当てて真剣に考え込み始めました。

 いや、そこは気づいてくれてよかったんですけど、そもそも問題の根本がそこじゃないんですよね!?


「今一番問題にすべきなのはそこじゃなくて、『勇者ギルドの許可を取ってないこと』なんですよ!」


「えっ、ダメなの?」


「当たり前でしょうが!!!」


 私はもう完全にぐったりしてしまいました。

 どうして私は、この村の常識を一人で背負わなきゃならないんでしょうね。元勇者の魔王様を前にして、こんな必死に法律を守ろうと訴えるのもどうかと思いますけど!


「……勇者まんじゅうとか勇者キーホルダーくらいなら全然大丈夫じゃない?」


「全然大丈夫じゃありませんよ!! 勇者ギルドの視察員が来たら、雑貨屋さんなんて一瞬で一巻の終わりです!!!」


「えー、勇者ギルドってそんなに怖いの?」


「めちゃくちゃ怖いですよ! あの人たち、グッズ関連の権利にとっても厳しいんですから! 下手したらこの村の権利書ごと持ってかれますよ!」


 私は心底焦りながら、必死に説得を試みました。

 いや、実際のところ私も勇者ギルドがどれほど怖いか詳しく知りませんけどね!? でも絶対に怖いです! こういう権利関係は間違いなく厳しいんです! 世の中の常識として!


 そんな私を見て、ご主人はようやく納得したのか、それとも呆れたのか、小さくため息をついて微笑みました。


「じゃあ、勇者グッズはちょっと諦めることにするよ。メルヴィちゃんがそんなに困るなら……」


「いや、ちょっとじゃなくて完全に諦めてください! お願いですから、二度とその話をしないでくださいね!」


 私は本気で懇願しました。


 雑貨屋さん、あなたは頼れる大人のはずなんですよ? お願いですから、もう少し村人としてまともなことを考えてください!!!


 七輪の煙を見つめながら、私は静かに天を仰ぎました。


 神様……本当にお願いですから、雑貨屋のご主人の脳内にある『グッズ展開』を永久封印してください。


 そうしないと、この村はいつか勇者ギルドから永久追放され、世界的に大問題になる日が来ますから!

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