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ラストダンジョン最寄りの村の定食屋ですが、魔王様が常連客になりました  作者: 松本雀


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定食屋、魔王襲撃対策本部を設置する(なお参加者も魔王の模様)

「……それではこれより、『定食屋・魔王襲撃対策本部会議』を始めます!」


厨房から出てきた私は、会議を盛り上げるべくビシッと決めて宣言しました。


メンバーは、元凶でありながらなぜか一番やる気満々のバルゼオン様、微笑みながら明らかに楽しんでいるアモルテ様、そしてやたらと冷静かつエレガントなエヴァンス様です。


本当はグリム様にもご参加いただきたかったんですが、「すまん、その日は眷属に稽古をつけねばならんのだ」との申し出があり欠席。シュトラウス様は「……私がいると、途中で倒れて迷惑をかけてしまいますので……」と悲壮感たっぷりに辞退されました。


――結果、目の前には癖の強い魔王様三名が残ったわけです。


これを私は『最強メンバー』と前向きに捉えることにしました。

そうでもしないとやってられませんからね!


私がふと視線を上げると、バルゼオン様が静かに、しかし妙に得意げな表情で腕組みをしていました。


「我がこうして定食屋のために立ち上がる時が来ようとはな。全力でお前を守ろう、メルヴィ……!」


いやいやいや! 元凶はあなたですからね!?


このお店が危険にさらされているのは、バルゼオン様の不用意な発言が発端です!!!


私が内心ツッコミを炸裂させていると、アモルテ様は楽しげに微笑みながら、柔らかな髪を掻き上げました。


「へぇ~、定食屋を襲撃する魔王と、その定食屋を守ろうとする魔王の対決かぁ。ふふっ、僕こういう展開大好きだよ! 愛の試練って感じがして素敵だよね!」


全然素敵じゃないですよ!

むしろただの営業妨害対策会議ですからね!? 


そんな二人とは対照的に、エヴァンス様はいつものように優雅な仕草で足を組みながら口を開きました。


「一応、確認しておくが……『魔王対策』の会議に現役魔王が堂々と参加していいものなのだろうか。根本的な部分で問題があるように感じるのだが……」


エヴァンス様の指摘に私は言葉に詰まってしまいました。確かに、冷静に考えると相当おかしいですよね……!?


しかし、もう後に引けません。私は全力でエヴァンス様に泣きつくことにしました。


「お願いです、エヴァンス様! まさに現役だからこそ頼れるというか、魔王の心理をよく知る方に協力していただきたいというか、とにかく今頼れるのは皆さんだけなんです!」


必死に訴える私を見て、エヴァンス様はふっと小さく微笑みました。


「……しょうがないな。そこまで頼られては、東の魔王としては断るわけにもいかないだろう」


やったぁ! ありがとうございますエヴァンス様!!

いつもは豪華すぎて近寄りがたいけど、今日は頼もしいです!


「まず確認したいのだが、そもそもジルヴァラクが襲撃する原因は?」


エヴァンス様が落ち着いた声で切り出しました。私はやや気まずそうに、視線を泳がせつつ答えます。


「……その、バルゼオン様がジルヴァラク様の料理を前に『メルヴィの定食が食べたい』と言ってしまい、料理勝負を挑まれたんです」


エヴァンス様は即座に頷き、冷静に結論を出しました。


「なるほど。ではバルゼオンを縛り上げて差し出せば解決するのではないか?」


「なっ……貴様エヴァンス! 我々の味方ではなかったのか!?」


バルゼオン様は慌てて立ち上がり抗議しますが、エヴァンス様はまるで動じません。


「私は平和的な解決策を提案しているだけだ」


「バルゼオン様の処分案を即答しないでください! 『平和的解決』って絶対そういう意味じゃないですよね!?」


私が必死に止める中、アモルテ様は目を輝かせ、エヴァンス様に視線を送りました。


「いいアイディアだねぇ! リボンでバルゼオンを綺麗にラッピングしてプレゼントにしようよ。絶対可愛いって!」


「アモルテよ……お前もそちら側だったか……」


バルゼオン様が絶望の底に沈んでいます。魔王様がこんな表情でいいんでしょうか!?


「ちょっと待ってください! 定食屋防衛会議が仲間割れって、完全に本末転倒じゃないですか! 魔王様同士仲良くしてくださいよ!」


私の叫びに、魔王様たちはきょとんとした後、「ああ、そうだった」と我に返ったようです。

お願いですから忘れないでくださいね!


エヴァンス様が冷静に話を戻します。


「……現実的に考えて、ジルヴァラクの料理の腕は相当なものだ。バルゼオン、どうやって対抗するつもりだ?」


「メルヴィの定食に決まっているだろう。我々がこれほど心を奪われた料理なら、必ずやジルヴァラクも納得するはずだ」


「確かにメルヴィちゃんの定食は最高だよね!僕もそれが一番いいと思うな~!」


「ふむ。では早速だが、まずは腹ごしらえが必要だな。メルヴィ、定食を頼む」


いきなりのご飯要求!?

ちょっと、作戦会議どこ行ったんですか!?


「バルゼオンに同意するのは癪だが、確かに腹が減っては会議もできないだろう」


「僕も大賛成だね!メルヴィちゃんの愛が込められた定食を食べないと、良いアイデアが出てこないよ~」


皆さん、結局ご飯が食べたいだけですよね!? 作戦会議が完全にお食事会に変わってるじゃないですか!


私は脱力しつつも、大きなため息をひとつつきました。


「わ、分かりました……。特製の日替わり定食を作りますから、食べ終わったら必ず作戦会議に戻ってくださいね!?」


私の言葉に、魔王様たちは揃って満足そうに頷きました。


「任せろ、我は約束を違えぬ」

「ふふっ愛の定食待ちだね!」

「豪華な食事を期待している」


私はもう何も言えず、力なく肩を落としました。なんでこの人(?)たちはいつも、こうマイペースなんでしょう……。


ラストダンジョン最寄りの小さな定食屋で始まった『定食屋魔王襲撃対策緊急本部会議』は、こうしていきなり波乱万丈の定食タイム(魔王同士で定食を食べる会)へと突入したのでした。

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