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1話 謎の聖剣


ーー日本、埼玉第二ダンジョン45層にて


 「おいミカ、あんまり行き過ぎるな!」

 「わかってる!でもあと少しなの」


 前衛の小倉ミカは、八重島ハクトの静止を振り切りダンジョンの奥へと走り出す。

 ダンジョン配信ギルド【ホワイト・ファング】。

 現在、絶賛売り出し中の若手攻略者のグループである。

 立ち上げメンバーのミカとハクト、マネージャーの椎名ユイナは幼馴染。

 そして後発メンバーの鮫島キリネと、大島レイジは元有名攻略者である。

 この5人のメンバーからなるホワイト・ファングは主に難関ダンジョン攻略配信を行っており、活動開始から3年、今では登録者65万人の大手ダンジョン配信グループとなっていた。


 「ハクト、ちょっといいかしら」

 「なんだよユイナ」


 ミカの後を追うハクトにマネージャーのユイナが声をかける。


 「今の同接1万5000人で、配信時間は1時間ほど経過してるわ、ここら辺で山場が欲しいからモンスターとか狩ってちょうだい」


 現在配信用のライブ映像は、先行するミカをドローンカメラで撮影している。

 そのため、ハクトとユイナのこのやりとりは配信上には乗っていない。


 「そんな都合よくいくかよ、それよりも早くミカを追うぞ!」

 「……同接、せっかくいい感じなのに」


 ユイナは悲しそうにそう呟きつつも、ハクトと共にミカを追った。


 「おいハクト!ミカの走っていった先からモンスターの気配がするぞ!」


 ハクトとミカの間を走るレイジがそう叫ぶ。


 「まずい……」

 『ギュンッ』


 その言葉を聞いたハクトは走る速度を上げ、一瞬にして前を行くレイジを追い抜いた。


 「ハクト!この気配は竜種かもしれないぞ!」

 「ああわかった、スキル解放【身体強化レベル2】」


 スキル【身体強化レベル2】。

 消費ダンジョンポイント300。

 効果は身体能力を飛躍的に上昇させる。


 『ギュオッ』


 そうしてハクトは、前方を走るミカに迫っていく。


ーー45層、深部にて


 『ギャオオオオ』

 

 炎熱竜・ボルケーノドラゴンは、目の前に立つミカに対して大きな雄叫びを上げる。


 「出たわね、ダンジョンボス」


 ミカは自分を威嚇するボルケーノドラゴンを見て、そう呟くと小さく微笑んだ。



ーーチャット欄ーー


 "で、出たぁボルケーノドラゴン!"

 "推定レベル50ほどですなこれは、ミカ嬢がレベル55ですからこれは激戦になりますぞ"

 "頑張れー!"

 "ハクトさんとか待った方が良くない?"


 盛り上がるチャット欄。

 同接は1万7000ほど。


 「推定レベル50ね、相手にとって不足はないかもね、いくよ【蘭丸】」


 ミカは両手に持つ双剣を力強く握った。

 "キングクラス"迷宮アイテム【蘭丸】。

 水属性を纏った二振りの小太刀であり、持ち味は剣自体の軽さによる俊敏性と、水属性を活かした変幻自在の刃にある。


 「迷宮アイテム【蘭丸】解放!!」

 『シュオオオ』


 二振りの剣から溢れ出てくる水がミカの身体を覆い、膜のように展開される。


ーーチャット蘭にてーー


 "でた!ミカ嬢の蘭丸!"

 "ボルケーノは火属性の竜種、相性は良き良きですぞ!"

 "いけぇミカ嬢ー!"

 

 『グオオオオオ』


 展開されるミカの迷宮アイテムを見て、先ほどよりも低く鳴くボルケーノドラゴン。

 これはブレス攻撃の兆候である。


ーーチャット欄にてーー


 "く、くるぞ!"

 "竜種の声音が低い時はブレス警戒は必須っと"

 "みろ!ミカ嬢も防ぐ気だぞ!"


 「来るのは炎熱系のブレス、推定攻撃力は1000ほど、ならばこちらはそれを上回る防御をするしかない……蘭丸、形態変化【水王の大楯】」

 『シュルルルル』


 ミカの呼びかけに応じ、蘭丸はその刃を大きな盾へと変化させる。

 そうミカの持つ蘭丸の刃は、武装変換により刃を盾にも換装可能なのだ。


 『バンッ』


 そうして出現する水属性を帯びた大楯。


 「頼むよ蘭丸、私を守ってね」

 『パチッ』


 ドローンの向こう側の視聴者に向けウィンクをするミカ。

 人気配信者故のファンサービスである。


ーーチャット欄にてーー


 "ミカ嬢ー!!"

 "ファンサ神すぎる!"

 "窮地にこそ光る君の瞳を俺は守りたい!"


 ミカのファンサに沸くチャット欄。

 そしてボルケーノドラゴンの大きな口が開く。


 『ガパッ』

 「来るわね」

 『ブオオオオ』


 放たれる炎熱系のブレスは、一直線にミカへと襲いかかる。


 『ドゴォン』


 向かってきた炎を受け止める大楯。


 『ゴオオオオ』

 「凄い熱ね、さすがはダンジョンボス」

 

 ブレスの勢いに押されて身動きが取れなくなってしまうミカ。

 しかし、その背後にダンジョン攻略配信グループ【ホワイト・ファング】のリーダーが迫る。


 「ミカ!そのまま押さえてろ、あとは俺がやる!」

 「ハクト!!」


ーーチャット欄にてーー


 "白犬の登場だ!"

 "キター我らがリーダー!"

 "やったれ世界最強!"


