2話 5歳の剣士
ーー埼玉第二ダンジョン45層にて
「ねぇねぇ、本当にハクトなの?」
「おう、お前の名前は小倉ミカ、19歳で俺と同い年の大学1年生、好きなものは韓国料理、嫌いなものはえびせんで、あとはそれから……」
「あー!もういいよ話さなくて!」
手をブンブンと横に振りながらハクトを止めるミカ。
「本当にハクトなのか?」
レイジは恐る恐るそう訊ねる。
「だから本当だって、レイジの秘密はーー」
「あー!言わなくていいよ!信じるから!」
「まさか小さくなるなんて……一体どんなトリックなの?」
小首を傾げてそう訊ねるユイナ。
「うーん、おそらく原因はこいつだと思うんだけど、まったくわからんくてさ」
『スッ』
ハクトはさっき拾った剣を差し出した。
「わかった、なら私のスキルで見てみるね」
「ああ、よろしく頼む」
「うん、スキル解放【鑑定士】」
『キュオッ』
ユイナはスキル【鑑定士】を使いハクトの拾った剣の鑑定を始める。
「作られた年代は推定で200年前、凄いよこれかなりの年代物かも、しかもこれ聖剣種だよハクト」
"聖剣種"数ある迷宮アイテムの中でも確定で最高ランクのゴットランクのレア武器。
その性能はどんな名刀でも及ばないとされている。
「マジかよ!拾い物だぞコレ」
「……あ、ちょっと待って、どうやらこの聖剣重大な欠陥があるみたい」
「重大な欠陥?」
「う、うん、どうやらこの聖剣は使い手を呪いで自分好みの姿に変えてしまうらしくてね、しかも無類の子供好き……らしいよ」
「なな、なんだよそれぇぇぇ!!」
「あ、でも子供好きって変な意味じゃないみたい、この聖剣はどうやらかなりのお爺ちゃんらしくてね、子供の元気な姿が癒しなんだってさ」
「そ、そんなふざけた理由で俺は子供に変えさせられたのか」
『ドサッ』
落ち込み膝をつハクト。
「あっははは、何それ笑えるんですけど!てことは何、ハクトはお爺ちゃん聖剣を拾ったわけ?」
「そ、そうなるわね」
ユイナは笑いを堪えながらそう話す。
「お、おいハクト、お前最高だよ」
『ポン』
半笑いでレイジはハクトの肩を叩きそう言った。
「おいレイジ!笑ってんじゃねぇ!てか俺の身体はどうなるんだよ!」
「えーっと……あ、わかんないかも」
ユイナはそう言って困った顔をする。
「わかんないって、どういう事だよ!」
「なんか聖剣がそれだけは教えられないって言ってるのよ」
「い、意味わかんねぇよそれ」
「まぁでもこの状況は悪くないわよハクト」
不適な笑みを浮かべるユイナ。
その笑みを見てハクトに嫌な予感が過ぎる。
「お、お前まさか……」
「5歳児が難関ダンジョンの攻略してるのって、面白いわよね」
「ふ、ふざけんなぁ!!こんな状態で戦えるわけないだろ」
「やってみなきゃわからないわよ、それにハクト私に借金あるし」
「くっ、お前あの刀はホワイト・ファング名義で買ったって言ってたよな?」
「ならユイナにじゃなくて、私達に借金になるんじゃない?」
悪魔的な意見を話し始めるミカ。
その意見に、あーっ確かにとなるハクト以外の一同。
「お、おいふざけんな!まずは俺の身体を元に戻す事を考えるべきだろ!」
「まぁそうだが、使えるもんがあるなら使うべきだろ」
『ポンポン』
小さくなったハクトの頭を叩く。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
ハクトの哀しげな悲鳴が、埼玉第二ダンジョン中に響くのだった。
ーー30分後、45層にて
「はいはーい皆さん注目でーす!」
配信をつけるとすぐに、ミカがアイドルのように羽まわって視聴者達の意識を自分に向ける。
ーーチャット欄にてーー
"お、始まったぞ!"
"待ってました攻略感想配信!"
"お疲れ様ー!"
盛り上がるチャット欄。
同接7000人。
「ダンジョンボスを倒した後は、いつも攻略達成の感想配信をしていましたが、今回は皆様に重大な発表があるのです!」
ーーチャット欄にてーー
"発表?"
"まさかあのグッズの再販か!"
"もしかして誰か引退するとか?"
"おいやめろよ!"
ミカのどうとでも取れる発言に揺れるチャット欄。
「あらら、結構みんな揺れてるねぇ、でも安心して!引退とかじゃなくて活動休止と新メンバー発表だから!」
ーーチャット欄にてーー
"いやいや活動休止も悲しいわ!"
"い、一体誰なのよ~"
"ミカ嬢だけはやめてくれ!生きる希望なんだ!"
「ズバリ活動休止するのは我らがリーダー、ハクトです!!」
ーーチャット欄にてーー
"ま、マジか!?"
"悲しすぎる"
"ふ、復帰はいつなんだ!"
「復帰日は未定です!ですが安心してください、新メンバーはハクトの分の人気を補える期待の新人……そう!ウチの新しいアイコンとなる人物です!」
ミカはそう言ってシュバッと腕を大きく上げる。
「合図よハクト行ってきて」
「お、おう!」
ユイナの呼びかけに応じて出て行こうとするハクト。
『グォォオ!!』
その時、良いタイミングでミカの近くにハイオークレベル42が現れる。
「あら、丁度いいじゃない、ハクトあれ切って」
「お、おう」
『スッ』
ハイオークを見て少し喜んだ様子でそう話すユイナ、5歳児ハクトは腰に携えている聖剣を引き抜いた。
「(この剣、身体が小さくなる前は短いなと感じてたけど、この幼児の身体だと丁度いいかも)」
ハクトがそんな事を考えていると、ハイオークはミカのすぐ近くまで来ていた。
「キャー、オソワレルー!」
ミカは棒読み全開で助けを呼ぶ。
「ほらハクト、ミカが呼んでるわよ」
「へいへい」
『シュバッ』
ハクトは気怠げにそう返事をすると、ミカの元へとダッシュした。
『グォォオ!!』
迫るハイオーク。
ミカとの距離は2メートルほど、しかし彼女は逃げない。
ーーチャット欄にてーー
"逃げてくれミカ嬢!!"
"誰か来てー!"
"すぐ近くまで来てるぞ!"
ミカへの心配で溢れかえるチャット欄。
その時だった。
『ズバッ』
青い閃光と共に一瞬にして斬り裂かれるハイオーク。
そしてその背後に現れる一人の幼児。
「おお!どうやら私の窮地を新メンバーが救ってくれたようです!!紹介しましょう、我がグループの新しい剣士"雷剣士・ハク"です!」
ーーチャット欄にてーー
"え、子供?"
"何この子、小さい剣持ってる!"
"可愛い!!でも強っ!"
"ハイオークを一撃で仕留める幼児……バケモンかよ"
小さくなったハクトの登場に沸き立つチャット欄。
そして同接はあっという間に3万を超えていくのだった。




