表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラストダンジョン最寄りの村の定食屋ですが、魔王様が常連客になりました  作者: 松本雀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/88

定食屋、魔王様に謎の追加効果があると広められていた模様

「フロスト・トリニティさま……なんと優美なお名前でしょう!申し遅れました、私は燦輝の黄金城にて金庫番を務めているバスティアンと申します。年収は1500万ギル、貯蓄は実に3億ギルを超えております。趣味は宝石磨きに資産運用、休日は芸術鑑賞やダンジョン探訪など文化的な活動に勤しんでおり……」


バスティアンが魔法冷蔵庫に向かって必死に自己アピールを続ける最中、私はテーブル席の隅っこに突っ伏していました。


――前回、自分を『美人』だと勘違いしてしまったことが猛烈に恥ずかしくて顔を上げられません。お願いですから、誰か時を巻き戻してください……!


後ろではエヴァンス様が、「くっ……くふっ……」と必死に笑いを堪えながらお茶を飲んでいます。肩が小刻みに震えているのを見ると、相当ツボに入ったのでしょう。


「メルヴィ……元気を出せ。お前にもきっと、いつか素敵なミミックが現れる」


「そこミミック限定ですか!? もっと広い選択肢をくださいよ!!」


そんな慰め方をされても全然嬉しくありません、むしろ追い討ちです!! 私の心のライフはもうゼロですよ!!!


バスティアンは相変わらず冷蔵庫に夢中で、その熱烈なアピールは止まることを知りません。


「美しく輝く貴女のお姿を拝見したその瞬間から、私の心はもう貴女のもの……どうかこの私めと未来を共にしてくださいませ! 一緒に幸福な未来を築きましょう! もちろん毎日のお手入れや磨き上げなど、誠心誠意お仕えいたします。どうか私に、その美しいドアを開く許可を……!」


ついにはプロポーズまで飛び出す始末です。私はもう、ただただ脱力して机に額を打ち付けました。


こういうときは話題を変えるのが一番です。


「……あの、エヴァンス様。そういえば魔王会議はよかったんですか? バルゼオン様や他の魔王様たちは、あと二日ほど延長と聞きましたけど……」


「いや、会議で『人間との融和策』なる馬鹿げた議題が出てしまってな。聞いているうちに腹が立ち、人間の国を幾つか滅ぼしてしまいそうだったから途中で抜けてきたのだ」


とんでもなく物騒なことをさらっと言いますね、この魔王様は。


「いやいやいやいや! 人間の国がなくなったら、うちのお店が営業できなくなるので本当に勘弁してください!!」


私が慌てて両手を振って止めると、エヴァンス様はなぜか楽しそうに微笑みました。何を面白がってるんですか、もう!


「なに、私がいなくても、あの連中なら好き勝手にやるだろう」


――今頃、会議がとんでもないことになっていませんように……。残った魔王様たちの数少ない良心に全力で期待してますからね!? お願いだから世界滅ぼさないでくださいよ!!!!


私は慌てて次の話題を探します。考えてみれば、なんでエヴァンス様がうちみたいな定食屋を買収しようとしたのか、まともに聞いたことがありませんでした。


「……そういえば、エヴァンス様はどうしてこの場末……じゃなくて、普通の定食屋を買収しようと思ったんですか?」


以前バルゼオン様に宣戦布告のような忠告をされても、懲りずに色々提案するのは一体何が目的なんでしょうか。


「あの討伐不可能と恐れられているバルゼオンが、この店を非常に気に入っていると知ってな。先に手に入れたいと思ったのだ。それと、この店で食事をすると『特別な追加効果』があると聞いている」


「つ、追加効果って何ですかそれ!?」


エヴァンス様は美しい顔に僅かな笑みを浮かべながら、優雅にお茶を口に運びます。


「バルゼオン曰く、この定食屋で食事をすると『継続回復』『魔力チャージ効率向上』『毒・麻痺・沈黙・混乱の耐性付与』『攻撃命中率上昇』『物理・魔法攻撃への耐性向上』『視力改善』『体脂肪率の低下』『ストレス軽減』『深い眠りをもたらす』など様々な効果があるとのことだ」


「多すぎません!?!?!?」


私は思わず素っ頓狂な声を上げました。


回復はまだいいです。でも、毒耐性や命中率や体脂肪率の低下やストレス軽減って、明らかにごちゃ混ぜすぎです!

バルゼオン様、うちを一体何のお店だと思ってるんでしょうか。いくらなんでも盛り過ぎですよ、これ!?


「大体、視力改善とか深い眠りをもたらすって、完全に健康食品の謳い文句じゃないですか……」


「それは私も疑問に思ったが……本人は『特に角の艶が増した』と満足そうだった」


「角の艶、またですか!?」


「お前の料理のおかげだと、嬉しそうに言っていたな。まあ、バルゼオンがそれだけこの店を評価しているということだ。喜べ」


「喜べません!! そういう話を広められると、いつか私の店が訴えられます!!!」


お客様に美味しいご飯を食べて貰いたいだけなのに、どうしてこんなことになったのでしょう。店を始めた時は、魔王様たちの角の艶を良くするなんて目的は一切ありませんでした!


バルゼオン様……次回来店されたら絶対に問い詰めてやりますからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