 ハクトの登場に最高潮の盛り上がりを見せるチャット欄。

 そして同接は2万人を超えていく。


 『ギラッ』

 

 ハクトの持つ日本刀にボルケーノドラゴンが写る。


 「いくぞ!スキル解放【雷装】」

 『バチバチィ』


 スキルにより電気を帯びる日本刀、そしてハクトはその刀でそのままボルケーノドラゴンを斬り裂いた。


 『パキィン』

 「なっ!」


 しかし刀身はハクトのスキルに耐えられず、砕けてしまう。


 「何してんのよハクト!」

 「わ、悪りぃ」


 世界最強の剣士にして今や有力攻略者の八重島ハクト。

 彼は未だ自分の力に耐えられる剣に巡り合っていない。

 この日本刀も使い始めて1週間、名工が打った一振りであったが、それでも短期間しか保たず寿命を迎えてしまう。


 「(やべぇなまた折ってしまった、あとでユイナに叱られちまう……って、そんな事考えてる暇はないか!)」

 『バシュッ』


 ボルケーノドラゴンは、ブレスを中断して近くにいるハクトを睨みつける。


 『ギャオオオオ』


ーーチャット欄にてーー


 "な、何やってんだー!"

 "バカリーダー!"

 "おいハクト氏!足下みろ良い感じの剣が転がってるぞ!"


 「え、足下?」


 ハクトはイヤホンから聞こえるチャット欄の、読み上げの指示に従って足下を見る。


 「うお!ラッキーマジであんじゃん!」


 チャット欄の言う通り、ハクトの足元には刀身が異様に短い、まるで子供用のような両刃の剣があった。


 『カチャ』

 「どこのどなたの物か存じませんが、悪りぃが借りるぜ」


 ハクトはその剣を拾い上げるとそのまま剣を構える。


 『グオオオオオ』

 「ハクト!低い声音はブレスが来る合図よ!」

 「わかってる!いくぜ名もない名剣ちゃん、一回でいいから耐えてくれよ、スキル解放【雷装】」

 『バチチチィ』


 拾ったばかりの剣は、ハクトの雷装を問題なく纏っていた。


 「お!いい感じじゃん!」

 『ガパッ』


ーーチャット欄にてーー


 "来るぞハクト!"

 "前みろ剣バカ!"

 "ふ、防げるのか!?"


 心配の声が上がるチャット欄。

 しかしハクト本人は、全くそんな心配をしていない、むしろ雷を問題なく纏う剣に可能性を感じていた。


 「この剣……今までのとは、比べものにならないくらい頑丈だ、これなら」

 『ブオオオオ』


 ボルケーノドラゴンの口から放たれる炎熱系のブレス。

 その威力は先ほどよりも遥かに高く、その大きさはミカに放ったサイズよりも2倍ほどあった。


 「ハクト!!」

 「任せろ、斬り裂け【雷装】!!」

 『ズオオオオ』


 振り抜いた雷を帯びた剣は、そのままブレスを斬り裂きボルケーノドラゴンへと迫る。


ーーチャット欄にてーー


 "す、すげぇ"

 "ブレスを斬ってる"

 "相変わらず規格外だな、ハクト氏は"


 驚きを通り越して引いてすらいるチャット欄。

 そしてブレスを突っ切りハクトの剣はボルケーノドラゴンに肉薄する。


 「このままいくぞ!スキル解放【雷装・爆雷斬】」


 ハクトは纏う雷の出力を最大まで引き上げる。


ーーチャット欄にてーー


 "いけぇハクトォォ!!

 "やったれハクト氏!"

 "ブレスの中を斬り裂いて、そのままドラゴン切るとか、ありえないだろ!"


 『ギャオオオオ』


 ブレスの中を向かってくるハクトに最後の咆哮をするボルケーノドラゴン。


 「断末魔にしちゃ早すぎるだろ、いくぜ【爆雷斬】!!」

 『ズバァァァン』


 そうしてハクトは、ボルケーノドラゴンの首を両断した。


 「よし、一丁あがりぃ!」

 『プシュッ』

 「へ?」

 『プシュウウウ』


 ボルケーノドラゴンを斬り裂き、着地を華麗に決めたハクト。

 しかしその瞬間、持っていた剣から白い煙が溢れ出す。


 「はいはーい、皆さん注目でーす!ダンジョンボスを討伐したので、一旦配信止めますねー!攻略後の感想配信をお楽しみにー」


ーーチャット欄にてーー


 "バイバーイ"

 "ミカ嬢、お疲れー!"

 "あれハクトは?"


 「はーい、皆んなまたねー!」


 そう言ってミカは配信を切る。


 「ハクトー、配信終わったよー!」

 「……」


 大きな声でハクトのいる方に叫ぶが、声は返ってこない。

 ただ白い煙がモクモクと出ているだけ。


 「おいハクト!返事しろ!」

 「うるしぇなぁ、聞こえてるってぇ」


 そしてその白い煙の中から、5歳児くらいの白髪の少年が現れる。


 「……え?」

 「何だよミカ、そんな驚いた顔してさ」

 「あ、あんた誰?」


 恐る恐るそう訊ねるミカ。


 「あ?誰ってお前それは失礼すぎるだろ、ハクトだよ、今の短時間で忘れるとかお前ないわー」

 「ハクト!?いやいや、そんなわけないでしょ、だってあんた見た目幼児だよ」

 「見た目幼児ぃ?お前は何を言って……は?」


 ハクトはミカの言葉を不審に思い、自分の手を見てみるとそこには幼くて小さい手があった。


 「ほら見てみ!あんたやっぱり幼児になってるよ!」

 「な、なんじゃこりゃあああ!!」

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