3話 スポンサー獲得
ーー雷剣士・ハクの紹介から3日後
「お世話になっております、ホワイト・ファングのマネージャーの椎名でございます」
朝9時、都内某所にある事務所として借りているマンションの一室でユイナは電話対応に追われていた。
衝撃の新メンバー発表から3日後。
雷剣士・ハクの登場時の切り抜き動画は、MyTube公開からほど無くして100万回再生を突破し現在は300万再生ほどとなっていた。
「いやぁ、ハクトお前すげぇな、一瞬で俺たち登録者80万人超えちまったぞ」
「う、嬉しくねぇよ」
ソファに座りながらお菓子をバリバリ食べるレイジにそう言われても、あまり嬉しそうではないハクト。
「あっははは、まだ拗ねてんの?」
「拗ねてねぇよ!普通に悲しいんだよ!つかミカお前、俺を自分の弟だとか方々で言ってるらしいな!」
「いいじゃない別に、あんたその体で家に帰れないでしょ、ウチなら私一人だし問題ないじゃん!」
「くっ……そ、それもそうか」
その言葉に仕方なく頷くハクト。
ミカに両親は無く現在も孤児院から出て一人暮らしをしている。
そんなミカならハクトを適当に生き別れた自分の弟だとか言ってしまえば、どうとでもなるのだ。
ちなみにハクトの両親には、ハクトは現在海外の最難関ダンジョンの攻略のため長期海外赴任中という事になっている。
「てなわけでハクト、今日から私の家に来なさいよ」
「え?」
「いいじゃない別に、事務所で寝泊まりもしんどいでしょ」
「い、いやしかしだな……」
ミカは幼馴染とはいえ女の子。
実年齢19のハクトに一人暮らしの女子の家にお世話になるのは大変にハードルが高いのだ。
「大丈夫よ!その身体ならもし襲われても私、あんたに勝てるし!」
「そういう話じゃないだろ!」
「よっしゃあ決まったぁ!!」
言い争うハクトとミカの近くで、ユイナが電話を切るとすぐにガッツポーズをしていた。
「ど、どうしたんだよユイナ、そんな大きな声出して」
「よく聞きなさいハクト、案件依頼が来たわよ」
「あ、案件!?」
「ええそうよ、しかも3件来てるわよ」
「す、凄いなそれは」
「2つはダンジョンアイテムの提供、もう1つは子供向け炭酸飲料のWebコマーシャルよ!」
雷剣士・ハクという、5歳児の見た目をしてダンジョンモンスターを討伐したキャラクターは、企業においてインパクトが大変大きかった。
それでいてプレイヤーレベル75という情報も、ホワイト・ファング公式SNSですでに告知済み。
プレイヤーレベル75は、トップ攻略者である証明にもなるが、何より強さの担保になる。
普通、5歳児がダンジョンで暴れ回っても心配される声が多くなると思われるが、レベル75もあればその懸念が起きるはずもなく。
未だユイナの元にはクレームなどは来ていない。
「凄いじゃんハクト!webCMとかもうほぼ芸能人だよ!」
「や、やめろって恥ずいだろ、それで提供されるダンジョンアイテムってなんだよ」
「えっと、"これでダンジョン内を探検だ!DXダンジョンランプ"と"足場の悪い道でもこれならお子さんも安心!探検用長靴"だよ」
「……なるほど、そっちも子供向けなのね」
「これでも幾つか断ったのよ」
「他にはどんなのあったの?」
「ダンジョン内で遊ぶ"子供用トランシーバー"に玩具の聖剣"とか……」
「あっははは!ハクト完全にガキ扱いされてんじゃん!」
ユイナが断った案件の話を聞いて大笑いするミカ。
「お、俺のことを何だと思ってるんだ……」
『ガクンッ』
ハクトはそのままショックのあまり床に手をついてしまう。
「ま、まぁ断ったんだし忘れてねハクト!そして急ですが明日、ダンジョンへ行きます!」
「お、その感じだと案件配信か?」
「そうだよ、でもレイジとミカはお留守番ね、案件配信はハクトと私で行きます」
『ポス』
ユイナはそう言ってハクトの頭に手を置いた。
「てなわけでハクト、今日は私の家に来なさい」
「へ?」
「私もミカと同じで一人暮らしだし、問題ないでしょ、それに一緒にいれば明日の行動がしやすいしね!」
こうしてハクトは、19歳の一人暮らし女子の家に初めて行く事になるのだった。
はたして小さくなったハクトの運命やいかに。




